黒部川の流れ
[keywords:清流、急流、連携排砂]
黒部川は北アルプスの水を集め、日本海を目指して流れ下る清流です。
流程は85kmとそれほど長くはありませんが、3000m級の山岳から一気に流れ下ります。
黒部川というと黒四ダムに代表される日本の高度経済成長期に整備されたダムが有名ですが、
現在でも観光地として多くの人が訪れています。
その黒部川で現在「連携排砂」という問題がクローズアップされてきています。
これはダム底にたまった堆砂を水とともに一気に下流に吐き出してしまおうという試みで
ダムの有効貯水率を維持するということが大きな目的であるといわれています。
この「連携排砂」により河川の水質悪化、更には富山湾の漁業に壊滅的な打撃を与えている、
との報道がされています。
元々河川には上流の土砂を海まで運ぶという機能を持っていましたが
ダムにより阻害されてきました。
この機能を取り戻すことができれば、河川にとっても海にとっても申し分ないはずですが、
「実際にはヘドロが流されている」といったことが言われていて
全然期待通りには運用されていないようです。
そこで、実際に黒部川を下流から宇奈月ダムまで辿ってみました
以下に今回訪問した際の写真を掲載します。(リサーチ:02年8月12日)
※「清水の里・黒部」も「日本の楽園」ページに掲載しています。
| 河口を通る県道より河口を望む。
大きな流れを想像していたが、貧弱な流れだ。 |
| 黒部川河口の様子。
ここで日本海に流れを注いでいる。 |
| 河口より約9km地点の風景。
関東の感覚だと上流部の風景に見える。しかし、ここは河口から車で高々20分足らずの位置。 |
| 上の撮影ポイントより水面を眺める。
澄んだ水がとうとうと流れており、排砂の影響はここからは分からない。 拡大写真へ |
| 黒部川扇状地最上部にある愛本橋より下流部を望む。
黒部川の富山平野への入口はこのように取水堰となっている。水はきれいで特別な変化は感じない。 |
| 宇奈月ダムの全景
宇奈月ダムは連携排砂の下流側ダムである。写真右側に排砂ゲートがある。 拡大写真へ |
| ダム近くよりトロッコ電車が見える。
丁度夏休み真っ盛りであり、トロッコ電車は満員だった。後ろに見えるのが宇奈月温泉街。 |
| ダム湖脇の土砂崩落。
壁面が全面にわたり崩落している。これは間違いなくダム湖周辺の関連工事の影響が及んでいる。こういう人工的な土砂流入も連携排砂の理由となるし、また斜面の工事が土木業者に発注されていく。 拡大写真へ |
| 宇奈月ダム上部より湖面を望む。
このように、湖面は樹木からと思われる木質のゴミがびっしりと浮いていた。 |
| 宇奈月ダムから約6km地点の水面。
流れる水は透明度も高くきれいであるが、流速の遅い岸辺には茶色い沈殿物が大量に残っていた。これが連携排砂により流されたダム沈殿物であると思われる。 拡大写真へ |
| 橋より直下の水面を眺める。
流速の遅い部分ほど堆積物が多いのが分かる。 拡大写真へ |
今回、黒部川を河口から宇奈月ダムまで辿ってきましたが、河口付近・下流部では何ら連携排砂の影響は
感じませんでした。これは杞憂だったのか、と思いつつ上流部へ向かいましたが、
ダム近くまで行って川の様子が違うことに気がつきました。
濃い茶色に変色した沈殿物が川底にたまっていたのです。
これは、通常上流から流れてくる砂ではなく、有機物を含んだダム底の排砂であることが推察されました。
実際、平成14年7月14日に連携排砂がなされており、およそ1ヶ月後の様子だったのです。
単なる河川の運搬作用により流れてくる砂の排砂であれば
川の機能を取り戻すことであり、大賛成でしたが、
この様子を見た瞬間に「河川・海の生態系」への大きな悪影響が確信され
受け入れるべきことではない、と感じました。
国土交通省からは水質の速報値が発表されていましたが、それは水の物性値である
DO、濁度であり、沈殿物による生態系への影響を論じた文章、及びデーターは一切ありませんでした。
この連携排砂による影響は水質に対してよりも沈殿物による影響が甚大であり、
詳細な検討が望まれます。
諫早湾のように第三者による検討委員会の設置が望まれます。
(「黒部川ダム排砂評価委員会」というものは既にある)
実際、富山湾における漁獲への影響は漁民より報告されており、無視できることとは思えません。
この「連携排砂」については今後とも注目していく必要性を強く感じました。
ダムの常時開放しか解決手段は無いとは思いますが、
河川及び海洋生態系への影響を無くした上で、
しかも土砂の自然運搬がなされるというような画期的方策の検討を期待しています。
(02年8月17日)
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