________________


AERAの電磁波恐怖記事   06.05.2000






AERAというもの妙な雑誌だ。ときどききわめてまともな記事がでたと思うと、非常に妙な記事が出たりする。書いている側も、完全には信じていないのだが、「世の中を騒がす」、いやいや、そこまで行かない、「世の中をチャカす」程度の記事を書きたい記者が多いのかもしれない。1週間遅れのもう売っていない週刊誌批判第2弾。今回のAERA6月5日号(5月29日発売だった)の話題は電磁波。
C先生:まず、見出しが「携帯電話がこわい」。恐怖本あるいは恐怖記事の典型的だ。まず、電磁波過敏症の話が2件。これが本当の話で、もしも電磁波を感じる能力があったら、これは、重要な研究課題だ。生体が電磁波をどのように検知するのか、新しい生体能力だろうから。

A君:記者も「今の段階では医学的な因果関係がはっきりしていない」、と書いているから、どっちを信じているのか分からない。記者は一般に、自分の立場を明らかにはしないですよね。

B君:電磁波問題の最大の問題点は、そもそも電磁波というものが1種類ではないところに原因がある。50〜60Hzの電力線から出る電界・磁界も、学問的には電磁波ではないが、環境問題としては電磁波に分類されている。電子レンジがつかっているマイクロ波は、水の分子振動と共鳴する周波数だから、生体に影響を与えてもなんの不思議はない。もっと波長が短くなれば、赤外線、可視光線、紫外線も電磁波で、紫外線はご存じのように日焼けという生体影響を示す。さらに波長の短いX線やγ線になれば、エネルギー粒子としての性質が強くなってくるから、DNAに傷を付ける。すなわち、重大な人体影響がある。

C先生:50〜60Hzの電界・磁界が人間に与える影響は、かなり疑わしいのだが、高圧電線からそれ以外の電磁波が出ていないか、と言われると、これがまた難しい問題。例えば、50万ボルトといった高圧だから、放電を起こしていて、あらゆる電磁波がでている可能性は否定できない。

B君:高圧線と小児性白血病が相関するという疫学的なデータは、必ずしも否定できない。加えて、これはますます「もしも」なんだけど、電磁波過敏症が実在するとして、その科学的解釈はあり得るか。

A君:東京電機大学の斉藤正男教授「人間の細胞が電磁波で多少影響を受けるかもしれない。しかし、温度や気圧による変化に比べて感度が非常に低い」、と囲み記事が出てましたね。しかし、実験で非常に強大な磁界、それも、静磁界だけではなくて、商用周波数の磁場を用いた実験でも影響はでない。Aeraにも名前の出ている上野照剛先生の昔の実験では、電場を感じるとしたら、体毛が動くからといったことのようだったから、まあ、細胞レベルでは電磁波の感受性は無いと仮定して議論すべきでは無いですか。脳血液関門も電磁波の影響は受けないようだし。

C先生:となると、電磁波(電界・磁界)以外の効果を考えることになる。高圧電線だと、先ほど述べたが、コロナ放電がある可能性もある。放電現象というのは、非常なる高エネルギープロセスだから、酸素分子の結合が切られた状態になって、それが、もう一つの酸素分子と化合すれば、オゾンができたりする。オゾンが健康によいとされたのは、大昔のことで、最近では有害物質の代表例。このような放電に基づく化学反応で、人体に影響のある分子が生成する可能性はある。このような活性物質は、ごく狭い範囲の影響をもたらす可能性がある。

A君:携帯電話の場合には、マイクロ波ですから、水分やその他の分子と共鳴して熱源にはなっている可能性はある。周波数が電子レンジの2450MHzとは大分離れているのだけれど、全く影響が無いとは言えない。

B君:もしも、電磁波過敏症の人が電磁波を感じるとして主張していても、電磁波と同時に出ているものが何か有れば、そちらに反応している可能性も高い。Aeraで紹介された例である、コンピュータ、飛行機の液晶テレビ、などに共通の要素は、音か。しかも、耳には聞こえないぐらいの高周波のもの。飛行機の液晶テレビは駆動電圧も100Vでは無い可能性があり、そんなに電磁波がでるとは思えない。その液晶テレビがオンになっているかオフかが分かるとしたら、電磁波以外の何かを感じている可能性が高い。その可能性の一つが、バックライト用の光源である冷陰極管を駆動しているトランスから出る高周波ではないか。

