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第4回エコバランス国際会議 11.05.2000




 エコバランス国際会議とは、主としてライフサイクルアセスメントについて検討する会議であって、2年に一回、日本、それもつくば市において行われきた。今回第4回を迎えたが、発表論文数200件、参加者500名に近いところまで成長した。どのような話題が話し合われたか、その概要を記述してみたい。


C先生:エコバランス国際会議が終わった。10月31日に会議が始まって、11月2日までの丸々3日間の会議であった。A君もB君も出席した訳だが、ちょっと感想でも聴きたいと思って。

A君:一応参加しましたが、やはり今回のように、4会場並列のパラレルセッションですと、全体像は全くつかめませんね。そろそろ限界に来ているような気がしました。それに500名近い参加者が居たと言われても、余り実感がありませんね。会場と時間によっては、パラパラという状態でしたから。

B君:全時間会場にいたけれど、どれを聞くかと言われても、「どれも聞きたいが、どれも聞くほどでもない」、という極めて中途半端な状況だった。大体、どんなものなのか、見えてしまうような研究が多かったと思う。

C先生:なるほど。まず、全体を統計的な目で見て分析してくれ。

A君:今回、会場が4会場あって、それ以外にもポスターセッションが1会場。さらに、初日の午前と最終日の午後とは、全体会議。しかも、アジア関係のセッションが1会場併設されていました。ですから、常時、6ヶ所で並列して何か発表が進行していましたので、とてもとても全体像などは描けません。ですから、プログラムをちょっと見て作ったものが次のものです。

環境効率と環境指標:企画セッション  8件+P1件
エコデザイン:企画セッション  8件+P3件
エコマテリアル:企画セッション  8件
システムデザイン: 4件
環境格付け:企画セッション  9件
LCAの新手法 5件
インベントリー分析法 5件
インベントリー感度信頼分析 3件
インパクト重みづけと意志決定 5件+P1件
インパクトダメージ関数:企画セッション 11件
インパクト分析その他手法: 3件
LCAの啓蒙など: 8件+P1件
リサイクルと廃棄のLCA: 8件
土木・建設へのLCAの応用: 5件+P3件
環境経済学: 9件
マテリアルフロー解析: 3件
地域計画への応用: 8件
農業へのLCA応用: 10件+P2件
食品へのLCA応用: 2件
紙と包装材料へのLCAの応用: 7件+P3件
材料と物質へのLCAの適用:4件+P3件
セメントへの応用: 4件
交通と通信へのLCAの応用: 7件
自動車へのLCAの応用: 4件
電機製品へのLCAの応用: 10件+P3件
電力への応用: 0件+P3件
ソフトウェアツールとデータベース: 0件+P13件

Pはポスターセッションを示しています。

B君:まあ、日本の企業のLCAへの取り組みの総集編とでも言うべき学会がこれだから、いろいろと数は出ている。

A君:しかし、プレナリーセッションの村田さんの講演のように、専門家と利用者とのLCAに対する温度差があるという指摘もあって、企業からの参加者は、なぜかかなりその意見に同意していたように思いますが。

C先生:その話は、パネルディスカッションの準備もあって、村田さんと議論をすることができた。たしかに温度差があることは事実なのだが、村田さんの真意は、別に専門家がLCAをどんどんと勝手に高度化しているということに対する文句ではないようだった。むしろ、ヨーロッパでは、LCAは専門コンサルタントにかなり多額の費用を払ってやってもらうものだ。しかし、日本の実状はどうかと言えば、ISO14000を取得する過程で、LCAというものもあるらしいと経営者が知って、これをやらないとISO14000が取れないと勘違いし、同時に、リストラの一つとして、LCA担当部署を作るだけは作るが、経営者としては、LCAが何ができるか分かっていないもので、そのLCA担当部署は、「何をやるか何をすべきか」について自分で決めなければならない。ところがやってみると、LCA作業というものは、企業秘密に関わるデータを採取するような仕事なので、他の部署から協力が得られない。しかも、経営陣にとってみれば、そんなデータを外部に発表することは、企業利益に反する行為に見えるから、LCA担当部署は動くに動けない。だから、無難なデータしか取れないし、発表もできないという状況に陥りがちである。そのような困難な状況を潜り抜けてこの会議で発表しているのだから、その点を配慮して発表データなどを見て欲しいということのように思えた。

A君:LCAについても、トップ企業はそうでもないのですが、なぜLCAをやるかについて、経営陣までが理解しているということは希なのでしょう。

B君:日本は長年の護送船団方式できているから、すべての企業が横並びでLCAをやることになるのだが、同時に、企業情報の外部への公開などに慣れている企業はまだまだ少数だから、そんなことになる。大体、鉄のLCAデータがまだ正式に出てこないことが、現在の日本の状況を象徴しているように思う。

