________________


日経ECO21の水道水の記事  05.31.2000






最近、余り日経ECO21の記事についてコメントしていなかったが、最新号で、水道水特集をやっているのを見て、「ミネラルウォータと水道水」どちらを選択しますか、という市民向け質問を作っているところだったので、少々記事にしてみたい。

C先生:日経ECO21の記事について議論するのも久しぶりだ。なんとなく、ECO21も模索中という感じが強い。同じ日経から(出版社は違うが)日経エコロジーという雑誌も出ているが、こちらの方は、「企業の環境部に所属する人を対象」というように、スタンスがはっきりしているのでやりやすいのだろう。一般のエコ市民というのは、一部に危ういグループがいる。環境石鹸派とか、塩ビNo!派とか、自分の健康増進だけのエコ派などなど。だから、なんとなくECO21は中途半端になりがちなんだろうか。

A君:しかし、今回の水道水の特集は結構読めますね。

B君:とは言え、ミネラルウォータをばっさり否定しないと、完全なエコ派とは言えない。

C先生:情報量が多いこと、水道水が頑張っているところを記述しているところ、これは評価できる。今の水質基準で十分かどうか、これは、異論のあるところでもあるが、実質上それほどの問題が起きるとも思えない。最近、水道水を飲まない人々が増えてきているが、この傾向が続くのならば、それを前提とした水質基準で良いことになってくる。

A君:それに、発ガン物質として、トリハロメタンなどだけを取り上げていますが、これって本当の議論なんですか。

B君:いや。中西準子先生の岩波新書「水の環境戦略」によれば、金町浄水場からの水をモデルとして採用し、これを多少としてリスク評価が行われている。難しい記述で分かりにくいが、トリハロメタンと発ガンはやはり相関があり、発ガン率は、10万人で1件ぐらい。しかし、ジクロロ酢酸の発ガンポテンシーから計算した値は、10万人で6件ぐらいと高い。だから、トリハロメタンだけを問題にしても駄目なんだが、トリハロメタンが一つの指標にはなるということだろう。
 実は、ヒ素の基準は現在10ppb、すなわち、0.01mg/リットルだが、この濃度でも、発ガン率は、10万人で60件と段違いに高い。これは、ヒ素は天然起源だし、その処理ができない。突出しているリスクなんだが、やむをえない。

A君:そんなことを言うと、ますますミネラルウォータ派が増えますよね。

C先生:その話は後にして、今回の日経ECO21の記事では、浄水場別に水の品質や味を評価しているが、安全性がすべて「?」になっている。何を考えているのだろうか。この「?」を付けるココロは何か? 日経ECO21も、妙な市民活動と付き合うと、リスクゼロ派になってしまうのだろうか。何をもってして、「?」などという無責任な評価を下したのだろう。

B君:完全なる想像だが、ミネラルウォータの安全性・環境適合性が×〜△なのは分かっている。そこで、ミネラルウォータの手前、水道水を○にできなかったのでは無いだろうか。水道水を飲めというと、ミネラルウォータ業界が怒るから。

A君:たしかにミネラルウォータの水質基準についても述べていますね。

C先生:やはりミネラルウォータとの比較をやらないと駄目な進行状況になったようだ。

A君:それでは、水質基準の比較をしてみましょう。

◎、△、×は水道水を飲む立場からみた判断。

△水道水とミネラルウォータで基準が同水準である項目
 一般細菌、大腸菌群、カドミウム、水銀、鉛、セレン、6価クロム、シアン、硝酸性窒素、など

◎水道水だけあってミネラルウォータにない項目
 トリハロメタンなどの有機物、農薬類、その他多数。

×ミネラルウォータにだけ基準があって、水道水に無い項目
 バリウム、硫化物

×水道水の方が基準が緩い項目
 日経ECO21の表では、カドミウムがそうなっているが、これは誤植。多分なし。

◎ミネラルウォータの方が基準が緩い項目
 ヒ素(0.05mg/リットル) cf.水道水(0.01mg/リットル)
 フッ素(2mg/リットル)  cf.水道水(0.8mg/リットル)
 ホウ素(~5mg/リットル) cf.水道水(1mg/リットル)
 亜鉛(5mg/リットル) cf.水道水(1.0mg/リットル)
 マンガン(2mg/リットル) cf.水道水(0.05mg/リットル)

