元老院

 古代ローマの共和政時代に起源を持つ、立法、行政機関。現在では世界各国の議会で上院に相当する議会を指す。ラテン語で老人をあらわす「senex」が語源である。ヨーロッパでは中世のヴェネチア共和国やトスカーナ大公国などで元老院が置かれ、また帝政ロシアでもピョートル1世が自らの諮問機関として元老院を置いている。
 日本語で元老といえば、本来は年齢や社会的地位の高い者、あるいは特定の分野に秀でた業績を残した長老などをさす言葉であったが、1875年の大阪会議に基づき左院の代わりとして設置された上院を元老院と称して以来、各国の同様の議会もこう呼称するようになったといわれている。
 現在でも世界各国に元老院や、それを母体とする議会は現存している。アメリカやイギリスの上院(貴族院)がそうであるし、フランス、イタリア、スペイン、スウェーデン、ポーランドといったヨーロッパ諸国や、カナダ、オーストラリア、フィリピン、メキシコなど旧植民地国では現在でも元老院という名で議会が置かれている(機能としては上院も元老院も大差ない)。
 その中でもフランスの元老院が特徴的なのは、元老院が国民議会と共に両院制を構成していながら、両者がひとつの「議会」を構成する「議院」なのではなく、双方が独立した「議会」であるという点であろう。この二つの議会は所在地も異なり、国民議会がブルボン宮殿に置かれているのに対し、元老院はリュクサンブール宮殿に置かれている。しかし議決の優先権は国民議会にあり、元老院は諮問機関となっている。
 1785年の元老会議を起源とするフランス元老院は、重厚な伝統を有している一方で、貴族制度の尾を引くかのような特権や、それによる利害の網が澱のように堆積していると言われ、議員の中には国際犯罪組織やテロネットワークなどとの繋がりが囁かれる人物もあるという。