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ダイオキシンサマリー(発生量編) 07.10.99




なぜか、ここ数回ダイオキシンの話ばかりを記事にしてきた。ついでだから、ここでダイオキシンのサマリーを作ることにした。まずは、発生量編。
 今回の参考文献は政府系委員会の資料(一般の方も勿論入手可能です)
ダイオキシン排出抑制対策検討会 第二次報告 平成11年6月
  委員長 平岡正勝(京都大学名誉教授)


C先生:さてさて、これまで許容一日摂取量などの検討や、ベルギーのダイオキシン騒動の実像について記述をしてきたが、折角だから、残っている情報で、まだ本HPに掲載していない情報を一応まとめてみよう。資料は、平岡委員会のものを採用し、ダイオキシンの発生量についての情報を取り上げる。

A君:結構いろいろな話しが出てきますよ。
 まず、大気中のダイオキシンの量です。平成9年度のデータですが、一般環境中のダイオキシンの量が1.4pg−TEQ/立米。発生源周辺がなぜかそれより低い、0.75。平成2年からのデータを時系列的に比較しますと、まあ、余り減ってはいない。増えてもいない。
 次に公共用水域の水中のダイオキシン量です。平成9年のデータですと、なぜか信濃川の平成大橋で3.9pg−TEQ/リットルと相当高い値がでていますが、次に高いのは、東京湾で、0.18pg。一番低いのが福岡県洞海湾0.005pg。経時変化としては、データがばらばらしていて良く分からない。
 地下水だと、平均値で0.058pg−TEQ/リットル。最大値が、0.37pg。
 底質土壌だと河川で、最大19.99pg−TEQ/g−wet。平均3.68。
       湖沼で、最大50.68pg−TEQ/g−wet。平均33.12。
       海域で、最大49.32pg−TEQ/g−wet。平均17.142。
 湖沼のような閉鎖性水域がやはり問題ということになる。しかし、人間は泥を食べるわけではなく、水生生物への生体濃縮が心配。

B君:交代。例の所沢以来の話題の野菜だが、所沢地域で再調査がされた。
 ほうれんそうだが、平均値が0.051pg−TEQ/g。ニュースステーションの最初の報道された値が、葉っぱ類ということではあったが、3.8だったのだからね。100倍以上の値を放送したことになる。周囲が全部驚いても当然。犯罪行為。
 その3.8の実体であった煎茶も再調査されていて、平均値が1.1pg−TEQ/g。ということは、ニュースステーションの値は高い。さらにお茶を入れて飲むことを想定した実験が行われていて、90℃1分では検出限界以下だったとのこと。

C先生:焼却炉からの発生量。
 一般廃棄物用の1584施設から、1506の報告が来て、2244個の炉に対する値だが、
  4トン/時以上  0.00〜57ng−TEQ/立米。中央値、0.75。
  2から4トン/時 0.00〜77ng−TEQ/立米。中央値、3.3。
  2トン/時未満  0.00〜110ng−TEQ/立米。中央値、5.8。
産業廃棄物用の焼却施設は、
 廃プラ用炉    0.00〜190ng−TEQ/立米。中央値、2.0。
 汚泥用      0.00〜120ng−TEQ/立米。中央値、0.5。
 廃油用      0.00〜110ng−TEQ/立米。中央値、0.8。
 その他用     0.00〜560ng−TEQ/立米。中央値、3.1。
とまあこんなところだ。これからの規制値は、大型炉だと0.1、中型炉で1だから。まだまだ多いと言えるだろう。産廃ではその他用の排出が多いが、これは、設備のサイズの影響かもしれない。

A君:次に火葬場というのがあるのですよ。
 10施設のデータで、0.01〜6.5ng−TEQ/立米。中央値、0.078。ということです。比較的キレイかもしれません。
 RDF焼却施設のデータは1箇所だけですが、0.0019ng−TEQ/立米、だったようです。キレイ。

B君:各種製造業から出ているダイオキシン量が次です。
 いろいろと噂があるのですが、その実態が明らかになっているものと考えます。基本的な理解としては、何をやってもダイオキシンは出ます。比較的多いのが、亜鉛回収業、製鋼用電気炉、アルミ合金製造。たまたま最大値が大きいということで、多分、それはダイオキシンを出すようなプロセスを含んでいるのだろうということです。
 
C先生:自動車からのダイオキシンが次。
 ディーゼルからですと、13モードで0.00265ng−TEQ/立米。
 ガソリンの10・15モードで、0.00045ng−TEQ/立米。
 燃料当たりにすると、ディーゼルが77.5pg−TEQ/リットル。
            ガソリンが4.53pg−TEQ/リットル。

 排気管等の粒子中のダイオキシン類濃度は、ガソリンで5pg−TEQ/g。
 ディーゼルだと10pg−TEQ/gぐらい。ところがトンネル内の電気集塵機に集まる粒子中のダイオキシンは242pg−TEQ/gと濃いね。
 
A君:排出水中の濃度です。廃棄物焼却施設から結構でていますね。紙パルプ工場は、最近余りダイオキシンを出さないようです。ということで省略。

B君:こんなデータからダイオキシンインベントリーというものが計算されています。その中で面白いのが、たばこの煙からのダイオキシン。その概要を示しましょう。
 平成9年度のたばこの年間消費量は3280億本。平成10年度で3462億本。また、ダイオキシンの排出は、Bumpらの結果によって33〜67pg/gという値が報告されている。そこで、平成9年の年間排出量を6.5〜13.2g−TEQと推測した。
 これに対して、Matsueda氏は、タバコが含んでいるダイオキシンの量(何起源か不明)を推定し、それを0.23pg/本とし、たばこの喫煙過程ではダイオキシンを発生しないとして、推定量をこの値そのものにしている。これから算出すると、日本全体の発生量は、0.075g−TEQになる。
 
