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飲料容器の環境負荷比較 その2   12.26.99




 今回の分は、暫定アップです。理由は2点。データが変わる可能性があること。さらに、ウェブサイトの容量がオーバーしてしまって、妙な形でなんとかアップしてあること。張るべきリンクなどは未整備状態。この問題は、数日中にHP大改造で修正予定。


 前回、素材としての特性を記述したところ、「紙があんなに環境負荷が低いのは見たことが無い。本当か」、とのご質問を頂いた。それもごもっともで、前回のデータは、ご覧のように、二酸化炭素、NOx、SOxだけ。紙という素材には、二酸化炭素、NOx、SOxだけでは記述しきれない環境負荷がある。水圏への負荷がそれである。今でこそ排水中の有害物は除去されているものの、田子の浦のヘドロ騒ぎというものが思い出される。それに、大気中へも若干の臭いがでる。クラフトパルププロセスで使用するイオウ系の臭いである。さらに、森林の保護という検討課題もある。とはいえ、二酸化炭素の放出量に関して言えば、圧倒的に環境負荷が低い素材であることも事実である。バイオマスだからさらに割り引くことが可能という考え方もあるぐらいである。
 実は、今回行っている容器間比較だが、年末までに終わる予定だったものの、若干見直しを行うことになり、詳細なデータを発表する段階に到達できていない。そこで、本来は最後に行うべき議論であるのだが、一歩先走って、LCAインパクト評価という方法論を用いて、包装容器の環境負荷に対して考察を行う。


C先生:最終データの検証がまだなので、インパクト分析の報告をしてみよう。

A君:えっ。インベントリーデータができてからインパクト分析というのが一般的手順でしょ。

C先生:勿論その通りなのだが、検証の結果インベントリーデータ多少変わったとしても、それがインパクト分析結果に大きな相違を生む訳でもない。インパクト分析では、+−50%ぐらいは問題にならない。もともとかなり主観的なものだし。

B君:もともと、環境観が違えば重み付けが違う。日本で良くあるパターンだと、温暖化回避至上主義派、ダイオキシン猛毒派、残留農薬猛毒派、健康リスクゼロ派、割り箸拒否派、PET絶対反対派、「買ってはいけない」信奉派、バランス至上主義派などなどが有るが、それでそれぞれのデータに対する重みの掛け方が違うだろう。人口1億人なら環境観も1億種類。となると、余り細かいデータの違いなどを議論する意味が無い。ということですか。

A君:それは良いとして、口が悪いとこはなんとかならないのですかね。

C先生:インパクト分析については、これまで余り解説をしてこなかった。簡単に解説して。

B君:では、今回は、自分が。
 ライフサイクルインパクト分析とは、ライフサイクルアセスメントの最終段階の作業。複数の環境負荷項目を一つあるいは少数の項目にまとめる作業。それぞれの項目に重み付け係数を決めて、合計をしてしまうという作業。重み付け係数には、いろいろな条件があるが、まず自然科学の法則として、「異なった次元を持つ量を演算してはいけない」というものがあるから、次元を揃えるような係数を採用する。
 これまで、様々な試みが行われている。例えば、スウェーデンでは、すべての環境負荷を金銭に揃えた。スイスでは、目標となるような理想的環境状況への距離に、そして、オランダでは「ダメージ」というものに次元をそろえた。C先生方式というものもあって、そこでは「時間消費」という概念を導入して、「時間」で次元を揃えた。
 環境負荷を時間消費へ変換するのは、極めて簡単な式を用いる。
   時間消費=その製品による環境負荷/(地球全体、国、地域)などの環境負荷総量
ただし、地球の環境処理&再生能力に応じて調整係数を掛ける。
すでに存在する他の方法も比較したかったのだが、残念ながら、固形廃棄物の取り扱いができるものが無い。今回のような包装材料の場合には、固形廃棄物のよる負荷が重大。

