〜 コロナの人びと 〜


デューイとユーン


「・・・あら、デューイ?」
「ああ、これはユーンさん。街であなたにお会いするとは、珍しいですね」
「あなたこそ、こういうお店に出入りするなんて、なんだか意外だわ」

ここはコロナの街にある雑貨店。
雑貨のなかでも、特に女性の好みそうな色柄の小物や、ちょっとした調理用具なども置いてある店である。
ユーンはここで手作りジャム用のビンを買うため、街に出てきていたのだった。

「姉に買い物を頼まれて。この店に行くように言われたのですが・・・ええと、どこにあるのかな・・・」
「いったい何を探しているの?」
「ケーキの、クリームを絞るときに使う、あの絞り袋です。姉が、なんだか最近気分が良いから、明日の私の誕生日にケーキを作ってくれると言い出しまして・・・。それで絞り袋の新しいのがほしいので、買ってきなさいと」
「・・・誕生日の本人にお買い物を頼むなんて・・・、レラったら・・・。でも、明日お誕生日なのね、デューイ。一日早いけど、おめでとう」
「ありがとうございます」
「絞り袋なら、こっちよ。お菓子材料のコーナーにあるわ。・・・ほら」
「ああ、そう、これです。助かりました、ユーンさん」
「そうだ。わたしもクッキー型、いくつか新調していこうかな」

ユーンはそのまま、クッキーの抜型が並べてある棚に手を伸ばす。
目的の品を見つけたデューイは、絞り袋をひとつ手にとり会計へ行こうとしたが、ユーンの声に呼び止められて、同じ方向へ視線を落とした。

「ねえ、見て。これって天使の形してるわ! 可愛いと思わない?」
「本当ですね。こっちは・・・もしかして、流れ星の形でしょうか」
「やだ、見たことのない型が増えてる! どうしようー、困るわ」
「はは、お困りになるのですね」
「ええ・・・もうっ、笑いごとじゃないのよ」

(・・・・・・デューイ様・・・・・・)
そのとき、つぶやくように声をもらしたのは、この憧れの騎士の誕生日に同じく手作り菓子を渡そうと材料を選びにきた、デューイ様ファンクラブの熱心な会員女性であった。
目の前で繰り広げられる、顔を寄せ合いいちゃつくふたりの仲良さげなやりとりに(←要・会員フィルター)、ふつふつと熱いものがこみ上げる。そして。

ダッ――と、女性は涙を流して店を飛び出した。

「うぅうぅぅ・・・・・・あんな美男美女カップル、反則よぉ〜〜ッ!!!」


恋する乙女にまぶしい金髪。
Fin


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