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水道水アンケート批判 04.08.2001




 今週の環境の4月7日版にも掲載したが、水道水に対する信頼性を朝日新聞が調査した。しかし、「安全・味ゆらぐ水道」、「若い層に強い不信感」、「大都市部、45%が浄水器」とうい見出しをもったこの記事によって、ますます水道水に対して拒否感を持つ人が増えるのではないか。水道水を飲むように奨めないことには、ペットボトル問題に代表されるゴミ大量排出問題が解決しない。署名記事で、担当は「くらし編集部・伊藤景子、世論調査室・中村明子、両記者」。


C先生:この水道の記事の取り扱いには、根本的なところで2つの問題があるように思う。まず、マンション居住の場合に、マンション内の給水システムに問題があるかどうかを聞くべきだったこと。もうひとつは、ペットボトル・ガラス瓶入りのミネラルウォータが水道水よりも安全であるという誤った思い込みのもとに作られていることだ。

A君:小島貞男氏(元東京都玉川浄水場)の談話、大阪府水道部の担当者の談話が比較的大きく取り上げられていて、記事の中立性を保ったつもりなのでしょうね。

B君:いずれにしても、この記事がCREST研究のひとつのターゲットになるのじゃないか。水道水に対する市民感覚を変えることができるか。

C先生:もう一つ問題があるなあ。それは、時代の流れを考察していないことだ。水道水の質、すなわち、原水が本当に悪くなっているのかどうか、処理法が良くなっているかどうか、といった認識が記者にないこと。要するに、記者自身が最初から水道水を拒否する感覚で書いているのではないか、ということ。

B君:味が水道水を拒否する理由だとすると、本当に水道水が不味いのは何故かも問題だ。

A君:それでは、整理しますか。
(1)マンションの場合には、屋上給水タンクあたりに問題が無いのか。
(2)ミネラルウォータは水道水よりも安全か。
(3)水道水は不味いか。
(4)水道水の質の時代による変遷はどうか。

C先生:こんなことはすでに、議論しているなあ。

これまでに掲載した水道関係の記事リスト。
「アトピー」と環境問題の類似点 new12.14.98
http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/AtoposEnv.htm
水道水は安全か new8.11.97
http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/suidosui.htm
朝日新聞の環境アンケート結果 new06.01.99
http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/AsahiQuest.htm
水道水で鉛中毒? new02.29.2000
http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/LeadTapWater.htm
日経ECO21の水道水 new05.31.2000
http://www.ne.jp/asahi/ecodb/yasui/Eco21Water.htm

(2)ミネラルウォータは、水道水の5倍緩い規制で作られている。まあ、だからといってすぐ危険というわけではないが、外国製の本物のミネラルウォータは無処理品だから、細菌も入っている。そもそもミネラルウォータというと健康によいと感じるかもしれないが、日本語で言えば、「鉱物水」だから、金属イオンを含んでいるという意味。カルシウムを含んでいる水には、必ず砒素が含まれている。

B君:水道水が不味いのは、温度のせいだ、という議論もした。ミネラルウォータはしばしば冷蔵庫に入っているが、水道水はそのまま。「あるある大事典」でも、水道水の温度を下げるだけで結構おいしくなるとしている。

A君:マンションの給水タンクが屋上にある場合などは、水の温度も高いことになりますね。また、マンションの給水タンクは結構汚れているらしい、という報道などもあって、イメージが良くないですねえ。

C先生:だからといって、常時動いている水であれば、それなりには飲めるものだ。止まった水は塩素がないと雑菌が繁殖しだして怖い。

A君:まあ、(1)のマンションかどうか、これは一つの要素として残りそうですね。

B君:(4)の水道原水の質は落ちているのかどうか。これは簡単ではないなあ。
良くなっているはずだ、という根拠としては、
(@)河川に直接流れ込んでいた家庭排水が下水道の完備によって処理されている。
(A)工場排水は格段にきれいになった。
(B)水田除草剤などの農薬の毒性も大幅に低下し、分解性も上がった。
(C)合成洗剤なども生分解性の高いものになった。
(D)PCBのような難分解性の毒物が規制されるようになった。
(E)以前の鉛管が使われなくなったので、鉛が溶け出る心配は無い。
 一方、悪くなっているはず、という根拠は、
(F)イメージの悪い塩ビ管が使用されている。もちろん実害は全く無い。
(G)これまで「汲み取り」で処理されていた屎尿処理水が河川水に放流されている。
 ただ、昔、汲み取りで処理されていたもののうち、海洋投棄は別とすれば、どうやって処理されていたのだろう。

C先生:(4)水道水の質に関係する技術面だが、これは良くなっているはずだ、という根拠しかないが、
(T)塩素一辺倒の処理から、オゾン処理などの高度処理が導入された。
(U)これで、塩素消毒過程で作られるトリハロが減った。

A君:と考えると、どうみても、良くなっているとしか思えないですね。イメージとしては、下水処理を通った水を飲まされているというところに原因があるのでしょうか。

B君:まあ、現代人は贅沢になったということ以外に原因が見えないな。

C先生:最近、C型肝炎が問題になっている。この病気は血液から血液への感染だから、原因は輸血や消毒が不完全だった大昔の注射針だろう。ウィルスが見つかったのが比較的最近だから、それはそれで仕方が無かったとも言える。医療は輸血によって多くの急性死を救ってきたのだから。救われた人が、今、C型肝炎に直面しているが、これは科学(医学)の進歩がそんなものだったのだ、という以外に言いようが無い。最善の知識に基づく最善の対処が行われている限り、問題にする方が問題だ。事実としての報道は否定しないが。

B君:そして、他の感染症がほぼ克服されたから、これまで見えなかったC型肝炎が見えてきた、ということか。なるほど。

A君:水道も同様の要素がありますね。これまで日本人の寿命が延びてきたことを考えると、20年前、10年前の水道水が問題だったのかという疑問はある程度否定できますね。そして、現在の水道水が20年前、10年前に比べて良いものであるのなら、本来は問題にすべきではない。しかし、様々な環境要因が解決されてきたもので、それが問題になってしまう。イメージが悪いというだけで。

C先生:アレルギーが増えているのが、やはり同じような要因だ。感染症の多くが克服された結果、人間の免疫システムがバランスを崩して、本来相手にするような対象ではない花粉、食物中の蛋白を敵だとみなしている。アレルギーは生物としてのヒトが狂いはじめているという問題なんだ。

A君:水道水に比べて1500倍ぐらいは環境負荷が大きいペットボトル入りのミネラルウォータを飲むのは、やはり21世紀型とは言えないでしょうね。

B君:高度処理を採用した大阪府の担当者が、「イメージアップに努めたい」と言っているが、やはり水道水、ミネラルウォータなど、水全体の情報を歴史的なものを含めて開示し、正しい理解を求めるべきだ。

C先生:企業人もそうだし、自治体人もそうなのだが、市民に対してきちんとものが言えるという体質ではないなあ。やはり市民がそしてメディアが怖いようだ。