パンタローネ様のクランクケース分解 8
さて 長い間 お付き合い頂きありがとうございます
ついに 最終章となりました。
 
コンスタントメッシュ変速機 (常時噛み合い式)の分解です。
この変速機の構造を理解したくて、パンタローネ様の腰下を
分解した次第です。

私は分解前には、全くコンスタントメッシュ変速機の機構を
理解していませんでしたので学習しながらの分解です。
不適切な説明や的を得ない表現の部分が有ると思いますが、
ここまで付き合っていただいている方には、理解して
いただけると思っています。


1ページにしたかったので重たくなりましたが、ダウンロードは
そろそろ終わったころでしょうか。
右クランクケースに刺さっているミッションを違う角度で撮影してみました。
二本のシャフトに6枚づつ ギアが重なっています。
ギアの間 3箇所にフォークが刺さっています。
フォークは幾何学模様の溝が彫られたドラムに支持されています。
クラッチ軸がメインシャフト スプロケ軸がレイシャフトと呼ばれています。
パーツリスト A  B
シフトフォークはギアを抱え込む 深い位置まで爪が
伸びています。

爪の先端の光った部分は、摩擦を減らす為なのか?
メッキが施されています。

シャフトとの遊びが無く、スムーズに平行移動します。
ケースから外してみました。
実際の配置は、真ん中にシフトドラムが位置します。

上側 メインシャフト(フラッチの中心のシャフト)には、
真ん中にシフトフォークが刺さります。

下側 レイシャフト(スプロケの刺さるシャフト)には
2枚目にシフトフォークが配置されます。
シフトドラムです。
左側に刺さっているピンをシフトリンクが押したり
引いたりして回転します。

左から二番目の波凹部にスプリングで押されたボールに
よって、各シフト位置が決められます。

フランクケースの後ろから見てニュートラルの状態です
シフトドラム右側にある突起がニュートラル スイッチ
を押してセンサーが反応します。

多角形に削られています。
無理な力が掛かっているようです。
シフトドラムの溝をグラフ化してみました。

1st    レイシャフトの右のフォークが右にスライドします。

ニュートラル 全てのフォークは真ん中に戻りました。

2nd    レイシャフトの左のフォークが左にスライドします。

3rd    レイシャフトの左のフォークが右にスライドします。

4th    レイシャフトの右のフォークが左にスライドします。

5th    メインシャフトのフォークが右にスライドします。

6th    メインシャフトのフォークが左にスライドします。

ここで解ったのは、一度には一つの動き一つのシフト
フォークしか動かない。

ニュートラルではギアが噛み合っていない状態です
全てのフォークが真ん中の位置にきていることで、
フォークが真ん中に在る時はギアは噛み合っていないと
言う事になります。
印の二枚のギアはシャフトのスプラインに嵌っていて
シャフトと回転方向には固定されていますが、左右には
スライドすることが出来ます。
印の二枚のギアは一体で、シャフトのスプラインに
嵌っていてシャフトと回転方向には固定されていますが、
左右にはスライドすることが出来ます。
スライドできるギアには、ドッグクラッチ機構が左右に
備わっていて、隣のギアと連結することが出来ます。

メインシャフトのドッグクラッチ部
凸と凸がぶつかり合う様に噛み合います。
レイシャフトのドッグクラッチ部
凸が楕円形の凹にはまるように噛み合います。

対するギアの直径の違いでクラッチの形状が変わっていると
思います。
1st
右のスプラインギアが右にスライトして、
隣のギアに噛み合っています
 
二枚一体の中央のスプラインギアは左右どちらのギアにも
噛み合ってはいません。

メインシャフトのスプラインギアは4thまで、この位置を
キープします。
ニュートラル
レイシャフトの二枚のスプラインギアは共にセンター位置
にあり、どのギアとも噛み合っていません。
2nd
左のスプラインギアが左にスライドして、噛み合って
います。
3rd
左にスライドしていたスプラインギアが、今度は右に
スライドして隣のギアに噛み合いました。
4th
左のスプラインギアがセンター位置に戻り
右のスプラインギアが左にスライドして噛み合いました。
5th
レイシャフトのスプラインギアは、二枚ともセンター
位置にもどりました。
センターをキープしていた、メインシャフトの
スプラインギアが右にスライドして噛み合いました。
6th
レイシャフトのプラインギアはセンター位置のままです
右に噛み合っていたスプラインギアは左にスライドして
噛み合いました。
各ギアのシフトフォークの動作によるドッグクラッチの動きが理解できたでしょうか?
次は、メインシャフトとレイシャフトを組み合わせて、回転の繋がりを見てゆきます。
二枚の組み合わせのギアが6組出来ることになります。
各 組み合わせのギア比は違いますが、相対するギアは噛み合っています。
常時噛み合い式の変速装置な訳です。
勝手に番号を付けました。 右側から組み合わせを見てゆきましょう。

