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COP6評価:個人発言 01.07.2001




 COP6に対して、様々な立場の個人がCOP6に対して、何を語ったのか、何を要求したのか、解析をしてみたい。ソースは、日経、読売、毎日、朝日の各新聞。


C先生:それでは、日経から行ってくれ。

A君:まず、2000年10月2日付けですから、かなり前のものです。
 日本政府代表の朝海和夫氏(地球環境問題担当大使から)。
 −森林吸収について。「森林については、多い国少ない国いろいろあり状況が異なるので、各国の国情を加味して合理的に取り扱うべきだというのが日本政府の立場だ」。
 −最大3.7%を森林吸収で賄うという政府の考え方に無理があるのでは。「原子力発電所の新設などが難しくなるなど、推進大綱をまとめた当時と比べて状況が変わってきており、積算の見直しを進めている。6%削減は非常に厳しい目標で、あらゆる手段を講じなければ達成は難しい。自動車などの運輸や家庭での排出抑制に取り組むことも重要だ。森林だけに頼ろうとしているわけではない」。

B君:どうやら、森林吸収は若干無理筋だというのは言外に読みとれる。ただし、言葉通りに動かないわけには行かないという決意もあるように読める。3.7%に付いては、外国が認めなかった、というプロセスを取って国内の合意を形成しようと思っていたように思える。

C先生:これまで余り話題にしてこなかったが、実は、2000年時点で、1990年当時の排出量に安定化するという当初の目標があったのだ。しかし、現実には、9〜10%オーバーということになってしまった。何も対策を取らなかったし、エネルギーの価格が比較的低めに推移したから当然なんだが。このあたりをもっと発言してもらわなけば困る。

A君:次は京都大学の佐和隆光先生。10月23日の日経羅針盤の記事。森林吸収については、次のような発言があります。
京都大学の佐和隆光先生
 「森林の吸収に関しては”樹木の成長促進のための森林管理による吸収量増大”をどのように算定するかという難問が残されている」。


B君:比較的、評論家的スタンスで書いている。欧州が90年以降の植林・再植林に限るべきだという主張で、日本は管理されている森林の吸収量を含めるべき、と対比的には記述しているが、日本の主張が「炭素蓄積量」で評価するという京都議定書の根本思想にあわないことには目をつぶっている感じだな。

C先生:佐和先生は、6%の削減は可能という立場。特に経済学者だから、排出権取引でやればよいというのかもしれないが。

A君:次が、慶応大学の環境経済、山口光恒先生。日経の10月27日の経済教室の記事。欧州でも京都議定書は実現困難として再交渉を求める声が出つつあるという紹介をしています。
慶応大学の環境経済、山口光恒先生
 「こうした状況で8月21日、英フィナンシャルタイムスに注目すべき社説が載った。概要は”議定書の削減義務遵守はおぼつかない。遵守には思い切った対策が必要だが、民主主義のもとで国民がそれを望まない以上、政治家もそこまで踏み切れない。遵守不可能な目標にこだわれば最終的には、議定書への信頼性を失墜させ、国際協力の試みを失敗に終わらせる。いかに困難でも達成可能な目標での合意を求めて京都議定書の再交渉をすべきである”、というものである」。
 「個人的には、再交渉には反対である。再交渉となれば、振り出しに戻り、折角の第一歩が水泡に帰するおそれがある。また、先進国が安易に再交渉のテーブルにつくことは、途上国の理解を得られず、将来の途上国の参加の可能性を低くする。COP6の成功に全力を上げることは言うまでもないが、日本はまず国内対策をきちんと実施した上で、削減意欲がさめぬよう、世界に対し京都議定書の早期発効を働きかけるべきだる」。

 ということで、森林吸収については、ほとんど記述がありません。

B君:いやーー。真意は何かだな。森林吸収について記述が無いが、日本式の森林吸収をある程度認めさせてでも、各国の合意を取り付けるべきだとも読める。

C先生:実際のところ、最後の最後には、日本の森林吸収として3%ぐらいが認められそうになったという噂があるが、これは、理屈は抜きにしてでも各国の合意を取り付けることが第一だ、そのためには譲ろうとしたプロンク議長の方針の結果だったとも見える。勿論、ドイツ、フランスの環境相が認めなかったのだが。

