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低公害車 05.13.2001 




 小泉総理になって、施政方針演説でかなり具体的な環境対策が発表されてしまったようで、担当の省庁は対策におおわらわのようである。そのひとつが低公害車だ。政府は、向こう3年間程度ですべての官用車を低公害車にするという
 しかし、低公害車といっても何をもってして低公害車というつもりなのだろうか。排出ガスがきれいで、燃費が良い車だろうか。官用車がすべてプリウスになるのもなんだか気持ちが悪いが、トヨタが今後出すというクラウンハイブリッドは、低燃費でもないようなので、それよりはましか。 さて、近未来を考えても、京都議定書が、そして、ちょっと長い視点で見れば、資源・エネルギー問題がやはり問題となる。なるべく資源・エネルギーを使用しないで、経済的な価値を生み出すこと、すなわち、使用する資源・エネルギーあたりの価値=資源生産性を高める必要があるが、それには、いろいろなものをミニチュア化するのが手取り早いと思う。日本の産業はこんな方向だと、前から主張している次第。大体、日本人の体質に合っている。
 今回は、車の話。低公害車の次は何か。日本で買えるもっともミニチュアな車の話。


C先生:これまでプリウスを3年間使用。プリウスの弱点に気が付いた。最近、キャンパスが変わって、家からオフィスまで4km弱になってしまった。電車で行くと40分、全部徒歩だと45分、自転車だと、坂道があって、大変に厳しいが20分。車だと行きが12分、帰りは夜9時過ぎだと10分。新キャンパスから都心に出るのに、これまでよりも確実に片道22分、往復で45分ロス。ほぼ毎日都心に出るのが日常的。となると、1日24時間という制約内での時間の節約上、車は大変に魅力的なのだ。
 そこでこの魅力に逆らえないでプリウスに乗るとする。ところが、プリウスは、最初の10分以内の燃費が極めて悪い。燃費計から読むと、7〜8km/リットルにしかならない。その原因だが、それはハイブリッド車の機構のためである。まず、プリウスのアイドリングは普通の車よりも回転数が高い。普通の使用条件であれば、アイドリング中にも発電をしていて、スタートから15分後程度経過してアイドリングがストップすると、それまでに発電して貯めた電気を走行に使うので、一時的にかなり燃費が良くなる。ところが、10分程度で目的地に到着してエンジンを止めてしまうと、折角貯めた電気がどこかに消えてしまう感じ。もっとも最近のマイナーチェンジ後のプリウスはかなり改善されているようだが。

A君:そんな燃費では、普通の車、といっても、大きいのは駄目で、1300ccぐらいまで、まあ1000ccのビッツなら絶対にましですよ。

B君:しかし、それではおもしろくないので、新プリウスに買い換えることも考えたんでしょう。

C先生:いやいや。そこで、まずは、電気自動車を考えた。日産のハイパーミニなど。ところがだ、高い。400万程度すると聞いたので、諦めた。

A君:電気自「転」車なら最近値下がりして、7万円以下ですよ。

C先生:それも考えた。ただ、東京の道路は、コペンハーゲンなどと違って自転車用にできていないので、やはり車がかなり怖い。さらに、このところ花粉症がひどくて、また、4月になっても、ヒノキなのか松なのか、はたまた黄砂の影響ではないかと思われるアレルギーがひどかった。また夏も自転車20分はちょっと勘弁。と言いつつ、代々木上原までは、自転車でしばしば行くが。

B君:それなら、日本でもっとも燃費が良い車と思われるホンダ・インサイトを考えた。

C先生:まあね。しかし、これは2名定員である上、トランクが無いに等しい。自転車を積めるかという条件を満たさない。さらに、アルミフレームなので、事故をちょっと起こしても全損になりかねない。しかも当然高い(フルスペックだと250万?)。ということで落第。シビックのハイブリッド車が出たらまた考えるかもしれない。

