【21世紀の自分へ】
前の住所から転送されてきた郵便の中に、母校の高校からのものがあった。「???」と思いつつ開けてみると、卒業の時タイムカプセルに入れてクラス単位で埋めた「21世紀の私への手紙」が同封されていた。読み進めて顔から火が出る。
手紙には、「自分を貶める安易なセックスに逃げ込むな。クスリには絶対手を出すな。バカな男と一緒になるくらいなら一生独りで生きていけ。そのためには経済力をバッチリつけて云々・・」といったことがクドクドと右上がりの字で書かれていた。
三十路を前にして18歳の自分から説教されるとは思わなかったが、この手紙に対する現在の答えが「お蔭様で私はこのとおり大丈夫です。ご安心ください。」であることに、ホッと胸を撫で下ろす自分がいたりする。
過日、学生時代の友人と電話で「10代の頃に戻りたいか?」という話をした。その結果、「自分のアホさ加減に何度もウンザリして泣いたり喚いたりしながら自分に鞭打ってようやくここまで辿り着いたわけなので、戻ることなんて考えられない」というのが両者に一致した答えであった。
個人的には、若さが輝きだなんて嘘だとしか思えない。私のセイシュン期はまさに、無知と金欠と己の力無さに対する苛立ちの中にのみ存在していた。流行の服を着たり化粧に身を窶したりすることに興味を持てなかった私は、こんな自分でも要領さえ得れば若さを武器として使えるのだということを学びそこねた。いつでもどこでも不器用にしか振る舞えない自分に我慢がならず、早く大人になることばかり願った。
今の自分の在り方がそうしたジタバタの積み重ねの結果であることに悔いはない。思い出すたび恥ずかしさに身悶えしたくなるような、肩に力の入りまくった愚行奇行の数々が私を此処へ導いてくれたのだ。あの頃と同じく、今でもやはり私が欲しているのは、他人から羨望されるような若さや輝きではなく、自分を納得させ得る成熟の証だ。
2001-03-26
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