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容器間比較報告 05.21.2000






 5月3日の日経、5月16日の朝日に掲載されたように、容器の環境負荷を比較するためのライフサイクルアセスメントをやり直した。研究会の名称は容器間比較研究会。その実態は、いつもの異業種交流の有志で、一応の事務局は日本ガラスびん協会が担当したが、当然のことながら、ワンウェイガラスに有利になるような結果は出なかった。

 今回、ライフサイクルデータは、すでに世の中で公表されているものを用い、それに、廃棄のシナリオを独自に付加する形で行った。容器は、500ミリリットルを対象としたが、できるだけ最新の容器を対象としたつもりでは有ったが、メンバーにスチール関係者がいなかったためもあって、いまさら言うのも問題ということもあるだろうが、もう少々検討すべきだったような部分は残る。

 検討した項目は、できるだけ一般的な項目を対象にしたが、それでも、必ずしも、すべての項目について、データが見つかった訳ではなかった。

 ということだが、ライフサイクルアセスメントに対する業界の反応は、いつも過敏状態であって、今回の結果についても、すでに様々な注文・文句が付いている状況である。この状況は、十分予測したことであって、このような注文・文句が出たところからは、正しいデータの提供を求め、今後、継続的に改定せざるを得ないと思われる報告書に役立てたいと思っている。

 報告書は、一応5月12日に印刷が完了している。ご希望の方には、頒布も可能である。ただし、あるルールにしたがって、有料・無料の原則を決めたので、事務局までご連絡いただきたい。
    事務局:メールアドレス kiyoshi_chiku@toyo-glass.co.jp


C先生:どうも論評しにくい部分がなんとなく有るのだけれど、新聞発表されてしまっているのに、本HPで何も述べないのも妙なので、若干の解説をしてみようか。
 まず、今回の狙いは、これまでバラバラで行われてきた容器間の環境負荷比較をできるだけ条件を揃えてやり直すこと。問題点を明らかにして、まだデータを出していない業界からのデータ提供と、データを出しているところからは、その裏づけを含めたより信頼性の高いデータがでるような雰囲気を作ること。

B君:要するに、文句ばっかり言う業界に対して、文句を言うならデータを出せ、というための報告書ですか。

A君:いや、なかなか難しいのですよ。個別の企業がデータを出すことでも難しいのに、業界全体の利害が絡むと。

C先生:日本の業界というものが、いまだにそんな状況なんだということを、今回のような作業によって証明すること、これが狙いの一つ。強烈なライバル意識があって、アルミ業界はスチール業界がライバル。ペット業界はまだまだ無頼の世界で、業界の秩序を考えずに、兎に角シェアの拡大だけを狙う。ガラス業界は、リターナブル瓶の環境負荷が低いことは分かっているが、ワンウェイでないと利益は出ないので、なんとなく、元気が無い。紙業界は、リサイクルをやることの意味について、業界としてどのような合意なのか、よく分からない。
 まあ、こんな乱戦状態だから、予想されたこととは言え、反応がきつい。
 それに加えて、今回、未来容器というものを考えてみた。将来、環境負荷をできるだけ下げるとどんなものになるか、という考え方だ。スチールについては、詳しい人が居なかったもので、詳しい検討ができていない。しかし、スチールは余り変わらないのではないかという意見が大勢を占めた。何が根拠かといえば、再生地金によるスチール缶は将来ともできないだろう、また、フタの部分はどうしてもアルミ製になるだろう、ということだった。

B君:それはそれとして、結果はどうなんですか。

C先生:細かい結果については、まだ出すなというプレッシャーもあって、本当のところは、報告書を入手してお読みいただきたい。まあ、ざっとしたところでは、大気系の汚染物質、エネルギー消費、を比較した範囲では、まあ、紙容器とリターナブルのガラス容器が低い。ワンウェイガラスの負荷が高そうに思えるが、エネルギー消費については、そうとも言えず、ペット、アルミ、スチールなどとまあそんなには変わらない。
 紙容器の弱点は、水系への環境負荷が大きいこと。アルミの弱点は、やはりエネルギー消費量が高いこと。スチールの弱点は、容器に使われているリサイクル材料が少ないこと。

B君:まあ、想像できる通りの結果ですね。

A君:ところでペット容器の弱点は?

C先生:データ上は、どこが弱点という訳でもない。ペットを受け入れにくいのは、他の容器がリサイクル率を高めることに必死になっているのに、ペットのリサイクル率が格段に低い上に、容器包装リサイクル法に守られた形になって、リサイクル率が高くならないことだろうか。

B君:ということは廃棄物量が多いということ?

