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エコプロダクトの悩み(その1:電気・電機業界編) 04.30.2000




同僚の山本良一教授(現在は、東京大学国際・産学共同研究センター)の著書に「エコデザイン−ベストプラクティス100」(ダイアモンド社1999年12月16日、¥3600:もう少々安ければ売れそう)なるものがある。現時点におけるエコデザイン、エコプロダクトの総まとめをした本である。環境経営、影響評価などの記述は、なかなか元気があって良いのだが、本書の約40%を占めるベストプラクティス100の内容は、残念ながら、「これだ!」と感心できるものが極めて少数である。どうも、エコプロダクトには共通の悩みがありそうである。


A君:B君、C先生が来る前にちょっと聞きたいのですが、山本先生とC先生は、正式所属は違っても、同僚ですよね。競合しないのですか。

B君:余り大きな声では言えないが、傍目で見るところ、そもそも両名とも、忙しすぎて余り顔を合わせていない。だから、余り競合しているようにも見えない。それに、省庁関係でも分担が自然と決まっているようにも見える。山本先生は、科技庁の材料系と通産省、C先生が環境庁、厚生省と文部省と科技庁の政策系。

C先生:(登場して)、今日は山本先生の本を話題にするということだったな。山本先生は、どちらかと言えば、「今は企業を誉めてその環境行動を変化させる時期」との認識で、「誉める」。私は、「とは言え、余り調子に乗りすぎているところにはお灸を」というように役割分担をしているのだ。今日は、どのぐらいの温度のお灸にしようかな、これが本日の課題かもしれない。

A君:それでは、どうしましょうか。なんと言っても、100種類もあるもので、全部挙げる訳にも行きませんよね。

B君:それでも、まとめながら、100種総まくりの方が面白いのでは。

A君:できるところまで、ということで行きましょうか。ざっと見て、エコプロダクトにはどんな種類があるのでしょうかね。

B君:一応、山本流の分類を紹介すべきではないか。

A君:はいはい。そうしましょう。
分類は次のようになっています。

9種類の要素技術による分類:省エネルギー、省資源、エコマテリアル、リサイクル、易分解性、生分解性、クリーン、長寿命、その他。

7種類のライフサイクルステージによる分類:素材、生産、流通、使用、リユース、リサイクル、廃棄。

4種類の革新ステージによる分類:改良のステージ、リデザインのステージ、機能革新のステージ、システム革新のステージ。

もしも全部の組み合わせがあるとするのならば、9×7×4=252種類あることになります。

B君:でもベストプラクティス100。全部の種類は無いということだな。それに、最後の革新ステージによる分類というのが分かりにくい。

A君:確かに。これは、デルフト工科大学のBrezetが言っていることのようです。改良のステージは、文字通り、改良を行って環境負荷を低下させる方法。リデザインは部品の設計をかなり基本的なところに戻って行うことによる方法。機能革新のステージは、どうも、製品のコンセプトそのものを変えようということのようです。となると機能革新という訳語が分かりにくい。最後のシステムの革新。例えば、社会システムの変更まで含めた改革。例えば、購入からリースへ、などが含まれるようですね。

B君:境目が明確な訳はない。だから、まあ直感の世界だな。ちょっと例を挙げて、検討してみよう。

A君:ベストプラクティスの最初の2件は、いずれもテレビです。
◎シャープ「液晶テレビ」=省資源、省エネ、リデザイン
◎松下電器「マグネシウム合金のテレビ」=エコマテリアル、リサイクル、改良
液晶テレビの選定理由は、省資源、省エネルギーでして、1953年の国産テレビ第1号と比較して、容積で7%、重量で10%、消費電力で19%に過ぎない。46年間で10倍も改善された。ちなみに価格は同じであるので、可処分所得を考えると、25倍の向上とのこと。リデザインのステージと位置付けられています。

B君:それなら、最近の録音が可能なMDは、200g。45年前の録音機は、恐らく20kg。100倍も改善されている。最近のICレコーダを比較の対象にすれば、500倍かもしれない。MDやICボイスレコーダは取り上げられているのか? 

