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   化学物質発がん性考  05.19.2002




前回のHPで取り上げた化学物質だが、様々な問題があって。。。。。ということは、様々な雑学が必要となる。本日は、発がん物質についての雑学である。


C先生:化学物質の怖さのひとつとして、発がん性がある。ところが、発がん物質といっても、一筋縄の理解では行かないのだ。なぜならば、分からないことが多いから。

A君:一般的には、化学物質は、発がん性という観点から、いくつかのクラス分けがなされているのですが、もっとも有名なのが、IARCのものです。

B君:IARC=International Agency for Research on Cancer。フランスに本部があるWHOの関連組織だ。

C先生:それでは、IARCの発がん物質に関するクラス分けについてちょっと説明して、それからどんなものが入っているか、説明して欲しい。

A君:それでは。まずグループ1というものがあります。これは、「ヒトに対する発がん性があることが確認されている」グループでして、87種類の物質がこのグループ1に属します。

B君:グループ2は、2つに分けられている。グループ2Aとグループ2Bだ。グループ2Aは、「ヒトに対して恐らく発がん性がある物質」、グループ2Bは、「ヒトに対して発がん性があるかもしれない物質」、そして、グループ3は、「ヒトに対する発がん性について分類ができない物質」。

C先生:その表現は結構微妙だな。その訳文は誰のものだ。

B君:これは自分独自のもの。グループ3の訳がもっとも難しい。グループ4というものもあって、「ヒトに対して恐らく発がん性は無い」というものがあることを考えると、こんな訳になる。

A君:英語の原文を示すべきではないですか。
Group 3: The agent(mixture or exposure circumstance) is not classifiable as to carcinogenicity to humans. 
Group 4: The agent(mixture or exposure circumstance) is probably not carcinogenic to humans.

C先生:確かに、かなり微妙な英語表現ではある。でも、まあB君の訳で良さそうだな。グループ3だと、まあ安全というのが感触なんだが。

A君:グループ4というものは、もともとグループ3以上にランクされていたものが、ランク落ちして入る場所なんでしょう。

C先生:そのようだ。今、1物質(Caprolactam)しか入っていない。それでは、グループ1にどんな物質が入っているのか、その記述から行こう。

A君:では。グループ1、ヒトに対する発がん性ありという物質には、今87物質がリストアップされています。全部記述するのは大変なので、有名そうなものだけピックアップです。
・アフラトキシン:ピーナッツなどに付いているカビの出す天然毒。肝臓がんなど。B1という種類が強くて、この発がん性はものすごい。EPA(米国環境保護局)は、農作物や食品に微量に含まれるこの物質が、妊婦の胎盤を通過して胎児に移行し、その結果、生まれた子供が14歳までにがんになる主たる原因になっているとの研究プロジェクトをやっているらしいです。

B君:聞いたことがある。ダイオキシン並みの規制値10ppbでは、全く不十分で、1ppbぐらいの規制をしなければならないのだけど、もしもそうすると現在の食材のほとんどすべてが不合格になってしまうとのことだ。この地上最強の天然発がん毒のリスクをいかに人類が受けているか。

A君:基準値を超すことはめったにないものの、ナツメグなどの香辛料は半数以上汚染されていて、と聞くといささか問題ですね。

C先生:自然物は安全で、人工物は危険だという誤解を破る第一候補がこの天然毒なんだ。

A君:次です。
・アスベスト: これは有名。車のブレーキパッドに使われていた。最近のブレーキパッドは減りやすいという噂があるが、その原因がアスベストを使わなくなったためかもしれない。

B君:ブレーキパッドから確かにアスベストの繊維は出るが、磨り減りながら出るので、そんなに長いものは出ていないはずだ。だから本当に問題かどうか、それは分からない。
 とにかく、アスベスト繊維は、ぎざぎざしていて、肺に突き刺さると抜けにくいらしいが、これが有害性の原因だ。もともと、毒物が入っているという訳ではなくて、アスベストも食べれば毒性はほぼ無い。消化管に刺さるとなんとも言えないが。アスベストを吸入して、それが肺に刺さると、骨がそこにあると体が誤解して骨を作ろうとする。これががん発生の原因か?

C先生:阪神大震災のビルの取り壊しの際に、相当大量のアスベストが大気中にばら撒かれたはずだ。その影響は、発がんまでの潜伏期間である18年から40年後にならないと分からない。このような事実は確実に記録しておく必要があるだろう。