A君:そして、COP6決裂後になりますが、11月26日の日経。
茅陽一先生(地球環境産業技術研究機構研究所長)。
 「日米は森林吸収分の十分な算入を前提に温暖化ガス削減を受け入れた経緯があり、今回の交渉でも森林吸収の見積もりで容易に譲れなかった。今後日本は森林吸収に必要以上にこだわるのではなく、排出権取引で削減分を稼ぐといった柔軟な姿勢が必要だ」。


B君:やはり、京都では何か裏にあった。それで合意が最終日になんとか取れたのかもしれない。

A君:外国人なもので述べなかったのですが、京都会議の議長だった、エストラーダ氏が日本や米国の森林吸収に対してある種の不快感を表明していたようですから、茅先生がそう言われても、京都議定書に何も書いていないし、3.4条項はもともと第一目標期には適用しないということが基本だったようですから、極めて内々の合意だったのではないですか。
 いずれにしても、個人名で意見が分かったのは、日経では以上です。

B君:それでは、読売に行く。11月10日の記事。
まず、山本一元氏(経団連・環境安全委員会共同委員長、旭化成工業社長、産業構造審議会委員)。
 「(京都議定書の削減目標について)、これらの目標値の受け入れにあたっては、森林や土壌によるCO2の吸収源などを活用することで、各国の合意が成立した事実を忘れてはならない。日本の6%は、省エネルギーを進めているため、他の国に比べて極めて厳しい数字である。日本は、COP3では、2.5%削減という方針で会議に臨んだが、シンクや京都メカニズムの活用で積み増しをして6%という数字になった。そのことを、98年6月に採決した地球温暖化対策推進大綱で表明している。COP6でもこの方針を堅持することが重要だ。最近、内外のNGOを中心に、吸収源としての森林の範囲を限定すべきだなどとする動きがあるが、COP3合意時に決着済みの問題であり、いたずらに議論を蒸し返すことはさけるべきだろう」。


A君:滅茶苦茶強硬派ですねえ。しかし、森林吸収に天然林を含めるということが、COP3ですでに決着した事項だというのは、どうやって証明できるのでしょうか。議定書そのものには、どこにもそんなことは書いていないし、科学的な常識で読めば、炭素蓄積量で評価すると書いて有るのですから、1990年の時点での吸収を全く考慮しないで、第一目標期間になったら、突然森林の吸収量を勘定に入れるというのは、論外なんですがね。

B君:そう思う。多分、自分で議定書を読んでいないのだろう。部下に読ませて、あとは、政府の方針はそうなんだ、という業界と政府とのある意味での密約、いやいや大綱に3.7%という森林吸収を獲得するために努力すると書いてあるから、密約でもなんでもないですが、国がそのような方針だったんだから、産業界は合意したのだ、という政府への脅しだな。

C先生:そのあたりがあるから、日本政府としても、容易には3.7%を放棄できない。産業界に顔向けできないから。実際、製造業という範囲内でならば、余りCO2放出量が増えていないのも事実。まあ、不景気だったからという変な追い風はあるが。増えたのは、運輸と民生(家庭用、オフィス用など)なんだ。次の表を見て欲しい。

98年度 日本のCO2排出量 単位 百万トン と経団連の安定化シナリオ

        CO2排出量(1998年) 1998/1990  安定化シナリオ2010/1990
産業      475             −3.2         −7
運輸      257             +21.1       +17
民生      296             +11.3         0
その他     160              +7.4        +5
合計     1188             +5.6          0

これが安定化シナリオで、産業界はその通りやっており、問題は、政府が無策だから運輸、民生がどんどん伸びているというのが経団連の主張なんだろう。

B君:読売は、個人的意見が余り出てこない。決裂後の11月29日に、COP6の決裂の責任をEU内部でも内輪もめ(責任のなすり付けあい)をやっているとの記事がでている。
 それによれば、米国にいったん譲歩案を飲ませた英国のプレスコット副首相(環境担当)が、フランスのボワネ環境相(女性)が「疲れ果てて、提案の中身を理解できなかった」ことが最終的に調整が失敗に終わった原因として批判。これに対してボワネ環境相は、プレスコット副首相を「救いようのないマッチョ」と反撃。

A君:そのボワネ環境相は緑の党ですよね。もともと妥協する気などは無かったのではないですか。

C先生:そうなんだろうな。プレスコット副首相の見解では、「COP6などは、もともと建前論などをやる場ではなく、最初から妥協しかない会議なのだ」、ということで、「緑の党には環境保護だけしか見えない」ということで、からかったのかもしれない。意外と品の無い事件で、英仏がこれをやるぐらい厳しい状況だったのだろう。