C先生:いや。必ずしもそうとも言えない。液体系の廃棄物があるようだが、それは恐らく焼却されている。ペットは軽いので、体積で換算したり、また、埋め立てとの適合性が悪い(地盤がなかなか安定しない)という点を考慮して重み付けを行わなければならないが、まあ、それをやっても、廃棄物が多いという結論にもならない。

A君:だとすると、ペットに移行するのが当然ということになりませんか。

C先生:やや苦しいところだが、実際の埋め立て地を見ると、やはりペットが目立つことは事実のようで、ペットを止めれば埋立地の寿命が長くなることは恐らく事実だろう。

A君:しかし、データ上からは上手くそれが表現できないということですか。

C先生:そんな要素があるね。しかし、しかし、リサイクル先進国の状況を見てみると、このような容器戦争が、利便性と利益率だけで動くのはいけないということをヨーロッパ各国は教えてくれる。日本の容器包装リサイクル法も、本物になるのならば、容器については、リサイクル率を個別の材料ごとに決定するという方法が良いだろう。そして、そのリサイクル率を確保する責任を、事業者に課す。自治体は、それに協力するという役割分担にする。例えば、ペットボトルの場合であれば、リサイクル率を50%にせよ。もしも自治体だけの努力でそれができないようならば、業界としてデポジット制でもなんでも良いから、適当な方法論を考えよ、こんな容器包装リサイクル法にすることだろう。

B君:C先生の時間消費法による評価では、「容器はごみだ」という結論が出たそうでは無いですか。

C先生:これが、問題を引き起こした一つのポイントだが、恐らく、この考え方は正しい。容器のように、使用のステージによる環境負荷が無いものは、使用直後にごみになって、そのごみとしての環境負荷がもっとも大きいということだ。
 その結果によれば、やはり固形廃棄物量はワンウェイのガラスが多い。まあ、重いからハンディーを背負っているのは事実だろうが。そして紙容器とリターナブルボトルが固形廃棄物量は少ない。

A君:他の評価法だとどうなるのですか。

C先生:うん。最近、超簡便型LCAインパクト手法として考えている四軸法というもので評価してみた。この方法論は、(1)環境負荷を地球への入出力に限定して考えること、(2)入力としては、エネルギー関係、金属資源関係の2本立て、(3)出力としては、埋め立て量、大気+水系への環境負荷の2本立て。(4)以上4本の環境負荷にまとめてから、相対比較をするというもの。これでやると次の2枚の図のようになった。


図1 四軸法による容器の環境負荷の比較。
  入力側が、上にあるエネルギーと下のバージン金属系材料
  出力側が、左にある環境放出の合計と右の埋め立て量
ワンウェイボトル(軽量化した未来型)とペットボトル、リターナブル20回の比較。リターナブル20回の環境負荷が圧倒的に低い。ペットは、金属(酸化物を含む)が入っていないので、その分、環境負荷が低く見える。



図2 比較その2 軸のスケールが図1と違うので注意のこと
 ワンウェイ(軽量化した未来型)との比較、この方法によれば、紙容器の排水負荷が大きいために、余り環境負荷が小さいようには見えない。スチール缶には、バージン材料しか使われていないために、負荷が大きく見える。アルミ缶は、まずまずバランスが良い。しかし、リターナブルのガラス瓶にはかなわない。

A君:このような比較だと、またまた感触が違いますね。

B君:だから、環境負荷の細部の比較ということで、余り目くじらを立てるなということでもある。各業界が、自分達は、環境というものはこういうものだと考える、そして、環境負荷を低くするためにこんな努力をしている。これを表明してもらって、その考え方に消費者は同意できるかどうかを考える。そして、消費行動を自分で決める。こんなやり方で良いと思う。

C先生:現状だと、各業界は、わずかな相違でも、勝った負けたの議論をしたがり、そのわずかな部分を逆転するために、データに文句を付けたりする。それよりも、もっと環境負荷とは何か、そのために、どのような努力をし、その努力を理解して貰うために、どのような行動をしているのか、これがもっとも肝心だ。
 そして、最後に一言。ある容器の環境負荷が低いとかなんとか言っても、容器は「本来不必要なもの」なんだ。理想は、中身だけが販売されること。しかしそうもいかない場合もあるだろうから、消費者の利便性のために容器はあってもよい。しかし、飲料業界は、中身で勝負というよりも、そのデザインなどによって飲料を売ろうと思うもので、「容器が商品だと思っている」。それは、大きな間違いだ。中身だけを売るような商売に変更をすべきだ。
 国も、基本的にこのような考え方に立ち返って、容器包装リサイクル法の枠組みを再検討すべきだ。
付録1:容器間比較研究会メンバー表
  安井 至  東京大学生産技術研究所
  大川隆司  東洋ガラス株式会社
  駒谷 進   キリンビール株式会社
  坂村博康  東京大学生産技術研究所
  知久 清   東洋ガラス株式会社
  中澤克仁   東海大学工学研究科
  中村秀次   生活クラブ連合会
  西ヶ谷信雄  元全国都市清掃会議
  山城孝志   日本山村硝子株式会社
  吉田 陽   宝酒造株式会社