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瓶商という商売  02.18.2001 add02.25




 ペットボトルでもある程度のリサイクルが行われているが、リサイクルでは環境負荷低減効果に限界がある。使い捨て容器をリサイクルするよりも、やはりリターナブル容器の環境負荷は低い。ところが、現状では、リターナブル瓶は絶滅危惧種である。「利便性と経済性」という現代の怪物に食われて、日々存在量を減らしているのが現状である。現在、リターナブル瓶にはビール瓶、牛乳瓶などがあるが、実は、昔から一升瓶なるリターナブル瓶が存在していた。そこに、「瓶商」という業が存在し、重要な役割を背負っていた。
 またまた容器の話で恐縮だが、瓶商に関する今回の記事は、何回かの連載になる予定。

コメント到着:某ビール会社の社会環境部長氏からのコメントを頂戴したので掲載


C先生:本日は、瓶商という商売の話だ。瓶商がきちんと業を営めることが、循環型社会ではきわめて重要なことなんだが。下手をするとこちらも絶滅危惧種になりそうだ。ただ、ここ数年で社会の方向性が変われば、再度、繁栄しそうだが。

A君:瓶商の話ですか。大分前になりますが、ミツカン酢の容器がかつてリターナブルであったというときの話ですが、そのときに、瓶商の存在があることを知りましたが。

B君:現在どうやら800社ほど存在しているらしい。しかし、全体的なガラス瓶退潮の中で、商売的には厳しいようだ。

C先生:今日はA君を聞き手の役割にして、B君と二人で説明する。まず、リターナブル瓶の流れについて概略を説明しよう。本日のネタは、「リターナブル瓶の社会的定着をめざす業界ビジョンおよび実現方策」なる報告書で、全国びん商連合会からそのうち正式に出版されるが、本HPはそのゲリラ的先取りだ。興味をお持ちの方は、メール等でお知らせいただければ、入手法を、これまたそのうちにお知らせする予定。
 
B君:了解。リターナブル瓶といっても、牛乳瓶は宅配されているため、まさに牛乳業界内の話なので、除外。となると、現在、対象になるのは、ビール瓶と一升瓶。その他、本当はリターナブル瓶ではないのだが、中型小型の酒瓶など。
 リターナブル瓶が出る元は、飲食店と一般の消費者。飲食店は、酒販店に瓶を返す。そこから直接ボトラーに戻る場合もあるが、瓶商が回収することもある。瓶商が回収したものは、洗瓶業者が洗って、種別に分けて、そして、ボトラーに戻される。ここでボトラーとは、主としてビールとお酒業界を言う。
 一般の消費者からリターナブル瓶が出てくるのは、主として自治体による分別回収といわゆる集団回収という名の市民活動。集団回収は、基本的に資源回収業者に回ることが多いので、ガラス瓶の場合には、カレットという形のガラス原料になる方が主流で、瓶が再使用に回ることは少ない。自治体による回収では、瓶商が回収し、それを再度使用するルートに乗せることが有り得る。

C先生:集団回収なるものも、これは自治体が補助金をどのぐらい出すかで、話が全く違ってくる。別にその費用を何かの目的のために欲しいという動機ではないのだろうが、やはり自治体が補助金を出していないものの場合には、うまく回転しない。瓶に対して補助金を出している自治体は少ないと思われる。
 自治体回収についても、実際のところ様々な状況があって、東京23区のように、箱に入れて回収をするような場合には、ガラスに傷がつきにくいので、再度瓶として使用される可能性が高い。このような瓶を「生き瓶」と呼んでいる。その対極が袋に入れて回収するタイプで、市民が他の金属製品などとまとめて袋にいれて出すと、ガラス瓶には傷がついたり割れたりして、瓶としては再使用が不能になってしまう場合も多い。だから、全国すべての自治体が、是非とも、東京23区なみのやり方にして欲しいところだ。欲を言えば、瓶の回収は、いわゆるP箱、あのビール瓶が入っているような箱を使って収集すれば、生き瓶が増える。酒販店からの回収はそんな状態なのだ。

B君:全国びん商連合会の会員数は、以前は1000軒あったのが、平成12年に756社となった。これが減りだしたのが、丁度平成になったころから。そして、平成5年からは確実に減っている。その理由は、バブルにやはり影響を受けているようで、瓶を貯めておくヤードが必要だが、それが、地価高騰のあおりを受けて売却されてしまったこと、そして、最近の減少は、販売価格が低下して、事業意欲が低下したことなどのようだ。

A君:やはり、経済の状況がリターナブル向きでは無くなったということを意味するのでしょうね。
 ところで、先程の説明にあった、リターナブルではないが、再使用している酒瓶というのはどんなサイズですか。

C先生:統計に出てくるリターナブル瓶としては、ビール、一升瓶、牛乳以外に、日本酒、焼酎用の小型瓶、飲料水用の瓶、食料品用、調味料用などがあるようだが。これらの回収率はあまり高くは無い。良いものでも10%ぐらいのものだ。

