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エコタウンの本音 09.17.2000




 9月9日土曜日、NHK教育テレビのサイエンスアイに出演した。5時からスタジオで収録して、放映は11時30分からであった。番組中の「名物研究室」は、CRESTの別のプロジェクトリーダー、三重大学の船岡先生(本当は船の字が違う)の「究極のエコプロダクト=人工木材」の話であった。
 番組中で何をコメントするか、言いたいことはいろいろと有ったのだけれど、「本当の本音(?)」を吐けば番組を壊しかねないので、かなり抑えて「やや本音」発言が多かった。そのため、話トーンも低くて自分でも不満だったと思うので、ここで欲求不満の爆発だ?と行きます。


C先生:またまたNHKからお呼びがかかって、スタジオ収録。この手の番組は、リハーサルはするが、やり直しはやらない。とんでもないNGがでれば話は別だけど、ちょっとしたNGはそのまま。エコタウンビデオへの移行画面で中森有香さんの手が間違って画面に入るのだが、これもそのまま放映された。実は、リハーサルで多少短くするように決めた内容が、本番では多少中身が足らなくて、1分ほど早く終わりすぎた。しゃべっているときには時計が左前方にあって、そちらを見る位置に座っていなかったもので、時間が余っていることに気が付かなかった。

B君:それはそれとして、中身もおとなしかった。もっと「こんな技術は意味がない」、とか言うのかと思った。

C先生:この種の話題の場合、それでなくても、エコタウン内の企業がかなり苦しい状況なのだから、悲観的な見通しを述べるというよりも、そこそこに元気になって貰いたい、と思って。

A君:いや、どうですかね。むしろ悲観的なところを述べて、循環型を実現するトータルな社会システムがどのようなものかといった議論をすべきではないですか。例えば、リサイクル課徴金とか環境税とか。

C先生:いやいや、余り哲学的な議論をするような番組ではない。キャスターの中森さん、レポータの高橋さん、それにアナの山口さん、この3名が繰り広げる教養番組であって、サイエンスの夢を語るという感じの番組なんだろう。だから、エコタウンもこんな良いことをやっていますという宣伝番組であって、社会派のようなアプローチは入り込む余地がない。

B君:まず、内容の最初は自動車リサイクルだったが、問題点として指摘すべきだったのは、あの車が比較的新しいということだ。恐らく、5〜7年ものあたりが分解されていたように見えた。そして、自動車リサイクルをどのような経済性を目論んでやっているのか、その解明が全くなかった。恐らく、スクラップ資源へのリサイクルだけをやっていたのでは、経済的に成立しない。だから、比較的新しい車をばらして、部品取りを前提とした解体をやって経済性を確保しているのではないか。
 勿論、自動車には鉄スクラップに入るとうまくない金属が相当使われている。例えば、鉛もバッテリーを除いても1kg以上使われている。電極、ラジエータ、ガソリンタンク、その他もろもろ。これらを除外してスクラップにすることは、電炉メーカーにとって有利にはなる。だから、スクラップも多少高く売れる。しかし、これで商売になるほど、今の状況は甘くはない。また、シュレッダーダストを全く排出しないということだが、これも本当か?だ。車のすべてが有効活用できるとは思えない。例えばシートはどうする。当然ながら、燃やしても良いプラスチック類は、これが電炉の操業に悪影響をしない範囲でスクラップの中に混ぜ込まれているのではないか。

A君:もう一つのプラスチックのリサイクルでも、実際のところは、材質だけでなくて、それぞれのパーツには、もっと詳しいコード番号が刻印されているようですね。しかし、それが示されていなかった。恐らく、それは企業秘密なのかもしれない。もっとも「誰でも知っている企業秘密」に属するものでしょうけど。
 それでも、このようなリサイクルが経済的には成立していない。やればやるほど損をすることになっている。しかし、それをやる企業があるのは、その行為が企業イメージの向上になるからなんでしょう。

B君:最近、環境会計なるケッタイなものをやる企業が増えてきた。考え方にもいろいろあって、これだけ環境関連の出費をしましたという表現なら良いのだが、ある企業の環境会計では、これだけの出費によって、得られた利益がこれだけありました、という形で、環境投資をすればするほど儲かる、といった記述をしているところもある。これは、おかしい。むしろ環境会計も新しい枠組みを作って、環境行動による環境イメージの向上を金銭価値にでも変換して、このぐらいの企業イメージのアップが、このぐらいの環境投資によって得られました、とか言った取り扱いをすればおもしろいのに。

A君:企業イメージといえば、トヨタのプリウスは、最初は赤字だと言われていましたが、「トヨタはエコ」のイメージを確立するためにプリウスはずいぶん貢献しましたからね。これは、広告費としても安いものだったのでは無いですか。

