毎天都在幻想..... 

炬燵会議/第二回/私が作った恥ずかしい曲 (尹=尹,圓=EN-SHOW)

    尹:皆さんこんにちは。炬燵会議、第二回。尹でこざいます。

    圓:はい、EN-SHOWです。今回も宜しくお願いします。

    尹:さて、今回のテーマは、「私が作った恥ずかしい曲」ということなんですが。

    圓:はい、「恥の多い生涯を送って来ました」と太宰先生も書いてらっしゃいますね。

    尹:ところで、本題に行く前に、前回の炬燵会議ににおいて間違いがありましたので訂正させていただきます。

    圓:そうですね。えーと、前回、韓国ドラマをテーマにお話してたんですけど、「冬のソナタ」について脚本を書いた人を男性だと勘違いしてました。どうやら脚本は女性が書いたものらしいです。僕が頭に描いてた男性は演出家のユン・ソクホさんだったようです。ここに訂正してお詫び申し上げます。

    尹:はい、その場で気がつかずに申し訳ありませんでした。

    圓:今度からちゃんと調べてお話しするよう、極力注意しますので。

    尹:んー、そうですね。じゃ、そろそろ本題に入りましょう。

    圓:はい、行きましょう。

    尹:実は、私とEN-SHOW君は大学一年生の時に、バンド活動を通じて出逢ったんだよね。EN-SHOW君がバンドを始めたのはいつ頃のことですか?

    圓:高校二年の夏でした。その前の年にバイトしてベース買って、独習したりはしてたんだけど、それを聞きつけた同級生が「俺のバンドでベース弾いてくれない?文化祭出ようよ」ってことになって。

    尹:で、初めてバンドに入ったと。どんな曲をやったの?コピー?オリジナル?

    圓:最初はコピーから。THE BLUE HEARTS と BOOWY の曲を何曲かやったのね。当時、僕が住んでた地方ではバンドやる男子高校生ってーと必ずと言っていいほどこの二つのバンドをコピーしたんですよ。

    尹:流行りましたよねぇ。私がいたバンドのギターの子もフェルナンデスの布袋モデルとか持ってましたよ。その頃ってちょうどバンドブームだったしね。確か、テレビでイカ天とかやってた頃で・・・。

    圓:そうなんです。実は僕が入ったそのバンドも、その後、文化祭で盛り上がったのに味をしめて「東京行ってイカ天出ようぜ!」っていうノリになって、オリジナルを作るようになったんですね。結局TVには出られなかったんですけど。

    尹:EN-SHOW君もオリジナルを作ったの?

    圓:実はー・・・作ったんですよ。

    尹:それは、つまり生まれて初めて作った曲?

    圓:そう。

    尹:ずばり、タイトルは?

    圓:えーと、あのー、「ペパーミント・ラブ」。

    尹:あーっははははははははははは!!それは今回のテーマにまさしくピッタリのタイトルだ。もしかしてラブソングですか?

    圓:いえいえ、ラブソングにもなり得ない、恋愛経験値の低い男子が作ったんだろうなーという、今聴いたら多分脱力モンの曲ですね。

    尹:聴きたいー!デモテープないの?

    圓:いや、もし仮にあったとしても絶対に人には聴かせたくない、或る意味、究極の一曲なんで・・・。

    尹:うーん、じゃぁ、内容だけでも教えてくださいよ。どんな曲調で、どんな詞なのか、差しさわりのない範囲でいいから。

    圓:そうですねぇ、曲調は、結構ポップで、ミドルテンポで明るめの・・・何て言うんですかねぇ、アメリカの田舎の方のギターバンドが学校主催のダンスパーティーで演りそうな曲。詞の方は、文部省から推薦状をもらえそうなくらい健全でケジメのある男女の交際・・・いや、交際までいかない、お互いに何となく思いを寄せてはいるんだけど、言い出せないまま友達みたいな関係を続けている若い男女を描いています。

    尹:うわぁ・・・(絶句)。

    圓:何しろペパーミントなラブなんで。お互い相手に指一本触れない設定で。

    尹:後に怒涛のパンクなナンバーを生み出すようになるEN-SHOWくんの黎明期だったわけだ、それが。で、その曲はバンドで演ったの?

    圓:いえ、それが、曲出しの時に「EN-SHOW、それはダサイよ。」という全員一致の見解で一蹴されましてね。それで僕もちょっと頭に来て、今度はまた、全く毛色の違う曲を作ったんです。

    尹:・・・タイトル聞いていいですか?

    圓:「今夜こそタックル・キス」です。

    尹:・・・っうっうっ(笑)、何なんですか、タックル・キスって一体・・・。

    圓:よく、ほら、洋画の中であるじゃないですか、何の予告も前兆もなくイキナリ「ばこっ!」ってぶつかるみたいにキスするやつ、あれをイメージしたんですけど。

    尹:はぁー。つまり、タックルするようなキスをするぞ、と・・・そういう意気込みを歌ったわけですね?

