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「アトピー」と環境問題の類似性
   98.12.14






 この文章を書くきっかけとなったのは、人類滅亡の7章を読むためにSCIaSの1月号99年を買ったためである。目的の記事そのものは、すでに本Webページでも取り扱ったように、別にどうということのない知的遊びであったが、一つ大変インパクトのある記事があった。金沢大学医学部教授竹原和彦氏によるスレテロイド外用薬に対する誤解の話である。ある意味で悪徳ビジネスになっている「反ステロイド剤キャンペーン」に憤慨されている。
環境関係では、いつでもこんな調子の本や記事を読んでいるように感じる。どうして真実が伝わらないのか。それは、強力なマスコミのためなのか、などと思っていたら、12月12日の朝日新聞のエリア広告で、(株)日本オムバスの広告が折り込まれてきた。曰く「アトピー情報館、東京日本橋にオープン」。そのもっとも目立つところに、アトピー克服のキーポイントは「ステロイド剤」ときた。


C先生:アトピーの話。実際、患者は大変苦しんでおられる。ステロイド剤を使いすぎると怖いという話は、マスコミなどを通してよく浸透している。しかし、真実はどうも別のところにもあったようだ。A君、竹原先生の主旨をまとめてくれ。

A君:アトピー皮膚炎の治療で、皮膚科で使う薬は、やはりなんといってもステロイド剤。実際治療に有効だから。ところが、この薬は強烈な副作用をもつ悪魔の薬だと思われて、医者にも患者にも不幸な状況が生まれてしまった。一方、医学的な裏付けの無い民間療法が相当儲かるビジネスになっている。このような状況がどのような経緯によって作られたのか、歴史的に考察がなされています。
 1970年代:ステロイド外用薬(リンデロンV、フルコートF)など、強い効果を持つステロイド外用薬が医師の処方箋なしに薬局で買うことができたことが要因。この年代に副作用を多発したのは、実はアトピー皮膚炎の人ではなく、化粧品かぶれや脂漏性皮膚炎の人だった。必要以上に強いステロイドを常用したことによって、「酒さ様皮膚炎」になってしまった。要するに、ステロイドの誤用がその原因であった。
 1980年代:ステロイドの誤用が激減した。しかし、マスコミは騒ぎ続けた。そのきっかけとなったのが、本当のアトピー患者に不幸にしてステロイド外用薬による副作用が起きてしまって、その患者が医療機関に対して訴訟を起こしたため。裁判所の勧告を受けて和解したが、その人が自分に副作用を起こした薬だから、「すべての利用をやめさせなければならない」と考えて、「すべてのステロイド治療は誤りである」といった著書を書いた。これがマスコミによって大きく取り上げられ、一般常識になってしまった。
 1990年代:多くの民間療法企業がアトピーをターゲットとして活動を開始。まず、それには患者が多くなければ儲からないから、ステロイド治療を全否定すると共に、その副作用を著しく誇張するようになった。92年、あるテレビ番組でステロイドの副作用が再び取り上げられ、副作用情報がマスコミを賑わすようになった。ステロイドを全面拒否する患者の増加とともに、厚生省に対して患者団体によるステロイド外用薬禁止措置の申し入れまで行われるようになった。
 現時点:多くの問題が発生している。アトピービジネスによる死亡例も出ている。

B君:なんだかぞっとする話だね。さっき新聞の広告を見ていたら、その反ステロイド商法が見つかった。株式会社日本オムバスというのがその名称。全国アトピー友の会が協力していると書いてある。となると、これはWebで調べなければならない。

C先生:ちょっと見せてくれ。自然治癒力の再発見か。社長の小川氏が言う「薬物を一切使わず」がいささか問題だが、私もアトピーは人間の免疫機能の異常だから、自然治癒が可能だとは思っている。昔のように、感染症・寄生虫があるような状況に戻れば、アトピーも恐らく消滅する。さらに、精神的ストレスが免疫機能を大きく下げることも良く知られたことだから、心理面の改善も重要だ。
 大分前になるが、週刊朝日にアトピーの治療法として、子供に「イルカと遊ばせる」という方法が出ていた。どうもアトピーの子供は海水に入ると痛いので、いやがるらしい。そこで、イルカと遊ばせることで海水に慣らす。1週間もやるとアトピーがかなり改善されるとのこと。だから、日本オムバスの言う温泉でも利くだろう。

A君:とすると、日本オムバスは信頼できるということでしょうか。

B君:いやそれは分からない。なぜならば、自然治癒力だけで直すならば、アトピーはビジネスにならない。やはり何か売ることで成立している商売だろう、と思って良く見たら、売っているものが、スキンケア商品、洗剤、入浴剤、浄水器、しょう油、ごま油、味噌、ソース、ビタミン剤、飲める温泉「豊泉水」、ミネラルウォータ。これで商売になっているのだろう。いわば民間療法ビジネスの典型例だろう。

C先生:記事の中に、「水道水には塩素などの多くの化学物質が含まれており、自然治癒力を妨げてしまいます」とある。このあたりから、環境ビジネス、特に、「水」商売らしくなってくる。水道水には確かに塩素が含まれている。しかし、その他の化学物質は何かというと、恐らくトリハロメタンなどの有機塩素化合物を意味するのだろうが、お風呂を沸かして最初に誰かが入れば、そんなものは空中に出てしまう。それ以外の微量物質は、恐らく、ミネラルウォータの方が多く含んでいる。広告ページにも「ミネラル分たっぷり飲める温泉です」とあるが、このミネラルとは何か、ご存じなのだろうか。多くの場合、陽イオンならナトリウム、カリウム、カルシウムイオン、陰イオンとしては、炭酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、塩素イオンなど。飲んだときに、これが体に本当に良いのか? 温泉は砒素も含んでいる可能性が高い。微量の砒素は、必須元素の一つだから体に良いかもしれないが(逆説的!)。

