トラップ・ダイポールの製作


はじめに

HFのマルチバンドにQRVする時に,マストが1本しかない場合どのようにされるでしょうか. 方法はいくつかあると思いますが,バランから出たいバンドのダイポールを何本も伸ばす方法, 7MHzのDPに21MHzも乗せる方法,マルチバンドに共振するワイヤー系のアンテナを使用する方法など. 調べてみましたらトラップコイルの製作も意外と手軽にできそうなので,今回はトラップコイルを 使用するトラップ・ポールを製作してみることにしました.

トラップコイル製作編

まず同軸トラップコイルを製作します. 同軸,コイル芯などの材料を用意したら,"CoaxTrapDesign"(注) での計算通りに材料を加工します.

計算で出た同軸の長さは本来のコイルより1インチ余分の長さになっていますので同軸の両端 1/2インチ(1.3mm位)は芯に開けた穴の中に入ります.芯に同軸を仮に巻いてみて穴を開ける 位置を決めてドリルで穴を開けます.穴を開ける場所は以下の通りです(計6ヶ,赤=4φ:ビス用,青=5φ:コイル線用).

穴が開いたら両端の被服を1cm程度剥いた同軸を開始位置に差し込んで巻きます.ビニールテープで仮止めしたら, 一方のアースともう一方の芯線を電気的に接触させます.同軸が届けばそれ,またはビニール線や ジャンパー線を使います.この状態で共振周波数を測りますが,本来はディップメーターを使うと 良いようですが私はSWRアナライザーを使いました.

ワンターンコイルを付けた測定器を トラップコイルに近づけて希望周波数前後でダイヤルを回しますとディップ点が分かると思います. 今回作った14MHz用,10MHz用はともに若干低い周波数に共振していました(13.8MHz,9.8MHz).

ここで先ほどのソフトで共振周波数をそれぞれ希望に近づけるには何cm同軸を調整すればよい か計算しますと1cm(2.5cm)程度短くすればいいことが分かりましたので,長さを測ってコイル芯に 穴を開けなおします.そして再度共振周波数を測るとほぼばっちりになりました.

後はコイル外側を補強,防水のためにビニールテープをぐるぐる巻きます.そして芯内の線の ハンダ付け処理や余分の穴とビニール線と同軸の付け根周辺を防水処理(ホットボンドを使用しました), その後ビス,ナット,を取り付けて圧着端子で接続すればコイルは完成となります. 完成後に共振周波数を測ってみますと少し周波数が下がっていますが,配線のせいでしょうか? (13.8MHz,9.8MHz程度になっていました...)

エレメント製作編

作ろうとしているマルチバンドの一番高い周波数のダイポールから作ります.材料はビニール平行線を 割いて使用.長さを切りそろえ(300/周波数×短縮率0.95+調整用に少々余分), 片側だけ10cmか1mごとに マジックで印をつけておくと調整がしやすいようです.片側はバランに接続し,もう一方をカットアンド トライで長さを調整してSWRが希望周波数で最低になるようにします.

長さの調整が済んだら圧着端子を使用してトラップコイルを両端に接続.念のためこの時点で共振周波数を 測りなおすと気にならない程度に下がります.そして次にトラップコイルの外側に次の周波数のエレメントを 接続.調整してみると,このトラップコイルには結構短縮効果があるようで計算よりも大分短い長さで 共振しました.

このような手順でアンテナを作製していきます.圧着端子などに力がかからないように,コイル芯の5φ の穴に一度ビニール線をからませてから適度にたるませてコイル端子に接続するのがコツだと 思います.エレメントの固定には黒色のタイラップを使うと簡単で丈夫です.黒のは対候性が あるようなので劣化もしにくいでしょう.

トラップコイルの共振周波数の調整を適当にやっても一応各バンドでSWRも下がりますが,下がり方が あまり落ちてくれなくなるようです(実用範囲内か?まだ実際に使用してないので不明).

実践編

上記で製作したコイルは実はローカルに譲るために製作したものなので,動作確認はできておりません. 今回は,以前製作した14MHzと21MHzのトラップ・ダイポールの動作確認と,先日バランを自作したので その動作確認も兼ねて11月の天気の良い日によく運用のため出かける千曲川の河原に行って来ました. 丁度良くその日は九州コンテストが行われていましたので6エリアの方と交信できそうです.

まず設営を30分程で終えてからSWRアナライザーでSWRを測りますとばっちりと落ちています. 21で1.5,14で1近くでした.この時なぜか針がふらつくのでおかしいなと思ってましたが, いろいろ探ると原因は同軸コネクタのハンダ付け部分のようでした.そおっとしておけば問題ないので そのまま使うことに.

移動で使っているIC706にSWRメーターと同軸を接続すると,14でガンと強い局,6エリアの局が 聞こえてきます.20分程度の間に6局とコンテスト交信.どの局も1回で応答がありました.14は 問題なし.次に21ですがJARLコンテスト周波数をワッチしますがこれが何も聞こえません. おそらくコンディションのせいかな?と思いました.仕方ないのでバンドエッジからダイアルを上げて いくと台湾の局がCQを出していましたのでコール.2回目で応答をいただき,HIS419MY 569で交信.ずいぶんRSに差がありましたがかなりかすかすだったので短めに終えました.国内の 局は1局も聞こえませんでしたが,コンディションのせいだと思います.

私はSSBにはほとんど出ないので動作確認はしませんでしたが,SWRはバンド上端では3近くに なってしまい,バンドの下方に共振周波数を合わせたせいで今回のアンテナはSSBコンテストには 不向きのようです.

以上,とりあえず良好に動作しているのではと思っています.

材料編

  • 同軸 1.5DQEV(7MHzで約1.5mx2,21MHzで約1mx2程度)
  • 芯  水道管用塩ビジョイントパイプ(あまり細いものは加工しづらいので適度なもの)
  • ビス,ナット,ワッシャー 4Φx15mm程度
  • 圧着端子 数ヶ
  • タイラップ 数本
  • バラン
  • ビニール平行線
  • ホットボンドなど防水用として

"CoaxTrapDesign"(注)
YC0HLEが作成した、トラップコイルの各パラメータ計算ソフト。以下のホームページからダウンロード
できます。http://www.qsl.net/yc0hle/
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