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ディーゼル車はNOか      10.17.99
  細部の詰めがまだ甘いので暫定版




 東京都の石原知事は、東京にはディーゼル車は似合わない、ということで、ディーゼルの追放を始めることになった。ディーゼルが、NOxの75%とPM(粒子状物質)の100%に対して責任があることは、様々な人によって指摘されている。黒煙を吹きかけられたときなど、「ディーゼルは絶対にNOだ」と思う部分がある一方で、燃費が良い、二酸化炭素の放出量が少ない、といったメリットもあるのも事実。問題がどこにあるのか、ディーゼル車は本当にNOなのか、その議論を行う。この記事も、例の臨界事故のお陰で、作成が大幅に遅れてしまった。

C先生:石原知事の思いきった政策が本当になると、東京都におけるディーゼル車は、少なくとも肩身が狭くなるだろう。将来、税金も高くなる可能性があるだろう。さて、ディーゼルのどの部分がNOなのか。その指摘から行こうか。

A君:なんといっても、あの黒煙。それに余り実感は無いが、NOxの排出が多いこと。

B君:音と振動。ガラガラ言ってうるさい。ブルブル揺れる。

A君:軽油が安いことで選択されているディーゼルのRV車。

B君:違法な灯油などが燃料に利用できること。

A君:えーと、これしか無いのだろうか。

B君:うーん。意外と少ないものだ。

C先生:どうも問題は、「排気、騒音などの環境問題」と、「経済的な優遇策が妥当か」、という2種類だろうか。
 さて、それではディーゼル車のメリットは何?

A君:それは、燃費が良いこと。二酸化炭素排出量が多少少ないこと。燃費は、燃料の発熱量が多いから当然という部分と、効率が高いことによる部分が混在しているのだが。

B君:ヨーロッパでディーゼル乗用車の人気が有る程度ある理由は、航続距離が長いことにメリットを見出しているように思う。燃料価格がガソリンと変わらないので、経済的には日本ほどのメリットは無いから。

A君:将来、なたね油や他のバイオ系の油を使うとなると、ディーゼルになる。いろいろな燃料が使えること。

B君:当然ながら、経済性。燃料が安いことだ。

C先生:経済性は、もっぱら税制の差だ。ガソリンと軽油の値段だが、製造原価を考えて価格差をつけるのは難しい。小売価格は、そのときの需要・供給バランスによって決まるが、一方で、石油精製プロセスを少し変えれば、原油から取れるガソリンを増やすこともできるし、軽油を増やすこともできるから、まあなんとも言えないものだ。ということは、現在の石油精製業の実態から言えば、それぞれの製造能力は相当フレキシブルで、ガソリンと軽油の原価は同じと考えて良いと思う。

A君:すなわち、軽油の価格は、国策としてガソリンよりも低く抑えられている、と考えるべきだ、ということ。

B君:今回の話題とはずれるが、どうも灯油の価格もLPGの価格も国策で決まっているような気がする。

A君:本当かどうか分からないが、大型の車は、ディーゼル以外は性能的にも難しいという説があって、それが実は最大のメリットなのでは。

C先生:まあ、良く分からないが、確かに、日本では、超大型車はディーゼルだ。諸外国では、天然ガス車の大型バスなどもあるようだが。また、ガスタービンが良いという説も有る。
さて、まとめてみよう。

×: PM、NOx、騒音、不公平な経済性、燃料の不正
○: 二酸化炭素、燃費、経済性、大型車

それで、YESかNOかは何で決まるのだ。 

A君:まず、PM、NOxの環境負荷が大きいことによるリスクと、燃費・二酸化炭素といったベネフィットとのバランスが第一の要素ではないですか。

B君:大型車かどうか、これが決定的だから、まず、議論は分ける必要はある。

C先生:分かった。まず、大型車の場合を片付けよう。本当に大型車はディーゼル以外では難しいとしたら、それは、絶対的NOは無理になる。となれば、どのぐらいの環境対策が技術的に可能か、そして、どこまでの改善を求めることが行政的に可能か、ということになる。

A君:NOxとPMとはどうも相反するようで、PMを出さないように、要するに完全燃焼をしようとすると、NOxが増えるようです。NOxの触媒はまだ技術的に困難な点が残っているようです。そこで、PMを出さないような運転条件にしておいて、排気の一部を循環させるEGRでNOxを抑えるといった方法で対策を取るらしいですが、そのためには、腐食防止のため軽油中のイオウ分を減少させることが必要のようです。業務用のディーゼルエンジンは、150万キロぐらい走行するようです。乗用車より1桁上の長寿命が必須だから。

B君:PMだが、大型車の場合にはフィルターをつけるという方法があって、これはどうも完成の域に達しているように思う。しかし、それには車のコストが数10万円のレベルで上がってしまうので、運輸業界からの反対がある。

