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ダイオキシンサマリー(摂取量編)  07.15.99






 ダイオキシンサマリーの第2弾。摂取量編。これは、日本人がどのぐらいのダイオキシンを摂取しているのか、摂取量を減らす工夫が何か有りうるのか、などの議論をしてみたい。 また、同時に、週刊誌を騒がしているダイオキシンによる発ガンの問題についても、解読を試みたい。
  使用した資料は、つい最近、ダイオキシンの1日当たりの許容摂取量を決めたときに合同委員会が作成した資料。
  ダイオキシンの耐容一日摂取量(TDI)について
  生活環境審議会・食品衛生調査会・中央環境審議会の報告書(環境庁側資料)

C先生:本日は、ダイオキシンサマリーの続きで、摂取量編をやる。平均的な日本人がどのぐらいのダイオキシンを摂取しているか、といった話し。

A君:まず、摂取量に関しては、次のテーブルがほとんどすべての状況を説明しています。ざっとした話しですが、ダイオキシンは、食品からの摂取が9割を占め、大気からと土壌からの摂取が1割、水からはほとんどゼロです。
 食品からとしては、ダイオキシン濃度が高いものからの摂取量がやはり高い。ベスト5を挙げれば、(1)魚介類、(2)肉・卵、(3)乳・乳製品、(4)有色野菜、(5)雑穀・芋となりますが、まあ、はっきり言って、ベスト3を注意していれば良いという感じでしょう。

B君:注意と言ったって、どうやって注意するのだ。

A君:まあ、ダイオキシンは油脂・蛋白系の食品からと思えば大体のところは間違いはないですから、その種の食品について、ある特定の食材だけを食べ過ぎない。魚も色々と種類を変えて食べる。データが無いので分からないが、米国の例から見ると、湖など閉鎖性水域の魚は大量に毎日食べることは止めておくのだろうか。

C先生:TDIというものは、そんなに気にしないのが一番。ある1日ぐらい基準を超しても全くどうということが無いのがTDIの読み方だからね。まあ、食品のバラエティーを取ること、これで十分。

B君:ところで、陸上起源のダイオキシンがなぜ魚、すなわち、海に多いのか、と言えば、それはやはり水田除草剤として使用されていたPCP、CNPなどがダイオキシンを不純物として含んでいたからなのだろう。

C先生:以前は、私自身もダイオキシンの発生がすべて「焼却炉由来の人工物+山火事など由来の天然物」だと思い込んでいた。そのとき、なぜ魚がそんなにダイオキシンを含んでいるのだろうかと、大変不思議に思った。土壌に付着したダイオキシンが雨水に流されて川に入り、それが海へというシナリオがなかなか理解しにくかったからだ。水田除草剤が原因のかなりを占めるということになって、それこそ合点(!)だった。

食品から g/日 pg-TEQ/g pg-TEQ/日 pg-TEQ/kg/日
食品群 1日食品摂取量 DXN濃度 DXN摂取量 DXN/体重1kg
魚介 97 0.776 75.28 1.506
肉・卵 120 0.174 20.87 0.417
乳・乳製品 133.9 0.07 9.42 0.188
有色野菜 98.9 0.05 4.94 0.099
雑穀・芋 166.2 0.025 4.21 0.084
嗜好品 182.4 0.007 1.31 0.026
野菜・海草 205 0.006 1.23 0.025
166.5 0.007 1.18 0.024
砂糖・菓子 34.2 0.02 0.7 0.014
油脂 16.9 0.031 0.53 0.011
加工食品 5.5 0.073 0.4 0.008
豆・豆加工品 72.3 0.006 0.4 0.008
果実 118.6 0.002 0.21 0.004
飲料水 600 0.00003 0.02 0.0004
合計 2017.4    − 120.7 2.4144

B君:この表を眺めて、すぐ分かることは、水は寄与が極めて低いということ。ダイオキシンを気にしてミネラルウォータを選択するのは、全く意味が無い。

A君:先日、週刊朝日だったと思いますが、2ページの広告がでていて、それがなんとパイウォータ。これを使えば、水に含まれるダイオキシンを分解して、皆さん健康になりすよ、でした。笑ってしまいましたが、これに騙されて買う人は、このHPの読者には居ないと思いますが、念の為。

