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バイオマスは頼りになるか 03.18.2001




 化石燃料には限りがある。それは、地球が数億年に渡って太陽から貰ったエネルギーをへそくりをして、ちょっとずつ貯めたものだからである。今の人類の行為は、「道楽息子が先祖代々の資産を食いつぶすこと」、と全く同じやり方だと言える。太陽光発電、風力発電などの再生エネルギーが注目を集めているが、全地球的には、バイオマスエネルギー、すなわち、植物・木材を中心とした自然エネルギーに依存する可能性の方が高い。しかし、日本ではそのバイオマスエネルギーがどのぐらい頼りになるのか。
 今回、参照している本は2冊である。
 山地憲治、他著、「バイオエネルギー」、ISBN4-88701-861-4、ミオシン出版、2500円
 井田徹治著、「データで検証!地球の資源ウソ・ホント」、ブルーバックスB1316、940円


C先生:朝日新聞の3月13日分の「窓−論説委員室から」でも議論されている話題だ。日本でもバイオマスが大きな可能性がある、といった主張が多いが、この論説でも、「進まないのはなぜか」といった疑問を呈している。そして、これを推進するような政策が必要ではないか、と主張してもいる。しかし、どのぐらいの可能性があるものか、については記述はない。

A君:その記事ですが、バイオエネルギーとは言っても、結局、森林再生の話なんですよね。現時点における日本のように、人件費が高い国では、森林作業が余りにも高くついてしまって、コスト的に合う訳はないのです。

B君:森林保全にどのぐらいの労働力を割くべきか、これは、リサイクルなどの静脈産業にどのぐらいの金を回すかといった問題とも似ている。いずれも、空洞化した日本の雇用を確保しなおすという意図がある。しかし、違う部分もある。なぜならば、森林の保全で得られる商品は、基本的にはエネルギーと紙ぐらいだろうか。これは国際商品だから、それなりのコストでなければ、商売にはならない。リサイクルは、廃棄物量を減らすことで最終処分地の保全になるから、これは、土地利用に関わる国内商品なんだ。「土地利用」は輸入するのはできないから、いくらに値段を付けてもある程度は許される。

C先生:土地利用については、日本はすでに大量の土地を輸入しているようなものだ、すなわち、日本のような経済活動をするには、現在の3倍以上の土地が必要だという計算結果がある。曰く、資源や食糧を輸入することは、土地を輸入しているようなものだという主張なんだが。

B君:食糧も国際商品だから、大した値段ではない。ところが、最終処分地を作るには、NIMBY(Not in My Backyard)症候群との利益相反を解決する必要があって、最終処分地を新規に建設するコストは高い。

A君:日本における林業復活だって、森林保全すなわち自然保護という意味で見れば、それなりの価値があるのでは無いですか。

C先生:自然保護には、かなり高額の投資をしても確かに正当性があるかもしれない。しかし、現在の自然保護は、オオタカのような絶滅危惧種が居たから、といった理由、あるいは、白神山地のようなブナ林といった希少性が無いと保護の対象にならないのが現状。極普通の雑木林など、教育用だと考えれば結構重要な保護対象だと思うのだが。

B君:しかし、やはりどのぐらいの量のバイオマスが使用できるのか、どのぐらいのコストで使えるものがどのぐらいあるのか、これが決定的だ。

A君:いや、その前に、化石燃料がどのぐらいもつのか、これが必要なのではないですか。山地先生の本にも、ブルーバックスの方にも引用されているIIASAが作った表をまず見てみましょう。
 単位がGTOEとなっていますが、石油換算ギガトンという量です。いろいろなエネルギー源を、発熱量を基準にして、相当する石油の量に変換したものです。

エネルギー供給量の展望 単位:石油換算ギガトン

確認可採埋蔵量 潜在可採埋蔵量 小計 追加不確実資源量
石油
 在来型 150 145 295
 非在来型 193 332 525 1900
天然ガス
 在来型 141 279 420
 非在来型 192 258 450 400
 ハイドレート 18700
石炭 606 2794 3400 3000
小計 1282 3808 5090 24000
ウラニウム
 軽水炉 57 203 260 150
 FBR 3390 12150 15540 8900

