★文芸2 随筆 エッセイ 自伝評伝 
回想 日記
商品ID−書名−著者名−出版社−発行年−初・再−帯有無−状態−元価格
E−a036−001
たまにはリゾート気分 気ままな欧州・アジアの旅
山口正介 あすか書房 1997年 初 B 2000円
★山口瞳の愛読者なら当然、子息正介氏のことも知っているだろう。「男性自身」シリーズ
で幼少の頃より登場を余儀なくさせられ、成人後は、やはり作家・物書きの道を歩まれた
が、映画評論やルポライターとしても活躍されている。この本は、『シグネチャー』誌に連載
された海外紀行エッセイで、実際に世界各地を旅し、味わいある文章にステキな写真も彼
自身が撮っている。なかなかの才能だと思う。山口瞳先生亡き後、読者はもう二度と氏の
謦咳に接することはもはやかなわぬ夢ではあるが、本書を読むときにそこここに「父」の
体臭をいつしか感じてしまうのは私一人ではあるまい。江分利万氏が海外に行ったらこん
なことを書きそうだ。スイス・ヴェネツィア・ウィーン・フランスアルプス・バリ・インド・シンガ
ポール……良質な時間が本書には流れている。父君のみならず息子ももっと読まれて
ほしい。当店一押しのオススメ本。
価格
\1,000
E−a036−002
こころの手足〈増補版〉 中村久子 春秋社 1973年 初・帯 B 600円
四歳にして手足を失った著者は、不幸な幼少期を経て、青春の日に見せ物小屋に身を投
じ、日本全国はおろか遠く海外にまで流れ歩く。その辛苦に満ちた境遇の中で、光を求め
て学び、恋をし結婚をし、子を産み育てる。晩年、信仰を得て、各地を講演して廻り、多く
の人の心に灯を与え、日本のヘレン・ケラーと讃えられる。本書は、手足なき悲しい宿命
を克服し、強く生きた著者の自伝「いのちの珠」と信仰を語る詩文「光を求めて」を収録し
た、感動の書である――帯解説文。
★こんな人もいたのか! 流行の言葉で言えば、アンビリバボーな驚愕の人生の手記。
凄絶かつ感動的。今の若い人にぜひとも知ってほしい人だ。五体具足に産まれた私たち
は、ささいなことに傷つき、失敗や悩み、挫折を前にすると苦しさに耐えかねて逃れる術を
模索し、時に一人で、ネットで仲間を募って自殺してしまう者もいる。もし、現在、そんな気
持ちで人生に悩み苦しんでいる人がいるのならともかくこの本を手にとってみてほしい。も
っと大変な人生に比べれば、あなたの悩みはとるに足らないものだと言う気はない。悩み
や苦しみは人それぞれ個別のその人だけのものだ。だが、突発性壊疽で幼少時に四肢を
失いながらも生涯精一杯苦難苦闘の人生を生きた人がいたという事実を知り、今の自分
の人生と照らし合わせてみた時、きっと何か答えがみえてくるはずだ。
※本文一部赤鉛筆などで傍線引いてあるものの、程度は良し・やや背やけ・帯シワと破れあり。
価格
\900
E−a036−003
五体不満足 乙武洋匡 講談社 1998年 帯 A 1600円
「障害は不便です。だけど、不幸ではありません」――帯惹句。★あまりにもこの一冊で超
有名人となった乙武君。超ベストセラーとなったわりには実際に読んだ人は少ないのでは
ないか。特異な障害を持って生まれてきた彼の半生を、物心ついた時から早大生の現在ま
で率直に語ったポジティプ・シンキングな感動の書。彼の発言は100パーセント正しい。が、
社会は障害者との共生をなかなか受け入れようとはしない。未だ勝ち組や強者にスポットを
当て価値を置く我々の意識自体をまず変えなくてはならないだろう。小学生にも読んでほし
い、と総ルビつきだが、意外に内容は高度でタレント本的興味から買った人は読めなかっ
たのではないかと思う。バリアフリーを考えるとき必読の書。
価格
\300
E−a036−004
遊鬼 わが師 わが友 白州正子 新潮社 1991年 B−D 1800円
★現在でもブームが続いている故・白州正子の随筆集。青山二郎、小林秀雄、福原麟太
郎、梅原龍三郎ら師と仰ぎ親交のあった巨人たちの思い出を名文筆家が綴る。吉田茂や
夫・白州次郎の思い出も貴重だ。※本文の程度はいい方ですが、残念なことに前所有者が
小林秀雄の項に数箇所マーカーで消せない線を引いてあります。バカ女です。今度やった
らたたじゃおかないからな!本は自分だけのものと思うなってんだ。プンプン。背黄ばみ。
価格
\800
E−a036−005
昭和天皇独白録 寺崎英成御用掛日記 文藝春秋 
1991年 帯 B 1700円 
昭和天皇が自ら語った「昭和の戦争」。そしてマッカーサーとの会見など、昭和天皇の
「戦後」につかえた御用掛、寺崎英成の未公開日記――昭和史の瞬間を生き生きと
伝える寺崎資料の衝撃―――本書帯惹句。★柳田邦男の著書『マリコ』の父でもある、
日米開戦まで在ワシントン日本大使館詰めの一等書記官であった寺崎は、戦後、天皇
の通訳官・アドバイザーとして宮内省御用掛を命じられ、マッカーサーと天皇の会談の
席にも通訳として同席していた。その寺崎の手による昭和史の重要な局面に関する回
想と日記、そして戦後彼が記録した天皇の戦史を振り返る“独白”。近代史研究に不可
欠の一級の資料である。
価格
\1,200
E−a036−006
嬉遊曲、鳴りやまず 斎藤秀雄の生涯 中丸美繪
 新潮社 1996年 帯 B上 1800円
小澤征爾、秋山和慶、堤剛、岩崎洸、藤原真理、前橋汀子――多くの逸材たちはいかに
鍛えられたか。鬼教師の情熱一途の生涯――帯惹句。★今日でもサイトウ・キネン・オー
ケストラに名を残す、音楽指導者・斎藤秀雄。彼の生涯を綿密な資料を駆使して鮮やかに
描き出した労作。彼の一生はそのまま日本クラシック音楽界の歴史そのものだった。戦前、
戦後の音楽史の資料としても大変貴重だが、伝記文学としても面白く一気に読ませる。
当店一押しオススメ本。
価格
\1,200
E−a036−007
田中清玄自伝 インタビュー大須賀瑞夫 
文藝春秋 1993年 帯 B 1900円
●売り切れ!