A君:だとすると、余り候補車が無いですね。軽自動車はかならずしも燃費が良くないし。

B君:軽自動車というのは、環境負荷が低いとは言えない。あの税制面の優遇で売れているだけなので、公平感が無い。もっと燃費比例の税制にすべきだ。

C先生:スズキ・アルトに、アイドリングストップのモデルがあるらしいので、それは評価しない訳ではない。燃費も良いらしいが、なぜか買う気にはならない。

A君:それなら、選択肢が無いですね。

C先生:そこで、ちょっと異質の選択をすることにしてみた。ミニチュア化を普段から主張しているので、どこまで車は小さくできるのか、に挑戦してみることにした。

A君:えええええ。となるとスマートですか。日本で買える車としては最小の。

B君:あの時計のスウォッチとメルセデスが企画したという二人乗りの。

C先生:本来、国産品愛用主義者なのだが、日本車にインパクトのある小さな車が無かった。国産メーカーにも何か出して欲しいところ。といっても、日本市場で売れるかどうかと言えば、これがノーだから、まず無理なのだろうが。

A君:ちょっと、説明してみましょうか。普通の車の長さが半分ですね。2.56m。幅は、1.52mで小型車になりますね。ちょっと縮めれば軽で登録できるようですが。排気量も600cc(軽いターボ付き)で、軽の制限660ccよりも小さい。

B君:そんな車が日本で売れる訳がない。

C先生:でもね、普通の駐車場に2台おける。東京都の車で、2名以上乗っているのは希だから、すべての車をスマートにすると、まず道路がかなり空くだろう。駐車場などのインフラが2倍に使える。ただし、全く立派な車には見えないから、プリウスの時にも感じたが、余り強引なことはできない。都内の車ヒエラルキー社会の最下級になってしまったからで、いろいろな状況で譲らなければならない。

 スマートと隣人所有のビュイックリーガルワゴンの比較。占有面積は40%程度。

A君:それは別として、社会的な負荷を考えれば、占有面積×燃費で車の税金を計算しなおすべきだと言うことになりますか。

B君:自動車メーカーは大反対だろう。そんなことをすれば、大きくて立派な車は売れなくなる。儲けの少ない小さな車だけが売れてもしょうがない。

C先生:エレクトロニクス関係だと、ミニチュア化したときに、ある種の価値がでるのだが、車の場合には、残念ながら、価値が出ないみたいだ。しかし、それを社会的なシステムで補うというのが、今後のあるべき姿ではある。税金で補うのは、なかなか難しい。余り利かないのではないかと思われる。むしろ、ミニチュア車は、それ専用の駐車場を用意するとか、駐車禁止を緩めるといった方法が良いのかもしれない。あるいは、ロードプライシングをやるときに、ミニチュア車の場合には、割り引くとかいう方法もある。定員の50%以下の乗車の場合には、割増金を取るといった方法でも良いが。

A君:それはそれとして、自転車は積めるのでしょうか。またミニチュア車は走るのですか。

C先生:不思議なことに、折りたたみ自転車は積める。リアエンジン・リアドライブなのだが、大型スーツケースが1個は積める程度のトランクスペースがある。
 走りだが、結構性格はハードだ。サスペンションはガチガチに硬い。タイヤも、リアは185/55−15。前は165/65−15。F1みたいにサイズが違う。スペアタイヤはない。
 今、まだ馴らし運転中だから、エンジンの回転数を上げないが、そうだと運転しにくい。エンジンの回転数が上がっていないとトルクが全く無いからだ。1800回転ぐらいまではスカスカだ。言うのを忘れたが、左ハンドルだし、セミオートマティック車。前進6段変速でバイクみたいだ。オートマ車のクリープがないので坂道発進では後ろに下がる。しかもパワーステアリングはない。