B君:そもそも、回収システムを、(1)保証金型、(2)市場型、(3)逆流通型に分ければ、(1)保証金型がビール瓶、コーラ瓶、一部の飲料瓶で、(2)市場型に一升瓶や四合瓶などが入る。これら以外にも、一部の洋酒瓶などもほんの少々リターナブルが使われることもあるようだ。(3)としては、宅配牛乳、宅配の生協によるR瓶、といったものがある。

C先生:瓶商が取り扱うのは、(1)、(2)。特に、(2)の市場型が本来の対象。

A君:そもそもガラス瓶などは、何トンぐらい使われているのですか。

C先生:大体のところ、ガラス瓶の製造量が年間191万トンぐらい。輸入が23万トン。そのうち、リターナブル瓶が31万トン。以前は、リターナブル:ワンウェイの比率が1:3ぐらいだったのが、いまでは、1:6ぐらいになっている。

A君:ビール瓶だと99%ぐらいが回収されて、最近では90%ぐらいが再使用されるようですが、他の瓶を10%程度回収して、それが再使用される割合はどんなもんなんでしょうか。

B君:それは、どのぐらいの瓶が検査工程で不良になって、カレットに変わるかということで決まる。例えば、一升瓶の場合だと、酒販店からの回収だと95.5%が使えるのに、先ほど話しが出た、自治体経由の回収、しかも袋で回収されるようなスタイルだと、63%しか使えるものが残らない。残りがガラス屑=カレットになってしまう。カレットになってしまうと、リサイクルしても、それほど有用とも言えないのだ。特に特殊な色がついている瓶は駄目。だから、なるべく、瓶のままで再使用できることが望ましい。

C先生:一升瓶やビール瓶というものは、再度使用することを最初から考えて作られているが、それ以外の瓶を再使用しようとすると、色々と問題が出るものらしい。清酒の小さな生酒用の瓶やワンカップ容器などでは、ラベルを貼っている糊に問題がある場合が多いようだ。特にワンカップの容器のラベルを普通の方法で落とそうとしても、60%以上が落ちないらしい。

A君:そんなつまらない問題で、瓶をすててゴミにしてしまうというのは問題ですねえ。

B君:それも仕方がないという部分もあって、もともとリターナブル容器ではなくて、作る側も使い捨ての容器だと思っているから、洗って落ちやすい糊などは使わない。

C先生:すべての容器をリターナブルにするといった、デンマーク的なやり方は無理としても、多少でも低負荷型に近づくためには、まず、そんな小さな問題点を改めるような意識を持たないといけない。

A君:そんなリターナブルでもない容器を集めて、商品になるのですか。

B君:どうやらそうらしい。同じサイズの同一デザインの瓶を集めて、中小の造り酒屋などに持っていけば、それなりに買ってくれるらしい。場合によると新しい瓶の価格とほとんど変わらない場合でも、造り酒屋は、もともと一升瓶で慣れているから、瓶は再使用するものと考えているところが多いのかもしれない。

C先生:むしろ、大規模な醸造業者の方に、リターナブル容器に拒否感を持っているところがあるようだ。それは、顧客対策なんだ。消費者の極々一部なんだが、クレーマーと称する人々がいて、何かと商品に文句を付ける趣味(実益も兼ねてる?)を持っている人がいる。そのような人々のために、容器のような本来の商品では無いものを過剰品質にせざるを得ない。企業としての格を問題にするところが、このような性向が強い。例えば、「剣菱」というお酒は、新瓶ばかりだそうだ。しかし、実際のところ、リユーズ容器だからといって、割れやすいとも言えないようだ。

A君:クレーマーという人種の存在も環境負荷を増やしている。まあ、そうでしょうね。さて、将来のことですが、今後、リターナブル瓶を増やす方向なのか、それとも、減らす方向なのか、これが問題ですね。

B君:日本酒の業界は、必ずしもリターナブルを減らそうということではないようだ。それを実現するためには、300mlの共通容器を新しく作ることが必要だと思う。

C先生:今回、アンケートもやっているが、その中での統一瓶の導入を支持した醸造業者は、約75%ぐらいだった。

A君;共通容器ということだと、当然、瓶のデザインが同じということですよね。それだと、いやがる業者が多いのではないですか。

C先生:そう。本来は中身を売っているメーカーであるにも関わらず、容器の見た目のデザインが売り上げに影響すると考えている事業者が、大体30%ぐらいある。これが、どのような規模の業者であるか、解析は行われていないのだが、恐らく大手の業者である可能性が高い。

B君:フランスのワインは、ほぼ同じ形の瓶に入っている。メーカーとしての独自性は、ラベルだけ。それで十分勝負になる。ワインは質で勝負だから、という主張していると思うが。

