セックス障害者たち |
1999/11/10up
セックス障害者たち
バクシーシ山下
幻冬舎アウトロー文庫(1999)¥600
自称ヌケないAV監督が自作をオカズに語る、男優や女優たちとの奇妙な交遊録。意外なことに、そこには、AVというセックス・ファンタジーから想像されるような、三つの黄金の睾丸を持つアポロンもいなければ、パルテノンの神聖娼婦もいない。
否、平凡な精力絶倫男さえもいない。いるのは、ゲロを吐くのが特技の男、虫のようなセックスをする男、信じられないことに童貞の包茎男と、それを巧妙に操る監督である。いつもぼーっとしている女優も登場するが、男優の奇怪さの前には圧倒的に影が薄い。
男優たちは、皆揃って貧乏であり、詐欺に引っかかるほどに欲深であり、ホームレスかその一歩手前である。数万円のギャラで、ただ女とやりたくて、しかし肝心なときには立たず、それでも、目一杯くさい演技で目立とうとする情けない表現者たちである。
決して同僚や隣人にはしたくない怪人たちが繰り広げるフリークショー。読後、何故か優しい気持ちになるのは、こちらの差別意識のなせる技か、はたまた、彼我の距離が見かけほど遠くないことの自覚ゆえか。
P.S. 映像作家の本を評する以上、1本位は作品を見るのが礼儀なのだが、「男女6人監禁物語・食事もトイレもSEXも手錠で繋がれ一緒くた!!」といったタイトルのビデオを女房もちが自宅で見るのはやはり難しい。作品を見た人がいれば感想を聞かせてほしい。