A君:・ヒ素:急性毒性だけではないのですね。立派な発がん物質。

B君:・ベンゼン:これも有名。放出量が平成7年には1万6000トンもあって本当に大丈夫だったのか。よく分からないが。

A君:・カドミウム:これも急性、亜急性毒性だけではない。

B君:・六価クロム:これも同様。毒性のある金属は多い。・ニッケル・ベリリウム、など。

A君:・ヘリコバクター・ピロリ:胃がんの原因はこれ。物質ではなくて、細菌なんですが(ウィルスと誤記されていましたので訂正しました)。

B君:ウィルス感染はがんの主要原因だ。例としては、・B型肝炎ウィルス・C型肝炎ウィルスもある。

A君:・パピロマウィルスは、子宮がんの原因。・T細胞白血病ウィルスは文字通りのウィルス。

B君:・中性子線、・X線、・ガンマ線、などは発がん性。・プルトニウムも。

A君:・放射性物質は一般的に発がん物質である。

B君:・塩化ビニルモノマーも発がん性。

A君:・女性ホルモンも発がん性。乳がんの原因物質だ。勿論、天然自然のものですが。

B君:・ピルも同様に発がん性物質に分類されている。

A君:そろそろどこにでもあるものに行きます。
・アルコール飲料。堂々発がん性グループ1に分類されている。以下同様。
・フェナセチンを含む鎮痛剤
・コールタール
・鉱油類
・塩漬けの魚
・煤
・タバコの煙、噛みタバコ
・木のダスト

C先生:こんなものが発がん物質なのか、と思われるかもしれないが、少量でどうだという問題ではなくて、木のダストなども、職業的に毎日毎日製材所などで吸っていると発がんの危険性が高くなるということだ。

E秘書:はいお茶。お茶で発がんが防止できることはない、という議論は2週間ほど前の記事でしたが。でも、アルコール飲料、すなわちお酒・・・・。塩漬けの魚というと、アンチョビなんかも・・・。随分摂取しているような気がしますね。イタリア料理店でワインとアンチョビ・・・隣のテーブルではタバコを吸っていて・・・そんなときに発がん物質のことなんて思い出したくないですねぇ。

B君:衝撃的なものとして、・太陽光が出ている。皮膚がんの原因。

E秘書:太陽光による皮膚がんは、オーストラリアで国を挙げて対策を講じていますね。子供が日光の下で活動する時間の上限を定めたり、日焼け止めの塗布を義務付けたり・・・。

C先生:以上のような物質の他に、勿論のことだが、農薬関係、医薬関係、毒ガス関係、一般的化学物質、鉱物類なども数点ずつ入っている。超有名物質・ダイオキシンも、また、環境ホルモンとして著名な・DESもグループ1に分類されている。

A君:そろそろグループ2Aでしょうか。

B君:このグループは、63種類が分類されている。しかも、今回の話題の中心である化学物質が揃い踏みをしている状態。しかし、グループ1と違って、ラット・マウスなどの動物実験の結果から判断したもので、ラット・マウスといったゲッ歯類とヒトとは違う生物だから、ヒトに対する影響は確実にそうだとも言えない。

A君:化学物質以外では、・ディーゼルエンジンの粒子状物質、・ヒ素不使用の殺虫剤(ただし職業的使用)が上げられています。

C先生:なじみのある物質が一杯あるとも言えないね。それでは、グループ2Bにいってみよう。

A君:このグループ2Bは234種類もあるのですね。化学物質の多いこと、多いこと。とても、個別の議論はできないです。

B君:混合物としてグループ2Bに分類されているものとしては、それこそ様々なものが入っている。例えば、
・コーヒー、・漬物、・ガソリン

C先生:グループ2Bというと、発がん性があると解釈される場合が多い。しかし、上のような混合物もこのグループ2Bに分類されている。こんなことからも、このグループの特性が分かるだろう。

A君:結局発がん性が確実なのは、グループ1。グループ2Aは、危険だとの前提で取り扱うべきで、グループ2Bはいささか要警戒といったところでしょうか。グループ3になると、まあちょっと安心。

C先生:発がんリスクも小さくなると、マウスなどの動物実験をやってもなかなか再現性のあるデータを取るのが難しくなる。100万匹といった規模で実験をすることは不可能だから。

A君:放射線の発がんリスクは、メガマウス計画というものがあって、最終的には、数100万匹の実験を行ったようですが。

B君:放射線は、種類が限られているが、化学物質は大変に多数あるからな。

C先生:結局のところ、様々なテストと、さらには分子構造などからの発がん性の推測といったあらゆるデータと、知恵を集めて総合的に判断するといったことで、なんとか妥当な取り扱いをするということになる。そして、どちらかと言えば、相当に安全サイドに振った判断がなされていると考える。

B君:発がん性の分子生物学的説明もかなり進歩しているようだし。

A君:しかし、世の中、マイナスイオンなどという化学組成も分からないものが、「健康に良い、と言う不確実な情報でも無批判に受け入れられ」て、一方、多くの化学物質はデータがあるにも関わらず、「無条件に危険」だと思われているような気がするのです。

C先生:確かに不確実性があるから、データに基づく判断も絶対的ではない。本当に危険性があって、十分なる注意を払う必要がある物質が多数存在するのも事実だが、化学物質というと無条件に危険なものだと思う必要は無い。日本などの先進国は協力して、かなり注意深い配慮が行われるようになりつつある、と理解している。まさに、知恵を集めて、上手な管理を行うべきだ。