毎天都在幻想..... |
炬燵会議/第五回/ファンシィダンスな過去を持つ男 (尹=尹,圓=EN-SHOW)
尹:皆さんこんにちは。炬燵会議、第五回、尹です。 圓:そして私がEN-SHOWです。今回も宜しくお願いします。 尹:さて、今回のお題は「ファンシィダンスな過去を持つ男」ですよ。 圓:また僕に話をさせようとしてますね? 尹:まぁいいじゃないですか、色々興味深い経験をされてますから、EN-SHOW君は。 圓:うーん、じゃ、お手柔らかにお願いしますよ。 尹:わかりました。 圓:まず、何からお話すればいいですかね?中にはちょっと・・・お話できない部分もあるんですけど・・・(笑)。 尹:んー、そうですねぇ、えーと、まず映画の「ファンシィダンス」の方はご覧になりましたか? 圓:ええ、観ましたよ。周防正行監督の、ですよね。 尹:そうです。で、周防正行監督と言えば思い出すのは「変態家族・兄貴の嫁さん」なんですが、まぁそれは別の機会に語るとして、実際に仏教の修行を経験した人の目には、あの映画(ファンシィダンス)はどう映るんでしょうか? 圓:うーん・・・そうですね・・・まぁ、娯楽作品にしてはよく取材されているんじゃないかと思います。でもやはり、すごく漫画チックですよね。 尹:まぁ、原作が漫画ですからねぇ。 圓:実際の修行というのはもっと厳しくて、中には後ろ暗い部分もありますからねぇ。あまり詳しくはお話できませんけど。あの映画を観て、お山にいる雲水が皆ああいう生活を送っていると思われるのはちょっと・・・。確かに、修行に行く人達の中にはちょっと困ったちゃんがいるのも事実なんですが。 尹:なるほど。じゃあ、EN-SHOW君が修行していた時は、あんな映画みたいなことはなかったと。 圓:強いて言えば、一つだけ映画と同じだったシーンがありました。入山した時、出迎えに出てきた古参が「尊公、名前は?」って尋ねてきたんです。娑婆では「尊公」なんて聞かないでしょ、なかなか(笑)。 尹:そうですねぇ。で、いよいよ修行生活に入ってからのお話なんですが。色々つらいこともあったと思いますけど、EN-SHOW君が一番耐えがたかったことってなんですか? 圓:うーん、そうですね・・・やっぱり、最初は眠いのとお腹が空くのがね・・・つらかったと言えばつらかったですかね。 尹:断食期間などがあるんですか? 圓:いえいえ、断食ではないんですけど、とにかく食事の量が少ないんです。内容も、栄養バランスがいいとはお世辞にも言えない。 尹:どんなものを食べていたんですか? 圓:白いご飯、胡麻塩、お味噌汁にお漬物、ですね。 尹:おかずがないじゃん。 圓:そうなんですよ。それで僕、しばらくして身体の調子が悪くなりましてね。もう毎日だるくてだるくて。休むわけにいかないから必死で動いてましたけど、今思うとあの身体の不調は脚気か何かだったんでしょうね。睡眠も、多い時で一日4時間ぐらい、下手すると全く寝ない日もありましたから。 尹:ちょっとトイレに行くフリして居眠り、ってわけにはいかないんですか? 圓:いかないんですよ。無断で持ち場を離れることはできないし、ちょっとでも休んでいるところを見つかったら罰則が与えられますからね。 尹:はぁ。一瞬たりとも気が抜けないんですね。毎日そういう状態で、肉体的には勿論のこと、精神的にも変調をきたしていきませんか? 圓:きたしていきますよ。マジな話、途中で病院に担ぎ込まれた同輩もいましたから。慣れるまでは本当、大変です。まぁ、慣れてからも大変ですけど。 尹:そうですか。で、あのー、この辺でいよいよ核心に触れてみたいと思うのですが。品のない質問で申し訳ありませんが、修行中、性欲の方はどうなっちゃうんでしょうか? 圓:それはもう、何が何でも我慢するしかないでしょう。と言うよりね、とにかく、お山にいる間はろくに寝てないし食べてないから、そういう元気は衰退しちゃいましたね、自分の場合。他の人達は知らないけど。 尹:実は、聞いたところによれば、「夜行」というものがあるそうで。 圓:あぁ、そうですね。有名な話だから喋っちゃってもいいかな。あのー、お山に入って100日間、外部との連絡が絶たれるっていう話は前にもしましたよね。その100日間を禁足というんですが、禁足期間が明けると、古参が新参の雲水を夜遊びに連れて行ってくれるんです。それが「夜行」。 尹:具体的に、どんな所へ遊びに行くんでしょうか? 圓:僕は行ったことないんで聞いた話になりますが、キャバクラからソープみたいな所まで、色々です。実はね、修行のためにお山にいる間に風俗遊びにハマった、っていう人も少なくないんですよ。 尹:それは、なんというか、修行先のお寺も認めていることなんですか? 圓:いえいえ、決して認めてはいませんけどね。お寺にはバレないように古参が上手くリードしてくれるようですから。 尹:そうなんですか。ちなみに、EN-SHOW君はどうして「夜行」には参加しなかったんですか? 圓:うーん、優等生的な答えになりますけど、僧侶になるべくして修行のためにお山に入った以上、いくら古参からの誘いとはいえ、ついて行くべきじゃないと思いました。娑婆で待っててくれている彼女を裏切りたくない気持ちもありましたしね。古参からは「俺が誘ってやってるのに何で貴様はついて来ないんだ?」って随分しつこく詰め寄られましたけど。