'99年3月3日、4日の二日間、コリン・ファースの出演しているお芝居"Three days of Rain" を観に行きました。以下は、その時一緒に観劇したかなぶんさん版のレポートです。やはりいるいるさんの掲示板にアップされたものを基にしていますです。


●お芝居編

レポートその1 <第1幕>

"Three Days of Rain"の上演されたDonmar劇場は、間口も狭くまさに小劇場の良さが満喫できました。初日(1日)の夜に楽屋口を確認しようと下見に行って(中でコリン君がお芝居してるんだと思うと、とってもじれったい気持ちになりました。奥の受付に"SOLD OUT"の文字も!)、3日の夜は1階正面3列目の左端に座りました。例のベッドのすぐ近くです。1列目なんかは、足を舞台にのせられるほど接近していました。

<第1幕>

 照明が落ちて薄暗い中を、片方の肩のちょっと下がった背の高い男性が、左手奥の舞台出入り口からすたすたと入ってきて、ベッドの上に仰向けになりました。Colinです!!一呼吸あって静かに最初の台詞が…、眠れないとかなんとか…、舞台が明るくなって、そのあと自己紹介など説明的な台詞が続きました。私にはアメリカ英語っぽい発音に聞こえました。Colinの衣装は"Evening Standard"のReviewにもあるとおり、緑色のTシャツ(これはほとんど見えません)の上に灰色がかったモスグリーンのネップ入り(?)セーター、下は黒のジーンズにうす茶色のくるぶし丈の紐靴。髪の毛は本来の色よりは少しダークに染めていて、短めに刈っていました。どこにでもいそうな現代的な格好です。そのあとしばらくはColinのみの演技が続き、姉役のElizabethさんの登場となります。

 台詞はかなりウイットに富んだものらしく客席からは、しばしば笑い声が聞こえました。残念ながら、その1割も理解できずにおりました。Walker(Colin)が父の日記をベッドのマットレスの間から発見した時のたとえに "The Princess and the Pea"の童話を引用していたり、日記に父の親友Theoの死のくだりが "Theo is dying./Theo is dying./Theo dead."とあまりにも簡単に綴られていたり、"Three days of rain"の記述をWalkerがweatherreportじゃないかと呆れていたり…といったわずかばかりの部分でのみ笑えました。途中Walkerは黒いコートを着て姉と一緒に食事に出かけたり、また戻ってきたりという具合でした。最後に父の日記にマッチで火を付けるシーンで幕(実際に幕はありませんが)となります。

レポートその2 <第2幕>

<第2幕>

 時間はWalkerの父Ned (Colin 2役)がまだ若かった時代にさかのぼります。舞台奥の煉瓦の白い壁の前、左端にツリー式コート掛け、ほぼ中央に60年代風冷蔵庫と本棚が加わり、舞台右手前に食卓セットが置かれます。冷蔵庫の前方で、黒縁眼鏡のNed が黙々と製図机に向かっていると、階段上左手の出入り口からデート帰りと思しきTheo(仕事のパートナー)とLina が入ってきます。騒々しい二人に、Ned が聞いていた音楽のボリュームを上げると、「音を小さくしろ!」と逆に注意されます。Lina は化粧もやや濃く、服装も派手めな女性です。第1幕の堅実そうなNan (Walker の姉)とは雰囲気がだいぶ違います。また、NedとTheo は、外見も性格も対照的な感じです。Nedは、うす茶色(あるいはカーキ)の長袖シャツにこげ茶のズボン、黒の革靴、いわゆるダサい感じ(なんだかお顔は北野大さん風に見えました)。性格も真面目だが神経質そう。Theo は天才肌で、ちょっと崩れた伊達男風。その後Theo がピザを買いに行ってしまうと、Lina が階上からNedに「たばこ持ってきてちょうだい」と声を掛けます。 その後、この二人のやりとりがしばらく続きます。

 さて、ここからですが、台詞が十分に理解できず、筋を正確に追って見ていたわけではない私には、印象的な場面の記憶はあるのですが、それらをきちんと順序立てることが出来ません。申し訳ありません。以下の記述は、演じられた順番通りに並んでいないおそれがありますので、そのつもりでお読みください。なお、Ned は製図机に向かっている時以外は、眼鏡はかけていません。それと、彼は体にフィットした茶のセーターもシャツの上から着たりします。

