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久米さんのダイオキシン報道で風評被害  02.06.98





 またまたニュースステーションのダイオキシン報道がやってくれました。これまでも、ニュースステーションの報道態度には不満を表明してきましたが、今回もどうも同じ轍を踏んだようです。
 それはいつも「告発だけで終わり、解決の提案がないこと」。久米さんがやや額に皺を寄せて、「JA所沢の態度は信じられません」といったため、何が起きたのか。結局のところ、風評被害がでて、被害者はもっとも弱い所沢の農家、あるいは、埼玉県全体の農家になっただけで、解決に向かっての進展は何一つ起きなかった。
 事実関係は現時点で完全には把握しきれておりませんが、想像を交えて書きますと、次のようなものでしょう。
(1)JA所沢は、地元の野菜中のダイオキシンを測定依頼。結果を持っているにも関わらず、3年間(?)公表していない。これが市民団体の怒りを買っている。
(2)ニュースステーションは、民間研究機関に所沢の野菜のダイオキシン測定を依頼。その結果は、日本産の平均値の10倍以上だった。野菜は「ほうれん草」だった(?)
(3)2月1日:ニュースステーションで報道。松崎早苗氏(物質研)出演。
(4)スーパーの一部に、所沢あるいは埼玉産の野菜を仕入れない動きが始まり、風評被害状況が起きた。
(5)2月4日:ニュースステーションがこの事態をフォローする番組放映。自らの無罪を主張した。
(6)スカイラークチェーン日経夕刊に全面広告:有機ほうれん草(農薬を一切使わず有機肥料)使用を広告。便乗としか思えない。
(7)朝日新聞では、所沢住民の声「水道水も飲めなくなって、ミネラルウォータで炊飯していますよ」報道。水道水とどう関係があるのかは不明。



登場人物選定編
C先生:これまで、無視しようと思っていたのだが、上記(6)、(7)がでてきたもので、とうとう黙っていられなくなった。さてどうしよう。様々な人々が登場するから、ロールプレイもどきでやるか。まず、登場者を選定しよう。

A君:まず、JA所沢、所沢市、埼玉県、厚生省、農水省というラインアップ。

B君:地域住民、一般市民、市民団体、特別市民団体、といった一連の登場人物もある。

A君:特別って何。

B君:後で分かる。

C先生:久米さんとニュースステーション関係者、新聞、その他のマスコミ。一部のスーパー、レストランチェーン。

A君:専門家:いつもの人々。松崎さんはマスコミでは新顔かも。ある世界では有名人だけど。

B君:焼却業者は? まあ入れようね。

C先生:そんなもんかな。

E秘書:市民・住民といっても、自分のことしか考えない軽い主婦などは別分類にすべきでしょ。

C先生:はいはい。我々4名はどこに入れるのだろうね。



自己主張編
C先生:それでは、こんな風に進めよう。登場者の発言回数は1回限り。それを誰かがロールプレイ的に発言して、残りの人が感想を述べる。
 では、JA所沢から行くか。これは誰。

A君:私がJA所沢です。
 「ニュースステーションにしても、他のマスコミにしても、また住民団体にしても、われわれの立場というものを理解していない。確かに測定依頼はしました。値も出ました。だけど、それを出したらどうなるというのですか。公表値が高ければ野菜が売れなくなるし、低ければ信用されないし。県や国が基準値を出さないからこんなことになるだ。」

B君:確かにそんなところだろう。測定値を出さないJA所沢は、久米さんに「信じられません」と言われようと、自分の立場を維持したいという動機を自認すればするほど、「出さない」のが正解だろうね。

C先生:まあね。JA所沢的立場にはなりたくないね。
 後で有罪・無罪の判定をやりたい。ということは、ある種の裁判を仮定することになるが、被害者で原告は「所沢の農家」、他の人々は全員「被告」という裁判にする。

A君:その発想は危険ですよ。よく考えたら被害者「JA所沢」、他の人々は全員「被告」という裁判もあるから。

B君:一般市民感覚とすれば、被害者・原告は「市民」、加害者・被告がそれ以外の「全員」というところじゃないでしょうか。所沢の農家に関しても「そんな汚染野菜をつくって」、と加害者に分類する人が多いのでは。

