君はきっと来ない〜♪というわけで、明日はいよいよ花祭りだ。仏教では釈迦の誕生を祝うイベントがある。
渋谷のパルコ前でも、例の巨大な誕生仏の像がライトアップされ、その美しさに見とれつつ今年も若い恋人達が愛を語り合うことだろう。
そして、"天上天下、唯我独尊"の垂れ幕が、春の夜風に艶っぽく揺らめき・・・
「メリー・ブッディスマス。素敵な花祭りを君と過ごせて嬉しいよ。」
「うん、私も。・・ねぇ、来年の花祭りも二人は一緒だと思う?」
「当たり前じゃないか。またここで二人して、お釈迦様を見上げようぜ。」
「ん・・きっとよ。約束してね。」
「ところで・・今夜は君にブッディスマス・プレゼントがあるんだ。」
「えっ?何かしら。」
男はポケットから水色にラッピングされた小さな包みを取り出して女に渡す。女は瞳をキラキラと輝かせながら包みを開ける。
中から出てきたのは、なんと今年に入って発売されたばかりの、今一番新しいデザインのお洒落な数珠だ。
「わぁ、ティファニーの数珠。これ、欲しかったのー。嬉しいっ。ありがとう。」
「気に入ってくれた?・・迷って選んだ甲斐があったよ。」
「実はね、私もブッディスマス・プレゼント、用意してきたの。」
「へぇ、何だろう。楽しみだなぁ。」
女は男にそっと耳打ちをする。その唇が「わ・た・し・を・あ・げ・る」と動いたりなんかする。きゃーっ。
で、二人はそのまま寄り添って円山町の方角へ消えて行く。街中のレストランやお洒落なホテルはこの日、
どこも予約で一杯である。それというのも、若者向けファッション雑誌などがこぞって「花祭りの夜、彼氏と行きたいこんなお店」
「花祭り、このホテルなら彼女をモノにデキる!」などと無責任な特集を組んだためだ。
・・・なぁんてことは、まず無いだろうな。
私が知っているのは、この日は小さな誕生仏の像にみんなで甘茶をかける儀式を行ったり、
お菓子をいただきながらお坊さんによるお釈迦様の話を聞いたりするんだよな、というところまでだ。
それにどういうイミがあるのかとか、何故そういうことになったのかということについては、目下勉強中である。
そんなわけで、気付けば今日はブッディスマス・イヴなのだ。過去に仏前結婚式を行った我が家の夫婦にとっては、やはり一大イベントなのだ。
従って仕事の帰りに、ちゃぁんとケーキも買ってきたのだ。晩御飯の方も、それとなくインドっぽいメニューを揃えてみたのだ。
もちろん、猫さん用のご飯もかなり豪勢なのだ。
ともあれ、今、これを読んでいる仏教徒の方々へ。メリー・ブッディスマス。あと、勿論、仏教徒以外の方々も、心穏やかに過ごせますことをお祈り申し上げて今回は筆を置きます(←「筆」か?)。
1999-04-07
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