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日経ECO21有機・無農薬野菜と香港の毒菜
      05.08.98







これも日経ECO21(以下ECO21と記述)にも有機・無農薬野菜記事がある。そこへ香港から毒菜情報が入りました。これを機会に、環境と有機・無農薬野菜の関係をどのように考えるかべきか、もう一度議論をやりなおそう。


C先生:環境雑誌には今や必ずあるとも言える有機・無農薬野菜の記事だ。日経ECO21にもあった。そこに、香港から毒菜情報が入った。この当たりをもう一度整理しよう。

B君:少々一般論から始めます。なぜ、有機・無農薬野菜が必要だとされているか、なのですが、いくつかのポイント・説があるように思います。まず、有機栽培と無農薬栽培とは本来分けて考えるべきです。となると、
(1)残留農薬の消費者への悪影響説
(2)農薬使用による環境破壊説
(3)農薬による農業従事者への悪影響説
(4)化学肥料使用の野菜による人体悪影響説
(5)化学肥料による土壌破壊・環境悪影響説

 まず、(1)残留農薬の消費者への悪影響説ですが、ECO21でも住民は農薬によるアレルギ−発症を気にしているとの記述が有りましたが、大体、この手のものです。宮田先生の本でも、ダイオキシンがアレルギーとの関連があるのでは、との推測が書かれていました。これに水道水中の塩素とアレルギーとの話しを加えて、このあたりはなぜかマスコミでは良く叩かれるのですが、実際のところは推測の域を出ていない、と思います。むしろ「アレルギーは、現代人が細菌や寄生虫との共生を止めたため」とする、藤田紘一郎先生(東京医科歯科大)説の方には根拠があるように思えますね。
 5月8日付けの朝日新聞の朝刊にも、浄水器で詐欺というものが出てましたが、浄水器でアトピーが直るなどといって、原価3〜4万円ぐらいもののを7倍以上で売ったとのこと。こうなると、マスコミにも責任があるのでは、と思います。
 ただし、日本ではそんな状況なのですが、外国では相当に違うようです。香港在住の山崎さんからの情報では、香港ではしばしば「毒菜」と呼ばれる農薬に汚染された野菜による中毒事件が起きるとのこと。原因は、野菜に使用することが禁止されている農薬を使用した野菜が中国から輸入されること、さらに、中華料理では、火を通せば、すべての毒・虫などは消えるという発想があって、野菜を洗わないこと、この2点です。以下に記事の引用を示します。


山崎倫代さん(香港在住)からの情報

第1報
香港では毎年のように「毒菜(ドクチョイ)」といって残留農薬のついた野菜で食中毒になるケースが後を絶ちません。その多くは、「強火で加熱調理すれば細菌も虫もすべて消える」と思い込んでいる香港人が野菜をよく洗わなかったために起きているようですが、残留基準のわからない中国産の野菜に不安を抱く日本人は多いです。日系デパートで日本産の野菜を求めたり、高いお金を払って日本から有機栽培の野菜を空輸してもらう会に入会したりしていますが、このホームページで無農薬や化学肥料や有機栽培についてそのメリットデメリットを比較して読んでみましたら、こうして有機栽培野菜にこだわっているのも、所詮ひとつの贅沢、宗教みたいなものかー、と納得することができました。

第2報
 添付の記事は香港ポストという、在住邦人向けの新聞ですが、ちょうど4月10日
号に毒菜のことがすこし載りましたのでご参考までにお送りします。

香港ポストのコピーに飛ぶ(100kB以上ですから、覚悟して下さい)

この記事では農薬の名前がわかりませんでしたので、編集部に問い合わせたところ、地元の華字紙には農薬は「甲□■(”□”はにくづきに安、”■”は石へんに「隣」のつくり部分)」と書かれているそうで、編集部の方が「メチルアミンりん?」と書いて下さいました。

さらに政府衛生署に問い合わせの電話をしましたら、担当の方からつぎのような説明をいただきました。中毒を起こした農薬は「methamidiothos」で、通常中国本土では樹木やコメに使われる殺虫剤。野菜への使用は本土でも禁止されているが、一部の農民が勝手に、違法に野菜に使ったものである。香港の毒菜患者はこれによって嘔吐、めまい、下痢の症状が出た。ということでした。



B君:残留農薬があっても、台所用洗剤で洗えばまずまず問題はないのです。日本の場合にも、プロは野菜などを洗わないことが多いですから、外食や既製品の購入時には問題があるかも知れません。例えば、ショートケーキのいちごは洗ってません(多分?)。日本でも、中華の野菜いためは多くの場合洗ってません(これも多分)。
 家庭で残留農薬のない野菜を買わなければならない理由はほとんどないと思います。栄養価が違うことはないでしょう。家庭の主婦がしっかり野菜を洗って防衛すれば大丈夫。まあ、日本の今の状況だと、洗うことによって野菜本来の栄養化が失われるといった「贅沢論調」の反論や、洗剤そのものが環境破壊という「思い込み論調」の反論が来るかも知れないですが。しかし、外食を少なくすることは重要かも知れませんね。