A君:毎日に行きます。記事の総量だけから言うと、毎日がもっとも多いですよ。
 10月25日の記事。国際シンポジウム「地球温暖化防止への戦略」における各人の主張。まず、寺門良二氏(経団連環境安全委員会地球環境部会長、新日本製鐵副社長。中央環境審議会専門委員)。
「日本の産業は努力している。鉄鋼業界では、自動車軽量化のために非常に強い鋼材を開発したり、清涼飲料缶を軽くするために、非常に薄い鉄板を開発したりしている」、
という感じの主張が続いています。

B君:コメントするまでもないか。自動車の軽量化なら本当はアルミ、清涼飲料缶もアルミの助けを借りないと鉄だけではできないし、また、アルミの方が軽いなどというと、鉄屋さんから怒られるから。

A君:同じシンポジウムで、佐和隆光先生(既出、京大教授)。
「6%削減は可能だ。比較的楽観している。エアコンなどの効率向上は目覚ましい。バブル期のゼイタク志向から質素倹約志向へとライフスタイルの美意識が変化した」。


B君:そんなの甘いよ。なんでトヨタのセルシオがこんなにも売れているのだ。

A君:同じく、浅岡美恵氏(気候ネットワーク代表。弁護士。中央環境審議会専門委員)。
 「日本は、自分たちが楽になるように抜け穴を探すようなことをしている。国内対策に踏み出していないためだ。3.7%が問題だ。98年で二酸化炭素の発生量が下がっているが、それは単に不況だったからだ。排出量の約8割をしめる産業界の取り組みが大変重要だ。経団連の自主行動計画の目標を引き上げよ」。


B君:産業界は8割を占めているのか。先ほどの表だと、民生だけで2割強あるから、その計算はおかしいのでは。

A君:民生部門には、オフィスなどの発生を含むので、それも産業界。運輸部門も産業界、その他の農業なども産業界とすれば、まあ、8割は産業界。

C先生:浅岡氏の立場ではそう言うしか無いのだろうが、市民各人の意識をもっと省エネ型に変えないとという発言も欲しいところだ。

A君:おなじシンポジウムで、浜中裕徳氏(環境庁地球環境部長)。
 「このまま対策をとらなければ、2010年で、1990年比20%以上の削減が必要になる。民生部門のうち、業務施設が16%、家庭が10%増えている。経済的措置を含むあらゆる手段を総動員する政策と推進メカニズムが必要。森林吸収は、吸収源が抜け穴にならない範囲内で、森林経営などの努力に対するインセンティブになるような各国の事情を考慮した柔軟な方式で合意すべきだ」。


B君:環境庁でも、政府の中だから当然だけど、森林吸収重視型発言。森林は、3.3条項のFAO方式の計算値−0.3%までは妥当性があるが、3.4条項関係の吸収は、ストイックに見ればどんなに少なく見積もっても単なる抜け穴にしか見えない。

A君:10月30日の小さな記事に、気候ネットワーク主催のシンポジウムにおける様々な人々の発言が載っています。
 浅岡美恵氏「省エネとリサイクルの徹底、車の燃費や家電製品の改善など国内対策だけで目標を達成できるとの案を提案」。
 和田政信氏(日産自動車環境安全技術部長)「自動車分野の試算には疑問が残る。低公害車を選ぶという国民の納得も必要だ」。
 渋谷隆氏(通産省環境政策課長)「経済全体への影響分析が欠けているが、省エネ技術を具体的に指摘しており、温暖化防止を循環型社会の構築として考えている」。
 
竹本和彦氏(環境庁環境保全対策課長)「詳しく積み上げられており、政府案に盛り込めるものがあれば、可能な限り盛り込めばよい」。

B君:日産自動車の和田氏の真意は、やはり大きな車でないと高くは売れないということなんだろうなあ。

C先生:通産省の渋谷氏も、省エネ型になると、商品価値が低くなると思いこんでいるのだろう。実際のところ、エアコンにしたところで、消費電力の高いものは安価で、省エネ型は高価なんだが、そのあたりどのように考えているのだろうか。テレビにしても、液晶型は消費電力が少ないがやはり高価。もっとも、液晶は製造に相当なるエネルギーが掛かっているとの情報もあるので、全体としてどうなんだろう、ということはあるが。

A君:11月6日の記事。森島昭夫先生(環境庁中央環境審議会会長、IGESの理事長)。
 「これまでは環境税の議論すらけしからんという雰囲気があったが、政府税制調査会も検討しようと言い出し、産業界にも容認の声が出てきた。中環審はどういう環境税のあり方がいいのかを議論し、提案したい」。


