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  CO2削減シナリオ その1:運輸部門 02.17.2002




 京都議定書が批准されると、日本は2008年から2012年までの第一約束期間における二酸化炭素の排出量を1990年比で6%削減しなければならない。森林吸収といったいささか理屈には合わないながらも削減量をまけてもらった。
(このあたりの詳細は、2000年の記事をご参照ください。
COP6の評価:http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/COP6Eval1.htm)、
 森林吸収分、それが3.7%とすると、90年比で2.3%の削減が必要となる。
 これを2008年に実現しようとして、日常生活がどのようになるかを検証してみたい。今回は、運輸部門について。
 

C先生:小泉首相ではないが、21世紀にはいろいろと痛みを伴うことが多い。エネルギーを大量消費することは、快適性とほぼ同義だから、二酸化炭素の発生量を削減するということになれば、快適性をある程度犠牲にすることになる。

A君:日本の現在の二酸化炭素排出量は、1999年実績で、13億7千万トン。1990年比較で、6.8%上回っている。京都議定書の1990年基準が12億8千万トン。マイナス6%で減らすとすると、約12億トン強で、削減量が1億7千万トン。例の森林吸収分があって、マイナス2.3%で済むすると、目標値が12億5千万トンで、1999年実績からの削減量が1億2千万トン。

B君:多少誤差はあるだろうが、1億2千万トンを減らすということを前提としよう。それをどこで減らすかの議論になるな。

A君:運輸部門というのは、言葉の通り輸送などに関わる経済活動で、日本ではここだけで大体2億5千万トン程度の二酸化炭素を毎年放出しています。

C先生:それでは、内訳を説明して貰おうか。

A君:大きく分けると、人を運ぶ旅客部門と貨物を運ぶ貨物部門になります。後は、どの方法で運ぶかだけです。簡単な話で。

B君:旅客部門=旅客航空+旅客海運+旅客鉄道+バス+タクシー・ハイヤー+自家用車ということだ。

C先生:そして、自家用車による二酸化炭素の放出量が、98年実績で1億3千万トン程度だ。

B君:ということは、自家用車を全部やめれば、削減目標を達成できる。最低でも、運輸部門だけで目標達成を目指してみよう。

A君:自家用車の全廃は、そうもいかないでしょうが、確かにその通りです。

C先生:ここでの問題は、絶対量もさることながら、増加率が大きいところだ。すなわち自家用自動車で90年比で30%以上も増加してしまった。

B君:いくつかの要因を記述すると、まず、重くなったこと。1990年の乗用車の平均車重は1.01トンだったものが、98年には1.18トンになっている。その理由だが、車の評論家達が「車の剛性が高いから操縦性が良い」などと、燃費を無視して「剛性こそ車の本質」みたいな論調であおるものだから、メーカーとしては重くせざるを得ない。安全性対策も重量増加の原因。さらに、ナビなどの装備充実も原因の一つ。

A君:自動車の燃費は、エンジンが同じなら基本的に車重に比例するから、ここで20%近く増加していることになります。

B君:もちろん台数も伸びている。98年度の自家用乗用車の保有台数は4990万台で、90年比で42.9%の大幅増加。

C先生:その割には、二酸化炭素が30%増程度で済んでいるのは、1台あたりの走行距離が減っているかららしい。

A君:先ほど、燃費は車重に比例するといいましたが、理論的には、自動車の燃費目標が強化されていることによって、トップランナーの燃費は改善されているのですが。

B君:それが一つのマジックで、実走行には余り利かないが、カタログ値を出すための運転モードである10・15モード試験では燃費が良くなった。ところが、アクセルをグイッと踏んだとたんに、燃費悪化という車が多いということだろう。現在、直噴型のガソリンエンジンが結構あるが、それはどうもそんなことらしい。

A君:どうやらそのようで、実燃費は、90年の8.27km/リットルが、98年には、8.09km/リットルへと低下しています。

C先生:ということは、自家用車の実燃費を16km/リットル以上にすれば、そこで、1億3千万トンの50%である6500万トンの排出が削減できることになる。タクシー・ハイヤーを同様に取り扱えば、さらに500万トンぐらいが削減可能。ここで合計7000万トン削減。

A君:実燃費16km/リットル以下の車には、禁止税的な税額を課すことになりますか。

B君:そういうことになる。2008年時点で走っている車で、16km/リットルを超す車には、税金を数倍にするぞ、ということを早く決めないと。車は10年以上走るから。それに、実燃費を求めるには、10・15モードのような試験方法では駄目で、もっと実質的な試験法を採用することも条件だ。

C先生:ヨーロッパでは、2009年までに140g/kmという二酸化炭素排出量を達成するという自主基準がある。これは、それぞれのメーカー全体としての平均値でこの値を満たすということだ。

A君:この基準を満たすのは、例えば、トヨタならヴィッツの5MT。これが平均となると、実に厳しいですね。

B君:ドイツでは、小型直噴ディーゼルを旨く使って、この値を満足させる車があるが、日本は、ディーゼルというと駄目のようだ。これも自動車評論家のレベルが低いからかもしれない。

C先生:小型化は必然のようだ。しかし、日本ではそのような意識がない。4リットルものエンジンを積んだ車に一人で乗るのは、かなり犯罪的だ。どこかの国のように、自家用車の定員の半分以下の乗員で走る場合には、高速道路などの料金を2〜3倍ほど取るといったことによって、実走行距離を下げることが可能だろう。ここに、IT技術の活用の可能性があるように思える。

A君:実質上の運用改善によって、残った7000万トンの旅客部門からの放出量を1000万トン削減して、6000万トンにすることでしょうか。

B君:これで旅客部門で8000万トン削減。

C先生:となると、残りは貨物部門からの削減だ。

B君:貨物部門=貨物航空+貨物海運+貨物鉄道+貨物自動車。

A君:貨物航空はまず非常に量が少ないので、無視できる。貨物鉄道はかなり効率が良いのと、最近は量も少なくて、これまた無視できる。

B君:海運は効率が良いので、まあ、現状維持でしょうか。削減ができそうなのは、貨物自動車分の7500万トン。

C先生:そこも、燃費の改善と空荷による運行を避けることだ。ここで、燃費改善で50%削減の3750万トン。IT技術を活用して、空荷による運行をできるだけ止めるという運用改善で250万トン、合計4000万トンの削減。旅客部門と合わせて、これで、1億2千万トンの削減になる。

A君:かなりきつそうですが、これで目標をまあまあ達成、というところになります。

C先生:いずれにしても、2008年から始まる約束期間を見定めて、早く大方針を決めないと。どうも今のスピードでは手遅れになりそうだ。