C先生:もともとプリウスへの若干の投資は、全く問題ではない。イメージのアップといった問題でもない。経済的に今後数年以内に完全に回収できるだろう。なぜならば、近未来技術を獲得したからだ。燃料電池自動車がまもなく市場に出る、とかいうけど、それはほんの少数。普及するには、よほど社会的なシステムを整備しないかぎり、15年以上かかるだろう。遠い将来の燃料電池自動車への繋ぎ技術は、やはりハイブリッド車だ。トヨタは、3万台近いプリウスを有料で頒布して、市場内で実験を行ったようなものだ。この蓄積は大きい。自動車のような製品の信頼性試験は、試験体の数が支配する世界だから、1000台以下と3万台とでは、その差は余りにも違う。ハイブリッドなら当分トヨタということになるだろう。

A君:3番目の生ゴミからの生分解性プラスチックの実験でしたが、これにしても、エネルギー的に多分合わない。製造に要するエネルギーが少なくない。特に、生ゴミなどを原料にしたら、収集分離にますますエネルギーが必要になる。カーギル社のように、トウモロコシの実の部分を原料にしても、まだまだ化石燃料に依存する部分が大きすぎるという考え方のようですね。

B君:まあ、生分解性プラスチックは、日本の場合には、埋め立ててもそのうち分解するから、という意味合い、すなわち、焼却回避の意味合いで環境負荷が低い製品だと主張していたが、段々と生物原料プラスチックであるという意味合いに移行しつつあるのが世界的情勢。となると、石油原料の普通のプラスチックと比べて、エネルギー的に意味があるかどうか、これが重要な要素だ。

C先生:生分解性プラスチックについては、また記事にする予定。なぜならば、日経サイエンスの11月号にそのような記事が掲載されるが、その記事へのコメントを書いたから。丁度、11月号が発行されたころに、再度取り上げよう。

A君:今回のC先生のテレビ中でのコメント、「循環型社会を回すためのシナリオを作るためには、なるべく多くの候補の検討が必要」というのは、苦しかったですねえ。いささか。

B君:どんな計算をしても、生ゴミからの生分解性プラスチックが数年以内に実用化される可能性などは無いからな。

C先生:一応弁護する。本当に一応だが。何も社会的なシステムが変わらなければ、B君の言う通り。しかし、一つの要素がある。それが2000年に成立した食品リサイクル法がどのようなことになるか、なのだ。コンポストだけでは、なんとしても回らないのだ。その理屈はすでに述べたと思うが、日本と言う国が、食糧・飼料を大量に輸入しているために、コンポストとして農地に戻すと、窒素過剰になってしまって、むしろ環境破壊になるからだ。だとすると、法律を動かすためには、なんらかの新しい方法が必要になる。メタン発酵か? いや多分経済的に合わない。それではどうするのだ、ということで、生分解性プラスチックに補助金ががっぽり出れば、分からないよ。生ゴミからのプラスチックが本当に実用化されてしまうかもしれない。

A君:環境負荷が高いことをわざわざやるのは駄目だと何遍も言っているでしょう。

C先生:それが最近少し考え方が変わった。リサイクルを強制することによって、その製品の削減を狙うという手法を採用することを許容しても良いのではないか、と考えるようになった。例えば、容器包装リサイクル法のその他プラの枠組みで、一部都市ではリサイクルされているマヨネーズのプラスチックチューブだ。これを洗って出せという自治体の指示は不合理の極みなのだが、その不合理故に、容器の材質をもう一度考えようということになれば、それはそれで意味がある、といった考え方になった。だから、食品を余らせるとその始末が高価について大変だという社会システムを作るべきだ、というポリシーを政府が決め、その実施のために、すべての生ゴミは生分解プラスチックにせよ、というのも有りなのかもしれない。

B君:しかし、エコタウンに戻るけど、本当にこのようなエコタウンの存在意義があるのだろうか。現状では、かなり苦しいチャレンジのように思えるが。

A君:家電リサイクルにしても、今回4品目の引き取り価格が決まりましたが、やはりメーカーからの持ち出しが大きいのですよ。最終的には消費者の負担になりますが、若干時間が掛かるから、その間は完全に持ち出し。

C先生:まあかなり長い目で見ないとだめだろう。これまでの大量生産・大量消費・大量廃棄の経済活動に余りにも慣れすぎた。しかも、このスキームを変えなければならないという実感がまだまだ伴わない状態だからだ。北九州市のような自治体が焦っているのは、循環型社会が実現すれば、製鉄業によって食べてきた地域は恐らく税収も上がらなくなるからだ。大牟田市も同様。大牟田は石炭が没落して、それに加えて化学工業が没落すれば、今後どうするか、ということになる。そうなれば、エコタウンでも作って、静脈産業で優位性を築いておこうと考えるのは当然だ。通産省あたりも同様で、製造業が海外に移転しまっても、静脈産業なら日本に残る。これによってある程度の労働人口を吸収することが、日本全体としても必要だという考え方なのだろう。まあ、日本全体で、エコタウンのようなものを育成しないと、日本の未来は難しいとも言えるだろう。しかし、それには時間が掛かる。