C先生:こんな式でなんで環境負荷の相対値が比較できるのか、ちょっとだけ説明したい。
 例えば、ある製品によって、二酸化炭素が1kg排出されたとする。二酸化炭素は、地球温暖化ガスだ。となると、日本で出ようが、アメリカで出ようが、地球全体への影響だ。現時点で人間活動全体からの二酸化炭素の放出量は、年間約27,000,000,000,000kg程度だとして、1kgの排出だと、その寄与分は1/27,000,000,000,000ということになる。この次元を考えると、年という時間の次元になっている。
  もしも、270億トンもの二酸化炭素の排出を毎年毎年続けると、そのうち、地球温暖化が起きて、ある被害がでること(危機の到来)になる。それは何年後かだろうか。もしも80年後だったとすると、1年間という時間が経過した後で考えると、当然ながらその時点から79年後にそのような危機が来る。270億トンの放出が丁度1年に相当するという意味になる。
 一方、固形廃棄物が1kg排出された場合には、その地域の問題になる。日本で排出されれば、日本の問題だ。日本の固形廃棄物は一般廃棄物が5000万トン、産業廃棄物が4億トンと言われているが、産業廃棄物のかなりのものが、汚泥と建築廃土なので、ざっと1億トンを固形廃棄物総量とすると、それは、年間約100,000,000,000kgとなる。1kgの排出だと、その寄与分は、上と同様の考え方で、1/100,000,000,000となる。固形廃棄物だと1億トンで1年という時間を消費することになる。

A君:この考え方は、なかなか理解されないようですね。

B君:そんなに高級な概念だとは考えられない。

C先生:その通り。それで、LCA専門家連中には評価されにくい。ところが、実務レベル、市民レベルには、これでも難しすぎるらしい。もう少々簡易型にしないと。

A君:もう少々改良と情報提供が必要なのでしょう。

C先生:さて、容器に戻るが、当然様々な材質の容器があるのだが、500mlの容器の場合、製造・消費・廃棄・運搬過程の合計で、大体0.1kg程度の二酸化炭素を放出し、大体10〜20gの固形廃棄物を出しているといったところが平均的描像だ。固形廃棄物の排出と二酸化炭素放出による時間消費を比較すると、固形廃棄物の負荷がざっと数10倍ということになる。他の環境負荷項目も、大体二酸化炭素の場合と似たり寄ったり。となると、容器の場合には、固形廃棄物だけで環境負荷の大部分が決まる、と考えることもできるのだ。

A君:それは、容器包装材料の特殊事情でしょうね。大体、容器包装系の廃棄物だけで、体積ベースならば、一般廃棄物全体の半分ぐらいを占める訳ですよね。ところが、我が家電業界などは、廃家電製品が年間2000万台も排出されるということなので、「大変な環境負荷だ」、と言われますが、その全重量は60万トンぐらいですし、国内で処理されたり中古品で輸出されたりしていますから、その占める割合がそんなにも大きくない。ですから、家電製品の環境負荷は、必ずしも固形廃棄物だけではなくて、他のいろいろな環境負荷項目がバランス良く効きますね。

B君:昔から容器材質はLCAの対象になってきている。なぜならば、包装材料は一瞬しか使わないし、もともと不要のものだから。家電や車は長期間使用するし、運転エネルギーが必要だから使用時の環境負荷が大きい。ということで、包装材料に対してこれまで行われてきたエネルギーベースあるいは二酸化炭素ベースのLCAデータは、余り目安にならないということなんでしょうかね。

A君:そう。容器は固形廃棄物の環境負荷が大きい。だから固形廃棄物を出さない容器素材をまず選択すべきことになりますね。

C先生:しかし、それだけとも言えない。なぜならば、今回の検討でも未来型というシナリオを作ったが、いずれの素材の場合も、固形廃棄物はほとんど出ないシナリオにしてある。将来はそうなるべきだということ。まず現在は固形廃棄物の減量を中心に考え、そして、将来は、それ以外の環境負荷の大小で「勝負」ということだ。

A君:しかし、容器は「散乱」、要するに、ユーザによるポイ捨てがどうしてもありますよね。

B君:その場合には、どうしようもない。

C先生:だから、容器の場合には、自然になじむような材質であることが評価されるべきだとも言える。アルミ、ペットボトル、ペット処理したスチールは、相当長時間そのままだろう。ガラスは、割れてしまえばまあ石に近い。紙容器は、外側のポリエチレンコーティングが残るが、中身は徐々に腐る。普通のスチール缶も比較的早く錆びて、土に戻るだろう。