注1:1GTOE=41.86EJ   
注2:1年間の全エネルギー消費量:8.5GTOE
注3:データ出所:Global Energy Perspective、 Cambridge Univ.Press,1998

A君:ここで、非在来型というのは、オイルシェール、オイルサンド、メタンハイドレート、深層ガスなどを意味します。

B君:現時点での全世界でのエネルギー消費量は、石油換算で約85億トン=8.5GTOEだ。化石燃料の確認可採埋蔵量が1282GTOEだから、現在程度のエネルギー消費量/年に留めることができたとしても、単純計算で150年で使い尽くすことになる。

A君:しかし、今後発見されることがほぼ確実といえる潜在可採埋蔵量が3808GTOEあって、450年分。しかし、中国やインドが経済発展を遂げれば、現在のエネルギー消費量で治まるとも思えないので、確認可採埋蔵量+潜在可採埋蔵量で300年といったところでしょうか。

C先生:これは、ブルーバックスの方では否定されているシナリオなのだが、高速増殖炉を使えば、確認埋蔵量だけでも3390GTOEあって、400年分。半分とみても200年分。このあたりまで計算して、個人的には「500年程度エネルギーはもつ」と言っている。ウランの潜在可採埋蔵量まで計算に入れれば、さらに500年プラスで、1000年ぐらい持つのではないだろうか。

B君:そろそろバイオマス関係にいくか。まず、地球上の存在しているすべてのバイオマスを勘定すると、これをストック量というが、570GTOEで、在来型の天然ガスの確認可採埋蔵量+潜在可採埋蔵量よりも多い。しかし、このストックを減らしてしまってはしょうがない。

A君:そうです。再生可能な分、すなわち、太陽がくれている日銭型のエネルギーによって再生される分だけが使える量です。その量は、62GTOEで、それでもなんと現在の全エネルギー使用量の7倍ぐらいあるのです。

C先生:ただし、それが全部使用可能でエネルギーになるというものではない。まず、地上のものだけではなくて、水圏のものなども入っている。海洋の面積が大きいためもあって、大体地上:水圏=3:2ぐらい。水中のバイオマスは使いにくい。地上のものは、食糧などに使わなければならないし、公園やゴルフ場などにも使われている。だからどうやら、使えるのは大幅に減少して8.1GTOE程度になってしまうようだ。しかも、すでに0.5GTOE程度は、途上国で燃料用に使用されている。それでも、有効活用すれば、化石燃料の節約に絶大な効果がある。

B君:再生可能エネルギーというと、太陽光発電、風力発電などということになってしまうがちだが、バイオマスエネルギーはずっと頼りになる。

C先生:バイオマスを無視した再生可能エネルギーのシナリオは無い。特に、全地球的な視点ではそうだ。

A君:世界的には、食糧残査などだけではなくて、積極的にエネルギー作物を作るというシナリオのようですよ。

B君:しかし、それは食糧生産と競合するから、そう上手くは行かないだろう。2050年ぐらいまでは良いかもしれないが。

C先生:2100年の人口次第ということかもしれないな。

A君:はいはい。確かに2100年には、食糧残査だけになるようなシナリオでした。

C先生:バイオマスエネルギーは、地球の能力そのものだとも言えるから、結局は人口がどのぐらいに収まるか、これが最大のポイントだ。

B君:日本は人口が減るから、なんとかなるのか?