A君:それでは選手交代して、(2)農薬使用の環境破壊説と(3)農薬による農業従事者への悪影響説を一気にやります。農薬が環境破壊の原因であったのは、これは歴史的事実です。DDT、BHCなどの塩素系農薬が未だに分解されにくいために、一部地域では環境ホルモンなどとして作用していると考えられます。現代の農薬は、かなり「まし」にはなったと思いますが、一部の生物ホルモン系やフェロモン系の農薬を除けば、生物毒性があるから農薬なのだ、ということは変わっていないでしょう。ですから、過剰に使用すれば残留して環境破壊になる可能性が高いでしょう。害虫駆除剤は、当然、その害虫を殺しますから、それを環境破壊だと言えば明らかに環境破壊です。(3)の農業従事者への影響は、消費者に対する影響などをはるかに超えて重大問題でしょう。十分な知識と事前防御が必要でしょう。当たり前のことです。

C先生:農薬の消費者への影響が、香港などでは出ている。日本の状況が同じか、と言えば、まあ違うと言えるだろう。しかし、若干気になるのは、日本でも農薬は単位面積あたりの適正使用量よりも売れすぎているらしいことだ。過剰に使用されている可能性が皆無ではない。しかし、健康影響に関して言えば、消費者が余り気にするような状況ではなく、自宅で十分に野菜・穀物を洗ってから使えば、問題はでないだろう。
 むしろ、無農薬で害虫に全くやられない野菜をつくることは、かなり難しいだろう。有機栽培をすれば害虫に食べられない、という主張もあるが、これが本当であれば妙なことだ。なぜなら、害虫も食べないようなまずい野菜を消費者に食べろといっているようなものだからだ。消費者が無農薬野菜で虫食い野菜を許容すれば、それは農家にとって自分たちの健康のために良いことだから、自然と無農薬に向かうことだろう。しかし、無農薬で全く虫食いのない野菜を消費者が求めれば、それは農家に過重な労働を課すことになるだろう。こうなれば、「消費者の我が儘、あるいは、贅沢」と言うべき話だろうな。

B君:(4)化学肥料の人体悪影響説にいきます。化学肥料そのものは無害です。化学肥料だけで作った作物であっても、土壌がしっかりしている間は、OKのようです。微量ミネラルのバランスなどが崩れない間はということです。ずーっ何10年も化学肥料だけですと、多少心配です。ときには、有機肥料によるバランスの回復が行われないと生育する野菜の栄養分が偏りがでるでしょう。でも、その程度だと思います。要するに、人間に対しても同じですが、穀物・野菜の育成にもバランスの良い栄養が必要ということだけでしょう。
 (5)化学肥料の環境悪影響説は、最大のところが、窒素肥料の流出による河川や湖沼の富栄養化でしょう。それに、上でも述べたことですが、土壌のバランスの低下でしょう。富栄養化については、有機肥料でも同じという考え方が主流です。むしろ、植物が要求してくる時期に、すなわち、春から夏の間に化学肥料を適正量より少なめに与えれば、必要とする窒素の大部分が植物に吸収され、外部に流出する窒素分は減らせるでしょう。これまた、何遍も本Web−ページに出てくることなのですが、植物は有機肥料を吸収できないのです。有機肥料が土中の細菌によって分解されて、アンニモアや硝酸塩という化学肥料と同じ形になって、初めて吸収される訳です。すなわち有機肥料の方が吸収されるまでの準備に時間がかかりますから、秋になっても無機窒素分を出し続けると、植物には吸収されないで、余って河川などに流入する可能性が高いです。化学肥料環境悪影響説も、まあどうやら否定されるようです。

C先生:だからといっても、個人的な考えだが、有機栽培を全く意味がないとはしない。やはり、農業は工業とは違う。それに、有機栽培によって農作物が高く売れるのであれば、日本の農業の再興にとって重要な要素だからね。

B君:日本の食糧自給率が低すぎる。40%強ぐらいでは、まったく心配です。だから、農業をなんとか再興しなければということは、環境の専門家の多くはそう思っている。しかし、それが旧来の農業を単に復活させるということでは駄目ではないでしょうか。
 今の農業関係は、莫大な補助金に支えられた農業であって、また、農業就業人口に比べてたら、それを支える人口のバランスがおかしい。農協しかり、農学部しかし、地方公共団体の農業関係者、農水省すべて多すぎる。これを再構築しないと。

A君:この日本における自給率向上の問題の他にも、世界的な食糧供給バランスの問題があって、農業生産の効率を向上させないと世界的食糧不足がおきる。そのためには、化学肥料が必須である。こんな日本の農業の状況と、世界的な食糧の状況を知ってか知らずか、それらを無視して有機・無農薬野菜礼賛記事を書くことが、現在のマスコミの限界。

C先生:それは固いことばかり書いたら、雑誌が売れないからで、ある程度しょうがない。要するに、一般市民が環境情報を得るのが、マスコミ経由、商品広告経由が主であって、他のルートとしては、講演会、単行書ぐらいしかないし、講演会は、やってみれば分かるが、現役のパリパリのサラリーマンは極少数しか来ない。要するに、他の方法で、なんとか環境情報を一般社会に伝達する方法が必要なのだ。本Webページも、そんな思いでやっているのだが。もっと効率的な市民への環境情報伝達法の研究が必要だね。まあ、頭と体をもっと使って行こう。