B君:安楽車ではなさそうだ。

A君:燃費はどのぐらいですか。

C先生:1回ガソリンをいれただけなので、まだよく分からないが、非常に悪い使用条件だが、14.5km/リットルぐらいだった。絶対値だけを見れば余り良いとは言えない。それでも同じ条件で使ったプリウスよりはかなり良いようだ。

A君:それでお奨めですか、その車。

C先生:これだけですべてを済ませるという訳には行かないだろう。長距離はつらそう。腰に来そうだ。家族でどこかに出かけるとしたら、レンタカーが必要になるだろう。それはそれでまた良いと思うが。

A君:「環境派なら車を持つな」、という話にしばしばなりますが。

C先生:車と環境の話は、しばしば議論になるところである。環境屋は車を持つべきではないという主張もしばしば行われる。それも一つの正論である。高月先生の研究によれば、普通の市民生活で、車関係のエネルギー消費量が非常に大きいから、これをすべての人が止めれば、環境負荷は相当下がるだろう。日本全体で、そのような合意ができるのならば、それはそれでまた良しである。しかし、現時点の日本の経済の状況を考えると、現実的にはまあ無理である。となると、持続可能性を主張する環境屋としては、なるべく環境適合型の車を示して、こんな考え方も可能です、といったプレゼンテーションをすることも必要だと考える。その方向に社会をリードするシステムの提案ができることが重要だと考える。
 先週スウェーデンに行ったが、「環境屋は海外出張をすべきでない」、という話もよく出る。飛行機の環境負荷は実はかなり高いからである。今回、3万キロ以上飛んでいるが、恐らく一人分の二酸化炭素の排出量は、スマートで1万キロ走行分ぐらいになるのではないだろうか。「じーっとしている」ことが環境負荷が低いのは事実。全員が環境のためを思って「じーっとしている」、これも異常な世界には思えるが。
 とはいえ、何を言っても、言い訳でもある。まあ理由は兎に角として、車を買う行為そのものは、やはり環境負荷は増やしたことだと思う。現世代の皆様に対しては、特に問題だとは思わないが、未来世代の皆様ご免なさい。


付録:最近の車関係の情報。

ムジ・カー: 無印良品が企画。マーチをベースにした1000cc車で、93万円。1000台の限定商品。インターネットで受注。バンパー、ドアミラーに塗装なし、リアシート・荷物室はビニール素材張り。低公害車。

ホンダステップワゴン好調: 10日間で1万2000台受注。 ホンダ・ストリーム、トヨタ・エスティマも好調。この手の車の平均乗車人数は、いったい何人なのだろう。

ハイブリッド車:トヨタはエスティマのハイブリッドを出すらしい。これは、プリウス的な高度ハイブリッド。4WDは、車輪内にモータが組み込まれるらしい。
 それ以外にも、クラウンにハイブリッドを出す予定と聞くが、これは、多分アイシンのハイブリッドで、簡易型。ホンダ方式に近いものではないかと想像する。フォードにライセンスすることにしたハイブリッドというものがこれなのだろうか。
 ホンダは、シビックのハイブリッドを出す出すといっているがいつ出すのだろうか。インサイトなる実験車は、日本では売れていないが、米国では意外と売れたようだ。あの手の2座は、ちょっと気の利いたOLの車のようだ。

アイドリングストップ車: スズキアルトに1車種ある。これは燃費が良いようだ。ごく最近、ビッツにもアイドリングストップが出た。期待できそうである。しかし、いずれもマニュアル車である。クラッチを踏んだとたんにエンジンを掛けるという操作ができるからだろうか。アクセルを踏んでからエンジンを掛けていたのでは間に合わないのだ。オートマだとどうすればよいのだろうか。なんらかの工夫が必要だろう。
 プリウスの場合、なぜオートマティック(といっても通常のオートマティックとはまったく違う機構)でもアイドリングストップが可能なのか、といえば、それは、発進時は、いつでも電気モーターだけで走るから。理由は簡単。