C先生:一般市民が被害者かどうか。これがこの問題の最も根源的なところなのだ。市民感覚の一部には、市民は何も考えないで好きなことをしていても大丈夫なように政府などが努力する。それがこの世の中の契約で、そのために税金を払っていると主張したくなる部分はあるのだろう。しかし、今回、直接的に被害を受けたのはやはり農家だから、この枠組み、すなわち被害者・原告が「所沢農家」、加害者・被告「それ以外の全員」、でスタートしよう。いいね。次は所沢市と埼玉県。

B君:私が所沢市と埼玉県です。
 「今回のダイオキシン騒ぎは誠に遺憾です。JA所沢がデータを出すと私は考えておりました。しかし国が基準値を決めるまでは、いかなるデータでも出すことによるリアクションが良い方向にはならないということを認識していただきたい。(何を主張しているのか良くわからないが、要するに我々は悪くないのです。)」

A君:焼却場を認可したのは誰なんだ。

C先生:私が焼却場経営者です。
 「われわれは県の認可を得て業務を行っているのであって、犯罪者扱いをされるのは心外だ。焼却しなかったら、この世の中ゴミだらけになるだ。焼却の受入をいっせいにやめてみよか。それでもいいんだな。」

B君:県としても、焼却場の申請がでたら認可せざるを得ない状況なのだろうね。やはり国が基準値なり規制値を決める必要があるだろう。

C先生:私は厚生・農水です。
 「現在の状況は、一般市民の方々に健康被害がでるような状況ではないと考えます。ほうれん草にしても、毎日同じものを召しあがる訳ではないですから。所沢の農家が食料を自給していれば、問題が発生する可能性が若干ありますが。しかし、数10年継続して食べなければまず大丈夫でしょう。」

A君:私も国の役人です。ただし匿名です。役所名ですか、ご想像にお任せします。
 「なんでも国が決めれば良いと言われても、実際難しいんだよね。ダイオキシンに関しては、一応、新しい基準値が決まったしと思ったら、WHOがまた基準を厳しくしたから、また変えなければならないとすると思うとゾッとするだけだ。WHOって国際機関だから正しいと皆は思っているだろうが、あそこだって、基準値を厳しくすることによって、自らの影響力を維持しようと考えているように思えてしょうがない。それに、食品に基準値を決めたところで、そんなに根拠って無いんだよ。個々の製品についてばらつきが大きいし、すべて検査してから食べる訳にはいかないし。農地に対して基準値を設けるという考え方をドイツなどが取っているというのが、松崎さんの主張だろうが、それだって、どんな作物を作るかで全然違う。ドイツが環境先進国だと皆言うけど、あの国、本当のところはどっか変だよ。」

B君:今回のダイオキシン濃度が本当に通常の野菜の10倍だとして、確かに、それを毎日食べている農家以外に被害がでるとは考えにくい。本当に。
 それにしても、ダイオキシンが本当に猛烈な急性毒物かということに関しては、少なくとも一部専門家はだんだん疑いの目をもって見るようになっていませんか。

C先生:セベソ事件とその後の話を聞けば聞くほど、なんか妙だという感じがするね。ただ、ある種の生物については毒物であることは間違い無いから、出すべきものでは無いのだろう。人間だけが生存できれば良いというものでは無いから。発ガンのように、長い目で見なければならないものは、因果関係が分かりにくい。それだけに慎重にということだと思おう。マスコミが決め付けているように、本当にダイオキシンがそんなに怖いかどうか、これは、10年後にはわかっているだろう。

E秘書:私は地域住民です。
 「われわれは被害者です。絶対に加害者では有りません。皆さんの出すゴミが加害者なのです。もっともあそこで燃やされているのは産業廃棄物ですが。」

A君:私は一般市民です。
 「市民の健康を考えないJA所沢は問題外です。命をなんだと思っているですかね。ただ一つしかないんですよ。取り返しがつかないものなんですよ。食料がダイオキシンみたいな猛毒を含むようになったこと、それだけで現在の行政全体が皆で責任を取るべきです。我々の生活は100%、いや100%以上安全でなければいけないのですから。」