C先生:水の話しは、水商売とは良くいったもので、一番いんちきが多い。水健康法なども限が無いしね。一番、身近なだけに、騙される人が多いということだろう。

A君:報告を続けます。環境からの摂取というものもありまして、大気からの摂取、土壌を吸い込むことによる摂取、といったものがあります。
 大気中のダイオキシン濃度は0.55pg−TEQ/立米という値が使用されているのですが、これは、先日発表されたダイオキシン排出抑制対策委員会の第2次報告で示された一般環境の平均値がこれです。ちなみに、発生源周辺の平均値は、0.58とわずかに高い値です。一方、最大値は、本HPですでに書いたように、一般環境1.4、発生源周辺0.75という訳で、なぜか発生源周辺の方が低い値になっています。

環境から
濃度 媒体摂取量 単位系 DXN摂取量 DXN/体重1kg
大気 0.55 15 pg-TEQ/立米 8.25 0.165
土壌(子供) 22 0.2 pg-TEQ/グラム 4.4 0.22
土壌(大人) 22 0.1 pg-TEQ/グラム 2.2 0.044

B君:大気を15立米呼吸して、その中に入っているダイオキシンの全てを肺なり気管になり吸収するということかい。

A君:なぜか計算値上はそのような仮定になっているようですね。100%を吸収することはあり得ないと思うのですが。

C先生:いやいや、それは違う。摂取量とはそういうものなのだ。許容量(TDI)を決めるときには、吸収率を50%を仮定して計算している。まあ確かに、妙といえば妙なのだ。どのぐらいの割合で吸収されるかをすべてケースについて、50%とするのは無意味だろう。経口摂取の場合と、呼気経由の場合では、恐らく割合が相当違うのではと思われる。呼気経由の場合の量が絶対量としては少ないので、まず、大きな間違いにはならないだろうが。25%程度の吸収を仮定するのがやはり適当なのだろう。

A君:土壌からの摂取の場合には、子供の方が外で遊ぶ時間が長いからということだと思いますが、土壌の摂取量を子供は大人の倍であるとしているようですよ。体重も違うから、体重1kgあたりの摂取量は違うことになります。

B君:最近の子供は、大人よりも土壌を吸入してしまうことが少ないのではないだろうか。

C先生:さて、こんな訳で、日本人の場合、平均的に2.60pg/kg/日という値が摂取量として推定された訳だ。ここで、抜けているのが、実は「たばこ」だ。たばこの煙は、ダイオキシン発生編でも述べたように、1本あたり、20〜40pg−TEQのダイオキシンを含むとされている。もしも40pgだとして、1日20本、そして、摂取量とはそんなものだとして100%を掛けて計算すると、なんと800pg/日となって、食品から摂取しているとされているダイオキシン量120pg/日のなんと6〜7倍になる。下の表では、それはあまりなので、吸収率を25%として、200pg/日という値にした。それでも、食品からの摂取量を上回っている。

注:以前、本HPでは、たばこ1本あたり、100pg−TEQ/本という値を報告したことがある。1998年版記事の「ダイオキシン大汚染源は農薬だ? new08.06」。今回の値は、それよりも少ないが、まあ、推定とはその程度の精度だと思えばよい。また、1998年版の表紙へリンクを張ります。

抜けているもの pg-TEQ pg-TEQ/日 pg-TEQ/kg/日
1本当たり 1日本数 DXN摂取量 DXN/体重1kg
たばこから 40 20 200 4
吸収率を25%とした場合

A君:となると、魚などへの注意をいくらしても、隣の誰かがたばこをすったら、その努力は水の泡ということになりそうですね。

B君:そういうことになりそうだ。本当に、たばこからのダイオキシン摂取は深刻なのでしょうかね。

C先生:それは良く分からない。400年に渡る人体実験が済んでいるという人もいる。その説も有りうるが、個人的には、その対象は男だけだったのではないか、と言いたい。女性はまだ人体実験が済んでいるとは言えないように思う。妊娠の可能性の有る人は、やはり要注意のように思える。ダイオキシンの体内半減期は7.5年ぐらいだから、たばこを止めてもすぐには体はキレイにならない。

A君:私の感触では、焼却場からの煙だろうが、たばこの煙だろうが、余り変わりは無いでしょう。世の中の理解はかならずしもそうではないようですがね。
 これは最近の週刊誌ですが、ダイオキシンによる「ガン死」がもはや異常事態を招いているという記事が載っています。週刊現代7月24日号ですが。これによれば、焼却場の煙はやはり特別扱い。

