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自動車とエネルギー 10.22.2000




 大分先のことで恐縮だが、2001年3月24日に日本化学会において、「21世紀の自動車のエネルギー」という題名で講演をすることになった。そのレジメとして、「化学と教育」に同名の原稿を書く準備するために、まず、Webページを書いてみることにした。


C先生:自動車とエネルギーという題名で何を書くかということが今日の話題。エネルギーは多少広く考えて、燃料としてのエネルギーだけではなくて、製造に要するエネルギーにも若干は言及したいところだが、本日は、燃料の話だけ。

A君:まず、今の燃料から。ガソリン、軽油、天然ガス、電気。こんなところが現在でもあるエネルギー源ですね。まあ、ガソリンが圧倒的、軽油少々だけどNOx、SPMの排出は、ディーゼルの寄与率大。天然ガスと電気は無視できる程度しか存在していない。

B君:毎回言っていることだが、天然ガスと電気は、ガソリン税、軽油取引税に相当する税金を払っていないので、ずるい。

C先生:ガソリンがいつまでもつか、という話をして欲しいようなんだが、勿論、本当のところ未来予測などは当たらない、でもやるか、という程度の話。ひょっとすると、石油の生産は、2000年が最大だったということになっている可能性だってゼロではない。2001年以降も、1バーレル当たりの価格が35ドルぐらいで推移すると、どんどんと天然ガスなどにシフトが進むだろうから。

A君:もしそうなれば、ガソリンはかなり長い間使えることになりそうですね。まあ50年ぐらいは大丈夫ということになりませんか。

B君:これまで30年は問題ない、という直感的な議論をしてきた訳だが、確かに価格が高止まりをすると、もっともつことになる。

C先生:まあそんなところだろう。となると、未来燃料である水素の導入は遅れるだろうか。

A君:自動車の燃料としては、いくつかの条件が必要ですが、水素は、なかなかその条件を満たさないのですよ。
 自動車用燃料の条件
(1)エネルギー密度が高いこと:燃料タンクが余り大きいと非実用的だし、余りにも重いとこれはエネルギー損失が多くなる。
(2)満タンにする時間が短いこと:電気自動車の最悪なところが、実は性能よりもこれ。燃料スタンドが有ったとしても、満タンにするのに、数時間も待てない。
(3)燃料スタンドへの燃料の供給方法:米国などでは、パイプラインがあって、ガソリンを送っているらしい。日本ではタンクローリーだが。これも上の(1)、(2)の問題がある。やはり効率よく運送ができて、効率良くスタンドへ燃料を渡せなければならない。
(4)冷えた状態からすぐにスタートできるような車を作れること:これが結構難しい。今の車は、良くできている。

B君:水素を考えると、まず、燃料タンクとしては、水素吸蔵合金などを考えるのだろうが、吸収するのに時間が掛かるなあ。現在実用になっている水素を使った燃料電池のバスは、ボンベを積んでいるんだからね。バスには、高圧の水素を供給しているようだが、もしも、ボンベを交換すれば、「はい満タン」とすぐ行けることは行ける。

C先生:バスなら水素ボンベでもなんとかなるが、乗用車ではなんともならないのではないか。重たいから、人間一人で運べないよ、訓練をしないと。

A君:ガソリンだと普通の車で50リットルぐらいですよね。水素だと、50リットルのボンベ容量に150気圧ぐらいで詰めたとしても、300モル程度。600gにしかならないし、発熱量が、XXkcalぐらい。ガソリンなら、液体だから45kgぐらいになる。発熱量もXXkcal。航続距離をガソリン車と同じ程度にするには、XXリットルのタンクを用意することになる。(XXを埋めて見てください)。

C先生:水素ではないが、天然ガス車の場合にも同様の問題があって、トランクがほぼ全部燃料タンクだから。

B君:水素吸蔵合金を使えば、固体の中に水素が入り込んだような形で、結構詰まるらしい。ところが水素を吸収するには、相当の時間が掛かるのだ。だからといって、こいつを多数用意して、燃料スタンドで交換という訳にはなかなか行かないだろうなあ。やはり液体燃料は合理的なんだよな。気体燃料では、飛行機を飛ばすのは不可能だろう。

C先生:ということで、水素を燃料とする燃料電池を積んだ車は、すでに試作車が走っているので、いつでも実用になるという記事を見かけるが、実際には、まだまだ解決すべき問題は多い。

A君:将来は太陽光発電や風力だという人にも、水素万能主義的な人がいますね。このような電力で水を電気分解して水素を作れば、全く無公害だという人が。

B君:その水素をどうするか。これが問題だよな。

C先生:個人的にどうするのが良いか、と問われれば、自動車用の燃料にするのなら、その水素と石炭から液体燃料を合成するのが良いと答える。要するにガソリンを作る。これは現在でも可能だろう。

A君:燃料電池を万能視する人は、やはりガソリンを積んだ車を作って、そこから水素を取り出して、その水素で燃料電池を動かせば良いと考えているのではないですか。

B君:それをリフォーマ型と言うが、リフォーマは化学プラントで、温度が常温では動作しないから、温度を一定値にまで上げるのに、時間が掛かる。今の車のように、すぐにはスタートできない。メタノールの方が若干触媒などが楽のようだが、車に積んだ化学プラントでガソリンを分解して水素を作るのも結構難しい。しかも、余った炭素をどうするのか、これが問題になる。また、水素と反応させてガソリンにするとしたら、車から炭素を回収することになるが、そんなことが可能なのか。

C先生:燃料電池を推奨する人の中には、全く排気ガスを出さないということを理由にしている人が居るが、もしもリフォーマを積むと、それがそうはならない可能性が高い。やはり炭素は回収するのが大変だから、燃やすことになるのではないか。となると、今話題になっている高分子電解質を使った燃料電池では難しい。もっと高温で動作するような燃料電池を使う必要があるが、となると、これまたスタートするまでに時間が掛かることになる。

B君:話は少々変わるが、いずれにしても、二酸化炭素に関する京都議定書のようなものが、今後どのような取り扱いになるか、で車の燃料も大きく変化するのではないだろうか。もしも、二酸化炭素を出せないという状況になれば、それはなんとかしなければならないのだから。

C先生:一旦は、そんな方向に向かう可能性も否定できないが、しばらくやってみて、やはりもとに戻そうという話になりそうな気がする。二酸化炭素放出による温暖化は、ある程度仕方がない、それよりも省エネルギー・省資源が重要だ、ということに結論が行きそうに思うのだ。
 
A君:それは、二酸化炭素の処理処分をやる、やらないの議論がでてと言うことですか。

B君:資源のことを考えたら、二酸化炭素の処理処分などやらない、いややるべきでないに決まっているからな。そうかもしれない。

C先生:となると、石炭の有効利用と風力・太陽光発電による水素の活用ということで、この2つからガソリンを合成する。したがって、自動車は、結局ハイブリッド車が主流という状態があと100年ぐらいは続くような気がする。

B君:ハイブリッド車の効率と、ガソリンを燃やす燃料電池車の効率とでは、実は余り違わないな。だから、面倒なことをして、燃料電池を作る理由は確かに無い。

C先生:でも、という発表をすると、燃料電池推進派から反発が来るだろうなあ。