1. Nedの悲しみ

 Ned はTheo にかなりのコンプレックスを持っている様子(建築の才能も含めて)。仕事のことなど話し合っているうちに、だんだんと言い争いになってきた二人。興奮したNed が、言葉に詰まって(どもりの1症状)、激しく鳴咽しているようになり、Theo が慌てて気遣うと、Nedは落ち着くために右奥の流しで水を頭からかぶります。 この部分が、Colinの演技上、最大の見せ場だと思いました。Ned は常に吃っているわけではなく、この瞬間、発作的に言葉が出せなくなるのです。「ひと月の夏」のバーキン氏の症状をさらに激しくした感じで、見ているこちらも胸が締め付けられました。Colin が役を演じているというより、Ned という人物そのものが、そこにいる感じでした。Nedの心の叫びが聞こえました。迫真の演技…コリン君、面目躍如です!(^。^)/

2. 珈琲

 雨に降られて、駆け込んでくる NedとLina。濡れた上着を乾かしている間に、Ned がコーヒー・メーカーを火にかける。「あなたって、いい人ね」とちょっかいを出し始めるLina に、「上着もう乾いてるんじゃないかな」とか「コーヒーできたみたいだ」とか、引きのNed。客席からも笑いが。

3.「Mr. Darcy、キッチンに立つ!」

 夕食の買い物から帰ったNedとLina。Linaがテーブルセットに腰掛け、一服している間に、Nedがキッチンに立ち、慣れない手つきでニンジンを切り始めます。彼がLina に向かって、「やってみてよ」とか声を掛けると、彼女はかったるそうに立ち上がって、くわえ煙草のまま、さらに不器用に切ります。また、食事の後、Ned は速やかに食器を片づけます。Lina という女性の性格と二人の関係が垣間見れるシーンです。

4. ベッドで…

 舞台が暗転している間に、すばやくシャツを脱ぐ Nedとクラシカルなスリップ姿(下には黒のTバックだ!)になる Lina。客席にとある期待が高まる。明るくなると、第1幕と違って白いシーツの敷かれたベッドの上に、Ned が白いTシャツ姿で寝そべっている。その足元(ベッドの上)に彼を見つめながらすっくと立っているLina。見上げるNed。「子供が欲しいわ」「手伝ってあげられるよ」Nedの胸に寄りかかるLina。しかーし、Ned は子供が大嫌いだった!「僕が子供嫌いというだけで、周りの人間から嫌われてしまう」「"今日、○○君は五つまで数えられるようになったのよ" とか…まったく!」彼の熱のこもった演説に、場内大爆笑。

 などなど…第2幕はコリン君の色々な姿が、すぐ近くで見られて、大変おいしい思いをいたしました(^。^)。ラストへと続く…。

レポートその3 <ラスト>

<ラスト>

「子供は嫌いだ!」発言の続き、二人が例の格好で部屋にいるところへ、Theoが現れます。驚いて立ち去ろうとする Theo を Ned がシャツを着ながら慌てて追いかけます。階上で追いついた Ned に Theo は、Lina とのことには触れず、「全部君に譲るよ」と言って、雨の中へと出て行きます。困惑する Ned。(たぶん、この直後、Theo は Pip<Walkerの友人>の母親と知り合ったのでは?)その後、Ned は再び製図机に向かい、 "The beginning...of error" という彼の台詞で終わります。

 実は第1日目に見た時は、「あれっ、こんなところで終っちゃうの?結局(謎解きの)答えは何だったの?」という感じでした。つまり、筋が理解できていない、ということなんですが。このレポートはなるべく正確に書こうと努めましたが、私が誤解していること、あるいは記憶が不正確なところも多々あると思います。また、ここには再現できなかったシーンもたくさんありました。詳しくは、今後発売されるであろう脚本や他の方のレポートを御覧ください。全体としては、2時間ちょっと(途中休憩も含めて)の上演時間でした。私は Colin ばかりを見つめていたので、もっと短く感じましたが。第一幕の自己紹介のところなどは、主に2階席に向かって台詞を言っていましたから、目があうなどということもありませんでした。どちらかというと Elizabethさんとしばしば視線があってしまったように感じたのでドキドキしてしまいました。観客はほとんどが演劇好きのイギリス人に見えましたが、中にはアメリカ人やロシア人などもいたようです。コリン・ファンももちろんいたらしく、二日目に Pip が最初に登場するシーンで、演じている Morrissey さんが「今度は僕の番だよ。みんな僕の方を見て!」とアドリブを飛ばしていました。