E秘書:私はニュースステーションからの情報を信じる主婦です。
 「あの久米さんが”JA所沢は信じられない”といってましたよね。だれが所沢の野菜などを買うものですか。あの久米さんが言ったんですよ。埼玉県全体だって怪しいものだし、所沢って東京の隣ですよね。JA東京グループの作物もお断りですね。スーパーの店を変えようかしら。今行っているところは、埼玉県の野菜を仕入れないと言わないから。」

C先生:私はスーパーXXXです。埼玉県の野菜を仕入れません。
 「我々の使命は、お客様の安全をいかに確保するかであって、所沢の農家を保護することではありません。当然の行為です。埼玉県というイメージが悪くなってますから、当然なんです。お客様こちらの野菜は安全ですよ。」

E秘書:私は軽い主婦で〜す。
 「ニュースステーションなんて見ません。若乃花の離婚は興味ありますけどお。ダイオキシンですか、ほうれん草なんて買いません。野菜はパック詰め野菜しか買わないもん。それに今晩はファミレスで食事ですから。有機ワインで乾杯!」

A君:私はレストランチェーンの経営者です。
 「われわれの経営スタンスは、消費者のニーズにきめ細かく対応することでして、今やはり健康指向の方々が多いですから、苦労して農家を探しまして契約して、皆様に安心していただける有機野菜をご提供申し上げております。」

E秘書:私は食品に大変気を使っている正しい主婦です。
 「最良の食材を選ぶことが正しい主婦の義務。ですから、あたくしどもでは、すべての水はおフランス製ミネラルウォータですのよ。」

A君:私はストップザダイオキシンXXXの会です。
 「ダイオキシンは我々の健康を損なう最大の問題ですから、日夜その排出量削減に努力しています。今回のJA所沢のような態度では、いつまでたってもダイオキシンの排出量は減りません。情報公開、これが原則です。」

B君:私は、特別な市民団体です。一応、環境市民団体の形式をとってます。
 「ダイオキシン問題や環境ホルモン問題をなんとか良い方向に使えないだろうかと考えているのですよ。環境問題は重要ですからね。やはり国産の無農薬有機野菜が健康の源ですよ。われわれが通信販売しているほうれん草、ニンジンなら安心です。いかがですか。」

E秘書:私はダイオキシンの専門家です。
 「最近、ダイオキシンの話題が減ってきて困っていたところでした。米国などでは、だいぶ関心が無くなってきていて、一発話題が出ればと思っていたところです。」

C先生:以上の人々に対して、何か感想は?

A君:あたりまえすぎて感想なし。

B君:・・・・・

C先生:それでは真打登場。久米さん。

B君:私が久米です。
 「テレビ報道の使命は、皆さんが知りたがっていることを、すなわち真実をお知らせすることです。今回、JA所沢のような情報隠しは、困った体質です。これを明らかにすることがニュースステーションの義務です。」

A君:私はニュースステーションの製作担当者です。
 「別にダイオキシンでなくても良かったんですが。ダイオキシン学者には便利な人がいて、われわれにとっては好都合なんですよ。とにかく、”番組は話題性”。これがあれば、無敵なんですよ。この世界では。これだけ新聞種になったから、大成功だ。ばんざい。」



解決方向の提示
C先生:裁判に行く前に、どのような解決策があるかを示し、それに対してそれぞれの人々の意見がどのような位置付けになるかを考え、それを裁判の判断根拠にしてみよう。
 まず、ダイオキシン問題の根源は、ゴミの発生量が多すぎること、それを処分する際に減量する必要があり、焼却法を採用せざるを得ないことがある。良く言われる大量生産・大量消費・大量廃棄が根源的な原因だ。その解決には、なるべく生産量を減少させつつも、経済的な価値を落とさないといった発想が必要。具体的には、廃棄段階まで考えた製品を作り、かつリサイクルを実施すること。さらに、焼却時におけるエネルギー回収を義務化すること、埋め立てを回避し焼却灰の再利用も義務化すること、などといった対策が必須だと考える。これは、本Webページにおいても毎度言っていることだね。全員がこの方向に向かわないといけない。