★田中清玄と聞くと、右翼の大物、フィクサー、昭和史最後の怪物といったイメージが
あるが、その実像を知る人は少ないだろう。彼の行動、足跡は、昭和史を辿っていくと
戦前、戦後のそこここいたるところで目にするものの、実際の彼の肉声、彼の思想その
ものははっきりと伝わってこない。戦前は、非合法下の日本共産党の幹部として、武装
闘争を指揮し、やがて転向、一転して熱烈な天皇主義者となり戦後右翼の一角を成す。
さらに石油利権屋として政界の黒幕として君臨し、ヤクザや暴力団との関係も深い…。
「日本でいちばん面白い人生を送った男」とは、本書の帯のコピーだが、こうした波瀾万
丈、一見、脈絡の見えない紆余曲折の人生を送った男に直接突撃インタビューを試み、
彼も誰憚ることなくその時々の状況と心境を抜群の記憶力であからさまに語っている。
実に面白い。特に戦前の共産党の地下活動について党史にも記されてない貴重な当事
者のみ知る事実が興味深い。本書は、昭和史の裏面資料として価値も高いが、同時に
田中清玄という怪物の素顔を白日の下に明かした最高のエンターティメントである。彼
は、日本では類い希なリベラリスト、リアリストであり、その資質が彼の行動を掻き立てて
いたことがよく理解できる。昭和天皇、野坂参三、鈴木貫太郎、吉田茂、頭山満、田岡
一雄、児玉誉士夫、岸信介、今西錦司ら、彼が出会った伝説的な人々の印象も的確に
捉えている。店主一押しオススメ本。
価格
\1,200
E−a036−008
ラ・ジャポネーズ キク・ヤマタの一生 矢島 翠
 潮出版社 昭和58年 B 1500円
★キク・ヤマタこと、山田菊という日仏混血の女流作家のことは日本ではほとんど知られ
ていない。キクは、19世紀末に在リヨン日本領事館に勤めていた日本人領事を父に仏
人女性を母にフランス第二の都市リヨンで生まれた。その後一家は日本に戻り、キク
は、聖心女子学院に入り日本人として成長し父の死後、母親と帰仏。パリでヴァレリー
らの知己を得、本格的文筆活動に入る。その後、数多くの日本を紹介する書物や翻訳
書を著し、生け花などを教示し日仏の文化の架け橋として活躍した。戦争の足音が高ま
った昭和14年、仏人の夫と共に日本へ帰国。大戦が終わるまで「敵性外人」として辛酸
の日々を送る。戦後、フランス国籍を得たキクは、母国フランスへ戻り、文筆活動に専
念し1975年療養所で死ぬ。78歳の誕生日を迎える直前だったという。日仏の文化の狭
間に消えたキクのことは日本では無名に近いが、今日でもジュネーヴの古書市では、
キクの著書は、高値で流通していると聞く。この知られざる混血女性作家の一生を丹念
に追いまとめあげた労作である。著者は加藤周一夫人だそうで記述の正確さ視点の高
さも頷けよう。
価格
\900
E−a036−009
尾崎行雄の選挙 ―世界に誇れる咢堂選挙を支えた人々―
坂上順夫 和泉書院 2000年 初・帯 B上 4500円
25回連続当選 「憲政の神様」尾崎行雄の選挙は、選挙民の手弁当によって行われた世界
に誇れる理想選挙であった。その実体を初めて明らかにし、現在の日本の政治に警鐘を鳴
らす。政治家も有権者も政治の原点に帰って、21世紀の政治を考えよう――帯惹句。※松
坂大学地域社会研究所叢書2 ★政治家の鑑、いわば、スーパースター尾崎咢堂の素顔と
一生、そして彼の足跡、精神を余すところなく網羅したベストオブ尾崎な価値ある一冊。巻
末の資料集だけでも貴重な労作。政治を志す人のみならず、日本人必読の書!
