なかよしまんがスクール学科
選択科目『投稿史・I〜どしゃ降りの旅立ち』
第一週 あまったれ
さて、この講義では『転落の歴史・I』のその後を扱いますが、未履修でも全く問題ありません(あったてまるか)。予定としては、DOIMOIの留年覚悟完了から初の個人誌発行と挫折、そして、ほんの些細なミスでこの原稿の投稿を断念する羽目になるまでの道程についてご説明するつもりでおります。
1998/04/29 15:00 From: 土居サルバドールもい To: ご聴講中の皆様 なお、講義の中でこのような緑色のカコミが出てくることがありますが、 これはemailでのやりとりからの引用を表しております。 |
ではさっそく本題に入っていきます。
DOIMOIはいつのまにか大学3年生になっていました。理学部化学科(りがくぶばけがくか)とかいう所に進学しました彼ですが、全く勉強せずにひたすら漫画を読んで寝倒すという怠惰な生活を続けた結果、夏学期の試験では半分以上の単位を落とすという粗相をしてしまいました。しかも学生実験の出来もまるでだめで、彼はもはや留年確定と腹をくくりました。
「留年したらしたで自由に使える時間が増えるから別にいいや」
しかし、一つ重要な問題がありました。留年すると育英会の奨学金が止まってしまうのです。月\44,000は貧乏DOIMOIにとっては大きな額です。
真っ先に考えたのは、もちろんバイトです。しかし、ただなんとなくでは得られるものがあまりにも少なすぎます。せっかく留年という尊い犠牲とひきかえに得る時間です、なにか将来に役立つようなお仕事でなければ…。
ある日、彼はあふたぬーんを読んでいました。すると、ある記事が目に飛び込んできました。
「アシスタント募集」
なるほど、漫画家のアシスタントなら、収入はともかく、描画テクニックと描画根性の鍛練にはもってこいです。
「こっ、これや…よっしゃ、俺はアシをやるっ!」
彼はうれしくなって、そのアイディアをメールであちこちにばらまきました。
1998/01/14 12:45 From: DOIMOI To: Ren-Tarusawa ところで、本日私はとんでもない考えをしてしまいました。 その名も「留年したらアシになりたい」作戦…。 はっはっは、実験さえ落とさなければ午後は○○おもいっきりヒマ だから、きっと時間帯も合うでしょう、ということで。 # といいつつ、私に勤まるほど甘いもじゃなさそうですが…。 # 第一に画力、そして体力、精神力…3ないまるやま遺跡。 ううう、だれかこんな私を雇ってくれる都区内在住の漫画家さんは いないかしら…。 |
しかし、それに対するレスは厳しいものでした。
1998/01/15 07:20 From: Ren-Tarusawa To: DOIMOI で、アシってむっちゃくちゃきついそうですよ。とにかく 連載をかかえる人のところは。む〜。 |
…えと、このメールだとあんまり厳しくなさげですが、面と向かってかなり諭されたような、されなかったような…。あれっ、本当はどうだったかしら、覚えてないや…。
1998/01/17 19:53 From: DOIMOI To: Ren-Tarusawa > おやりになるなら、相手は人格も含めて慎重に選ぶべきだと思います。 漫画家なんてはっきりいってみんな人格破綻者なのでわ!?(イイスギ) …いずれにせよアシのことは、もうすこし頭を冷やして考えます。 別のバイトとなると…なんでせうかね。 |
というわけで、ヤキのまわったDOIMOIは、アシ計画を断念しました。
正直なところ、アシは諦めて正解だったと思います。「机に10時間向かっていても、勉強できるのはせいぜい10分」などとほざいているDOIMOIに、一日18時間びっちり仕上げその他の仕事を続けることなど出来るわけないのですから…。
そんなある日、彼のもとへ一通の怪しいメールが届きます。
1998/01/25 00:53 From: Tom Oki To: DOIMOI
同人活動もするかも… |
とむ☆大木氏のこの宣言に対して、DOIMOIは初めは傍観者を決め込んで茶化しておりました。しかし数日後、
1998/01/29 14:07 From: DOIMOI To: Tom Oki
> でも、新たに何作ればいいんだろ? |
※ 宮さま = DOIMOIが、とむ☆大木さんを呼ぶときの呼び方 ※ U市 = DOIMOIと、とむ☆大木さんの出身地 ※ NMS = なかよしまんがスクール |
しかしDOIMOIは、「何を描くのか」という一番肝心なことに思いをいたらせることなく、何を何部とか、飾りはどうとか、本質的でないことの計画にばかり心を奪われていました。
1998/02/07 19:19 From: DOIMOI To: Tom Oki
