★文芸4 海外文学 洋書

数は未だ少ないですが選りすぐりました。

G−a036−001
フリッカー、あるいは映画の魔 セアドア・ローザック
/田中靖訳 文藝春秋 1998年 初 B下 3810円
★宝島社の「このミステリーがすごい」などで、近年最も評価の高かったのが
この本。二段組600ぺージにも及ぶ大部の書なれど、読み出すとその世界
に引き込まれ一気に読んでしまうこと間違いなし。話題にはなったけれど、
当初全然書店には出回らなかった。今では文庫でも出ていると聞くが、や
はりオリジナルで持っていたい人に。本サイトにも関係している某映画評論
家さんの話だと、ともかく面白くて読み始めたら止まらず夢中で読み終えた
あとも何度もまた読み直した、とのことです。ミステリー好きな人、そして映画
館で見る映画が何よりも好きな人に。間違いなく90年代最高の収穫でした。
価格
\2,300
G−a036−002
完本 トムキンスの冒険 ジョージ・ガモフ著/伏見康治他訳 
白揚社 1991年 B 3350円 
★科学者が素人や門外漢のために、その専門分野の世界をわかりやすく解き明かし肩の
凝らない読み物として提供することは昔からよくある。本書は、その種の本の元祖とも呼べ
る話題になった本で、著者は高名な物理学教授。難解な科学の問題を魅力的かつポピュラ
ーな筆によって説明した独特な著作によって有名(解説より)な人らしい。トムキンス氏を主
人公にした物語タッチの四作、「不思議の国のトムキンス」「原子の国のトムキンス」「生命の
国のトムキンス」「トムキンス最後の冒険」を一冊にまとめたもの。宇宙や原子、相対性理論
など難しい話を会話形式で解き明かしてくれるが、トムキンス氏がスキヤキ料理屋に行って
三人の芸者の踊りを通して中間子の説明をするところなんぞ、トンデモ本の一種と思えなくも
ない。著者自身のヘタうまなイラストもいい味出している。物理科学に関心のある人にお勧め本。
価格
\1,700
G−a036−003
完全な真空 スタニスワフ・レム 国書刊行会
 1990年 帯 B 2000円
 SF、純文学、確立論から宇宙創造説まで16冊の奇妙に魅力的な〈存在しない〉書物を
論じ、フィクションの新たな可能性を切り拓いた架空書評集―――帯惹句。
★本好きが高ずると、ついには、自分が求める本、読みたい本を夢想するようになる。
こんな本があったらいい、という程度から、挙げ句に自らそうした実在しない本の刊行
目録などをこしらえるようになるとこれはアブナイ。だが、そうした気持ちは古書マニアなら
誰もが多少は持っているだろう。だからその手の本、実在しない本の解説書、書評という
のも“実在”するのだ。ざっと思い浮かべても、文藝春秋から出た垣芝折多なる著者の手
による『偽書百選』、坂本龍一の朝日出版から出た週刊本シリーズの一冊『本本堂未刊
行図書目録』などがすぐに出てくる。教授の父親は文壇史に残る名編集者の一亀氏で
あるのは、周知のことだが、本好きならば、誰でもそうした目録を編むことを試み、かつ
読んでみたいと思うに違いない。本書は、国書刊行会が出した『文学の冒険』シリーズの
一冊であり、SFマニアの間では高名な作家の手による〈実在しない本〉の書評集として
あまりにも有名な垂涎の書である。ともかくオモシロイ。
価格
\1,400
G−a036−004
看護覚え書 フロレンス・ナイチンゲール/湯槇ます他訳 
現代社 重版 B 1998年(原本初版は1859年) 
●売り切れ!★本書の著者のナイチンゲールとは、歴史上あまりに有名な“クリミヤの天使”ナイチンゲール
女史である。今日、わが国の看護学校で重要なテキストとして今なお広く読まれている本書は、
看護士を志す人々に必読の書であるばかりか、子育てや老人介護を含めて男女を問わず他
者とふれあい介助する作業に関わる人々にとって最適の書でもある。だが教科書的に看護の
ノウハウが事細かに書かれているわけでもなく、看護婦として多くの病人・ケガ人を看てきた彼
女の経験と思い出をランダムに並べた肩の凝らない随筆集であることは意外に知られていな
い。一般人が読んでも面白く、人生及び生と死に関した考察など、どこかソローの『森の生活』を
連想させる趣があり思想家ナイチンゲールを知ることが出来よう。永遠のベッド横の座右の書。