それで、とっさに思いついた言い訳が「実は自分、女に興味がないんです」(笑)。 尹:あぁ、それでついたアダ名が「アニキ」になったという・・・。 圓:そうなんです。「あぁ、貴様は男の方が好きなヤツか・・・」と言われてしまって、それっきり、古参は僕のことを誘わなくなりましたね。それだけじゃなく、「EN-SHOWは男色だ」という噂がお山中に流れて、「アニキ」というアダ名までつけられたんですよ。 尹:なるほど。じゃぁ、お山にいる間のEN-SHOW君は、性欲休業中だったわけですね。 圓:まぁ、完全休業というわけではありませんでしたけどね。たまには「彼女どうしてるかなぁ」って思い出すこともあったし。彼女とのセックスを回想したり。(笑) 尹:はは。そういえば、修行期間というのは自慰行為も禁じられてしまうんですか? 圓:いえ、禁じる、と言われたことはないです。ただ、あの厳粛な空気の中ではそういう気分にはなりませんでしたね。 尹:それじゃ、夜、皆の目を盗んで自慰行為に及んでいる雲水などはいないんでしょうか。 圓:うーん・・・他の人のことはよくわかりませんけど、僕が見た限りでは、そういう人はいなかったんじゃないでしょうか。とにかくもう夜は眠いんで、各自布団に入ったら即、入眠ですよ。慢性的に睡眠不足ですから。 尹:ふーん。そうですか。それにしても、古参から夜行の誘いを断り続けたEN-SHOW君から見て、他の雲水たちの行いは許しがたい感じじゃなかったですか? 圓:うーん・・・良くない伝統だとは思いますけど、彼等のことを許せないとか思ったことはないです。雲水だって人間ですからね。性欲だってあります。何しろ皆ヤリたい盛りの若者ですから。仕方がない、と言ってはいけないのかもしれないけど。たまたま僕はついていかなかった、というだけで。娑婆だって同じでしょ。風俗行く人は奥さんや恋人から「ダメ」って言われても内緒で行くし、行かない人は何を言われても行かない。 尹:なるほど。では、ちょっと話題は変わりますが。お山にいる間、空腹がつらかったと先程お話してくれましたが、お腹が空いた時、何が一番食べたかったですか? 圓:甘いもの!(キッパリ) 尹:お肉とかお魚とかじゃなくて、甘いものですか? 圓:そうです。とにかく甘いものが食べたかった。不思議なものでね、人間、空腹の期間が長く続くと、甘いものが食べたくなるらしいんですよ。だからどんな大酒飲みでも、お寺で修行するようになるとお酒よりも甘いものを選ぶようになるんだって。 尹:そうなんですか。じゃあ、2年間、甘いものに焦がれ続けたんですか? 圓:いえ、それがですね、甘いものは時々送ってもらっていたんです。 尹:実家からですか? 圓:そう。お山での生活に必要な最低限のものを送ってもらってもいいことになってたんですけど、或る時、お袋が手紙で「何か欲しいものがあるか」って聞いてきたんで、「甘いものが死ぬほど食べたい」って書いたんです。そしたら、洗濯用の洗剤の中に忍ばせて、チョコパイとか栗羊羹とかブルボンのバームロールとか、僕の好物を送ってくれるようになったんです。 尹:バレませんでしたか? 圓:大丈夫でしたよ。これはね、結構みんなやってることなんです。でも一応郵便物チェック係の古参がいて、「お前、ヤケに洗剤多くない?」とか、からかわれたりしてましたけどね。(笑) 尹:じゃぁ、洗剤まみれなんですね、それらのお菓子は。 圓:そうです。中には洗剤の匂いが染み付いちゃってるお菓子もあったりして。 尹:で、それらはいつ何処で食べるんですか? 圓:ちょっと用を足すフリをしてトイレの個室に隠れて食べてました。 尹:あぁ、そういえば映画(ファンシィダンス)にもそういうシーンがありましたね。でもちょっとイヤだなぁ。食欲失せませんでしたか? 圓:もうね、そんなことは言ってられないんですよ。とにかく食べたいんです。飢餓状態なわけですよ。精神的にギリギリな状態ですから。ありがたいなぁと思いながら全て美味しくいただきました。(合掌) 尹:はー。そうですか。他にも色々聞きたいことがあったんですけどね。人間関係のこととか。 圓:人間関係はね、基本的に体育会系と一緒です。先輩の言うことは絶対、という、縦割りなシステムでした。僕は幸い、一緒の持ち場で働いていた古参に恵まれていたので人間関係でストレスを溜め込むことはなかったですけど、中にはヒドイ古参の下についちゃって、胃に穴が開いたっていう人もいましたよ。 尹:大変ですねー。軍隊のようですね。 圓:軍隊・・・うーん、どうでしょう。あくまでも僕個人の主観ですけど、軍隊は取りあえずお腹いっぱい食べられますからね。仕事の関係で陸上自衛隊に仮入隊させられたことがありましたけど、僕だったら軍隊の方がいいなぁ。もちろん、戦争しに行かされるってことになったら話は別ですけど。 尹:余程つらかったんですね、お腹いっぱい食べられないことが。 圓:うーん、そうですね。でも、よくよく考えてみたら今の飽食日本のこういう世の中で、飢餓状態を味わうってことは滅多にないですからね。これも貴重な仏縁、いい経験をさせていただいたと思うことにしています。(合掌) 尹:きれいにシメていただいてありがとうございます。では、今回はこの辺でお開きにしたいと思います。 圓:また次回お会いします。ごきげんよう。 |
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