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生ゴミ処理機のその後  11.28.99




 日立製の生ゴミ処理機BGD−120を使い始めてから、3ヶ月以上が経過。かなり寒くなって来たが、気温と消費電力のデータが広い範囲で取れ始めた。やはり消費電力は空の状態が一番高い。ゴミを投入した方が消費電力が下がる。
 さらに、基材の交換も行った。なぜか今回は、松下製の基材を使用してみた。というよりも、買いにいったら、それしか無かったのだ。結果的には、多少温度変化に対して、消費電力が余り依存しないような感じ。まあ、余り確実ではないが。
 最低気温が10度を切り始めたので、自作の保温箱の中に設置してみた。これが究極の省エネルギーになるか。

C先生:前回の報告は、1ヶ月経過報告だったが、それから2ヶ月が経過した。当時、まだ夏の気温だったが、秋の気温になって、温度範囲が広がった。また、基材の交換も行った。

A君:やはりゴミの発酵熱による消費電力の低減効果は有るのですか。前回だと、果物の腐りかけたものを入れると消費電力が下がるという話でしたが。

C先生:より明らかになったと考える。果物は確かに有効だ。しかし、状態によっては、水だけでも消費電力が下がるという現象が出ている。これは、基材交換直前の状態だったが、恐らく未発酵分が乾燥して蓄積されている状態になっていたのだろう。水を加えることで、乾燥していた成分が発酵を始めたのだろう。
 それが証拠には、基材を交換してからは、水だけで消費電力が下がるという状況が無くなった。
 
A君:松下製の基材に変えたそうですが。

C先生:それしか売っていなかったので、仕方がなかった。日立の基材は、おがくずとコーヒーかすとのことだが、松下製の基材は、むしろ、かんな屑を細かくしたような形をしている。要するに薄い板状なのだ。この形状の方が、水や空気の保持能力は高いのかもしれない。
 なんとなくという程度だが、昼と夜の気温差が相変わらず8〜10度だが、昼と夜の消費電力の違いが、前ほど顕著ではなくなったように思う。考えられるのは、松下の基材に植え付けられていた菌の特性。低温でも活動をするような菌が居たのかもしれない(追加:さる筋からの情報では、松下製基材には菌は意図的には添加されていないとのこと)。もう一つは、空気の保持能力の向上による保温性が上がったかという可能性。まあ良く分からない。
 念の為、図1に日立製の基材の使い始めの頃、図2に松下製の基材が6割ぐらい加えられた状況を示す。松下製の方が、なんとなく、粒子が大きいのが分かるだろうか。


図1:日立製の基材。使い始めのころ。おがくず状。


図2:松下製の基材。若干、元の基材が混じっている。かんなくず状。

A君:基材が駄目になるというのは、どうやって判定するのですか。

C先生:中川さんに聞いたら、鼻と手で判断とのこと。今回、水分が多少多めになったときに、臭いが出るようになった。図3を見てもらうとそんな感じが分かるだろうか。ちょっと湿った感じになって、団子状態になる。しかし、しばらく余りゴミを入れなければ、また乾いてきて臭いも無くなる。


図3:基材がそろそろ駄目。しかも水分がかなり多い状態。

A君:冬のコートを着せるという話はどうなったのですか。

C先生:着せてみた。11月23日のことだ。東急ハンズで20mmの発泡スチロールの板を買って来て、それを細工して、保温箱を作った。箱というよりは、板でコートを作って着せたようなものだ。蓋の部分は、緩衝材につかうポリエチレン製のプチプチシートで簡単に作っただけ。発泡スチロールは、地面までの長さだが、そのうち、1ヶ所は30mmほどスリット状に空間を作った。写真4が全体図。蓋の上には、温度計が乗っている。写真5がそのスリットを示している。