価格
\600
G−a036−006
マインズ アイ (上・下)コンピュータ時代の「心」と「私」
D・R・ホフスタッター/D・C・デネット編著 坂本百大監訳 
TBSブリタニカ 1984年 初 B 各2500円
本書は「心」と「私」という二つの主題を追って展開される壮大な知的スペクタクルである。本書
の中で取り扱われている話題は一般に認知科学と呼ばれる分野に属するものである。日本
においてはこの「認知科学」という語は、心理学とコンピュータ・サイエンスを合わせたもので
あるという程度の狭い意味にとられているのが通常であるが、欧米ではこの語はかなり広い
意味にとられており、本書の原著者の言うところによれば、認知科学とは、「心の哲学」「心理
学」「人工知能」「神経諸科学」を中核として含む一つの総合的科学であり、また、方法論的に
も、実験的方法から理論的、さらには、思弁的方法までを網羅するものと見做されている―
―――監訳者あとがき抜粋。★この説明でもどんな本かわかりにくいと思う。要するに、心や
脳や頭の中の仕組みなどについて、哲学とは別な科学的アプローチでもって研究や思索をし
てみようという学問があって、本書は各国の先端の研究者や知識人が様々なテーマに関して
自由に執筆したサンプル集なのだ。書き手として登場するのは、ラテンアメリカの作家ボルヘ
ス、米国の作家ハーディング、英国の数学者テューリング、ポーランドのSF作家、スタニスワ
フ・レム、米国の哲学者、J・サールその他、そうそうたる20世紀を代表する知の最前線の
人々。各テキストについて編者が短評をつけ解説している。難しいけれど、面白い、そんな本
です。※ほんの一部鉛筆書き込みアリ。上下二冊セットでの価格です。お買い得!
価格
\2,300
G−a036−007
大国の興亡(上・下) ポール・ケネディ/鈴木主税訳 
草思社 1988年 B 各1854円
★副題に「1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争」とあるように、本書は、「近代」
――ルネサンス以後――における国家権力および国際支配力をテーマに、西欧に新たな
生まれた君主国ハプスブルグ家から現代まで五世紀に渡るさまざまな大国の興亡について
上下巻合わせて800ページを越す分量でまとめ上げた歴史書であり、80年代末の大ベスト
セラーであった。大国が生まれ栄え、他国と争い、そして滅びていく。歴史とはそうした事実
の積み重ねであるが、著者はそれに経済と戦略的な力のバランスの変遷という独自の視点
を盛り込み単純な事実の羅列になりがちな歴史書を知的好奇心を満たす面白いエッセイ風
読み物としてまとめあげた。それが大ヒットした理由だろう。だがこの歴史は当然のこととして
1980年までしか描かれていない。それ以後の21世紀へ向かう部分は“推測”としてことわりの
上、日本や中国、EEC(EU)、ソ連と大国の今後について予測しているが、それが当たった
かというと…?。ぜひともこの目で確かめてもらいたい。上下巻セットでの価格。お買い得!
価格
\1,400
G−a036−008
存在の耐えられない軽さ ミラン・クンデラ/
千野栄一訳 
集英社 1993年 B 2200円
★本書の存在は知らずとも、同名の映画の題名は誰もが知っている
だろう。映画は、ダニエル・ディ=ルイス主演で80年代末に公開され、
当時それなりのヒットとなった。1960年代後半、チェコスロバキアで
起こった民主化自由化運動・プラハの春とその後のソ連軍の侵攻・
弾圧へと、常に時の体制に翻弄される人間の“存在の軽さ”を鋭く問う
哲学的恋愛小説。訳者の千野先生曰く、
「まだ映画だけしか見ていない方々に、ぜひ映画よりはるかによい原
作を味わっていただきたい」。
 著者のクンデラ自身が、ソ連の軍事介入と粛正により、チェコ語での
作品発表と大学教授の職を失い、海外への亡命を余儀なくされた体
験を持つ。ソ連崩壊により、東欧の民主化は達成されたが、「存在の
軽さ」は21世紀の今日変わったのか。その答えはパレスチナで、イラ
クで起こっていることを見ればわかるはずだ。
価格
\700
G−a036−009
スーパートイズ ブライアン・オールディス/中俣真知子訳
平成13年 竹書房 初 B上 1800円