C先生:ディーゼルの排気ガス規制が今後どのように厳しくなるか、については、昨年の記事「ディーゼル車の排ガス規制強化」98.12.21をご参照下さい。表紙にリンクを張っておきます。どうも2007年にならないと、キレイという状態にはならないだろう、と言う感想。
 さて、運輸業界がこぞって反対していることだが、これも妙な話で、運輸業界としても、排気がキレイな車で業務をこなすことができれば、本当は自分たちにも、また、社会的にも良いと思うのだ。運輸業界が恐れているのは、「どうせ、顧客にコストの転嫁ができないから、そのコストを最後には自分たちで被ることになる」、なんだろう。となると、運輸業の顧客の態度が問題ということになる。さて顧客は誰なんだろう。有り得ないことかもしれないが、運輸業界が国に「早く厳しい規制を」、と要望して、かつ、「コストの適正な転嫁」を保証するような制度を作るよう要請するのが良いと思うが。
 こんな新車の話とは別に、古い車をどうするか、これが独立の問題としてある。

A君:そのあたりに東京都の活躍する余地があるのでは。古い車の排気を車検のときに厳しく測定して、排気ガスの汚染度が高いものは、その悪さに比例して保有税に差を付ける。そして、その税収の増加分を、新しい車への買い替えのインセンティブに使う、といった考え方ですが。

B君:良いかもしれない。合理的だ。それでは、軽油の価格、というよりは、軽油取引税がガソリン税より低くて良いのか、という議論はどうだ。

A君:これは、国策ですからね。なんとも言えない。別に高いから悪いということは言えないでしょう。

B君:ただし、ディーゼル乗用車が軽油を使うことは、国策の考慮外だ。歪んだ使い方だ。これは、税制を変えて、乗用車あるいは小型車の場合には、軽油取引税を高くするといった工夫が必要。

A君:それなら、天然ガスの乗用車は、燃料に消費税しか掛かっていないのは余りにも不公平だ。
 
B君:となると、タクシーのLPGだって優遇されすぎということになる。LPGを自家用車に使うというのは、「もっとずるい」ことになる。

C先生:話がいつの間にか、乗用車になっている。それでは、乗用車に行くか。勿論、RV車などを含む。
 それでは、排気ガスの規制の話から。これはガソリン車との比較が可能。

A君:まず、NOxですが、ガソリン車の方は、
現行では、        
0.25g/kmです。
2000年10月以降、  0.08g/kmになります

それに対して、ディーゼル乗用車のNOxは、
現行は、         0.4g/km、
2002年から、     0.28g/kmです。
 そして、PMですが、
現行は、         0.08g/km、
2002年から、     0.052g/kmです

これは結構な量ですよ。現行規制だと12km走ると1g。1gのPMは相当な量です。

B君:ちょっと、差が有りすぎるね。大体、乗用車の場合の環境規制が、ディーゼルとガソリンで違うというのがおかしい。ディーゼルは燃費がよい、別の言葉で言えば、二酸化炭素排出量が低いというのならば、二酸化炭素排出も規制すると同時に、CO2、NOx、PM、HC、COなどに対してある数式を決めて、総合排出指数というものを定義する。そして、ディーゼル、ガソリンの区別なく、これを適用するという考え方に改めるべきではないだろうか。

C先生:それが本来の姿だろうな。その総合排出指数をどのように決めるべきか、といった議論は、われわれが今やっているLCAにおける総合指数の決め方のような議論が有効だろう。
 さて、ディーゼル乗用車の将来はどうなると思う?

A君:最近、コモンレールディーゼルという新しい直接噴射型エンジンが開発されつつあって、これまでよりも数倍高圧で燃料が噴射できるもので、燃料が細かい霧になる。そのため、良く燃焼するので、PMが出にくいという話があります。もっとも、PMが細かくなっているだけだ、肺の深部に入るから却って有害だ、という反論もあるようですが。

B君:目に見えないぐらい細かければ、肺に留まらないで、また呼気と共に外にでるだろうよ。

A君:PMは、エンジンへの負荷が高くなると出ますから、一定負荷で運転することが可能になれば良いことになります。となると場合によっては、低燃費・まあまあ環境負荷の本命は、ディーゼル+ハイブリッドという可能性もあります。

B君:二酸化炭素規制が厳しくなってバイオ燃料の優位性が明らかという状態になれば、どんな燃料でも燃やせるディーゼルだ。だから、ますますその方向かもしれない。

C先生:現状のディーゼル排ガスの改善を早急に進める方策を東京都に期待したい。ただディーゼルなら全部駄目ということではないように思う。乗用車あるいは小型車については、ガソリン車とディーゼル車で規制が違うのは理解しがたいので、燃費を含めた総合排出指数による規制といった新しい概念が必要だろう。ついでに、燃料の税金だが、「燃料の種類によって税金が違うのではなく」、「同じ燃料でも車の種類によって燃料税が違う」システムを導入すべきだろう。すなわち、自家用車なら、どの燃料を買っても、ガソリン税と同じ税金を払う(発熱カロリーによる補正は可)。それが公平な競争の原点だ。
 参考までに、税額を掲載しよう。
  ガソリン(ガソリン税)   53.8円/リットル  うーん高い。
  軽油(軽油取引税)    32.1円/リットル  ちょっと安い。
  LPG(石油ガス税)     9.8円/リットル  なんだこの額は。業務以外使用禁止!
  天然ガス(?)        ??円/リットル  誰か教えてください。