A君:日本酒だって、質で勝負なんでしょ。

C先生:中小の醸造業は、恐らくそのように考えている。しかし、大手は必ずしもそう思っていないのではないだろうか。大手醸造業としては、大量に商品を売らなければならないから、味などで極端に特徴的な日本酒を作る訳にはいかない。となると、中身の質では勝負できないから、大多数の消費者が瓶の見た目に釣られて、気まぐれに他の銘柄を選択してしまうことに恐怖心がある。

A君:そうなると、なんらかのリターナブル瓶に対する経済的な優位点を制度的に保証しないと無理だということになりますね。

B君:そういうこと。大手酒造業者は、放っておけば、よりコスト的に有利な紙容器やペットボトルに走るだろう。それをリターナブルに戻すには、いくつかの経済的な誘導策が必要だ。

C先生:アンケートでも、それも聞いている。それによれば、まず、現在の容器包装リサイクル法では、回収率が低いリターナブルボトルに対して、逆インセンティブになっている、との理解を多くの醸造業者が持っているようだ
 例えば、ダブルカウント問題がある。もともと容器包装リサイクル法は、廃棄物としての容器を減らすために作られた。もしも容器を2回以上使ったとしても、ゴミになるのは最後の1回だけだから、本来ならば、1回分としてカウントすべきなのだ。ところが、リターナブル容器でも、90%以上の回収率がある場合だけが特定容器になって、そうならないものは、容器包装リサイクル法に基づく負担金を使用回数のすべてにわたって払うことになる。このダブルカウント問題は、なんとか解消する必要がある。
 解決法としては、リターナブル容器としての認定を受ける条件を緩和して、60%程度の再使用率があれば良しとすることだろう。

B君:再使用容器を使用する場合には、なんらかの減免措置を講ずるべきである、という主張もされている。

A君:むしろ、使い捨て容器全般に対して、課徴金を高くすることが重要なのではないでしょうか。現在のペットボトルのように、たった20数%しかリサイクルされていないので、その再商品化費用だけを事業者負担にしている。これは、リサイクル費用を負担するという現在の原則から言えば、それしか方法が無いが、他の容器が大体60%ぐらいリサイクルされているので、ペットボトルに対してかなり有利になっている。

C先生:諸外国では、もっとリユースを重視した政策が行われている。諸外国の詳細は、次回にするが、循環型社会基本法ができたのだから、日本としてもリユースを優先した経済政策を取るべきだろう。これをやると、素材産業は厳しい状況を迎えるが、ある程度仕方がない。それが瓶商の希望だけではなくて、我々の希望でもある。
読者からのコメント

先日、2月18日付の「瓶商という商売」を拝読いたしました。2〜3疑問に思うところがありましたので、ご連絡いたします。

1. 「再利用」と「再使用」
    リターナブル容器をリユースする場合は、「再使用」という表現をとることになっています。「再利用」とは「再商品化」・「再資源化」をさす言葉として通常使用されているのではないですか?

2. C先生の発言で、「リターナブル」と「ワンウェイ」の比率が今は1:6になっている、という部分がありますが、191万トンとか31万トンとかいうのは、あくまで、新びんの生産量です。比率をいうのであれば、あくまで、市場での流通量で議論すべきと考えます。ビールびんだけでも市場への出荷量は100万トンをゆうに超えており、市場における「リターナブル」と「ワンウェイ」の比率は、使用びんのトン数で言う限り、まだまだ「リターナブル」の方が多いと認識すべきと考えます。

3. 容器包装リサイクル法における、自主回収ルート認定の条件を、90%から60%に改訂すべきとの議論について

   この議論は、おかしいと思います。容リ法18条は、90%以上回収していれば、市場(市町村)にあまり迷惑かけていないから、100%全量について義務を免除しましょうという趣旨であり(10%分は市町村負担)、もしこの基準を60%にさげると40%分は誰か負担するのでしょうか。市町村の納得は得られないと思います。
  60%回収しているのであれば、60%分は除いて40%分を負担すればいいとなっていますので極めてリーズナブルです。40%は回収していなくて、現実に市場に排出したままで市町村のお世話になっているのですから。
   この問題は(生協さんのようにリターナブル容器を推進している事業者に対して支援するとともに、リターナブル容器へのインセンティブを働かせるという考えで議論するとすれば)むしろ、18条の問題ではなく、別途、自主回収・再使用容器1個(単位容量)あたり何円かの税控除制度の導入や、自主回収の各段階(30%〜50%の場合、50%〜70%の場合、70%以上などの各段階段階に応じて、何らかの見返り・メリットの設定(自主回収分についての再商品化義務免除とは別に)、のような仕組みの導入を考える必要があると思います。
   なお、これに関連する段落で、リターナブル容器のダブルカウント問題が指摘されていますが、その意味がよくわかりません。自主回収していないものは、あきらかに、市場に排出したままになっているわけですから、再商品化費用を負担するのは当然のことと考えますが・・・。