北陸自動車道の鯖江あたりの道路壁に描かれた「越前ガニ」がシダで覆われ、なんとかそれと分かる程度に寂れてしまっている。「越前ガニ」が鮮やかだった20年以上前から、福井へ、せっせと通うも、今だかつて一度も「九頭竜のサクラマス」に出会うことができなかった。これまで、「九頭竜のサクラマス」と聞くと今一、後ろめたかった。開高健の本にも、キングサーモンが釣れない偏屈者の話が書いてあったが、まさにそれ。今更ながら釣れない理由を考えてみれば、下手もさることながら、数が釣れない釣りであればある程、魚の情報が大切とわかっていながら、シャイで、かつ、人の言うことを聴かない性格が釣れない大きな要因とわかってはいた。つまり、釣れた人にすり寄り上手におだてて、ヒットルアーやポイントなどの情報を引き出すのが苦手とゆうか、好かんかったのである。今では、地元の釣具屋が情報を一般に公開しており、偏屈者にも出会えるチャンスが上がった。
今回は、前日から車中で泊まり、快適に早朝から狙う。駐車スペースから足早やにポイントに向い、われ先にルアーを投げ込むが、新車ゆえ鍵を掛け忘れたか心配になる。確認しポイントに戻ったときには、もうすでに釣友の竿が弓なりに。慎重に取り込み釣友初ゲット。61cm3kgの立派なサクラマス。近くで初めて見たので、大いに感動。私にその時がやってくるのはこのあと、さらに12時間待つことに。日も暮れかけ、あたりがセピア色に輝き、大昔にタイムスリップ。大河の流れが緩やかな岸際にルアーが差しかかったその時、ひったくるような強烈なアタリ。ドラグを何度も調整しやっとの思いで釣友のネットに収まったのは、魚体をローリングしラインが胴体に巻き付き、背びれに掛って上がってきたスレの50cm1.4kgのサクラマスだった。その後本当に釣るのは、2週間後の朝一、56cm2.0kgだった。 |