稲作に代わる「水たまり」・・・

レンコン栽培

米あまりの何が問題なのか? 稲作経営が危機に陥るということもありますが、日本の国土環境を保全してきた水田が減少することによる影響が大きいという点にあるのでしょう。水源涵養、洪水緩和、生きもの保全、文化の継承などなど、お米が日本の国土と、そして日本人と深く、密接なつながりを持っているということは、小学校高学年向けに書かれた「お米は生きている(富山和子著)」を読んだときに理解できました(わたしが読んだのは40歳すぎてからですが)。

環境のために水たまりを守ろうと叫んでも、生産に結びつかない限り、水田を維持していくことは無理な話です。ボランティアではつづけることはできません。
自由にお米が作れない状況、すなわち減反政策がつづくそのころ、お米以外の作物で水たまりを減らさない方法はないものかと思い、市島町の田畑を見て回りました。そして、レンコン栽培をしている田んぼを1枚みつけ、栽培されているYさんに話を聞かせていただきました。そして、収穫体験までさせていただきました。ご紹介します。

▲有機の里 奥丹波・市島町にあるレンコン畑(夏)
▲冬のレンコン畑。葉は枯れ落ちて茎だけに。この茎の下につづく地下茎をたどっていくとレンコンがなっています。
●レンコン栽培について

適したほ場の条件は、
1. 年中、水のたまるところ。いわゆる湿田(しるた)。
水がなくなっても、土がうるおっていれば大丈夫とのこと。
2. 日当たりのいいところ。水が冷たいと成長悪い。

種からの栽培は難しいらしい。種レンコンというのかな、それを放り込んでおけばいいという。
「肥料はようけ(たくさん)いる」とのこと。
Yさんは鶏糞のみを6月ごろに施肥。
春先に草が生えるので、手で取る。蓮の葉が繁茂しはじめたら大丈夫。
収穫は10月から。ぬくいうちは味がよくない。正月前くらいが味がしまって美味しい。
日に当てといたらしぼんでいく。色が黒くなる。掘りたて新鮮なのがうまい。
さっと炊くのがいい。炊き過ぎるのはよくないそうだ。
収穫作業は大変とのこと(収穫体験記を紹介していますのでご覧ください)。
獣害にあうこともある。ヌートリアが茎をかじって倒しまくるとのこと。
「遊びなのか、あるいは、茎から出る汁を吸うのか、わけがわからん」そうです。
ここにはドジュウも多くいる。

●レンコン収穫体験記

12月29日1:00〜

▲へっぴり腰のわたし(左)と、小学5年の頃から作業を手伝ってきたというYさん(右)。
Yさんが身に付けている胸までのゴム長靴は2万5千円もしたそうです。破れたので最近買い換えたとのこと。「2万5千円つかってレンコン掘って、何しているかわからんちゅう状態や(割りが合わん)」Yさん談

まずは習うより慣れろということで、さっそく手探りでレンコン掘り出しにかかりました。
水面に伸びている茎の中から1本を決め、その茎につながる地下茎を掘り起こしていくのですが、泥がけっこう固くしまっていて力がいる!
真冬にもかかわらず、すぐに汗ばんできました。
「肥料をもっとやれば土も柔らかくなる」のだそうです。

レンコンというものがどういう形で泥の中をのびているのかさえわからないわたしは、レンコンがつながって長くなっているのだろうと予想をして探っていったのですが、レンコンは1本まっすぐにのびているわけではなく、途中から枝わかれしている場合もあり、また、他からのびてきているレンコンの地下茎と交差しているところもたくさんあって、探っていく途中で、「????」と悩む状態に何度もおちいりました。目をつぶって、手から伝わってくる感触から泥の中の状況を想像してみるのですが、「いったいぜんたい どうなっているんだ」と混乱してくるし、泥をのけるのにけっこう力もいるしで、なかなか進まず、あせってしまう。あせると「ポキッ」と途中で折れてしまう。折れると折れた口から泥がはいり、商品としては値うちが落ちる。
「ウムムッ。折らずに、きれいに掘り出してみせるぞ!」という負けん気というか闘争心というか、そういうものが湧いてきて、作業にのめり込んでいくのでした。
力だけでなく、忍耐力もいるぞ、この作業。
「収穫作業は重労働。だから値段が高いんだ」Yさん談

以前は、水を引いて乾いた状態にして機械を使って掘り出していたそうですが、機械掘りでは傷がつきやすいとのことです。

前に、市島の有機農業を支援してくださっている消費者がレンコン堀り体験にきた時、人が掘ったあとは土が柔らかくなっていて掘るのに楽だからと、Yさんが掘ったあとを掘り、たね用に残していたレンコンまで掘り出してしまい、次の年にはそこはレンコンが生えない状態になってしまったそうです。

体験後、掘り出したレンコンを5〜6本、おみやげに持たせていただき、いっしょに参加した丹波農村ビオトープ連絡会・代表の村上さん(ビオトープ計画管理士)ともども恐縮&大喜びしました。あまくて、すごくおいしかった〜!!!
Yさん、ありがとうございました。

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現在、米づくりをしている田んぼのほとんどは土地改良されており、年中、水のたまるほ場は、山間にある小さな田んぼくらいです。それらの多くは放棄地になっています。お米の代わりにレンコン栽培を、と思っても、獣害対策にも金がかかるだろうし、収穫作業も重労働で割が合わない・・・。収穫時に都会の人をたくさん呼んで、『年末恒例・レンコンド大賞』と銘打って、参加料をたっぷりもらってレンコン掘り大会を開くなどのアイデアを駆使しないと無理でしょうね。
みなさん、お米を食べましょう。おいしい、市島町の安全なお米を。
さあ明日からは、子どものおやつは「おにぎり」ですゾ。

▲最初の1本掘り出す間に、Yさんは4〜5本も堀りおこすのでした。
すぐ慣れるよと言ってくださいましたが・・・せっかち人間には無理です。