それはそうと、どんな品揃えで攻めるおつもりですか? |
自分の絵柄と呼べるものがない、描きたいストーリーがない、ということには、一応は気づいてたようです。しかし、イベントまで3週間を切るまでは事態の深刻さを理解することはできなかったようです。
1998/03/04 10:18 From: DOIMOI To: Tom Oki
そもそも、同じキャラは二度と描けないというあたりで |
最悪です。この期におよんで「自分の絵柄」はおろか、絵そのものすら、漫画として成立しうる最低水準に達していなかったのですから。
「とりあえず、顔だけはなんとかせな」と、おもむろに描いてはみるものの、歪んだ顔で自己嫌悪、やる気を失うことの繰り返しでした。
しかし、「その日」は確実に迫っていました。しのごの言っていられない、もう今回限りと割り切って適当な絵柄をデッチupするしかない、とDOIMOIは腹を括り、ゴミイラストの中から比較的まともな絵を引っ張り出して比較検討を始めました。
「…これしかないか」
しかし、その絵と同じ絵を描こうとしても、どうしても別人、それどころか別の絵柄になってしまうのでした。
それでも、もはや選択の余地はありません。コマごとに別人になってもいいや、と割り切ることにしました(そして実際、コマごとに別人になってしまったのですが…)。
1998/02/27 20:25 From: DOIMOI To: Ren-Tarusawa
それにしても、思考の硬直化は着々と進行していてマジヤバです。 |
実質男子校的生活を6年間続けてきて、恋愛とはとんとご無沙汰だったDOIMOIにとって、なかよしまんがスクールむけ漫画(第二週でお話したとおり、DOIMOIはまんスクに投稿する原稿を同人に流用するつもりだったのです、念のため)…つまり少女漫画のネタを考えることは至難のわざでした。そしてネタができたとしても、次にはそれを表現するというハードルが待ち構えているのです。
結論から言えは、DOIMOIは「逃げ」を打ちました。恋愛物語に真正面から取り組むことをあきらめ、当時大流行していたデスクリムゾンネタに走ったのです。もはや人間失格です。
注意 : ここでいう「大流行」とは、「コレラの大流行」などと言うときの「大流行」のことです。
しかし、これほどまでにはしょっても、予定では24ページにもなるブツが完成する公算は限りなく低いものでした。なにせ、ネームを切りはじめたときには、すでに締め切り(コピー・製本)10日前だったのですから…。
残り10日で24ページを完成させるために、DOIMOIは以下のような計画を立てました。
*1 : U市T町にある精肉店。ここのコロッケは、従来のコロッケの概念を覆す凄まじく不自然な甘さが特徴。そこがいいんだけど。
ここで、お知らせです 土居サルバドールもい
登録日:98年08月04日(火)18時05分00秒
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なにはともあれ、昼夜の別なく空っぽの頭を空回りさせて、腐った根性をふりしぼる、破滅への10日間が始まりました…。
name DOIMOI
登録日:98年03月10日(火)16時16分38秒
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※ (off) = オフラインでしたためた文章を投稿しました、というDOIMOI独自の印。もちろん(on)はオンラインで書きこみました、の意味。 |
いいえ、彼はネーム切りの本当の厳しさを分かっていません。そして実際に原稿用紙に向かうまで、それに気づくことはありませんでした…。
ネーム終わらない… DOIMOI
登録日:98年03月11日(水)11時12分24秒
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いいえ、コマ割りセンスがどうこうという以前の問題です。本っ当に、全く、事の重大さを認識していません。
DOIMOIは、単に、コマの形や大きさをいたずらに変えて「これでワンパターンじゃないぞ」と自己満足していただけでした。ストーリーの流れを考慮せず、エピソードの要不要の吟味もまるでしていません。
挙げ句の果てに、22ページ目にしてストーリーが破綻してにっちもさっちもいかなくなったDOIMOIは、ネーム切りをやめてしまったのです。
「ラストは描きながら考えればいいや」
……。
いよいよ後には退けません。DOIMOIは観念して下描きを始めました。
