【わざわざ疲れる恋愛をする人たち】

以前、何かのマンガに「何故こんなに恋愛は僕を疲れさせるんだろう」と嘆く主人公が、やがて「何故僕はこんなに疲れる恋愛をするんだろう」という境地に至っていく過程が描かれているのを読んだことがある。

確かに、恋愛にはエネルギーが要る。それ故、疲れることもある。しかし、考えてみると、自分でも気づかぬうちにわざわざ疲れる恋愛をしていることが、往々にしてあるものだ。自分にも一つや二つ、覚えがないわけではない。

しかしながら、私がイマひとつ理解できかねるのは、やたらと恋愛に上昇志向を求めたがる一部の人たちである。何故か、若い女性に多い。いわゆる、「お互いを高め合うような恋愛がしたいんです」というヤツである。個人的に、そのような彼等/彼女等の在り方を否定はしない。恋愛の一つの結果として偶然そうなれば、結構なことだとも思う。

でも、私なら、恋愛しているときぐらいは、そういった上昇志向のことは忘れたい。現に、個人的に恋愛というものは相手を思い遣る気持ちだけで胸が満たされていて、しかもそのことに喜びを感じている状態のことだと定義しているので、もうその時点で精神的にいっぱいいっぱいなのである。上昇志向など入り込む隙もない。

と言うか、「君が嬉しそうに笑う顔が見られて私も嬉しいサ」とか「このまま手を繋いでどこまでも歩いて行けたらヨロレイヒ〜♪」といった気持ちが、「常にお互いを高めなきゃ、高めなきゃ」という気持ちにすりかわってしまったら、とても白けた寂しい気持ちになるだろうと思うし、何より、疲れる。

そうでなくとも私達ニンゲンは、普段から仕事場で、学校で、自分を高めることを、自分を急かして一歩でも多く他人より前に進むことを半ば強制されて生きているイキモノだ。私は、そういう在り方を恋愛にまで持ち込みたくはない。好きな人の前にいる時ぐらい、そんなこと忘れて全てを相手の前に投げ出してしまいたい。この気持ちは、今後も変わることはないだろう。(・・・えっ?アンタは既婚者だからもう恋愛なんか関係ないだろうって?・・・とんでもない!私は今でも夫に恋愛中っすよ!)


2003-09-12


回目録】  (C) 尹HM. 版権所有・不准転載.