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毛ムール人さん

●山に登ること

 昨年(1998年)の9月、私は、北アルプスの槍ヶ岳に登った。それまで、榛名山のような低い山に登ったり、尾瀬の湿原を歩いたことはあったが、高い山を相手の重装備の登山は私には初めての経験であった。山頂の辺りでは登り降りをするだけでも随分の恐怖感を味わったが、汗を流し息をきらして目標地点に辿り着いたときの気分は爽快であった。
 それに、プラネタリウムのように星々に埋めつくされた夜空や、陽の光を受けて橙に染まった朝晩の空は、ただ眺めているだけでも涙が出そうになるくらいに感動的で素晴らしかった。私は、苦労して登ってよかったと思った。
 空の青、雲と雪渓の白、木々の緑、紅葉の赤、山肌の鼠、足元の茶などの色々な「色」も美しく、私は静かに堪能したのであった。
 今年も、どこかの山に登り、あの感動をもう一度味わってみたいと思う。但し、「梯子上り」や「鎖渡り」などの“怖い思い”をしなくてすむ程度に。

●未踏の地を訪ねること

 私は、一人で気軽に国内の鄙びた所を探訪するのが好きで、これまでに津々浦々で様々の人や物に接してきた。今年も、そんな静かな一人旅を続けたい。
 これまでの旅で、東北、関東、甲信越、北陸地方はだいたい訪ね尽くした感があるので、これからは未踏の地域を重点的に訪ねてみようと思う。さしあたり、北海道のオホーツク沿岸、津軽半島、木曽・伊那地方、奈良・吉野、南紀、中国・四国地方などが候補として挙げられる。東京と同じ大都会だからという理由で敬遠してきた大阪や神戸の路地裏を覗くのもいいだろう。
 なお、私がしているような旅は、雑踏、行列、流行、贅沢、グルメ、長時間待ち、土産買いなどを徹底的に避けるのが特徴なので、快楽や味覚や話題のネタを求める一般人にはおすすめできない。

●心身の健康を維持すること

 人々が充実の日々を送るためには、何をおいても自分自身の心身が健康でなければならない。
 だが、今日ほど、心身ともに健康であり続けることが難しい時代はないのではないか。不況の最前線で生み出された諸々の衝撃はストレスとなって人間の精神に襲いかかり、ダイオキシンやウイルスの類いは確実に人間の身体を蝕んでいる。毒を入れたカレーを使って人殺しを企てた悪い奴もいるように、人間自体も人間の生命と健康を脅かす存在になっている。
 大切な生命をうっかり落としてしまったら正に一生の終わりであり、重い病気になれば容易には社会復帰もできないだろう。
 だから、不幸に陥らないためにも、今こそ改めて健康でいることの大切さを再認識する必要があると思う。
 正しく「生き残る」秘訣は、「しがらみ」から逃れてストレスを回避すること、些細なことでくよくよ悩まないこと、気の進まないことはしないこと、自分だけの時間や自分のペースを大切にすること、深酒をしないこと、よく眠ること、食べるものをよく選ぶこと、ことに「お祭り」のような屋外のイベントで誰が作ったのか分からないような食べ物を口にしないこと、などであろう。

●本を読み、『けんま』に書くこと

 何かと忙しい毎日ではあるが、時間を捻出して、できるだけ本を読むようにしている。自由な時間に恵まれていた十九、二十歳の頃のように、どんな本でも手当たり次第に読み漁るような芸当はさすがにできなくなったので、最近は価値のありそうな本を選んで精読するようにしている。この傾向は今年も続くだろう。
 読書で知識や情報を頭にインプットしたら、たまには頭のガス抜き、アウトプットも必要だろう。その意味で、今年も『けんま』に書き続けて行きたい。

●社会の動きを観察し続けること。

 これはこの言葉の通りで、この世の中がこれからどんな道筋を辿るのか、五感を研ぎ澄まし、雑音に惑わされずに、静かにしかししかと見つめて行こうと思う。そうして、何かのときにはいつでも声を出せるようにしておきたい。
 何となく世の中全体がよからぬ方向に傾きつつあるようで、人々も不況々々をステレオタイプに口にするが、心の中まで貧しくならないようにしたいものだ。


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