★ブライアン・オールディスは、ニューウエーブSFの旗手としてJ・G・
バラードらともに当代人気作家だそうだが、本書は、元は短編で、
スタンリー・キューブリックが映画化権を獲得し、著者と共同で何年間
も脚本を練ったという。だが、利己的な天才であるキューブリックと著
者は結局決裂し、やがて第一作から30年後あらたに書き直された本
作は、今度はS・スピルバーグによって『A,I,』という映画になった。
その一連の顛末を記した「スタンリーの異常な愛情 または私とスタン
リーは如何にして『スーパートイズ』を『A.I.』に脚色しようとしたか」を
巻末に収録した連作集。
価格
\700
G−a036−010 
キルトに綴る愛 ホイットニー・オットー
/中野恵津子訳 講談社 1996年 帯B 1600円
●売り切れ!★1996年にウィノナ・ライダー主演でアン・バンクロフト他オールスター
キャストで公開された同名映画の原作だが、元々は全米ベストセラ
ー。ライダー扮する著者をモデルにした大学生が祖母の家に集まる
キルトサークルの老いた女性達からそれぞれの人生を聞き取ってい
く。キルトというアメリカの手作り文化のように彼女らの各エピソードが
つなぎ合わされひとつのアメリカにおける女性史となっていく。アメリカ
人というのは、基本的にバカでゴーマンな人が多いが、ここに登場す
る女たちは誰もが知的で魅力的な人生の達人である。
価格
\700
G−a036−011
思春期病棟の少女たち スザンナ・ケイセン
/吉田利子訳 草思社 1994年 B 1553円
★ウィノナ・ライダー出演・制作の映画『17歳のカルテ』の原作本。1969
年、18歳の著者は大量にアスピリンを飲んで自殺を図り、境界性人格
障害と診断され、精神病院へ入れられた。そこでの二年間の体験を
描いた本書は1993年に出版され、ベストセラーとなる。いわば少女版
『カッコーの巣の上で』だが、病気に囚えられた少女たちの日常は
痛々しく心を打つ。若者に限らず人はみな危ういバランスを保って生き
ていて、異常と正常は紙一重の境界だと本書を読んで改めて思う。映
画版では仲間の少女にアンジョリーナ・ジョリー。彼女の出世作となっ
た。映画もよく出来ていたが、やはり原作本はもっと別な淡々とした
リアルな感慨をもたらす。
価格
\700
G−a036−012
エクソシスト ウィリアム・ピーター・ブラッティ 宇野利泰訳
新潮社 1973年 B下 1000円
★解説不要。あまりにも有名なオカルト映画の原作本。と言っても今流行の映画があっての
ノベライズではなく、「ゴッド・ファーザー」と同じく全米で話題のベストセラーの本書がまず先に
あって、映画化され、それがまた大ヒットしたのだ。映画はショッキングなシーンが多く、おっか
ないというより衝撃的出来合いが強かったが、本書はしみじみオッカナイ。映画よりも詳しく
日本人には馴染みのないエクソシストとは、悪魔払いとは何であるか、悪魔学、神学的説明で
明かしてくれる。その上、サスペンス、ミステリーとしても息もつかせず読ませてしまう。文句なし
のオススメ本。
価格
\600
G−a036−013
ボーン・コレクター ジェフリー・ディーヴァー/池田
真紀子訳 文藝春秋 1999年 初 B 1857円
★テンゼル・ワシントン主演の同名映画の原作。事故で全身マヒとなっ
た元刑事が連続猟奇殺人事件の犯人を追いつめていく。動けない彼
の手足となってハイテク機材で指示を受け事件を捜査するのが女パト
ロール警官で、映画版ではアンジョリーナ・ジョリーが演じた。まあ、一
種の安楽椅子探偵物なのだが、通信機器の進歩で部下にリアルに指
示を下せるというのがミソか。この自らは動かず、気丈なかわいい女
の子を指示し、彼女が活躍するという設定は後にパクられ、同様のマ
ンガやテレビドラマを生んだ。ジョリーは原作のイメージ通りの適役だ
が、主人公は原作では黒人ではない。クリストファー・リーヴに演じさせ
たら、というのはブラックジョークだが。映画より遙かに原作の方が面
白いと店主は確信する。ともかく一読の価値はある。まあ、一読だけ
だがね。
価格
\300
G−a036−014
トレインスポッティング アーヴィン・ウェルシュ
/池田真紀子訳 青山出版社 1996年 帯 B 1600円