B君:余り具体的な考え方が見えないなあ。
 選手交代で、朝日新聞に行く。
 11月8日記事で、大国正彦氏(王子製紙社長)。
 「3.7%の旗色が悪いのは理解している。しかし、日本は海外でもっとも植林をしている国だ。もしも認められないのなら、京都議定書の発効は見送るべきだ。王子製紙では、国内の社有林19万ヘクタールの維持費と植林に年間20億円近くかけている。森林吸収が認められなければ、何のために投資しているのかと株主に問われると、経営者として説明できない。(規制や税で目標を達成しようとすることに対して)、産業界が自主的にやっているのに、役所が規制を掛けたら産業は国際競争力をうしなって死んでしまう。環境税は安直な発想で、課税したからといって排出量がへるとい保証はない。製紙業界は、国に貢献しているつもりで社有林を維持し植林している。こうした努力が評価されずに課税されるのは理不尽だ」


A君:これまた、超強硬派ですねえ。やはり、京都議定書をつぶすべきという主張のように読めますね。

B君:京都議定書の根本理念である二酸化炭素排出量の蓄積量で削減を測定することに対しては、全く理解がないようだ。

C先生:社有林を維持するのに金が掛かるのなら、売れば良いと思うが。売れないのだろうな。日本のような人件費が高いところでは、林業はすでに産業として成立するかどうか、極めて難しい状況。海外植林だって、国内生産よりもその方がウッドチップとしてのコストが安いからやっているのが実状。株主に責任転嫁をするというのは、現代流とも言えるが、新しい責任回避の方法論とも言える。

B君:次は、稲盛和夫氏(京セラ名誉会長)。
 「仏教に”足を知る”という言葉がある。ここまで来れば、これ以上の経済成長が必要なのか考え直すときではないか。健全な地球環境があってこその企業活動だ。技術力と生産性の向上で乗り切れば、温暖化対策も乗り越えられない訳がない。議定書は早期に発効させて、縛りの中で削減の英知を出すべきだ。人間自主的にと言われると、自分からしんどい方向には行かないものだ。環境税も排出権取引も有効な方法だろう」。


A君:やはり、名誉会長のお言葉ですね。

C先生:稲盛氏は仏門に入ったからね。「足を知る」という言葉は、私も個人的に好きな言葉だ。しかし、余り早めに「足を知る」と、チャレンジ精神も無くなるから、どの段階で「足を知る」のか、その解釈が人によって違う。

B君:11月29日。決裂後の記事。
 寺門良二氏(既出)、「国際的合意ができるまえに、国内対策の議論をするのは時期尚早。環境税は効果がはっきりしない。排出量の割り当ては、社会主義経済だ」。

C先生:まあ、寺門氏も自分の立場からは、そうとしか言えない。しかし、環境税だって、効果がでるように方式を色々と実験的に探るという態度が必要。稲盛氏が言うように、産業界に苦しい規制をクリアーしたとき、再度日本の産業が国際的な競争力を付けると思おう。大国氏のような見解では、短期的には良いだろうが、10年スコープで物事を考えたら、とんでもない。製紙業も、業界リーダーの見解がこれでは、日本国では終わる産業かもしれない。

A君:まあ、色々ですが、市民一人一人の意識が変わるには時間が掛かりますから、やはり時間的な余裕が欲しいですね。寺門氏のように国際合意ができてから国内対策をやればよい、というのは遅きに失する可能性大ですね。

B君:日本の産業界は、かなり良くやっているのも事実だが、さらに高いハードルが出てくれば、もっと真剣になって良い結果を出すだろうと信じているんだ。だから、当面苦しくても、将来投資は早くやった方が良い。

C先生:株主が認めないという話があったが、株主が意識を変えないと。日本という国は、現時点で、二分した国家だ。もっも国家だけではなくて、東大そのものもそうだが。要するに、「早く改革に着手をしなければ沈没をするだけだ」、という意識をもっているグループと、「既存の利権を確保しながら、なんとか継続して行きたい」という意識のグループに二分している。現状の国レベルでは、国民を議員数(選挙区割り)で考えると後者がやや多いのだろう。しかし、純粋に人数ベースでは、すでに前者が増え始めているのではないだろうか。これが明確になるのが、次の参議院選挙のような気がする。前者が勝てば、日本の温暖化対策は進むだろう。