この不法投棄事件は大々的に報じられ、よっぽどひどい臭気や山積みの廃棄物、といった状況を想像して現場を見ましたが、実際には一目で廃棄物不法投棄現場とは分かりませんでした。これは部分的に撤去されたり覆土されたりしていたということと、雑草が繁茂しているということで現状が見えづらかっただけだったのでしょう。しかしながら、整地された部分にシュレッダーダストと思われるゴミが散乱していたり、斜面の形状からは重機が作業をして土地の状況まで変えた状況なども推測できました。また、堆肥工場と称された建家の部分には廃土としか見えないものが積み重なっており、処理名目の単なるゴミ捨て場である現実を目の当たりにすることができました。実際にはドラム缶詰めの有毒廃液や汚泥、RDF状物質などあらゆる廃棄物が投棄されていたというのが現実だそうです。
廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に大きく分類されており、一般廃棄物は我々が日常捨てているゴミで地方自治体が処理しています。それに対して産業廃棄物は原則として排出業者に処理責任があり、一般的に知事の許可を受けた処理業者へ委託して処理をしています。廃棄物の処理は規制も厳しく、また処理費用も増加してきており、不法に処理をしてしまおうという業者がいるのも現実なのです。そういう今まで封印されてきた社会システムの闇の部分が露呈したというのが現実なのだと思います。地方での不法投棄は都市での問題を移動させただけ、言い換えれば都市の問題を地方に押しつけているともいえます。また、大企業が処理費用を削減したために処理業者が不法行為に走ったという要素が多少なりとも存在していたのは事実ではないでしょうか。今回の不法投棄事件に対して青森・岩手県の行政は毅然と取り組み廃棄物処理業者の責任を徹底的に追及し、更には処理を依頼した企業まで含めて原状回復への要求を行いました。(この一連の行政の対応については
岩手県庁担当係長リポートに詳しく掲載されている。)廃棄物は捨てたもの勝ち、という状況を打破する取り組みになるのではないでしょうか。
20世紀末の高度経済成長期に作られた大量消費大量廃棄の一方通行な物質の流れはそろそろ断ち切り、21世紀にあるべきものの流れに係わる社会システムを再構築しなければ日本は確実に破滅の道を歩むことになる気がします。それは、3R、4Rという聞き心地のいい標語を実践するのは大変重要なことですが、それ以前の問題として産業廃棄物排出者である企業、そして間接的ではあっても利益を享受している国民全体が最後まで排出物に対して責任を持つという極めて基本的なことを実行しなければならないということを再認識しなければならないのだと痛感しました。
(03.08.14)