★説明は不用だと思う。表紙にも使われているユアン・マクレガー主
演の同名映画の原作。舞台となるスコットランド・エディンバラ出身の
著者はスコティシュ=スコットランド訛りで本書を書き上げ、映画も彼
らはこの言葉で話し語っている。同じ英語だと思うのに、まったく聞き
取れない!字幕担当者や訳者はさぞや苦労されたと思うが、こうして
本になると読者は気楽なもので、映画も面白かったが、原作の方も流
れるように一気に、アル中やジャンキーたちの無軌道なスピード感
あふれる駆け抜ける青春を思う存分味わえる。PTAのおばさん族が
ごらんになると気絶しそうなイギリスの若者映画――とは故淀川長治
さんの本映画評。
価格
\700
G−a036−015
スナッパー ロディ・ドイル/実川元子訳 キネマ旬報社
1994年 初 B上 1500円
★アイルランドである。アラン・パーカー監督の名作『ザ・コミットメンツ』
をご存知の方ならその映画の原作を書き、脚本も担当したロディ・ドイ
ルの名も記憶にあるはずだ。本書はダブリン近郊に住むラビット家の
大家族を主人公とした「バリータウン三部作」の二作目で、映画化され
た一作目「おれたち、ザ・コミットメンツ」で、長男ジミージュニアが、「ア
イルランドに本格的ソウルパンドを作る」という夢に向かって奮闘した
が、本書では、そのラビット家の長女が図らずもうっかり妊娠、その大
騒動がラビット家に降りかかる。スナッパーとはアイルランドの俗語で
赤ん坊のことだそうで、ウディ・アレンがよく描くN・Yの下町のユダヤ人
家庭と双璧をなす、世界で最も下世話な家族、貧乏な子沢山のアイル
ランド人家庭のできごとが大まじめに笑わせられる。
価格
\800
G−a036−016
ヴァン ロディ・ドイル/実川元子訳 キネマ旬報社
1994年 初 B上 1800円
★アイルランドである。アラン・パーカー監督の名作『ザ・コミットメンツ』
をご存知の方ならその映画の原作を書き、脚本も担当したロディ・ドイ
ルの名も記憶にあるはずだ。本書はダブリン近郊に住むラビット家の
大家族を主人公とした「バリータウン三部作」の3作目で、映画化され
た一作目「おれたち、ザ・コミットメンツ」で、長男ジミージュニアが、「ア
イルランドに本格的ソウルパンドを作る」という夢に向かって奮闘した
し、二作目では長女が妊娠し新しい家族が増えたが、本書では、不況
によりとうとう父親であるジミーシニア自身が失業し、子供たちは家を
離れ、家庭は崩壊へと向かっていく。悲惨な話のはずだがドイル流ア
イリッシュ特有の軽口とユーモアで物語は深刻にならずしみじみとした
ペーソスに溢れて読後は静かな感慨を読者にもたらしてくれる。
価格
\800
G−a036−017
ペリカン文書 J・グリシャム/白石朗訳
 新潮社 1993年 初帯 B 2200円
●売り切れ!★バカにしていたが改めて読んで思った、グリシャムは圧倒的に面白
い。『法律事務所』に続く彼お得意のリーガルサスペンス、法廷ものな
のだが、本書ではロースクールの美人女子学生が活躍する。映画化
された同名映画では、事件に巻き込まれる女子大生をジュリア・ロバ
ーツが演じ、デンゼル・ワシントンが共演した。映画もまずまずの出来
だったが、やはりここはひとつ原作を。読み出したら止まらないこと請
け合いだ。
価格
\300
G−a036−018
野性の夜に シリル・コラール/長島良三訳 
二見書房 1993年 B 1700円
★1992年の同名のフランス映画の原作本。というより映画そのものも
著者シリル・コラール自身が監督・主演している。映画製作者の主人
公は、バイセクシャルでHIV感染者であるにも関わらず17歳の美少女
と恋に落ち彼女を抱いてしまう。一方、男たちとの関係も断ち切れず
に…。男とは、女とは、愛とは、死とは?そして、絶望と希望。コラール
の自伝的な衝撃的なストーリーは、89年に発表され自ら出演で映画化
され現実に著者自身が93年にエイズで死んで終結をむかえた。
 本書の結びに彼はこう綴っている。「ぼくはたぶん近いうちにエイズ
で死ぬだろう、だが、それはもはや僕の人生ではない。肝心なのは、
ぼくがいま人生を生きていることだ」と。
価格
\400


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