大体こんなもんですね。

B君:普通、ミネラルウォータの方が、基準が厳しいと思っている人が多いだろうが、実際には、全く逆なんだ。それも当然で、ミネラルウォータは飲料水ではなくて、嗜好品という取扱いだ。これですべての水をまかなうこと、すなわち、ミネラルウォータでお茶・コーヒーを入れる、ミネラルウォータで味噌汁を作る、ミネラルウォータで米を炊く、などという馬鹿なことが行われないという原則に則っている。ときどき飲むなら、若干毒性が有っても良いか、という基準なんだ。

C先生:水道水でも、発ガンリスクが突出しているヒ素の基準が、水道水の5倍ということは、10万人で300件という発ガン率になってしまう。これは、問題だ。日本ミネラルウォータ協会は、やはりすべての銘柄について、ヒ素、フッ素、ホウ素など、水道水よりも基準が緩い項目については、成分表示を自主的に行うように、各メーカーに義務付けるべきではないか。

A君:なんで、皆さんミネラルウォータになってしまったのでしょうかね。

B君:それは、「TVなどで行われる水道水は危険」キャンペーンのためなのでは。

C先生:ミネラルウォータを、趣味の飲み物として飲むことは、別に悪くは無いし、結構おしゃれだとは思う。特に、ガス入りなどは良い。フランス製などの殺菌もしていないミネラルウォータを飲むのは、体内に細菌を適当に入れるのにも良いかもしれない。しかし、それを知らないで飲んでいたら、単なる無知だな。

B君:ミネラルウォータは味が良いから、と通ぶる人は多いだろう。

A君:それもちょっと調べましたら、日本テレビの「あるある大事典」でテストをしたようですね。
 水道水を汲み置きして塩素を飛ばす、これだけで、ミネラルウォータ28:水道水3。これを冷蔵庫に入れて、冷やしたら、ミネラルウォータ20:水道水11、と温度だけで評価が変わる。
 次に、5分間煮沸したら、ミネラルウォータ16:水道水15、さらに、備長炭で有機物などを吸着して、レモン汁を2、3滴、これで、ミネラルウォータ8:水道水23と大逆転。

C先生:ミネラルウォータの環境負荷をざっと計算してみようか。もっとも計算するまでも無いことなんだ。だからというか、実はまだ完成していないので、ここでは、詳しいことはスキップ。ミネラルウォータは、地中から汲み出して、85℃で30分加熱殺菌、そして、ペットボトルに詰めて、東京へトラックで運ぶ。水道水は、浄水としての供給に使われている電力だけを考える。それではあまりということなら、沸騰させるというのを入れても良いが。
 結果は、まだ完全なものができていないのだが、当然のことながら、二酸化炭素だけでも5倍から100倍。固形廃棄物10倍程度ととんでもない結果。負荷のもっとも大きいステージは、予想通り、ペットボトルの製造プロセス。だから、リターナブルのガラス瓶や紙容器にでも入れれば、トータルの環境負荷は多少下がるかもしれない。

B君:値段にしたって、水道水そのままと比較して、1000倍も高い。

A君:ミネラルウォータを日本で飲む意味は、となると何ですかね。環境負荷は格段に大きい、価格は論外に高い、安全性だって良く分からないが危険である可能性も高い。味ですか。味は、先程の議論で、まあ、水道水でも健闘する状況もある。

C先生:さて、ミネラルウォータを飲んでいる皆様。なぜですか? お知らせください。予想回答としては、水筒代わりとして便利だから。ファッショナブルだから。なんとなく。
 話題がいきなり変わって、日経ECO21の後の方にあるモノWatching。せめて、詐欺まがいのものだけは掲載を止めて欲しい。p125のエコパイプ。「希土類金属元素の働きでガス使用量を低減」だそうだ。しかも寿命が2500時間だそうで。
 ECO21のこの項目の筆者、多分外注先のフリーライターだろうと思うが、科学リテラシーのレベルを疑う。環境を語るには、最小限の科学的知識が必須である。