C先生:しかし、個人的見解では、すでに状況は変わった。日本という国も2000年に循環型社会に変えることを基本法を作って宣言した。同時に、グリーン調達法などが成立して、国は強制的に、地方自治体も努力目標としてグリーン調達を行わなければならない。となると、LCAのような手法を積極的に採用して、自社の製品のグリーン度を主張できる企業と、そんな意識の無い企業とでは大きな差ができるものと思われる。だから、これからは、すべて放置すれば良い。やるところはやって存続し、やらないところはやらないで自滅するだけだ。こんな考え方なんだが、村田さんに言わせれば超過激な意見ということだった。今、LCAをやるように働きかけを止めたら、かなりの企業が止めるだろうとの見解だった。

A君:そうも言えると思いますね。なぜならば、LCA担当部署を作ったものの、リストラが本当に進んでいる企業では、このところ業績が上向きはじめて、またちょっと人不足になるものだから、LCA担当部署そのものが整理されてしまう可能性が有りますね。

B君:そんなもんだろう。

C先生:今回、パネルディスカッションを担当して、最終日の午後に、次回のエコバランス国際会議の性格について議論をしたが、大体、次のような結論になった。
 まず、エコバランスという言葉の意味だが、欧米ではフランスのエコビランというLCAのコンサルタント会社があるが、そのためもあって、エコバランス=LCAという考え方が普通だ。しかし、日本では、LCAとエコバランスは必ずしも同じ意味ではない。環境問題の解決には、様々なトレードオフを解決する必要がある。環境負荷の実態を定量的に解析して、もっともバランスのよい解決策を提示することがエコバランスの思想であって、LCAはそのなかの一つのツールに過ぎない。他にも、様々な方法論があって、この目的に有ったツールを次々と作りだし、環境問題の解決に向けてどのように応用ができるか、これを議論する場が、エコバランス国際会議である。

A君:それはそれとして、パネリストの皆さんが、「LCAは科学ではない。ツールだ」。ということに同意したのは、驚きました。

B君:それは当然だ。LCAが科学的なフロンティアであることは無い。数学的な枠組みについてはすべて分かっている。もしもLCAがフロンティアを持っているとしたら、それは社会との接点だけだろう。

C先生:ということで、このエコバランス国際会議では、様々なツールを作り、あらゆる場面での応用を考えていくということが次回の目的になりそうだ。そのため、例えば、より社会的側面である環境報告書とか環境会計とか環境格付けとかいったことが次回にはもっと盛んに議論されるようになるだろう。

A君:そろそろ外国でやるという案は出ないのですか。

C先生:出ない訳ではないが、できないのではないか、ということが結論だった。なぜならば、日本という国が、LCAの応用では量的には世界的に突出しているのだ。先ほど説明したように、欧米では、LCAはコンサルタントの仕事だが、日本では社内のLCA担当部署の仕事なのだ。だから、当然のことながら、多くの実例がでてくることになる。今回も、外国からの参加者は100名以上(??)いたようだが、LCAの応用例の多くは、日本からのものだ。だからもしも外国でやったとして、日本人が20名程度の参加数だとすると、かなり寂しいものになる可能性が高い。欧米のLCA関係の研究発表会は様々なものがあるが、どれもこれも理念的あるいは方法論、特に、インパクト分析の方法論に関する議論が多くて、応用という部分は非常に限られている。

A君:エコバランスの意味は分かったのですが、様々なツールを作るにしても、何を究極の目的にしたのですか。

B君:そんなことは決まっている。持続可能性こそが、先進国を中心とした社会の目標なのだ。途上国も勿論そうだが、途上国だと、持続可能な発展が目標となって、経済的な発展に重点が移るように見えるが。

C先生:先進国でも、米国のようなところでは、「持続可能性」には、環境的側面、経済的側面、社会的側面と3つの要素があって、むしろ、環境的側面は余り議論されないという傾向のようだ。

A君:経済的側面というと、失業率を低く保つとか、社会的側面だと犯罪率を低くするとか言ったことが持続可能性という言葉で語られるようですね。

B君:環境的側面で持続可能性を語ると、いわゆる「アメリカンドリーム」、すなわち、大きな家に住んで、大きな車にのって、エネルギーを大量消費して快適な生活を、ということが持続可能性と抵触するようになって、そんな議論をするのがイヤなのだろう。

C先生:米国は確かにそうだ。環境に関心があるという人も、自然保護にお金を寄付していますからね、という感じのような人が多い。省資源・省エネルギーが環境問題だと思っている人は少ない。

A君:となると、持続可能性を目的にエコバランスを議論するというときの持続可能性の定義が問題になりませんか。

B君:当然のことながら、まずは、環境的側面だろう。

C先生:まあそういうことになるだろう。社会的側面、経済的側面は、視点の中心をあくまでもを環境的側面に置いて、環境視点からの影響を見るといった程度の取り扱いになるだろう。いずれにしても、またまた2年後、2002年にまたもやつくば市で開催予定。

A君:そこでの発表を目標にして、何か研究目標を考えるのも良いですね。

B君:またまた欧米人とカラオケをやるべく、ノリの良い英語の歌を一曲マスターするか。

C先生:今年のカラオケでは、スウェーデン人のお姉さま方によるABAの圧勝だったみたいだ。そう松野さんが言っていた。彼がこの部門のリーダーだから。ABAに対抗するならB君は和太鼓でもやった方が良くないか。今日はここまで。