…みるみるうちに消しゴムのカスの堤防が机の右側に形成されていきます。顔はともかく、全身を描くことなど何年ぶりでしょうか。なかなか形が決まらず、鉛筆で描いては消し、描いては消し、小コマ一つ分の下描きに30分も40分もかかるありさまでした。それでも、これでOKというものは描けません。そして、これ以上描き直していると時間が無いし、紙が擦り切れちゃうし…という情けない理由で妥協し、とにかく先に進むことにしたのです。
1ページ分の下描きがやっと終わり、いよいよペン入れです。ペン入れは極端に言えば「なぞる」だけなので大過なく済みました。
しかし、このころのDOIMOIには「線の強弱」という概念がありませんでした。しかも---DOIMOIがそもそも漫画を描き始めたきっかけは、どういう脈絡かはともかく、CLAMPの「カードキャプターさくら」を見たことだったのを思い出してください---DOIMOIはNIKKO丸ペンを用い、やたらと細い線で淡々と主線をひいていきました。ただ、手などの複雑なものだけはスピードが落ちるぶん、妙に太い線になっていましたが…。
この基本的に細い主線に対して、枠線は0.8mmのピグマ、吹き出しは0.5mmのピグマで描いたため、やたらとバランスが悪くなってしまいました。その上、はじめの方のページは背景もピグマだったので、一番目立つべきものが一番弱いというとんでもないことになっていました。
こうして、七転八倒しつつも、1ページ、また1ページと主線を終わらせていったのです。
すでにDOIMOIの生活は、外界の時間の流れとは無関係になっていました。「36時間計画」という、36時間を1サイクルとし睡眠時間の総量を削る、とんでもないモードに突入していたのです。
それなりにスムーズに事が運んでいるかにみえた序盤戦でしたが、やはり…やはり、あのいい加減なネームが行く手を阻みました。改めてそのネームを見ると、やっぱりダメダメで、とても読めたものではないことを、ここまで来てやっと実感したのです。
窮地に立たされたDOIMOIは凄まじい決断をします。
「このネームはもう無視して、1ページごとにネームを考えながら描けばいいや」
…これこそが最大の判断ミスでした。
おはようございます。 DOIMOI
登録日:03月12日(木)16時46分55秒
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コンプチークの DOIMOI
登録日:03月13日(金)00時05分01秒
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※ コンプチーク = 昔コンパイルの社長が作っていたコンプティークじゃない方のコンプティーク。 ※ 昔コンパイルの社長が作っていた雑誌 = コンプティークではなくてポプコムでした。お詫びして訂正いたします。 |
ス、スランプじゃ〜 DOIMOI
登録日:03月13日(金)08時02分01秒
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よ、四連荘…ついでに腰痛。 DOIMOI
登録日:03月13日(金)19時28分16秒
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※ 四連荘 = DOIMOIの書き込みが連続4回。 |
おかえりなさい>D・ありす様 DOIMOI
登録日:03月14日(土)10時53分28秒
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※ D・ありす様 = N社の誇るSNK格ゲー尊氏…もとい尊師。U高校出身。 |
ばきっ(話のこしが折れた音) DOIMOI
登録日:03月16日(月)07時56分30秒
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※ みと♂さま = 正式名称は「みとみんの♂」。CLC弘前代表とむ☆大木氏の別名。 ※ CLC雑誌 = CLCメンバーやゲストの原稿を集めたよろず雑誌。 |
風紋様thanx! Harenty DOIMOI
登録日:03月17日(火)09時05分57秒
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※ 風紋様 = U高校出身。C社の誇るエロゲー副尊師。じゃあ尊師は誰? |
残り3P…ハマった Harenty DOIMOI
登録日:03月17日(火)20時06分45秒
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※ 3P = 3ページ。 |
ちんぽ(これでこの台帳は18禁?) DOI Salvador MOI
