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朝日新聞の環境アンケート結果 06.01.99 06.02.99追加







平成11年5月30日朝刊によれば、朝日新聞は、電話によるダイオキシン問題を中心とした環境アンケートを実施。
その質問と結果は、概略次の通り。

○1:ダイオキシンに不安を感じるか?
  大いに不安     44%
  ある程度は不安  45%
  不安を感じない   7%
  その他        4%
○2:ダイオキシン汚染の責任は誰にある?
  対応の遅れた国・自治体   31%
  ゴミ対策を怠った企業     25%
  使い捨てを続けた消費者   33%
  その他              11%
○3:食品のダイオキシン濃度を産地付きで発表すべきか?
  産地まで公開した方が良い   44%
  産地公開は慎重に        47%
  その他                9%
○4:ダイオキシンが少しでも含まれている食品を食べるか?
  食べない             29%
  影響ない程度なら食べる    65%
  その他                6%
○5:特定の商品について、出荷停止を含むダイオキシン濃度規制を作るべきかどうか?
  強い措置を取った方が良い  82%
  その必要はない         10%
  その他               8%
○6:家庭でゴミ減量に心がけていることがあるか?
  ある      61%
  ない      37%
  その他     2%
○7:実例省略
○8:ゴミの有料化をどう思うか?
  賛成    60%
  反対    30%
  その他  10%
○9:細かい分別が要求されても、それに協力するか?
  積極的に協力   83%
  面倒だ       13%
  その他        4%
○10:車税制の燃費によるグリーン化は賛成?
  賛成     66%
  反対     19%
  その他    15%
○11:マイカー禁止デーを作ることには?
  賛成        41%
  反対        45%
  規制の内容次第  4%
  その他      10%
○12:地球環境のために利便性を犠牲にできるか?
  不便になっても構わない   51%
  不便になるのは困る     39%
  その他             10%

以上のような結果だった。最近の市民の環境に対する関心の深さと、予想以上の理解が示されたものと解釈したい。


C先生:市民には失礼ながら、2番目の質問、ダイオキシン汚染の責任は誰かに対し、自らの責任とする回答が33%で最大であったことは、私個人の想像を超えていた。その他の回答を含めて、環境について相当以上の関心があり、また、理解が進んでいる様子で、まさにご同慶。

A君:とは言いながら、ダイオキシンそのものに対する理解はまだもう一歩なのでは。ダイオキシンに大いに不安が44%というところが。あるいは、ダイオキシンを含む食品は絶対食べないが29%もいるというところが。

B君:いいや。1年前だったら、60%以上が「大いに不安」だったのでは。「大いに不安」というのも無理も無い。なにせ、宮田先生の「サリンの2倍、史上最悪最強の毒物」だからね。でも、モルモットは何故かダイオキシンに弱くって、0.6〜2マイクロg/kgで半数が死亡する(LD50という)というから、本当に強い毒物であることは事実。ただ、ダイオキシンを含む食品を絶対に食べないというと、それは不可能のようにも思える。すべての魚、すべての肉、すべての緑黄野菜は食べられなくなるだろうから。

A君:でも、今、日本人が毎日摂取しているダイオキシンの量は、3ピコグラム(pg)/kg/日ぐらいとしますか。実際にはもうちょっと多いかも(注:統計的には、もっと少ないが、コプラナ-PCBをどのように勘定しているかで、実体はこんなものかと思いますが)。これで、モルモットのLD50よりちょっと多い3マイクロg/kg摂取しようとすると、100万日かかる。ざっと3000年。ハムスターはダイオキシンに強いが、そのLD50並の5000マイクロg/kgを摂取するには、300万年掛かる。
 しかも、いくら体内残留性が高いといっても、半減期は3000日ぐらい。となると、現在摂取量では、いくら摂取しても、というよりも、3000年分の食事を1〜2日で食べる訳にはいかないから、急性毒性が問題になることはあり得ない。

B君:確かにそうなんだ。いかに「最強・最大の毒物」だと言っても、この世の中に大量に存在しているという訳ではなく、極微量存在しているだけ。余りにも微量なもので、感覚的に分からないという状況になっているのが、ダイオキシンの急性毒性。

C先生:こういうわけで、実は、専門家連中は誰もダイオキシンの急性毒性は「環境問題」にしていないのだが、なにせ「サリンの2倍、史上最悪最強の毒物」という報道ばかりなもので、急性毒性が本当の問題であるかのごとき市民側の受け取り方になっている。もっとその実態に触れた報道があるべきだ。
 毒性は、しかし急性だけではない。慢性毒性、特にダイオキシンの場合だと、発ガン性、催奇性、さらに環境ホルモン性といった異なった毒性があるとされている。日常的な摂取量の基準TDI(許容摂取量)を決めているのは、大体これらの慢性毒性だ。日本の場合には、マウスなどの発ガン無作用量に安全係数100倍を掛けて、10pg/kg/日という厚生省基準が決められている。環境庁は5pg/kg/日になっており、厚生省の半分。他の国の例をA君。なお、発ガンは、余り生物種によって作用量に差は無いようだ。

