【挿入あれこれ】
初めて其処にそういう器具を挿入してみたのは9年前だった。お店のお姉さんが「初めての方はこれくらいのから試してみたらいいでしょう」と言って選んでくれたピンク色の、通常よりひとまわり小さめのボディ。でも、イザ入れてみると痛かった。ヘンに身構えて力が入ってしまう。何より、私はそのころ自分の其処の構造について、恥ずかしいけれど充分熟知しているとは言い難かった。だからどうしても「こんなもの入れて本当に大丈夫だろうか?」という不安が、たえず邪魔をするのだった。
かつて、自分の其処がどんな具合になっているのか知りたくて、鏡に映して見たことはあったけれど、奥の方までは見えなかった。写真に撮ってもみたけれど、やはり同じだった。何人かの恋人は時折ペンライトを持ち出し、私のその入口の柔かい肉の部分を透かしながら喉の奥で何かを圧し殺していたものだ。そんな時、「どんな色してる?」と聞くと、「赤ちゃんみたいな桃色」という答えが返ってくるのはお約束だった。
恋人に其処の中を優しく弄くられるのはとても気持ちよかった。でも、そのピンクのブツはボウボウと音を立てながらホールの壁を引っ掻き回すだけで、自然と涙が溢れた。入れたまま寝ようとしたことがあるけれど、異物感が気持悪くて睡魔も寄って来ない。仕方なく出すことにしたが、これがまた入れる時より更に痛い。手に取って見たら、少しだけ血がついていた。
それでも、ここ2年ぐらいの間にカラダはどうにかこうにか慣れることを覚えた。上手な入れ方を職場の同僚に教わったのだ。まず、手を温める。次に例のピンクのブツを手の平に乗せ、包みこむように優しく握る。しばらくすると体温で柔かくなるので、指で自分の好きな形に整えてから挿入するとよい。家に帰って試してみたら、ほとんど痛みもなくすんなり入った。そうなってみるとピンクのそれはまさに私のサイズにぴったりであり、時間が経てば入れていることすら忘れてしまいそうなほど。これでいつでも好きな時に自分で挿入できると思うと、私は密かに嬉しかった。
そして最近では更に少々背伸びをして、ピンクのものより一回り大きいイエローのタイプを使うようになった。コツをつかんだので、今では入れたまま眠ることだってできる。それどころか、慣れとは恐ろしいもので、挿入している時の方がしていない時よりも安眠できるようになってしまった。そのうちにこれナシじゃ眠れない・・なんてことになるのではないかと心配になるくらいの順応ぶりである。この調子だと思い切ってピアス穴を開けられる日も、そう遠くはないだろう。
ちなみにその器具は、商品名を「イアーウィスパー」という。上手に入れれば耳の中で優しく膨らんでフィットするので疲れないし、遮音性能もなかなか。女性や耳の小さい方は、私のようにピンクのものから使ってみるのがよいだろう。現在、ドラッグストア・本屋・空港売店などで入手可能。
2001-05-06
【回目録】 (C) 尹HM. 版権所有・不准転載.