A君:いや、有りません。きっと、MDについては、メーカーが環境商品だと主張していないからなのでは。

C先生:この間掲載した記事「情報技術は新環境技術か」のところでも比較したように、今では、携帯電話で文字情報をやり取りができるが、これまでは、手紙、FAXなどを使用しなければならなかった。エネルギー効率の莫大な改善が見られる。だから、i−modeにしても、Jskyにしても、あるいはH"(エッジ)にしても、相当なる環境技術だと思う。しかし、メーカーが環境商品だと主張しないから、山本先生の本には載らない。

A君:もう一つの、マグネシウムテレビですが、これは有名なものですよね。外装がマグネシウムになっているために、リサイクルが容易。さらに、マグネシウムの放熱性が良いために従来の放熱孔が不要で、ホコリが溜まることもない。高度循環型製品であると位置付けられています。

B君:ところがこれが困るらしい。マグネシウム合金を使っているのは、最近では、ソニーのバイオが先陣を切った超薄型パソコンも同様。なにせ発火する。だから、鉄の処理プロセスやプラスチックの処理プロセスに紛れ込むと、危険極まりない。

C先生:社会全体が、このマグネシウム合金型のテレビになれば、難燃剤を入れたスチレン系の樹脂ケースを使ったテレビが無くなって、それはリサイクル率の向上にはつながるだろう。しかし、過度的な時期には、却ってマイナス面が出るだろう。しかも、テレビの場合には、比較的新しい廃棄テレビが資源として中国やベトナムなどに輸出されているらしい。だから、マグネシウム合金だからリサイクルをやって回収して、などというシナリオを書くと、まあ大外れで、全く回収されない可能性が高い。まあ、難しいものだ。デポジット制度でも活用して、必ず生産者に戻るようにすれば良いのかもしれない。だから、製品単独ではなかなかエコプロダクトにはならない。社会システムとの協調が重要なんだ。

A君:ちなみに、このマグネシウム合金テレビは、革新のステージは、「改良」。要素技術は、エコマテリアル、リサイクルでした。

B君:こんなスピードでやっていたら、無限に時間が掛かるぞ。

A君:急ぎましょう。ばーーあっとリストを作って飛ばします。
◎ソニーの「手回し発電ラジオ」=省エネルギー、リデザイン
 これ欲しいです。
◎松下電器「遠心力洗濯機」=省エネ、省資源(水)、改良
◎三洋電機「超音波洗濯機」=省エネ、省資源(洗剤)、改良
◎松下電器「ペルチェ方式ワインクーラ」=省エネ、クリーン、改良 

B君:そのワインクーラの価格が知りたい。

A君:続けます。
◎三菱電機「再商品化率80%のエアコン」=省エネ、リサイクル、改良
◎ダスキン「レンタル電気掃除機」=リサイクル、易分解、長寿命、その他、システム革新

B君:いよいよ「システム革新」がお出ましだ。これまで買うのが当たり前の商品をレンタルにしたからだろうな。月100円で本当に使えるのなら良いかもね。しかし、テレビ広告などで見たことが無いので知らなかった。どのぐらい普及したのだろうか。ちょっと調べて見よう。
なるほど。Webによれば、AC用とDC用があって、仕事率がACで20W、DC用で10W(連続使用時間7分)。普通家庭用のものだと、仕事率が10倍以上あるので、まあ、ほんのちょっとした掃除だけ。でも、レンタル料は4週間で本当に100円のようだ。大きなモップが4週間1000円もするのと比較すると、なんという値段だ。

A君:続き。
◎東芝ライテック「電球型蛍光灯」=省エネ、長寿命、リデザイン。
  これは家でも使っている。
◎松下電器「二重のサークライン蛍光灯」=省エネ、長寿命、改良
  二重にしたため、45%も省エネだそうです。
◎オムロン「世界最小最軽量の上腕型血圧計」=省エネ、省資源、改良
  