 終演後、3人は客席に向かって、何度もお辞儀をしていました。二日目の時に Colin は客席の中に誰かを探しているような視線を送っていましたが、誰だったのかな?二日目は若干ノリが悪かった、と電気羊さんがおっしゃっていたのですが、確かに客席の反応が1日目に比べると少し遅く、役者が笑いを待っている状態が何度かありました。私自身は、こんなに近くで Colin の演技を観ることができただけで、ロンドンまで来た甲斐があったなぁと思っていました。劇場のチケットも日本に比べると安く(今回は3,000円くらい)、ロンドンの人は幸せだなとも思いました。また、書店には脚本コーナーがあり、新聞には詳しい review が載るといったところは、さすが演劇の国でした。


●出待ち編

 
レポートその4 出待ち(その1)

"Three Days of Rain(以下 "3DoR")"の「出待ち」については、既に電気羊さんに詳細かつ熱くレポートしていただいているので、ここでは他に気づいたことを書かせて頂きます。

(第1夜、3/3)

 私たち(電気羊さん、私&妹)が劇場を出て、10分待つか待たないかのタイミングで、出演者やスタッフの方々が、入り口右奥の狭い階段を次々と降りてきて(電気羊さんのHPの写真参照)、入り口のすぐ外から覗いていた私たちの目に、渋い革ジャンにショルダーバッグを提げた Colin の姿が飛び込んできました。「来た、来た!」と小さく叫びながら、既に腰の抜けている私を、行動力のある電気羊さんが励ましてくれたので、ロビーの中ほどまで人波を掻き分けて進むことが出来ました。

 何人かのファンの人たちが Colin にサインを貰っていて、私たちもおとなしく順番を待っていました。電気羊さんが、いるいるさんと御自身の手紙を示しながら、詳しく説明していたのを、確かに Colin は彼女の方を見つめてじっと集中して聞いていました。すぐ後ろにいた私も全く割り込めない雰囲気でした。電気羊さんが手紙を渡すどさくさに紛れて、私も自分のカードを渡しました。「直訴状」といいたいところですが、ロンドンのおもちゃ屋さんで見つけた "The Gunners" の文字と Arsenalのエンブレムの書かれた赤いカード(ちょっと、ウケをねらってみました)に、中学生の作文のような英語の手紙を、その日の夕方に書いたものです。インターネットのことにもそれとなく触れたつもりだったのですが、解って頂けたかどうか…?。

 サインの方は、電気羊さんに続いてやって頂こうと、当日市内の Hollywood 関係ショップで見つけた Mr. Darcyのブロマイド(他に2種類 Colin のブロマイドがあるはずなんですが、品切れでした)とサインペンを渡したところ、劇場の入り口を閉める時間らしく、全員外へ出ざるを得なくなりました。Colin は写真とペンを持ったまんま入り口を出て、寒い外で丁寧にサインしてくれました(写真の場面)。

 他の人々がサインを貰い終わった後で、電気羊さんが写真をお願いしてくれました。ツーショットで撮って貰えるなんて期待していなかったので(Colin は当然そういう写真だろうと思ってたみたいですが)、電気羊さんが一緒に撮っているのを見て、「えっ!?」と思うまもなく、私の番になってしまいました。肩に置かれた手が、「ガシッ」というか「ぎゅっ」というか、とても力強かったのを覚えています。かなり着膨れていたにもかかわらず、その感触が一週間ばかり残っていました(^。^)。そのあと、妹が君も一緒にと言われたみたいですが、遠慮したところ、けげんな顔をなさっていたそうです。

 最後に、三人とも握手をしてもらって、Colin が「遠くからどうもありがとう」といってくれました。このとき、私は初めて目があったように思ったのですが、Valmont のようないたずらっぽいきらきらした目で、とっても暖かい笑顔でした。そのあと、御一行は劇場正面にある "Belgo" というレストランへと消えました。 (つづく)












レポートその5 出待ち(その2)

(Livia さん)

 さて、私たちが入れ替わり Colin とツーショトを撮っている間、奥様の Livia さんは、傍らで微笑みながらずっと待っていらしたようです。私も美しい女性がずっと一緒にいることには気づいていたのですが、ネットで何枚か拝見したお写真と違って、髪をアップにしてらっしゃたので、共演の女優さん(つまり Elizabeth さん?)かスタッフの方だろうと思っていました。「Colin あるところに Livia さんあり」の鉄則をうっかり忘れておりました。やはり相当舞い上がっていたんですね。後で妹に「奥さんと話しをしちゃった」と言われて、初めて気づくという失態でした。大変失礼いたしました。