A君:宮田先生の本からの引用ですが、大体次のようになっています。
 スウェーデン、5pg/kg/日 日本と同様、ただし安全係数200なので半分
 イタリア、1pg/kg/日  日本と同様、ただし安全係数1000なので、10分の1
 オランダ、2pg/kg/日  アカゲザルの子宮内膜症基準、安全係数50
 アメリカ、0.01pg/kg/日 ただし暫定値。発ガンリスク100万分の1を基準としている。また、閾値なしと仮定。

B君:日本も、WHOの基準1〜4pg/kg/日にならって、議員立法で法律ができて、4pg/kg/日になります。しかし、環境庁の値から見れば5pg/kg/日から1減って、4pg/kg/日になったところで、まあ、なんということもない。厚生省値から見れば、安全係数が100から250に変わるだけ。こんなものを議員連中が政治取引で決めるようなものでもない。そもそも、これまで環境庁と厚生省が異なった基準値を示してきたことを、「国家的恥」だと思ってもらわないと。

A君:本屋に行って、ちょっと立ち読みをしたんですが、日本テレビが出しているダイオキシン恐怖本(昨年10月ごろ発行)には、日本の許容摂取量は、急性毒性を根拠としていると書いてありました。そんな訳がないだろうが! アメリカは発ガンリスクが根拠で、だから、将来的には、世界全体がアメリカの値になるだろうと間違った判定をしていて、さらに、これを根拠に日本という国は何をやっているのだ、と書いてありました。余りにもしゃくに障ったので、買ってこなかった。表現は不正確で済みません。(追加)

B君:日本テレビのダイオキシン恐怖本か。あの放送局も環境に関しては、ひどくレベルの低い報道を時々やる。特に、「報道特捜プロジェクト」という番組が危険。プロデューサのレベルが低いのだろう。まだ「告発がすべて型」のように思えるね。(追加分)

C先生:許容摂取量に関しては、アメリカの値は暫定値だと言いながらも、他の国とは大幅に異なる。ただし、発ガンリスクのレベルを100万分の1に押さえるという考え方は、過剰対応のようにも思える。なぜならば、少なくとも日本の場合は、水道水のリスクレベルは、10万分の1程度だから。ただし、水道水中のヒ素だけは、基準が非常に甘くて、発ガンリスクは、10万人に60人だという(中西準子先生の「水の環境戦略」、岩波新書、p122)。となると、リスクレベルは、あるものだけ過度に厳しくしても仕方がないから、ダイオキシンの発ガンリスクを100万分の1にする意味も不明ということになる。

A君:この話しを書くと、それ見たことかと「反水道水派」「ミネラルウォータ派」が出てくる。この件、水道水はどのぐらい危険かということは、すでに「水道水は安全か new8.11 1997年版記事」で極めて詳しく議論をしている。他の記事も見ていただきたいために、またまた表紙へリンクして、直接リンクを張りませんが、是非一度ご覧下さい。

B君:「ミネラルウォータ」の環境負荷−便益分析を一度やろうと思っているのだが、なかなか実行できなくて。

C先生:環境負荷の計算は比較的簡単かもしれないが、便益分析は難しいのではないか。「味が良い」というのならそれはそれで良いが、安全かどうか、これは極めて怪しいから。安全を確認するためには、いちいち分析してから飲まないといけないことになるのだ。なぜならば、ミネラルウォータは、「食品であって、飲料水ではない(?)」、からだ。すなわち、「ときどき摂取するもの」というのが公式な立場で、毎日飲むことを想定して基準が決められている訳ではないのだ。
 外国製のミネラルウォータは、熱処理による消毒をしていない。したがって、雑菌類は入っていて当然。日本製ミネラルウォータは、熱処理をしているので、雑菌の心配は無いが、PETボトルに生えるカビは入っている可能性がある。なぜならミネラルウォータに限らないが、大体のPETボトルは使う前に洗っていない。しかも、水そのものが地下水だと、採取場所によっては、ヒ素濃度が水道水よりもはるかに高い可能性がある。ヒ素は、水道水のように大量の地上水で薄めたものであっても、まだ、多少高くならざるを得ないのが日本の水事情なのだ。ヒ素の起源は土壌・岩石で、特に海洋起源のものだと考えられるのだが、特に、石灰岩地帯にはヒ素が多いのだ。石灰岩も海洋起源だからね。地下水のように土壌・岩盤に接触している水には、ヒ素が多く含まれていても全く不思議ではないのだ。もっともヒ素も人体必須元素だから、ミネラルウォータのように食品あるいは嗜好品として考えれば、むやみと心配する必要はないのだが。多少のヒ素があるから美味しいのかもしれないし。
 今日はこのぐらいにしておこう。とにかく、今回のアンケート結果は、今後に期待を持たせるものだった。

B君:朝日新聞への希望ですが、これを若年層、特に、高校生、大学初年級、あたりを対象にしてやってもらいたい。

A君:大学の先生なんだから、自分でやったら。

B君:............