登録日:03月18日(水)03時51分58秒
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※ 合体 = 詳しくは、映画「釣りバカ日記」をご参照ください。 |
お、終わった〜 DOI Salvador MOI
登録日:03月18日(水)10時09分17秒
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※ 「はるやすみスペシャル」 = なかよしの増刊。さくらのポストカードのためだけに買う奴それはDOIMOI。 |
というわけで、DOIMOIの史上最悪の漫画原稿は完結したのであります。完成はしませんでしたけど。
DOIMOIは、同じくU市に帰省していたとむ☆大木氏からメンバー・ゲストの雑誌原稿を受け取ると、自らコピー・製本をすべく市内某所へと赴きました。
集まった雑誌原稿の量が予想以上に多く、DOIMOIの22ページを加えるととんでもない厚さになりそうだったので、結局DOIMOIの漫画は個人誌として独立させることになりました。
雑誌の原稿の並べ替えや、目次作成、表紙原稿の切り貼りを済ませ、いざコピーにとりかかろうとしたそのとき、DOIMOIは重要なことに気づきました。
「そういえば俺の本の原稿、扉絵がない…」
DOIMOIは、上手に描けないという理由で扉を描くのを先延ばしし、結局描かずじまいになっていたのです。まして、表紙の原稿など存在するはずがありません。しかし、時間も道具もないので、もはやどうしようもありません。
仕方がないので、その場でDOIMOIはマッキーで適当に文字だけ書いて表紙にしてしまいました。むろん、表紙で人目をひかなければいけないなどという考えはみじんもありませんでした。
それからDOIMOIは、淡々とコピー機を回し、CLC雑誌、とむ☆大木氏の個人誌、そしで自らの個人誌の製本を終わらせました。
さあ、明日はいよいよ即売会です。果たしてどうなることやら…。
11時の開場を前に、正面玄関前にはすでに百人を越える長い列ができていました。その行列を横目に、とむ☆大木氏とDOIMOIは一足早くサークルチケットで入場しました。
会場内の様子が視界に入るや否や、とむ☆大木氏とDOIMOIは肝を潰しました。マロニエプラザ大展示場全面に、それこそ700余のサークルが所狭しと並んでいるではありませんか!! まさに圧巻です。
DOIMOIにはひとつ、気がかりなことがありました。主催者から送られてきた封筒に「『よろず』というジャンルはありません」という赤いスタンプが捺されていて、結局どんなジャンルに分類されたのか分からなかったのです。
DOIMOIはパフンレットを見て愕然としました。なんとCriminalLoliComicsは、よりにもよって創作に振り分けられていたのです。即売会の事情に詳しい方ならお分かりかと存じますが、よほど知名度や実力のあるサークルでない限り、創作なんて見向きもしてもらえません。
CriminalLoliComicsのスペースは、出し物が、とむ☆大木氏・DOIMOIそれぞれの個人誌が1種ずつと、CLC雑誌、その他イラストが少し…と、たいへん殺風景でした。そして大方の予想通り、創作のブロック自体に訪れるお客は少なく、その中でもCLCの前で少しでも立ち止まる人は皆無でした。あまりに暇だったため、DOIMOIはいつの間にか夢の中へ行ってしまったようです。
その後、友人のD・ありす氏が仲間を引き連れて、CLCを冷やかしに来ました。怒ったとむ☆大木氏とDOIMOIは、その一味に無理矢理、自分たちの本を買わせました。そして結局、それが売り上げのすべてでした。
つまり、
惨敗、だったのdeath…。
しかし、どんなにクズな原稿だとしても、なんとか仕上げて投稿せねば…自らの宣言を成し遂げねば、と、再び原稿とのにらめっこを始めます。
ところで、DOIMOIには昔からある法則が存在します。それは、「徹夜をすると必ずインクをこぼす」というものです。
その日も、DOIMOIは特別な用事もないのにダラダラと徹夜し、なにげに原稿に手を加えていました。
カショッ。
「…!!」
みるみる広がる黒いシミ。
すべては終わりました。修正にかかる労力を計算するまでもなく、一気にやる気レスのゲージがマキシマムに達しました。すべては終わったのです。
…ひょっとするとそれは、むしろ望んでいた結果だったのかもしれません。このゴミのような原稿の呪縛から開放されるために…。
こうしてDOIMOIの、なかよしまんがスクール1st trialは未遂に終わりました。
---14週の長きにわたるご聴講、まことにありがとうございました。
そして、舞台は2nd trialへ…?
h9925