A君:長々議論をしてきましたが、結論はどんな風になるのですか。

C先生:固形廃棄物の排出を除外した比較を図1に示そうか。なぜならば、固形廃棄物の排出はライフサイクルシナリオによって大きく違うからだ。一応、容器は500mlに統一した。データの細かいところは、まだ修正される可能性が高い。しかし、余り大きく違うことはないだろう。

図1:  500mlの容器の環境負荷の比較図。仮想的な容器も含む。環境負荷項目は、左から、温暖化、酸性化、大気汚染、水質汚濁、水使用量、エネルギー、資源消費。

 環境負荷としては、今回データが無い「オゾン層破壊」「重金属」は除外してある。この図を描くにあたって、環境負荷にある重みを付けている。今回示した重みを図2に示す。これが良いと言うわけではなくて、単なる一例だ。今回容器間比較に参加してくれている飲料メーカーや自治体の方々に、「重みをどのように付けるか?」を聞いてみるということを行う予定もある。今回のものに、余り深い意味はない。

図2: 今回のインパクト計算に用いた項目間の重み付け。単なる一例だと見て欲しい。

 その結果だが、しつこいようだが余り細かい比較は意味が無い。しかし、紙容器だけはかなり特異な環境負荷の形態であることが分かる。要するに、水質汚濁をどのように評価するかによって、紙容器そのものの評価が影響を受けると言うことだ。大気圏への負荷、資源・エネルギーの負荷は、紙が低い。リターナブルガラスも同様で、水質汚濁を高めに評価すれば、環境負荷が低いとも言えなくなる。

A君:このインパクト分析からどんな結論を導くのでしょうね。

B君:それは自分の環境観を検証することと同義だな。

C先生:まあ、人それぞれといってしまえばそれまでだ。個人的には、このようなデータをにらんで見て、容器の優先順位についてこんな風に考えている。ただし、容器そのものの順位ではない。あくまでも考え方。しかも、番号には意味はない。なぜならば、紙容器にビールは入らない、といった特性があるから。

容器優先順位私案
1.コーヒー、紅茶、麦茶などは、紙パックが良い。ただし、紙パックはリサイクルに出すこと。
2.ビール・牛乳ならリターナブル瓶。でも自分でビールを買うとき、瓶だと重い。
3.炭酸飲料だと、アルミか。ペットは気が抜けるので不味い。
4.ミネラルウォータは、環境派にはそもそもお薦めしない(水道水に比べて利点は少ない。非常用には必須だけど)。どうしても必要なら、現存しないが、ペットのリターナブルボトルが良いだろう。
5.醤油、酢、酒、ソースなどは、共通リターナブル瓶がもしも可能ならば、それが良いだろう。それには、地域商品が適している。しかし全国ブランドは難しい。全国ブランドだとワンウェイの無色ガラスか無色ペットが良いだろう。
6.ペットボトルの清涼飲料は、1〜1.5リットルといった大型は紙パックに置き換わって、消えるだろう。500mlペットはまた蓋ができる便利さで、残るだろう。
7.自動販売機から買ってホットで飲みたい場合は、その行為それ自体、自販機のエネルギー消費を考えるとあまりお奨めではないが、スチール缶。ただし、環境ホルモン対策で近頃伸びてきた「ペットでコーティングしたスチール缶」は、土に戻りやすいという特性をわざわざ殺して環境負荷を増大させているだけで、メリットは少ない。

B君:消費者が自主的にリサイクルに出したという仮定で、有価になるものは、と言えば、まずアルミ。次に紙パック。リターナブル瓶。それとは逆に、社会コストの面から推奨しにくいのがペット。普通のスチール、ワンウェイガラスは中間か。

A君:これも、C先生のリストに反映されていますね。

C先生:固形廃棄物がでてしまう容器は、環境負荷が高い。だから、自然にリサイクルが回るもの、旨く処理ができるもの。そんな観点から容器を選択するのが良いだろう。