C先生:ドライヤーも使えないということだと、どうなんだろう。そんな部品はなさそう。モーターもできが悪いものは、結構電磁的・音響的ノイズが出るが、そのノイズだろうか。特に、スピード調整ができるものだと、サイリスタを使っているのかな? だと、少なくとも、相当高い周波数が発生する。
 いずれにしても、とにかく、そんな調査をやった方が良いのかもしれない。また、医者が精神科に行ったらというそうだが、まあ、その方面の調査も含めて必要だろう。

A君:いずれにしても、「灰色だ」、がAreaの主張。囲み記事だけを読むと、本当のところは「まずまず白だが、灰色とも言える」という程度なんですが。

B君:だからということで、「防御製品の売れ行き急増」という見出しになって、電磁波防止製品関連として紹介されているのが、テクノAOジャパンの小林克美社長。さらには、電磁波メタリックシールドクロスを開発した「止電界」を開発した旭化成。この繊維で作られた衣料は、心臓ペースメーカーへの電磁波の影響を防止する効果はあるかもしれない。

C先生:そのテクノAOジャパンという会社だが、実は、これまで公表していなかったのだが、Aeraの記事のトーンがこの企業の製品が電磁波防止に利くとでも言いたげだから、ひとつばらしてしまおう。
 その企業のさる人は、我々のHPの記事が「けしからん」と、脅迫まがいのメールをよこした。このHPの影響で、大きな取引がキャンセルされたというような内容だった。もしも本当ならば、無駄な投資をするという被害者が出なかったのだから、大変に良いことだ。大体、脅迫めいたメールを出すような企業は、前にも後にもここ一社だけだ。

A君:そういえば、思い出しましたが、かなり前のエコプロダクトを紹介するHPで、B君が×をいっぱい付けたような気がする。

B君:おう、そういえば。それは自分だ。「ECO21の薦めとエコグッズ批判」06.05.99、(表紙へリンクを張ります)で、×を7個も付けて、「全くの詐欺」と切り捨てた。

C先生:そう。その記事に対して、「損害賠償を含めた法的な手段を考えます」といった言い方に近いメールだった。

A君:それで返事も出さすに、黙っていたのですか。

C先生:いや。返事は出した。もちろん、その前にテクノAOの製品について、再度勉強をしてみた。最初は、この製品が電磁波を吸収するという主張をしているのか、と思ったら、実はそうではなかった。1年前には、そんな表現だったのかもしれないが、さすがに、それでは嘘だと見抜かれると思っているのだろう。さらに手口が高級化している。しかも、北里大学、武蔵工業大学、さらには、フランスのモンペリエ大学にいくら研究費を出したのか分からないが、ちゃんとシンパの教授群を作っている。

B君:ほー。吸収ではないとしたら、何ですか、その効果とやらは。

C先生:それがなんと、「周波数変換」だというのだ。人間の体に悪い周波数を体に良い周波数に変えます。これだ。さる料理教室で、「このミネラルウォータの周波数は体によい」という先生がいるらしいが、そのノリ。

A君:どうやって周波数変換をやっているのでしょうか、ものすごい仕掛けですねえ。

B君:何をいっているんだ。単なる音叉みたいな形のものだぜ。中に、塩水かなんかが入ったアルミ製の。単なる共鳴よ。

C先生:その変換後の周波数の磁場出力が100フェムトテスラだという。フェムトなどという単位は、われわれが計算機シミュレーションで行っているときに1ステップが1フェムト秒ぐらいで計算しているが、それ以外に初めて見た。フェムトテスラというと、通常、テレビなどが出しているとされている磁場はナノからマイクロテスラオーダーだから、それから6桁以上も低い強さの磁場がその防止装置からでていて、それが有害周波数の有害性を消すんだそうだ。すごい物理学だろ。1億円のお金が流れているところに、1円玉を1個投げ込むだけで、市場のメカニズムが変わるということとほぼ同じ。

A君:それを支持しているという北里大学の先生は、どんなことをやっているのですか。

B君:興味があれば、これを読んだら。Webに出ていた。どうも、眼科の先生で目に対する影響を調べているようだ。その装置を付けたテレビと付けないテレビを比較している。被験者が身内だし、その装置が見えている状態でテストしているから、まあ、試験法自体がおかしい。盲検法になっていない。武蔵工大のレポートは有料だそうで、ここでも金儲け。

C先生:ということで、テクノAOとは、現在休戦状態。こんな怪しげなビジネスをAeraはなぜ見抜けないのだろう。もっと勉強してよ。それとも、環境分野では、こんなことしか記事になるようなネタが見つけられないのか。