1Lメインシャフトに固定されています。1Fレイシャフトの上で空転しています。
5Fメインシャフトの上を空転しています。5Sレイシャフトのスプラインに嵌っています
4Sメインシャフトのスプラインに嵌っています。4Fレイシャフトの上で空転しています
3Sメインシャフトのスプラインに嵌っています。3Fレイシャフトの上で空転しています
6Fメインシャフトの上を空転しています。6Sレイシャフトのスプラインに嵌っています

ギア比の異なるギアが、同軸上で噛み合っているのにシャフトが回ることができるのは、
シャフトと共に回転する固定されたギアやスプラインギアに対するギアはフリー
だからです。

写真はニュートラルの状態です。
メインシャフトはエンジンの回転により回っていますが、レイシャフトには回転が
繋がっていない状態です。

1Lは回っていますが、1Fはフリーなので回転は伝えられません

5Sはレイシャフトが回っていないので回転していません。組み合わされる5Fも止まって
いますがフリーなので、メインシャフトが勝手に回っている状態です

4S 3S共にスプライン接続なので回転し3F 4Fも駆動されて回転していますが、フリー
なのでレイシャフトの上で空転しているだけです。

6F 6S5S 5Fと同様です。  2L 2F1L 1Fと同様な動きになります。

この好き勝手に回っていたり、駆動を伝えることの出来ないギア達にスプラインギアが
噛みこんで、回転を伝え行きます。
1st
メインシャフトに固定されている1Lが回り、対である
1Fに伝達される。
レイシャフト上で空転している1Fにスプラインギア5Sが
噛みこんで、レイシャフトが回る。
ニュートラル
メインシャフトは回転しているので、1L1F 4S4F 3S3F
2L2Fは回転しているが 5F5S 6F6Sは回転していない。
2nd
固定ギア2Lの回転が2Fのフリーギアに伝わり、
6Sのスプラインギアが噛み合うことで、レイシャフトが
回転します。
3rd
3Sのスプラインギアから3Fフリーギアに回転が伝わり
6Sのスプラインにより、レイシャフトが回転します。
4TH
動きは同様になります。
回転の伝わりを理解していただけたと思います。
5TH
2軸上で6組の回転が軸に伝わらない構造の
常時噛み合っているギアを、スプラインで左右に動きな
がら回転するドッグクラッチを持ったギアがロック
することで、回転が減速されながら軸に繋がります。
6TH
上 1st
左上 2nd
左 3rd

1stと2ndはギアの当たり面が荒れているのが解ります。
3rdからは傷はありません。 スライドしながら噛んで
いるのが理由でしょうか?
シフト間にニュートラル状態が無く変速できるのが不思議でした。
各シフト間にはニュートラルの状態がありました。 各シフト間でニュートラル状態になる可能性はあります。

停止状態のニュートラルから1stに入れるときに、ガチャンと音がでるのはドッグクラッチが噛み合う音なんですね
クラッチが切れていないで、回転する相手を無理やり止める悲鳴です。

トルクが伝わっているときにシフトチェンジが出来ないのは、ドッグクラッチに面圧が強く掛かっている為に
クラッチが外れないのですね。  
アクセルoffで軽くチェンジできるのは、ドッグクラッチに伝達トルクが抜けて動きやすくなる為です。

軸間が決まっていて常時噛み合いの組み合わせですので、変速比に限界があります。
多段にしてもワイド化は難しいと思います。

シンクロ機構が無くても変速するのは、全てのギアが回っているからです。
回転スピードは違いますが、ちょっとしたアクセルの操作でクラッチが噛み合うことができます

常時噛み合いとドッグクラッチを使った変速機はコンパクトですが、損失が大きいような気がします。

油温が上昇やオイルの劣化により変速動作に不具合が発生します。
変速装置は金属同士が面で擦れ合う部分の塊です。 ギア間の噛み合い、スプライン上でのスライド、
シフトフォークとギアの接触面 シフトフォークシャフト シフトドラムとシフトフォークなど
少しでもオイルの粘度が下がり潤滑性能が落ちると摩擦が大きくなって動作に不具合が発生します。
    

おまけ

ギアの歯数です。
減速比でも計算してみてください。

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