ペリクリーズ Pericles(シェイクスピア)

中世の詩人ガワーが語る物語・・・・
ガワーは各幕の冒頭とエピローグを入れて8回も観客の前に姿を見せ、主人公ペリクリーズの数奇な運命の一途をたどる。
ペリクリーズをはじめとする主な登場人物達は、劇中の時間にして20年のあいだに、地中海沿岸から、小アジアにかけて、五指に余る諸都市を行き来する。

ペリクリーズは、古代フェニキアの湾岸都市ツロ(タイア)の領主。
彼はアンティオキアの王女に求婚するが、王と王女との近親相姦に気づいて意を翻す。秘密を知られた王アンタイオカスは、腹心の部下にペリクリーズを殺せと命じ、これを機にペリクリーズの逃亡の旅がはじまる。いったんは、帰国したものの、このままではアンタイオカスが公然と戦争を仕掛けてくるだろうし、そうなればツロの市民に災禍が及ぶと考えた彼は、国政を忠臣ヘリケイナスに委ね、まずタルソへ向かう。飢饉にあえぐタルソでは、船に積んだ食料を提供し、領主夫妻に感謝される。が、アンタイオカスの刺客が、ツロへ来たことをヘリケイナスが手紙で知らせてくれる。

その後のペリクリーズの運命は・・・・・タルソを船出した後、嵐の来襲、ペリクリーズ一人のペンタポリスの海岸への漂着、ペンタポリスの王女セイーザとの出会いと結婚、身重の妻を伴ってのツロへの帰国、その途上における再度の嵐の来襲、娘マリーナの誕生と妻セイーザの死・・・・幸福と不幸の来襲は嵐をしのぐ。

後半、劇の焦点は美しい娘に成長したマリーナに当たる。ペリクリーズがツロに帰国した後、マリーナはタルソの領主に預けられるのだが、領主婦人が彼女を亡き者にしようと謀る。領主夫妻の娘が何につけてもマリーナに見劣りがするため、邪魔になったのだ。あわやと言うとき、マリーナは海賊にさらわれミティリーニの売春宿に売られてしまう。ところがマリーナは、彼女を買いに
来た男達にお説教をして「清く正しい」生活に立ち戻らせる。

彼女はやがて苦界から抜け出すが、ペリクリーズは娘が死んだと聞かされて絶望、船であてどない旅に出る。そして、ミティリーニにたどり着き、マリーナと再会する。夢枕にたった女神ダイアナの言葉に従い、ペリクリーズ父娘はエフェソスへ向かう。実はセイーザは死んでおらず、ここのダイアナの神殿で巫女として、務めを果たしていたのだ。

至福の大団円はペリクリーズ父娘とセイーザとの再会。彼らにとって人生は波乱の旅、そして再会は死からの蘇りだ。


This world to me a lasting stom,
Whirring me from my friends.(Marina)

この世は私にとって止むことのない嵐、
親しい人たちのもとから私を吹き飛ばす。(マリーナ)
絵本シェイクスピア劇場(講談社)