図4: 発泡スチロールで作った保温箱。上に乗っているのは温度計。


図5: 底面からの空気の取り入れを可能にするスリット。こちら側に吸気口が、反対側に排気口がある。 当初は、排気側にスリットを作らなかったら、大失敗。現在は、排気側に同様のスリットがあり、こちら側は、スペーサで若干塞いでいる。

B君:生ゴミ処理機は、空気を循環させていますよね。空気の出入り口ですか、そのスリットは。

C先生:そのつもりだった。日立BGD120は、底面に排気口と吸気口がある。当然ながら、排気口からは、やや温度が高く、湿度も高い空気が排出される。勿論臭い成分も含んでいる。最初の思惑では、この温度の高い空気を再度吸気させれば、省エネルギーになるだろうと考えて、排気口側にはスリットを作らなかった。そうすれば、吸気口には半分ぐらい新しい空気が、半分ぐらいは温度の高い空気を吸い込むだろうと考えた。
 確かに、消費電力は格段に減少して、最高気温が16度しか無かったにも関わらず、25〜30度の気温のときの消費電力になった。しかし、どうも駄目そうだ。なぜか。まず、臭いが強い。それに排気の湿度が高く結露して、回りに水分がでてきた。とうことで、排気側にもスリットを作り、吸気側のスリットは逆に小さめにして、テストしている。

A君:コートも保温に利いているのか、コートによって吸気温度を上げる効果が大きいのか、分かりませんね。

C先生:まあそんなところだ。とにかく、色々と装置を改善すれば、より省電力型の生ゴミ処理機が作れそうだ。まだ、発展段階ということだろう。

A君:でも、その発泡スチロールを使うことで環境負荷が増えてますね。

B君:先生が得意なLCA(ライフサイクルアセスメント)的には、この保温箱はどうなるのですかね。

C先生:まあ、我々としては、保温箱で省エネルギーです、といって終わる訳にはいかないだろうな。それでは、簡単なライフサイクルアセスメントをやってみて、ざっくりした感触を掴んでみよう。では頼む。

A君:はいはい。出番ですね。まず、エネルギーか二酸化炭素か、どちらかが簡単です。それ以外は結構面倒ですが、どちらで行きますか。

B君:まあ、電力が比較対象になるのだから、二酸化炭素で良いだろう。日本の電力は、原子力の割合が3割ぐらいあるから、二酸化炭素の放出が若干少ない。これが現時点の日本の事情というものだろうから。

A君:了解。それでは、二酸化炭素排出の原単位を次に出しましょう。
   HDPE樹脂(高密度ポリエチレン) 247g−C/kg
   発泡PS樹脂(発泡ポリスチレン)  822g−C/kg
   電力1kWh               408gCO2/kg
 いつものことなのですが、データは様々なものがあってどれを使うか悩みます。ここではたまたま発泡ポリスチレンを含むデータがあったもので、そのデータ(化学経済研究所、基礎素材のエネルギー解析調査報告書H5.9)と、産業環境管理協会のデータを使いましょう。問題は、今回使っているポリエチレンのプチプチシートのデータが無いことですが。
 
C先生:今回使ったのは、発泡ポリスチレンが約200g、ポリエチレンのプチプチシートが約50g、その他、粘着テープ若干。HDPEの値を使うのなら多少補正が必要。このポリエチレンは低密度タイプ(LDPE)だが、その製造エネルギーは若干高い。プチプチシートを作るのにもエネルギーが必要だろうから、またここに粘着テープの分も入れたことにして、247g−C/kgを350ぐらいにして使って補正しよう。相当荒い近似だが、競合品を比較するという訳でもないから良いだろう。

A君:となりますと、大体次の様です。石油起源のものですから、最終的には焼却されたとして、二酸化炭素の発生量を加えますか?

