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COP6決裂  11.26.2000




 前の記事のように、25日土曜日の午後までは、議長提案でまとまるのだろうか、という雰囲気での議論だったが、最終的には、決裂してしまった。COP6で結論は何も出なかった。その直接的原因は、日本が森林吸収なる訳の分からない屁理屈をこね回したため。このままでは京都議定書も流れる可能性が出てきたが、それが日本という国の最終的な狙いが、京都議定書を流すことなのだろうか。


C先生:緊急事態発生。昨日の方向ではまとまらなかった。日本は、京都議定書を作ったCOP3の開催国だというやっかいな状況があって、最終的には、条約を批准せざるを得ない。一方、米国の大統領選挙が、まだまだフロリダ州の投票の手集計が片づかないの若干流動的ではあるが、まあブッシュだろうから、向こう4年間では批准は無い。となるとこの条約そのものの条件である55%の排出量がカバーされないだろうから、発効することは無いと考えるが、日本政府としては、そう安閑としても居られない。万一、発効したら大変なことになるから。

E秘書:何が大変なことなんですか。二酸化炭素の削減が大変なんですか? それとも、政治的責任が大変なんですか? 

B君:まあ当面は政治的責任を誰が取るのかということなんだろうなあ。

A君:森総理はどういう考え方なのか、さっぱり見えない。

B君:森さんは責任を取る気はないから、ここはひとまず、COP6を潰すという策に出たのだろう。もしも、3.7%が認められない形で合意したらそれなりの責任を取らなければならない。そうしたら、今の状況なら、産業界からの圧力などで自民党政治は一瞬にして飛ぶ。

C先生:新聞情報によれば、川口順子環境庁長官は、どうやら日本政府の腹案に反対したようだ。その腹案とは、クリーン開発メカニズム(先進国が途上国で行うクリーン開発で、先進国が排出削減をしたこととみなす)から原発を外す点をどうするかに関するものだったようだが、良く読みとれない。少なくとも、談話として出ているところから読むと、「日本の省エネなどの国内対策を相当やっていることが国際的に理解されたと思う。」「森林吸収についてはの日本の立場は理解されていたと思う。」、という発言は、産業界向けのポーズなのか本音なのか。元通産官僚だから、本音ということもあり得るし。

A君:我が産業界としては、やはり、産業界だけが厳しい対応を取らされるということについては、大反対ですよね。だって、産業界のエネルギー使用量、すなわち、二酸化炭素排出量は、このところ若干伸びてしまったけれど、まずまず定常状態。ところが、民生部門=家庭とオフィスにおける使用量、運輸部門はどんどんと増えている。今年の夏は暑かったから、エアコンの使用による電力消費量は相当のものだったろでしょうね。暑さのお陰で、我が社のエアコンも相当売れたようですが。

B君:民生部門のエネルギー消費を抑えるとしたら、環境税ぐらいしか方法論は無い。炭素税というよりは、エネルギー税の方が良いと思うが。ところが、政治家にとっては、消費税で大敗した経験からか、増税は禁句。メディアもずるいから、環境税に賛成だとは言わない。となると、またまた誰が責任をかぶるという貧乏くじを引くのだ、という問題になる。

C先生:読者の皆さんはどうなんだろう。環境税に賛成しますか。例えば、電気代にも、ガソリンにも、灯油にも10%税金が掛かるとなったら。

E秘書:税金そのものには反対ではないけど、やはり、エネルギー消費量を下げるでしょうね。となると、エネルギー関係の産業は損失を被るでしょう。

B君:産業と環境、この両立は将来的には不可能では無いが、その変貌の過程では、どこかに損失がでる。となると、強引にでも進めるのか、そうではなく、産業優先で行けるところまで行くのか、この選択は、政治的に決める必要がある。

A君:やはり、日本の政治がどういう方向を向くべきか、これは政治家をどのように選ぶかが問題となりますね。そろそろ次の参議院選挙のことを考えると、公約には二酸化炭素削減に関してどう思うか、どう対策を取るのかという見解を入れて貰わないと、国の重大な政策決定がどのような方向に行くのかが判断できませんね。選挙のときに、どのような事項について公約を述べなくては行けないという強制はできないのですかね。