A君:もう一つ、これは絶対に詐欺に近いという広告を見つけました。13日朝日新聞朝刊「磁気と遠赤外線の水処理装置」。永久磁石で蛇口を挟むらしいですよ。永久磁石を使っているのだから磁気は分かるが、どうしてこれで遠赤外線がでるのでしょうかね? これで3万9千円だって、すごい値段。原価は1000円だろう。
「水」、「磁気」、「遠赤外線」となると、インチキ商品に良くある3種のキーワードがすべて入っている。お買いになりたい方は、エヌ・ジー・シー(0120・105・345)へ。そんなに、水道水は信用されていないのかな。

C先生:12日の日経に、水道水のことが出ていた。多少高くなっても良いから、高度処理をすべきだという市民が多いそうだ。われわれ「人間地球系」の研究班員であった、国包章一氏のコメントが出ていた。「東京の水道水はそれほど悪くはない」。しかし、これもお上の見解ということで信用されないのだろう。いったん、「水道水などは飲めない」とマスコミが騒ぐと、市民はどうしてもそう思いこむ。「ステロイド=悪魔の薬」と同じさ。

B君:話を元に戻して、日本オムバスの商売の話。売っているミネラルウォータは、20リットルで1500円、温泉水は20リットルで2200円。送料は別。1リットル75〜110円だ。一方、水道水だが、1リットルの値段は、えええと、よく分からないが、10銭か(後日調査で21銭という説発見)。店で買うミネラルウォータは、ペットボトル(30円から50円)に入っているから、中身よりも容器の値段が高いのだから高くて当然。一方、日本オムバスの容器は、20リットルのもので、恐らく100円ぐらい? 中身はほとんどタダ。この商売は儲かる。となると、ステロイド剤は悪者にされるのも分かる。

C先生:水と付き合うベストの方法は、まず飲料水だが、中空糸フィルターでサビなどのゴミをとって、そして、いったん沸騰させて揮発する成分を飛ばし、そして冷やして飲む。これだね。冷やすときには、ペットボトルは便利だ。水筒を買ったつもりになればペットボトルも利用価値がある。
 お風呂やシャワーの水の話になると、どうしても塩素がいやだというのなら、塩素を吸着するシャワーもある。こんなことでなんとかなる。
 日本オムバスも、言っていることのうち、「ステロイド剤を一切使わない」というこの一点は、竹原先生の話を信用すると、恐らく患者のためにはならないのだろう。その他は、比較的まともだと思うが、だからといって、売っている商品を見れば、やはりアトピービジネスだなあと言わざるを得ない。

A君:話を戻してアトピーですが、本当にはどうすれば良いのでしょうか。

C先生:医者じゃないから本当のところは分からないが、アレルギーの治療の基本方針は、まず、アレルゲンを探して、それを避けることだと聞いている。そして、徐々にそれに慣れさせる減感治療を行う。アトピーの場合には、アレルゲンは特定できない場合も多いだろう。となると、適正なステロイド剤(最強、強、中、弱など数段階あるらしい)を使っての治療を医者と一緒にやって、それと並行して、日本オムバスじゃないが、自然治癒力をつけることだろう。それにはあまり清潔になりすぎないこと。自然、特に土に親しむこと。夏なら海に入るのも良いだろうし、川で泳ぐのも良いだろう。精神的ストレスを避けること。親が神経質になりすぎるのが最悪。

B君:アトピーとダイオキシンの関係は?

C先生:一時期、母乳を飲むとアトピーになると言われた。宮田先生も盛んにそう主張していた。ネットワーク地球村の代表高木氏も直接話を聞いたことはないが、その論者だそうだ。しかし、そのデータというものを見ると、統計的取り扱いは不可能で、見方によって全くなんとでも言える代物。少なくとも、科学的根拠にはなり得ない。母乳育児に関しては、岡本先生のホームページhttp://www.osk.3web.ne.jp/~bonikuji/が必見。高木氏の論拠が見事に反論されている。
  さて、個人的見解を述べよう。ダイオキシン類も、汚染のピークは、1975年頃だった。決して現在が最悪なのではない。現代は、その時代よりもより清潔になり寿命も延びた。アトピーの条件はますます揃ったことになるが、毒物への暴露という観点から見れば、今母親になりつつある人が生まれたころが最悪だった。そこで考え方だが、今から生まれる子供の条件は、自分達よりも良いはずだから、自分がどのように育ったかを良く考えて、信じるものを信じる。これしかない。

A君:それにしても、環境問題もなんだか魑魅魍魎(難しい漢字だ!)が跋扈している部分が多々ありますが、アトピーも同様で驚きですね。

C先生:本当だ。環境問題で言えば、ダイオキシン、環境ホルモンへの暴露を防止すること自体は当然だから、それを問題にするNGOの存在は良い。しかし、高木氏のように、ダイオキシンが危ないから母乳をすぐ止めろといった具体的対策を提案するのは彼の権限外のように思うのだ。彼は医者ではない。科学者でもない。単なる市民運動家だ。自分の見解が間違っていないという保証がどこにあるのか。どうやって責任をとるのだ。
 他のNGOにしてもそうだ。ダイオキシンの被害防止のために有機野菜を食べろ、無農薬栽培の野菜以外は駄目だ、などと言って有機無農薬野菜販売という環境ビジネスを始めたNGOは、もう魑魅魍魎の類に近づきずつあることを自認すべきだろうね。