裁判編
C先生:先程言ったように、今回は裁判の形式で、被害者・原告は「所沢の農家」。被告は「残り全員」。

A君:JA所沢、自治体、政府関係は、やはり有罪では。意味はいろいろと違うみたいですが。国としては、大きな解決の枠組みを示せないので有罪。

B君:やはり全員有罪では。我々も含めて。
 もちろん久米さんも有罪。テレビの放送はスポンサーというものがいるから、ペットボトルを使うななどと決して言えない。要するに今回の問題についても、根源的な解決策はもともと示せないのがテレビ(除くNHK)なのだ。結局、告発だけで、それによる風評被害発生という構図から抜けられない。それが分かっていながら、告発だけをやってそれで「善し」としている久米さんは有罪。あるいは重罪。
 A君も有罪。電機メーカーは資源過剰消費という大罪を犯しているぞ。

A君:C先生だって有罪だ。改善シナリオを示して悦に入っているだけだ。もっとどこかを動かすべきだ。

C先生:B君も当然有罪だ。まあ罪のなすりあいはみっともないから、最後のまとめに行こう。
 B君が久米さんを有罪としたように、誰のどこがどのぐらい悪いか、主張をしてもらおう。その逆に自分の責務に対して忠実だったというプラス面あるいは減刑材料の主張も同時に。これもロールプレイでいく。そして、読者の皆様に量刑の最終判定をいただきましょう。皆様が裁判官で、かつ、被告です。それぞれの人々について、量刑はどのぐらいでしょうか。反則金(過料、科料、罰金)1000円から死刑まで?

A君:JA所沢から。
 有罪:情報を隠すことは、現在の公共的団体の有るべき態度からは程遠い。全国のゴミ焼却場近くの農地のデータを、すべて開示すべきだと主張すれば良かったのだろう。有罪。
 減刑材料:焼却場ができたのはJA所沢のせいではない。

E秘書:焼却業者
 有罪:周辺農家が困ることを分かっているはずなので道徳上有罪。本当に適法に正しく処理をしていますか。そうでなければ有罪。
 減刑材料:適法内なら事業の自由はある。ゴミの減量に役に立っている。

B君:地方自治体。
 有罪:現在の法律の枠組みでは、ゴミ処理は地方自治体に相当の決定権があるから、その意味で有罪。焼却場を安易に増やしすぎたので有罪。焼却場の指導をもっとすべきだったので有罪。
 減刑材料:国の指導という枠組みにしばられているところはある。

C先生:国
 有罪:今後10年15年かかるかもしれないが、最終的に実現すべきゴミ処理の体系を示せないから有罪。食べ物の話は、どうも水銀マグロで懲りているらしい。だからといって黙っていたら、それは無責任だから有罪。
 減刑材料:ダイオキシンのように未確定要素が多いと大変。

B君:一般市民と一般的市民団体
 有罪:根源的原因が自分側にあることを理解していないから有罪。ダイオキシンがどのぐらいのリスクをもたらすものであるかを理解しないで、マスコミの扇動に乗るから有罪。ミネラルウォータなどに走れば、大量消費・大量廃棄の流れを拡大するだけで、ますます有罪。無関心を装えば、これは21世紀市民としての資格無しで、重罪。
 減刑材料:マスコミによる情報偏向を見破れる人は多くはない。

C先生:便乗業者と特別市民団体
 有罪:市民のためとかいいながら、結局差別化による自己利益だけを考えている。
 減刑材料:なし。

A君:マスコミ関係
 有罪:自らが発信できる主張には限界があることを認識せずに、事実の報道は常に正義だと思いこんでいるから有罪。視聴率ばかり考えていたら、重罪。民放テレビはスポンサーと直結していることを正直に告白しない限り、今後とも有罪となるケースが続発するだろう。
 減刑材料:なし。

B君:マスコミに便乗するダイオキシン専門家
 有罪:どこが本当の問題点なのか、原理原則論でマスコミを教育しないから有罪。自分が目立てば良いと考えているから有罪。
 減刑材料:とはいっても、最終的にテレビの番組の編集はできない。

C先生:久米さん
 有罪:報道に関して、自分の限界がどこにあるのか、放送で正直に言うべきだ。「告発だけしかできない、それが久米です」と。それをしないから有罪。
 減刑材料:なし。ただし、所沢産のほうれん草を放送中で食べれば考慮する。それをしなければ、横山ノック(能勢町のいちごを食べた)にも劣る。

AB&C:我々もなんと言い訳をしても有罪です。