B君:どちらかと言えば、今回の解析は、この保温箱の負荷を大きめに見積もるべきだろうから、入れたらどうだ。

A君:となると、プラスチックの原料としてナフサを250g燃やした場合の二酸化炭素量を加えましょうか。
 ここまでで、こんな感じになります。
    200gの発泡ポリスチレンの製造       約600gのCO2
    50gのポリエチレンプチプチシートの製造   約65gのCO2
    焼却されて出る二酸化炭素分         約780gのCO2
      合計                     約1445gのCO2
これに、ゴミになったときの輸送段階の二酸化炭素などを足したとして、エイヤの約1500gの二酸化炭素の発生ということではいかが。

C先生:まあ良いところかな。となると、電力の原単位で割れば、3.7kWhということになる。またまた繰り上げて4kWhの電力消費分に相当する資材が、今回の保温箱には使われたことにしよう。

A君:どのぐらいの保温効果があるかですね。

C先生:それでは、その効果の推定をやってみよう。


グラフ1:運転電力と気温との関係。3本の白線は、左から保温箱付きの平均的なもの(赤い点が保温箱付きデータ)、空状態の保温箱無しの平均的、上限と思われる線。

 グラフ1に消費電力と気温との関係をプロットしてみた。これまで分かっていることは、生ゴミ処理機のエサになるような発酵熱の高そうなものを入れると消費電力が下がること。それは保温のためのヒーターに必要は電力が節約になるからだ。ここでは、消費電力が多めの空の状態の中心付近と上限付近の2本の線がいれてある。
 グラフ1に赤い点でプロットしてあるのが、保温箱をつけてからのデータ。まだ数が少ないので、統計的に不安定だが、エイヤと線を引いてみた。ざっとした感じで、これから真冬に掛けて、運転電力が10Wぐらいは低いではないか。1日にすると250wh=0.25kWhぐらいの差はでそうに思う。となると、4日分の節約で1kWh。先ほどのように、保温箱の資材に4kWh程度相当のモノを使っているから、まあ16日分、2週間とちょっとで二酸化炭素の負荷は回収してしまうことになる。冬の期間を15週間とすれば、この保温箱の環境負荷を低減する効果は明らかだということになる。この保温箱だが、大切に保存すれば、2年間は使えるだろうし。

B君:環境負荷の低減に効果があることは分かったけど、経済的効果はどうです。また別問題ですよね。

C先生:これまた鋭い指摘だな。今回の出費は、材料代が1400円ぐらいかかっている。半分ぐらいしか使わなかった。残りの半分は別用途にとってあるが。25kWhの電力が節約になったところで、その価格は5〜600円程度。経済的には合わない。2年間使ってもまだ合わないだろう。3年でどうかだな。でも発泡ポリスチレンは3年間はもたないだろう。
 要するに、生ゴミ処理機だって環境コンシャス派物好きのペット。処理機を買っても、自分の経済的利益になるという訳ではない。ゴミに対する考え方が良い方向に変わるけどね。今回の保温箱も同様にやはり物好きの遊びだな。
 どうしても、経済的に合うようにということなら、何か買ったときに付いてくる発泡ポリスチレンを貯めておいて使うことだろうな。しかし工作が大変だろう。経済性は要するに体力で補うしかない。これも資本主義の原則さ。

A君:C先生のプリウスでも、経済的には割に合わないですよね。そもそも同クラスの車より60〜70万円も高い車を買って、12〜15万キロ乗ったとしても、ガソリンの5000リットル分が節約できる程度。レギュラーガソリンがリットル100円になったとしたって、50万円。大体そんなに乗らないし。

C先生:リサイクルにしたってそうだ。リサイクルをして環境負荷を下げようとすると、経済的にはマイナスになるものが多い。現時点でプラスになるのは、アルミ缶、紙パック、携帯電話ぐらいか。ガラスもスチールも若干危ない。この状況を変えて、リサイクルすべきモノをリサイクルすると経済的にもメリットがでるような社会システムを作らなければ、いくら循環社会を実現するといっても無理な話なのだ。環境税制を考えるのがもっとも単純なんだけどね。この最後のところは、特に、通産省に捧げる言葉だ。