    圓:そうです。今夜こそ、いきなり「ばこっ!」といくぞベイビー、こう見えても俺って結構ワルなんだぜ、みたいな世界ですよね。

    尹:いやー、ワルと言うよりは・・・。

    圓:ワルと言うよりは?

    尹:あのー、気を悪くしないでくださいよ。でも結局、恋に恋する男子高校生の妄想・・・なのかなぁ、と。いえね、タックル・キスという造語は素晴らしいと思いますよ。それは認めます。が、ホンマにやったらクチビル切れまっせ。

    圓:はい、それはもう少し大人になってから知りました。

    尹:えぇっ?!じゃぁ、もしかして実践してしまったの?タックル・キスとやらを。

    圓:恥ずかしながら。はは(笑)。

    尹:血が出たでしょ?

    圓:はい、出ました。もうしません。

    尹:大人になるまでは色々あったわけですね、EN-SHOW君も。

    圓:それよりホラ、尹ちゃんだって色々恥ずかしい曲つくってきてるでしょう、今まで。

    尹:うん、まぁ、それはそれなりにね。でも私の場合は内容云々よりも日本語が不自由だったんで、そういう意味での恥ずかしい曲の方が多いかもしれないですねー。

    圓:生まれて初めて日本語で作った曲のタイトルは?

    尹:あれは忘れもしない、「あなたの名前は誰ですか」でした。

    圓:なるほど、早速タイトルから間違ってますね。

    尹:うん、でも詞の方はともかく、曲の方は結構マトモに書けたんじゃないかと自分では思ってます。中学生にしてはね。

    圓:中学生で。じゃぁ作曲は幾つの時からしてるの?

    尹:かれこれで、小学生の時から。日本に来る直前ぐらいからかな?ピアノ習わされてたんだけど、渡された教本の通りに弾くだけではつまらなくて、というのがキッカケでした。

    圓:アーティスティックだなぁ。「私には私のメロディーがあるの!」というわけですね。

    尹:いや、そんなカッコイイものじゃなくて。なんか、もうクラシック飽きちゃってたので、何かもっとテンポの速い、弾いてて心から楽しくなるような曲はないものか、ないなら自分で作るしかないよなぁ、といういきさつがあったんです。私が子供の頃を過ごした国は、文化的にはとにかく反米でしたし、国内の曲を弾くしかなかったんですよね。

    圓:じゃぁ、欧米のポップスやロックを聞くようになったのは日本に来てから?

    尹:そうです。それで、当初は戸惑いもあったんでけすけど、ある時期を境に一気にカブレちゃいましたね。パンクの洗礼を受けたのは中学2年の時で、最初に聴いたのはピストルズだったんですね。EN-SHOW君がパンクに目覚めたのはいつ頃でした?

    圓:僕はバンドやるようになってからですね。高校二年から三年にかけてぐらいかな。ピストルズ、クラッシュ、ラモーンズ、すげぇ!みたいな。でも、悲しいことにね、僕の周りにはパンクを聴いている人が全くいなかったのよ。洋楽ファンという存在自体がすごく気取った感じに見られてたしね。だから僕が水を得た魚のように音楽に熱中できる環境に置かれたのは東京に来て、大学に通うようになってからですね。

    尹:ジャパニーズ・パンクは聴かなかったの?

    圓:あぁ、そういえば赤痢(80年代〜90年代にかけてインディーズで活躍した京都のガールズバンド)は好きだったですけどねー。

    尹:私はLAUGHIN' NOSE(大阪のパンクバンド。メジャーデビューも果たした)が好きだったかな。あと、POGOとか。

    圓:でも、尹ちゃんはパンク好きなわりには自分で歌う曲はあまりパンキッシュじゃないよね。

    尹:うん。私の声はパンクに向いてないの自覚してるから。EN-SHOW君みたいにガーッて歌えるのが羨ましいですよ。

    圓:いやー、でも僕も30過ぎて、パンク一辺倒はちょっとどうかなーと考えるようになってきました。最近はね、フォーキーな感じの曲も作り始めてるのよ。

    尹:人間、歳を重ねると社会を告発する前に自分の内側に目が向くようになりますからね。それは自然の流れかもしれませんね。私も先日アンプラグドのライブ出させてもらって、存外気持ち良かったもの。

    圓:これが、「角が取れて丸くなる」ってことなのかなぁ。

    尹:あぁ、そうかもしれない。・・・と、それはともかくですよ、今後EN-SHOW君の曲の作風が変わっても多分、私はその変化を楽しみつつ聴かせてもらおうと思ってますので。ひとつ、是非とも味のあるやつをお願いします。

    圓:あ、それはもうこちらこそ。お互い、これまでの経験がいい形で作品になっていくといいですね。

    尹:じゃぁ、まぁ、そんなわけで、今回の炬燵会議はお開きということにいたしますか。

    圓:はい、それでは皆さん、ごきげんよう。


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