B君:でも、その世界最小最軽量が該当するのなら、先ほどのMD、携帯電話が該当しないのがおかしい。

A君:続き。
◎デジタルメディアエンタテインメント「スカパーによる音楽配信サービス」=その他、システム革新
 これなら、インターネットなどでの音楽配信サービスだって、同じだ。
◎日本IBM「省エネノートパソコン」=省エネ、改良
 省エネ20%ということで余りインパクトは無い。むしろ、IBMの地道なリサイクル設計あたりの評価をすべきだったか。
◎日本電気「自前のエコシンボル」=省エネ、リサイクル、易分解性、改良
 これは商品ではない。自前だけに他社の説得が難しい。
◎キャノン「エコラベル3付きのプリンター」=省エネ、省資源、リサイクル、改良
 これも商品ではない。情報開示は大変結構。
◎富士ゼロックス「再資源化率95%のコピー機」=省エネ、リサイクル、易分解性、長寿命、リデザイン
◎リコー「再製造コピー機」=リサイクル、易分解性、長寿命、リデザイン
◎京セラ「感光体無交換のプリンター」=長寿命、改良
  構造材無交換と書いてあるが、多分感光体の間違い
◎日本IBM「再使用性能の高い素材によるパソコン」=省エネ、エコマテリアル、リサイクル、クリーン、改良
◎東芝「ハロゲンフリープリント基板のノートパソコン」=クリーン、改良
◎日本電気「エコポリカを使用した交換機」=クリーン、改良
  同時に、鉛量を削減しているようだ。この交換機などは、どうせ回収が可能。だとしたら、すべてを適切に処理すれば良い訳で、鉛フリーにする必然性は無い。

B君:いよいよ、「クリーン」のお出ましだな。東芝は環境調和型プリント配線板にハロゲン、アンチモンフリーの多層基板を採用したため、ダイオキシン類を発生させない。このあたりがまともなエコプロダクトと怪しいエコプロダクトの丁度境目だな。クリーンといっても、もともとどの程度の環境影響があったものが、改良後には、どの程度の減少が見られたのか。これを語らない限り、まあ、雰囲気だけのエコ商品。
 日本電気のものは、100%回収するのであれば、それだけの理由でエコプロダクトだろう。そうでなければ、エコプロダクトとも言えない。要するに、社会システムが重要だ。

C先生:これに、まもなく、鉛フリーの基板が加わり、さらに、電線も「エコ電線化」が加わるのだ。これが、多くの電機メーカーのレベルだ。消費者の先取りをしている積りなのだろうが、消費者のこのあたりの感覚は、素人も消費者運動の活動家も、かなりレベルが低いから。

A君:ここまでで、大体電気・電機関係が終わりましたので、一段落しましょう。

B君:これまでのところ、怪しいものはいくつかあったが、それ以外には、そんなにひどいものはない。しかし、インパクトが強いものもない。

C先生:エコプロダクトの悩み、それは、環境商品を作ろうと思っているところからは、なかなか本物の環境商品が出ないこと。むしろ、先端技術を追求しているところからは、自然と環境商品がでているのに、それを環境商品だと言えないこと、これがまず第一のポイント。
第二のポイントが、世の中のレベルに合わせたエコプロダクトを開発しなければならないと思いこむことによる喜悲劇。しかし、「欧州エコヒステリー」の国々に輸出するには、それをやらなければならないという要素はあるので、ある程度は仕方がない。
第三のポイント。エコプロダクトは、社会システムと協調して、初めて本当のエコプロダクトになる。しかし、社会システムを改善するのは、さて、誰の役目? 企業が社会システムまで作るのは、極めて大変な時間と労力を要する。ビールのリターナブル瓶は立派な社会システムだが、これを真似た回収システムを作ろうと思っても、清涼飲料の業界では体力が持たない。流通業界が率先すれば、実施可能かもしれない。これは、最後のころに出てくるから、いずれそのうち。