栽培品種はイセヒカリで決まり

イセヒカリは人間がつくりだした品種ではありません。人間がつくったものには、なにかしら問題を抱えているもの・・・と、わたしは思っていますので、このイセヒカリの不思議とも思える出生の物語に惹かれるのです。イセヒカリは生まれてきたお米。稲の神様か、日本人のご先祖さんたちの霊がおくりとどけてくれたとしか思えない稲なのです。(わたしと、この稲との出会いは「プロジェクト※」の中で紹介しています)

▲市島町で実験栽培された5つのほ場のうちのひとつ、八十市学舎の田んぼ(無農薬/有機栽培)。米ぬか除草法が失敗し、草ぼうぼうの中で瑞々しく育つイセヒカリ。とてもうつくしい稲です。
(雑草と共生させて栽培すると、蛋白含量がグンと少なくなります。そういう結果がでました。)
イセヒカリとは

「平成元年、二度にわたる台風の襲来で、伊勢神宮神田のコシヒカリはなぎたおされて泥まみれになった。その中に、2株並んで直立する稲があった。それは黄金に輝く穂を持ち・・・」
平成元年、伊勢神宮神田(コシヒカリのほ場)で、自然交雑により生まれた、熱帯ジャポニカの遺伝子を持つ非常に生命力の強い稲である。
神宮神田は神様にお供えをするお米をつくるところであり、人間が食べることができないしきたりであるが、平成8年、皇太神宮(内宮)御鎮座2000年を記念する稲として『イセヒカリ』と命名、篤信農家への種籾分譲が開始された。
一燈園農事研究所発行『のうけん』掲載の特集記事(元山口県農業試験場長・岩瀬平著)に、

イセヒカリは卓抜な稲で

1.普通の栽培でまず倒伏することはない
2.病害虫に強く無防除栽培も可能である
3.熟れ色黄金色で美しく多収も期待できる
4.コシヒカリを頂点に現在広く栽培されている軟質米と異なり硬質米だが、コシヒカリなみ少肥栽培なら味はコシヒカリをしのぐ良食味である

と紹介されていた。
(市島町環境保全型米づくり推進協議会による『平成13年度イセヒカリ栽培記録書』より)

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ねっ、面白いお米でしょう。「イセヒカリは人を選ぶ稲だ」とも言われています。その意味はわかりますよね。ちなみに神宮神田での稲作、つまり、神様にお供えするお米の栽培には、動物性の厩堆肥は用いないしきたりになっているとのことです。

イセヒカリはおしいいお米!

でも硬質米なので、炊き方が・・・。

現在、世の中に出回っている電気炊飯器のほとんどはコシヒカリなどの軟質米を炊くようにプログラムされており、そのため硬質米のイセヒカリはおいしく炊けません。イセヒカリに魅せられ、栽培を手がけた篤農家の多くがイセヒカリから離れていった理由は、そこにあります。硬質米・軟質米の炊き分け機能付き炊飯器は製品化されていますが、高価です(今は安くなっているのでしょうか?)。羽釜が一般的に使われていた昔、瀬戸内圏では、硬質米がよく食べられていたそうです。
圧力釜であれば、簡単においしく炊けますよ。わたしは、5年ほどのあいだ、無肥料・無農薬栽培のイセヒカリを食べておりました。とてもおいしかったです。古米になってもおいしかった記憶が残っています。