C先生: その後者の推定は妙だな。タバコが燃えるときにダイオキシンができないという仮定は絶対おかしいから。となると、前者の推定ということになるが、年間の発生量を単純にタバコの総本数で割ると、20〜40pg/本ということになる。
 そして、これらの値から日本全体でどのぐらいのダイオキシンがでているかを推定したものが、ダイオキシンインベントリ。
 次の表がそれだ。

 まずは、大気への排出量の表を出す。単位はg−TEQ。要するに、もっとも有毒なダイオキシンに換算した発生量をg表示。
発生源 大気排出量
単位g−TEQ 平成9年 平成10年
一般廃棄物焼却施設 4320 1340
産業廃棄物焼却施設 1300 960
未規制小型焼却炉 345 345
火葬場 3.8 3.8
製鋼用電気炉 187 115
製紙業 4.5 4.5
塩化ビニル製造業 0.6 0.6
セメント製造業 1.86 1.86
鉄鋼業燒結工程 119 100
鋳鍛鋼製造業 1.4 1.4
銅一次精錬業 4 4
鉛一次製錬業 0.05 0.05
亜鉛一次製錬業 0.3 0.3
銅回収業 0.05 0.05
鉛回収業 1 1
亜鉛回収業 34 16.4
貴金属回収業 0.02 0.02
伸銅品製造業 5.3 5.3
アルミニウム合金製造 15.7 14.3
アルミニウム圧延 1.65 1.65
電線・ケーブル製造業 1.89 1.89
アルミダイカスト 0.21 0.21
火力発電所 2.4 2.4
たばこの煙 13.2 13.2
自動車排気ガス 2.14 2.14

注:範囲のあるデータについては、上位データのみを掲載
注:有効数字は余りにも妙なものは修正すみ
以上2点は、次の表にも適用される。

次の表は、水圏への排出量。

発生源 水圏排出量
単位g−TEQ 平成9年度 平成10年度
一般廃棄物焼却施設 0.016 0.016
産業廃棄物焼却施設 0.065 0.065
製紙業 0.4 0.1
塩化ビニル製造 0.6 0.6
アルミニウム圧延 0.3 0.063
最終処分場 0.078 0.078


C先生:まず特筆に値するのは、一般廃棄物焼却施設からの排出量が減っていること。減少の絶対量としては余り大したことはないものの、各産業からの排出量が減っていること。それから、水圏への排出量は、余り大した量ではないということ。

A君:たばこの煙からの値が結構な寄与率だということ。

B君:ただし、その値は余り信用できないとレポートされている。以前にこのホームページで書いた値よりも少ない。まあ、ダイオキシンのインベントリーは、大体精度が悪い。

C先生:確かに精度が悪いのは事実のようだ。諸外国のデータを眺めてみても、推定範囲が10倍ぐらいのものがざらだからね。ところが不思議なことに、有効数字だけは多い。推定に関する統計学的な理解がどうもわれわれ工学者とは違うような気がする。
 ところで、外国の話がでたついでに、日本のインベントリーがどのぐらいのものなのか国際比較をしてみよう。

アメリカ    95年    1026〜7541 g−TEQ
ドイツ     94年    334 g−TEQ
オランダ   91年     484 g−TEQ
イギリス    94年    560〜1064 g−TEQ
スウェーデン 93年     22〜88 g−TEQ
EU       93−95年 5749 g−TEQ
日本      98年     2900 g−TEQ

  注:スウェーデンはTEQの求め方の方法が多少違う。

というわけで、まだ、日本は多いと言えるだろう。

 しかし、これらの外国のデータが日本のデータと直接比較できるかどうか、いささか疑問。いろいろと分からない数字がでているのでね。
 例えば、米国は製鉄プロセスからのインベントリーが含まれていない。ドイツ、スウェーデンは、医療廃棄物焼却からの排出が極端に低い。塩ビを使っていないとすれば、そんなものかもしれない。火災からの排出の推定値を含む国、含まない国が様々。日本は含んでいない。木材防腐剤からの揮発分が、EUの場合にはかなりの割合を占めているが、他の国はそうではない。日本には項目がない。 という状況なので、各国の本当のインベントリーは、まだまだ本当の比較に耐える状況ではない。
 日本の発生量も、平成10年データになって、やっと5年前の先進国並というところ。この1年の減少は良い兆候。2002年には、さらに数分の1になっていることだろう。

A君:となると、ダイオキシン問題は、もはや解決ということになりますか。

B君:いや。残る問題は、化学的・物理的問題よりも、精神的問題だろう。ある特定の地域だけになぜ、といった不公平感・不公正性といった問題はまだまだ深刻だと理解すべきだ。

C先生:平均的日本人としての問題は深刻ではないと言えるだろう。しかし、地域的不公平、さらに、特定の条件を満たす人、例えば妊娠予定の人、労働環境から摂取量が多い人といった場合には、やはり安心だとは言いきれない。これまでダイオキシン新TDIのところでも述べてきたように、生殖毒性がどうしても気になる。早期に、研究結果がまとまることを期待したい。