B君:すごい記事だね。まず、大々的な疑問なのだが、この記者は、ダイオキシンは発ガン性があるとしているが、どんな種類の発ガン性だか分かっているのだろうか。正しくは、発ガンプロモータ、要するに、それだけでガンになるという訳ではなく、他に、発ガンイニシエータが存在して、ガンを作ると、その発ガン性を増幅するとうこと。発ガン物質などは世の中に多数存在していて、例えば、普通のコーヒーにも、普通のレタスにも含まれているから、プロモータだからといってダイオキシンを無視できるとは言えないけどね。
 それでは、どのぐらいの量で問題にされているのかというと、今回の新TDIに採用された考え方、すなわち、体内負荷量という考え方によれば、論文によって違うが、発ガンの最少体内負荷量が979ng/kg、1710ng/kg、3669ng/kgなどといった値になっている。そこで、まず、1000ng/kgと仮定しよう。この値になるには、毎日507pg/kg/日の摂取量が必要。体重50kgとして、25000pg/日となる。現在の平均摂取量が120pg/日ぐらいだから、200日分の食料を毎日毎日食べつづけることになる。

C先生:今回の大気からの摂取の議論は、それとも違うな。25000pg/日のダイオキシンを呼吸によって、大気から取り込むことになる。土壌からの暴露量は農業をやっていなければ、かなり低いから無視できる。毎日の呼吸量を15立米とすれば、1670pg/立米=1.67ng/立米の空気を吸いつづけることになる。これは、報告書などに掲載されている大気中のダイオキシン濃度の最高値の1000倍ぐらいの値ではある。ただし、その週刊誌によれば、その近くのゴミ処理場は、580ng/立米というとんでもなく高いダイオキシン濃度の煙を吐きつづけていたとのことだから、400倍に薄まった煙を20年間以上吸いつづけていると、そんな勘定になってしまう。夜、焼却場が止まるタイプなら、もっと濃い煙を吸わないと、この値にならないがね。煙がどのように拡散したか、要するに煙突の性能がどのようなものだったか、これが問題だな。ただし、上にも述べたように、これは、空気中のダイオキシンも、その50%吸収するという仮定が入っている。もし、吸収率を25%とすれば、200倍に薄まった煙を吸いつづけたことになる。さらに、農業従事者であって、土壌中のダイオキシンをかなり土埃といっしょに吸収しているとすると、その分も足さなければならないことになる。となると、この仮定を検証するには、まず、土壌中のダイオキシン濃度を測ることが必要だろう。土壌からの負荷が意外と高いなどという結論にならないとも限らない。

A君:それだけ濃い煙を吸い続けることは考えにくいですね。でも、焼却炉といえばダイオキシンだけを考えていれば良いのですか。

B君:それもそうだ。ダイオキシンが出ているということは、不完全燃焼をしていることとほぼ同義だから、いわゆる多環芳香族類(PAH類)が多数排出されていることになるだろう。これらは、何をやっても不思議ではない。その他、重金属、特に、鉛、水銀、亜鉛などの排出は無視できない。

C先生:それに、もっと問題なのが、精神的影響だと思うよ。ガンを押さえるキラー細胞の活性が、精神的ストレスで弱くなるという。黒い煙を見上げながら、あれで自分はガンになると思うと、本当にガンになれる能力をヒトというものは備えていると思う。だから、この週刊誌のような告発がでると、ますます、その地域のガン患者は増えるだろう。そういう意味では告発もまた一方で罪有りきだな。

A君:今後はいくらなんでも良くなるのでしょうね。

B君:この週刊誌の記者は、環境汚染は限界点を超えたなどと言っていますが。

C先生:まあ、環境汚染のピークが、1970年代にあったのは、ダイオキシン汚染を含めて、事実。先日、CNP(農薬:水田除草剤)にダイオキシンが含まれていたことを、製造者である三井化学は正式に認めた。要するに、日本の公害問題は、やはり水俣に原点があって、実際問題、それ以後の環境汚染は、日本全体としては改善の方向にあった。これは絶対的事実だ。しかし、現在のダイオキシン問題のような、大量消費・廃棄社会のバックグラウンドのような形式のものは、環境ホルモン問題も同様だが、まだ、環境汚染の影の部分として、まだときに姿をあらわすだろう。
 ダイオキシン問題も完全には 安心はできないが、少なくとも、平均的日本人としてみれば、余り深刻に考えなくても良い。しかし、生殖毒性は無視すべきでないので、妊娠の可能性のある人は万全の注意をお願いしたい。食事とたばこだ。
 そして、 2002年になれば、排出量に関しては非常に良くなるだろう。ただし、ダイオキシンの生態系内の半減期が長いので、そう簡単にキレイにはならない。要するに、ある地域における蓄積の問題は、まだ数年以上残る可能性がある。これをダイオキシン問題の地域的不公平性と呼んでおこう。

A君:サマリーとしては、日本人大多数の問題として見れば、解決方向。地域的不公平性と生殖毒性にはまだ注意。こんな感じでよいでしょうか。

C先生:まあそんなところだろう。