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都会のゴミの行方−2

 東京をはじめとする大都市の廃棄物は処理場で焼却されたり、処分場へ埋め立てられたりしています。(この状況は「都会のゴミの行方」ページ(東京湾最終処分場終処分場)でも述べています。)ただ、ゴミの量は年々増加しており焼却による処理も間に合わず、埋め立ての処分場も容量が間に合いません。したがって処理しきれないゴミは都会からあふれ出し、不法に野焼きされたり、遥か遠い地方の山中に不法投棄されたりしている現状があります。そんな日本の廃棄物処理の現実が露呈した事件がありました。青森県・岩手県境で起きた産業廃棄物不法投棄事件です。これは、青森、岩手はもとより国や排出側の企業も巻き込んだ大事件と発展していきました。香川県の豊島で起きた事件を上回る規模ともいわれています。その、廃棄物不法投棄現場を実際に見てきました。
(訪問は03.08.09)

たい肥置場

排水の地

肥料製造の業務表示看板
たい肥(廃棄物)の野積み
正面入口
岩手・青森県境産業廃棄物不法投棄現場
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廃棄物投棄場所の斜面
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 この不法投棄事件は大々的に報じられ、よっぽどひどい臭気や山積みの廃棄物、といった状況を想像して現場を見ましたが、実際には一目で廃棄物不法投棄現場とは分かりませんでした。これは部分的に撤去されたり覆土されたりしていたということと、雑草が繁茂しているということで現状が見えづらかっただけだったのでしょう。しかしながら、整地された部分にシュレッダーダストと思われるゴミが散乱していたり、斜面の形状からは重機が作業をして土地の状況まで変えた状況なども推測できました。また、堆肥工場と称された建家の部分には廃土としか見えないものが積み重なっており、処理名目の単なるゴミ捨て場である現実を目の当たりにすることができました。実際にはドラム缶詰めの有毒廃液や汚泥、RDF状物質などあらゆる廃棄物が投棄されていたというのが現実だそうです。

 廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に大きく分類されており、一般廃棄物は我々が日常捨てているゴミで地方自治体が処理しています。それに対して産業廃棄物は原則として排出業者に処理責任があり、一般的に知事の許可を受けた処理業者へ委託して処理をしています。廃棄物の処理は規制も厳しく、また処理費用も増加してきており、不法に処理をしてしまおうという業者がいるのも現実なのです。そういう今まで封印されてきた社会システムの闇の部分が露呈したというのが現実なのだと思います。地方での不法投棄は都市での問題を移動させただけ、言い換えれば都市の問題を地方に押しつけているともいえます。また、大企業が処理費用を削減したために処理業者が不法行為に走ったという要素が多少なりとも存在していたのは事実ではないでしょうか。今回の不法投棄事件に対して青森・岩手県の行政は毅然と取り組み廃棄物処理業者の責任を徹底的に追及し、更には処理を依頼した企業まで含めて原状回復への要求を行いました。(この一連の行政の対応については岩手県庁担当係長リポートに詳しく掲載されている。)廃棄物は捨てたもの勝ち、という状況を打破する取り組みになるのではないでしょうか。
 20世紀末の高度経済成長期に作られた大量消費大量廃棄の一方通行な物質の流れはそろそろ断ち切り、21世紀にあるべきものの流れに係わる社会システムを再構築しなければ日本は確実に破滅の道を歩むことになる気がします。それは、3R、4Rという聞き心地のいい標語を実践するのは大変重要なことですが、それ以前の問題として産業廃棄物排出者である企業、そして間接的ではあっても利益を享受している国民全体が最後まで排出物に対して責任を持つという極めて基本的なことを実行しなければならないということを再認識しなければならないのだと痛感しました。
(03.08.14)
青森・岩手県境産廃不法投棄事件関連リンク 
青森県庁事件経緯報告・・・・・・・・・・・青森県の事件報告
岩手県庁産廃対策室・・・・・・・・・・・・岩手県の緊急特別対策室ページ
岩手県廃棄物対策係長リポート・・・・岩手県廃棄物係長による事件報告・所見
青森県庁不法投棄対策チーム・・・・・青森県の不法投棄対策チームページ
岩手日報不法投棄記事・・・・・・・・・・ 岩手日報による不法投棄記事
二戸市事件報告広報・・・・・・・・・・・・ 二戸市による事件報告
岩手大学笹尾研究室ページ・・・・・・・ 環境経済学研究室によるフィールドワーク報告
田子町役場・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 青森県側の町
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現場周辺の風景


敷地内道路