 よくよく思い出してみますと、写真で拝見するより、というか西洋人の女性としては、どちらかというと華奢で小柄な感じがしました(Elizabeth さんもそんな風ですが、顔立ちはだいぶ違います)。目鼻立ちのハッキリとした、ややエキゾチックな美人タイプですが、どことなく清潔感があり、Colin よりかなりお若いせいもあってか、「可憐」という言葉がピッタリだと思いました。まさに、コリン君好み(勝手な想像)で、とても好感が持てました(我々の憧れの君に変な女がくっついていたりしたら心配ですものね)。コリン君、やるじゃん。

 妹の話によりますと、私たちが Colin とお話をしている間、奥様らしき女性が手持ちぶさたにしているのを見て、「御主人ですか?」と声を掛けたところ、嬉しそうににっこりと微笑んだとのこと。(妹のその夜の鮮明な記憶は、Colin との握手と Livia さんの笑顔なんだそうです)

 Livia さん、大切なだんな様を少々お貸し頂き、ありがとうございました。あなたは、世界中のコリン・ファンの羨望の的なんです!!これからも Colin のことをどうかよろしくお願いします。

(さらに、つづく)

レポートその6 出待ち(その3)

(第2夜、3/4)

 昨夜(3/3)の写真をプリントしたところ、コリン君の目が赤くなって異星人のように見えました。(*_*)電気羊さんにも申し訳ないと思い、もう一度撮り直しをお願いしようと決め、今日はひとりで出かけました。

 私たちは終演後、今度は階段のすぐ下、入り口から向かって左側のチケット窓口の方で待っていました。まもなく階段を降りてきた Colin は、途中で私たちにすぐに気付いてくれて、電気羊さんが声を掛け、私も階段上の彼に向かって、旧知の仲のように馴れ馴れしく手を振ったりしました。すると彼は、"Thank you for your letters!"と、にこにこしながら言いました。単なる社交辞令ではなくて、本当に読んだと彼の目が語っていたので、「手紙読んだよ」という超訳になってしまったわけです。降りるとすぐに私たちのところに来てくれて、そのつもりはなかったのですが、またまたプログラムにサインをして頂きました。

 さて、写真のことをお願いしようと、私が変な英語で、しかも小声でモゴモゴ「昨日の写真が失敗だったので…」と話しかけたら、Colin はこちらに耳を近づけて、一生懸命に聞いてくれました。その瞬間、私はかえって緊張してしまったのですが、とても嬉しく思いました。私が言い終わると、"O.K.!"と、深く頷いて、「じゃあ、他の人たちに先にサインしてくるから、待ってて」みたいなことをおっしゃいました。その夜は、日本人らしき女の子も来ていて、サインを貰ったり、写真を撮ったりしていました。Elizabeth さんは、ファンから花束を貰っていました。みんなが終った後に、電気羊さんと私が、ロビーのところでツーショット写真を撮り合いました。今回は前回にも増して「ぎゅっ」という感じでした )^o^(^_^)。

 すでに劇場の入り口を閉める時間だったのですが、係りの女性が、私たちを待っていてくれたのでした。感謝、感謝。今夜は Colin 御一行は別のレストランへ向かうらしく、劇場を出て、右の方へ歩いて行かれました。私たちも思わずついていきそうになりましたが、思いとどまり、闇の中へ消えてゆく Colin と Livia さんたちの後ろ姿をずっと見送っていました。最後にちゃんとお礼が言えたかどうか、記憶がハッキリいたしません。

 ぼーっとしている私たちに、3人組みの女性が「日本人の方ですか?」と声を掛けてくれました。ロンドンに留学中の方達で、そのうちお二人がコリン・ファンだとか。「アナ・カン」からだというツワモノもいらっしゃいました。偶然私と同じブロマイドにサインを貰っている子もいました。電気羊さんとは、名刺の交換もしていました(笑)。劇を見るために日本から来たと言うと、驚いてらっしゃいました。インターネットは利用したことが無いということでした。「これからユアン・マクレガーを見に行くんですが」とお誘いを受けましたが、遠慮させて頂きました。

 電気羊さんとも、また日本でお会いしましょうと握手をして地下鉄でお別れしました。

(おしまい)


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