C先生:二酸化炭素削減について、公約に見解を全く述べないような候補者は投票の対象にすべきでは無いな。

E秘書:環境と経済の両立と言いますが、本当に、両立させながら、二酸化炭素排出量を削減できるのですか。技術的に可能かどうか、解説して下さい。

A君:現状のサービスを全く変えないで、可能かどうか、ですか。削減量は、現状から20%とでもしますか。実現のターゲットは、京都議定書の対象となる2008年。それなら、可能でしょうね。

B君:可能だと思う。

C先生:それでは、具体的な案を述べてくれ。

A君:まず、当分の間、産業部門のエネルギー消費量は、むしろある程度拡大することを許容する。そして、2005年あたりを環境税のスタート年とする。税率は、エネルギーの金額に対して20%。同様に2005年を目標として、すべての製造業について、エネルギー消費量削減の目標を設定する。まず、素材産業については製造に関わるエネルギー消費量5%削減を目標。組立産業については、製造に関わるエネルギー消費量の5%削減と同時に、すべての製品の予想される消費電力の総量を25%削減、燃料を直接使用する機器(車など)では、40%削減を目標として設定して、その企業が生産するすべての製品の平均値として、この値を満足させる。

B君:それだけだと、恐らく普及はしないから、その削減目標値を上回る優秀な製品については、2008年までは、消費税をゼロにする。あるいは、場合によっては、逆に特別補助金を出す手もある。2005年から環境税の総額が、消費税のオマケの税額と特別補助金の総額を上回るように設定すれば、総税収は変わらないので良いだろう。

C先生:確かにそんな状況にできれば、エネルギー消費量は相当減るだろう。ここで、ポイントが一つあるな。二酸化炭素排出税にするのか、それとも、エネルギー税にするのか、というところ。二酸化炭素排出税にすると、それまでの炭素量の多い燃料を、天然ガスのような炭素量の少ない燃料に変えるという、余り本質的ではない小細工で目的を達するところが出てくる。欧州は、大体そんな方針でやるつもりらしい。だから、ヨーロッパ諸国の小細工を、「なんだそれは」、と追求することも必要なんだが、京都議定書で温暖化6ガスだけを対象にしてしまったので、いまさら難しい。当面は、二酸化炭素で行くという妥当性も無いわけではなくて、例えば、このHPでは実現の意味がないと主張している燃料電池搭載車などの技術が進む。なぜならば、エネルギー効率面では余りメリットはないが、二酸化炭素排出量は確かに減少するからだ。この技術が進めば、本HPでお奨めの固定式燃料電池による熱・電気同時供給システムも比較的安価にできるようになる。2008年までに、このあたりが上手く行けば、目標は楽々達成になるのではないか。

A君:各家庭の熱と電気が燃料電池による供給になってくれば、確かに総合的なエネルギー効率が格段に上がりますね。

B君:熱の需要が大きいところなら、マイクロガスタービンという方法だってありそう。マイクロガスタービンは、発電効率だけで見ると余り良くないので、かなり苦しいのだが。熱供給手段としてみればそれなりだろう。

C先生:輸送部門の重要なところは、トラック・バス。これらは、天然ガス+ハイブリッド、あるいは、ディーゼル+ハイブリッドになるだろう。乗用車はガソリン+ハイブリッドで行ける。燃料電池車は、そのあたりまででは、インフラがまだ完成したと言える状況にはならないだろう。

E秘書:分かりました。確かにできそうですね。新しい製品が売れるだろうから、産業界もそんなに問題無いようにも見えますね。

C先生:それがね、実は大問題があるのだ。それは、「産業構造が大幅に変わること」、なのだ。既存の企業のうち、組立産業については、そこそこ大丈夫。しかし、競争が激烈になるから、開発力がある大企業、あるいは、独自技術をもつベンチャー的企業以外は存在が難しい。2〜3番手企業は、存在できなく無くなるだろう。素材産業にとっては、まあ、現状維持が可能だろうが、やはり競争は激烈になる。エネルギー供給産業は、大幅な構造改革が求められることになる。電力会社・ガス会社は、存立の危機を迎え、石油関連企業は、猛烈なサバイバルレースになるだろう。
 日本全体を競争的な状況にしよう、と皆さん口では言うが、本音は、現状維持なのだ。このような競争的な状況になって、どこかが大儲けをして、大多数が潰れるよりは、今のままで、なんとか行けるところまで行こうというのが、本音。となると、現在の産業界の意向で動いている現在の政治も、現状維持にこだわることになる。

