【今更メル友】
現在、メル友を募集している。言葉さえ通じれば国籍・性別・年齢は問わない。但し、ひとつだけ事前にお願いしておきたいことがある。それは、「オフラインで会おう」と言わないで欲しい、ということである。
実を言うと、オフラインには悲しい思い出がある。インターネットを始めて間もない頃だったから、もうかれこれ8年前になるだろうか。私はネット上で或る女性と知り合い、ほぼ毎日のようにメールのやりとりをするようになった。彼女はアメリカから移住してきた在日僑胞ということもあって、とても気が合った。3ヶ月ぐらいの間、いい感じでメールのやりとりが続いていた。
そんな或る日、彼女の方が「今度、オフラインで会おう」と言ってきた。その時の私はネット初心者だったこともあって、特に深く考えることもなく気軽にOKした。そしてそれから間もなく、都内の某所で彼女と会って食事をした。そして、私は彼女に恋をした。
私がバイだということは既にメールで伝えてあったのだが、残念なことに彼女はノンケである上に夫も子供もある身だった。したがって私は、彼女に会ったその日から、叶わぬ恋に身を焦がすことになってしまったのである。
以来、彼女にメールを送らない日が続いた。否、送れないと言った方が正しかっただろう。ひとたびキーボードを叩けば、メーラーに溢れ出すのは彼女に対する行き場の無い想いばかり。書いては消し、書いては消し、結局送信ボタンを押さぬまま日々だけが過ぎて行った。
しばらくして、そんな私を知る由もない彼女からメールが届いた。「メールをくれないけどどうしたの?このまえ会った時、私、あなたに何か失礼なことしちゃったかな?」といった内容だった。私は色々考えた挙げ句、思い切って自分の率直な想いをメールで彼女に伝えた。そして予想通り、玉砕した。
結局、それを機会に彼女とのメール交換は終った。彼女からの最後のメールには「これ以上あなたを苦しませたくないから」と書かれていた。
その後、個人サイトを立ち上げて色々な人からメールをいただいたけれど、「オフラインで会おう」という言葉には臆病になった。中には電話番号を教えてくださったりする方も時々いらっしゃるのだが、失礼を承知で電話はせず、メールのみのやりとりにとどめさせていただいている。
因みに、ネットで知り合った人とオフラインで会いたくないのはもうひとつ理由がある。それは、オフラインでの知り合いになった人にこのサイトの文章を読まれ続けることが、なんだか耐えられないからである。加えて、相手も個人サイトを持っている方である場合、お会いした時に感じた私の印象とか、何処へ行って何を話したとかいったことを書かれてしまうのも、なんだか耐えられない。
そんなだから、「オフ会」なんて誘われても絶対行かない。メールでしか話せないこと、メールだからこそ話せることは、ネットという絶妙な距離感があるからこそ生まれてくる。そんなやりとりが楽しく続けられれば、私はそれだけで充分満足である。
2003-08-25
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