霞ヶ浦での外来種(移入種)対策の実施を求める要望書

霞ヶ浦工事事務所
所長 前村良雄 様

2002年12月6日

霞ヶ浦・北浦をよくする市民連絡会議
事務局長
特定非営利活動法人アサザ基金
代表理事
飯島 博

 国土交通省は先に「河川における外来種対策に向けて」をとりまとめ、これに基づいて河川管理を図る方針を示しました。また、新「生物多様性国家戦略」においても、「生物多様性を脅かす脅威」として「外来種・移入種問題」を取り上げています。同戦略では、とくに「湖など閉鎖性水域は、移入種(外来種)の侵入に対して特に脆弱な地域であることから、移入種(外来種)の導入を規制し、すでに定着している移入種(外来種)で生物多様性への影響を生じさせているものの排除、管理を重点的に実施する必要があります。」と指摘しています。また、琵琶湖では、ブラックバスのリリースの禁止を含む外来魚対策を盛り込んだ条例を制定しています。

 霞ヶ浦においても、外来種・移入種による影響が近年大きくなりつつあります。この状況を見過ごし、適切な対応を怠れば、取り返しの付かない事態に発展する恐れもあります。わたしたちは、現在すでに湖に大きな影響を与えている外来種・移入種と、今後影響が懸念される外来種・移入種に対して、対応策と予防策を早急に実施されるよう関係機関に要望します。

 また、外来種・移入種が繁殖や生息しやすい施設の設置などについては、できるだけそれらの設置を避け、必要な施設の場合には十分な対策を講じることを求めます。すでに、設置された施設については、これらの対策を考慮した改造等の措置を求めます。

 外来種・移入種による影響は、生物多様性を損なうばかりではなく、社会や経済とりわけ漁業や農業などに大きな損害を与えることが予測されます。すでに、ブラックバスなどの外来魚による水産資源への影響は、漁業に甚大な被害を与えています。その他、ジャンボタニシやホテイアオイ、ボタンウキクサなど湖に侵入している外来種は、温暖化などにより今後大繁殖する危険があります。すでに、これらの外来種対策に大きな支出を余儀なくされている地方自治体もあります。このように、漁業農業被害や対策費として地域に甚大な損害を与える恐れのある外来種・移入種への対策を早急にとるべきと考えます。

 同時に、これらの外来種・移入種対策は住民や利用者の理解や協力がなければ効果が期待できません。これらの対策は住民参加で実施するべきと考えます。

 以下の対策を早急に実施されるように要望します。

1.水質浄化等を目的に、外来水草(ホテイアオイ、オオフサモ等)を利用することを止めること(すでに、湖の一部や周辺水路でホテイアオイやオオフサモが大繁殖しています)。さらに、野生化の危険性が指摘されているケナフ等の利用は控えること。
 私たちの調査では、湖全域でのホテイアオイの確認場所(栽培場所を除く)は、1995年に1ヶ所でしたが、2002年には17ヶ所に急増しています。

2.川尻川などの流入河川河口部に設置した人工内湖「ウェットランド」などの施設は、閉鎖性が強く、富栄養化しやすく、すでにホテイアオイやオオフサモ、カナダモ、ボタンウキクサなどが繁茂しはじめています。今後この人工内湖計画を見直し、これらの外来種に適した環境を人工的に造ることを回避してください。
上記施設は、甚大な農業被害が懸念されているスクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の生息地になる危険性があります。同種はすでに湖の一部に侵入しています。

3.霞ヶ浦工事事務所が設置した水質浄化施設(ビオパーク)などで増えた外来シジミが他の水域に移植されています。マシジミなど在来二枚貝等に大きな影響を及ぼす恐れのある行為が今後行われないよう対策を講じてください。

4.すでに侵入している外来種・移入種については、早期に除去等の対策を実施すること。

5.住民や利用者、県、市町村等に対して、外来種・移入種を持ち込まないよう呼びかける広報を行うこと。

6.外来種・移入種の生息分布状況を調査すること。

7.霞ヶ浦の外来種・移入種対策について検討する委員会を設置すること。

8.霞ヶ浦の外来種・移入種対策を実施計画としてまとめること。

9.ヨシなどの在来種についても水系外からの持ち込みを行わないこと。浮島植生などで県外のヨシを使っているという情報があります。同じ在来種でも、水系が異なると遺伝子レベルでのタイプが異なる場合があることが明らかになっています。今後、業者などが他の水系から植物を持ち込まないように注意してください。

 以上の9項目について、2003年1月6日までに、文書にてご回答下さい。

*要望書の掲載にあたっては、アサザ基金より、掲載許可をいただいています。<は>