A君:そうそう。世界の話だけではなくて、日本の話をしないと。日本の場合には、バイオマスエネルギーとして石油換算2100万トン=0.021GTOE程度が使用可能で、その他に、もしも森林再生が上手く行けば、さらに、800万トン=0.008GTOEぐらいの間伐材がエネルギー用に使用可能なのではないか、という計算のようです。日本の年間エネルギー使用量は、石油換算で5億3000万トン=0.53GTOEぐらいですから、日本の場合には4〜5%程度で、バイオマスは余り頼りにならないということになります。

C先生:日本の2100万トンということは、現在の太陽光発電の年間供給量が石油換算で4万5000トン程度だと考えると、それでも十分に大きい。しかし、日本の場合に、バイオマスエネルギーでまかなうことができるエネルギー量が、たかだか5%までだとすると、日本の場合には、太陽光発電、風力などを重視したシナリオを重視することになる。

B君:日本の場合、石油換算800万トン相当の間伐材をどのように考えるかだ。

A君:それはコストの問題でしょうね。比較の対象になるのが、まず同じ固形燃料の石炭。山地先生の本のデータでは、得られるエネルギーあたり$1.7/GJといった価格です。木材の価格ですが、用材、製紙用、肥料・エネルギーの順で安くなります。用材ならば、45,000円/立米ですが、製紙用チップで8000円/立米、ところがエネルギー用となると、エネルギーの価格のしばりが来て、1000円/立米とぐっと下がります。ざっと1トンで1000円ちょっとでは、運搬費用も出ません。廃家電の引き取り価格がいくらなのか、考えてみて下さい。だから、エネルギー用に木を切ることは無いのです。

C先生:現時点、日本産だと用材ですら価格競争力を持たない。用材を取った残りの部分がまず製紙用チップに、そして、樹皮などがエネルギー用になっているのだが、肝心の用材が売れなければ、どうしようもない。

B君:だとすると、やはり京都議定書が発効して、二酸化炭素の排出に対してかなりの炭素税が課せられるというシステムにならないと、日本でバイオマスエネルギーが使われることは無いということか。

A君:それは一つの要素ですね。バイオマスは、20年程度で炭素を循環させているエネルギー源ですから、京都議定書による温暖化ガス排出の対象にはならないです。すなわち、理想的には二酸化炭素排出量はゼロ計算。しかし、実際にバイオマスエネルギーを使おうとすると、これまた化石燃料に依存せざるを得ないので、完全にゼロという訳ではなくて、バイオマス発電効率を20%とすれば、二酸化炭素発生原単位は、およそ33g−C/kWhで、石炭火力の8分の1。

C先生:炭素税を、日本の間伐材を使えるように、といって額を算出してたらとんでもなく多額になるだろう。朝日新聞の論説の言う政策がこれだとは思えないよ。何を考えているのだろう。我々も案を出そう。

A君:朝日は、「補助金行政の復活」を言っていると思う。

B君:古い。自分は、そんなことよりも、木材の輸入禁止だ。

C先生:やはり貿易の自由化は駄目という議論か。

B君:以前は南洋材を輸入しすぎているとして問題にされた国なんだから。その反省をすれば良い。

A君:20世紀は米国主導で自由主義経済というものを目指して、それに上手く乗って日本も経済大国になった訳ですが、持続型社会という観点から見れば、全部自由というのは残念ながら何か違うのではないか、という感触はありますね。

B君:21世紀の終わり頃には、ある地域、例えば半径1000km以内は自由主義経済、それ以上の地域に対してはかなりの統制経済、といった形になっている可能性だって否定できない。

C先生:21世紀の終わり頃に、国境という概念が残っているかどうか。軍事境界線としては残る可能性が高いが、経済の境界線としては、EUのような形態になっている可能性がある。また民族という概念がどうなっているか。どんどん混血は進むからね。まあ、タリバンによる仏像破壊の様子などから見ると、宗教というものは残っているように思うが。いずれにしても、自由主義経済で今後100年間行けるとは思えない。十分先を見通して、環境・エネルギー政策を考えるべきだろう。
 結論だ。世界的にはバイオマスエネルギーはかなり使える。というよりも、使わなければならないだろう。日本では、量的に少ないので余り頼りにならない。日本で間伐材がエネルギー源になることは、現状ではあり得ない経済の原則を根本的に変えないと無理だろう。