A君:最近、IT革命だとか言われていますよね。それも似たようなところが有ります。我々にはある程度メリットもあって、経営的にもやや助かっているのですが、本当に「革命」にまで行くのかといわれれば、なにせ現状維持のこの国ですから、日本では無理では無いかと思っているのですよ。

B君:それはそうだな。もともと、日本と米国では産業構造が違う。日本のIT革命は全く別のところを狙うべきだ。米国というところは、鉄鋼業とか重化学工業とか言った実態のある産業では、もはや競争できない。そこで、このような現実を放って置いて、ITというバーチャルな価値を追求することによって経済活力を高めることにした。しかし、ITとは言っても、本当にバーチャルなところで価値を生めるのか、という大問題がある。インターネットの本屋、アマゾン・コムのような場合だって、実は本という実態のあるものを売る。ITは流通の合理化だけだ、という現実があって、売る物無しに経済を活性化するのは難しい。だから、米国だって売るものを輸入するために、貿易赤字は減らない。

A君:日本は、ITとは言ってもバーチャルな部分だけでは活きるのはますます不可能な国ですから、ITで流通を改革された世界を相手に、日本はそこで売る「モノ」を作るのでしょうね。売るものは、組み立て産業で作られるものでしょうから、それらの競争力をつけるとなると、やはり京都議定書を有効活用して、本当の意味での省エネルギー省資源商品を開発するような、「新規産業活力」、あるいは、「新生経済」という政策が良いと思いますが。

C先生:そうだね。まあ、色々と考え方はある。
 ここで確認したいことが一つある。毎度言っていることだが、京都議定書に決められたことを実行しても、大気中の二酸化炭素濃度が減るという訳ではない。環境問題の解決を地球の状況を定常的に保つと定義するのなら、すぐにでも、二酸化炭素排出量を半減する必要がある。
 我々のこの件に関する態度はかなり微妙だ。ヒトというものが地球上で多数存在していることを容認したら、温暖化は当然の帰結で、ある程度仕方がないとするしかない。気候変動そのものは、これまでも氷河期やその後の温暖な気候といった自然変動で相当あったから、現在の温度を守るという意味もどこまで絶対に守るべきなのかやや不明だ。そのうち、化石燃料が無くなれば人類は絶滅の危機だが、そうなれば温暖化問題も同時に無くなるのだから、という妙に醒めた立場なんだろうかね。
 しかし、温暖化の絶対値は問題にしないとしても、確かにその速度は大問題なんだ。小島嶼国から移住をするといっても、合意を取り、被害を減らすためには、とにかく時間が必要だ。生態系が温度変化に付いていくためにも速度が遅いことが条件。なんとか、2度/100年といったところには抑える必要があるだろう。
 最後に一言どうぞ。

E秘書:日本案を産業優先、といって非難するのは簡単ですが、メディアもNGOも対案を出して欲しいですね。その中身を見て初めて議論になる訳ですから。それにしても、もう少々まともな、誰もが納得できる日本案を出して欲しいところです。

A君:「COP6決裂」ということも、どうもテレビのニュースなどでは、余り大きく取り上げられていないですね。まあ、「他人事」なんでしょうね。

B君:先読みをしっかりやって、自社の方針を決定できる経営者がいるところは生き残るだろうが、そうでないと70%の企業が倒産する危機が来る。

C先生:余りそうやって脅すのは、ダイオキシンや環境ホルモンの恐怖本と変わらない。それにしても、今回の原発とクリーン開発メカニズムの話などを見ていると、日本という国は、いや、日本の政界と産業界は、国際的な孤児になりそうだね。そういう認識が日本全体にできるまで、「待って」、それからか。