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\2,800
E−a036−010
夜のある町で 荒川洋治 みすず書房 1998年 B 2500円 
詩集『渡世』で高見順賞を受けた現代詩作家による、待望のエッセイ集。《略》明るく繊細
な文章で書き留められているのは、ゆっくりと、でも確実に変わっている世相と社会、食
べ物、作家や本のことである。それをつらぬく思いはひとつ、この国が失っているのは心
である前に、まずは言葉なのだということ。その場その場で人間らしくあるために、言葉
はある。あきらめ多き人生にあって、知恵と勇気をあたえてくれる、文学の実用書――
裏表紙解説文抜粋。 ★現代日本を代表する詩人の随筆集。雑多な誌書に発表された
短文を纏めたものだが、そこここに言葉を大事にする詩人の鋭い感性が光る良書。
オススメ本。
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\1,800
E−a036−011
密航漁夫 吉田亀三郎の生涯 小島敦夫 集英社
2001年 初・帯 B上 1680円 
おかみの都合で、ダメェいうなら、わしゃ自分でゆく!漁場の神様・アメリカ亀やん一代
記明治末年、宇和の海から日本人初の帆走船による太平洋自主縦断の快挙――帯
惹句。★1910年代、就労目的で自主帆船により太平洋を渡り密航を企てた男達がい
た。その頭目がこの吉田亀三郎。日本の航海の歴史を書き換えた知られざる男の生
涯を気鋭の海洋ジャーナリストが克明に追った労作。※帯に破れがあるものの本文未
読。新品状態。お買い得です!
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\900
E−a036−012
東京育ちの京町家暮らし 麻生圭子 文藝春秋
 2000年 初 B 1429円
★近年、人気が高いスローライフや、シンプルライフを突き詰めていくと京都
の暮らし、それも京の町家の暮らしになるのではないか。狭い限られた敷地
をセンス良く快適であるように工夫を重ね有効に用い、四季の移ろいを巧み
に取り入れ、できるだけモノを持たない、徹底的簡素と倹約。それでいて食材
などは常に折々の旬を用いた豪華ではないが、豊かな食文化。長く使える良
い物には惜しげもなく金をかける思い切りとそれを裏付ける審美眼。それに
古都千年の伝統を担っているという矜持。たおやかで、かつ真の強さを持つ
京都人の暮らしは、もはや“粋”という文化を捨て去った東京人の、次から次
へと新しいものを追い求め追いまくられる、せわしくゴテゴテとした欲望に満
ちたライフスタイルの対極にある。その意味で京都は、心ある東京人にとっ
て、永遠の憧れであると言えるだろう。本書の著者は、作詞家として中森明
菜や小泉今日子のヒット曲を手がけエッセイストとしても知られるギョーカイ人
であったが、京に魅せられ1995年から京都に移り住み、古い町家を探し求め
ついに住まいとした。その経緯をまとめたのが本書であるが、巻頭のその町
家の内写真を見ただけでため息が出てしまう。門口、走り庭、茶室、玄関の
下地丸窓、走り庭の上の火袋(吹き抜け)、火鉢、土間の台所、ジントギの流
し…。戦前から続いてきた黒ずんだ木の建物はそれだけでと懐かしさと落ち
着きを住む人にもたらし、快適さ以上に心の平穏を与えてくれる。「足し算」
でなく、「引き算」の身の丈にあった暮らし。ああ、こんな家に住んでみたい。
アナクロでは決してなく21世紀のライフスタイルがここにあるのではないか。
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\880
E−a036−013
楽しき熱帯 奥本大三郎 集英社 1995年 初・帯 A 1500円
★仏文学者であり、日本昆虫協会会長でもある著者の自伝的昆虫採集記。
樺島勝一の少年誌に載ったイラストで昆虫に魅せられた大三郎少年は不思
議な縁に導かれついに念願のアマゾンへ昆虫採集の旅へ向かうこととなっ
た。本書はその南米旅行記であり昆虫好きではない人でも熱帯の探索ノート
としてレヴィ・ストロースの原書以上に面白く読めるはずだ。元々は「スーパー
ジャンプ」「すばる」に連載されたもの。また、ブラジルガイドとしても楽しめるオ
ススメ紀行エッセイ。
価格
\700
E−a036−014
新釈・からだ辞典 渡辺淳一 集英社 1990年 B 1300円
★現代日本の小説家、それも昭和一ケタ生まれの世代として最も人気があり
ベストセラーを連発しているのは渡辺淳一だろう。近年は「失楽園」など話題
になった恋愛小説ばかりにスポットが当てられ意外に本業が医学博士という
肩書きを持つ医師であることが忘れ去られているように思える。本書は彼の
専門の整形外科の知識を活かして豊富なカラー図版を示して「いろいろ躰の
ことを知りたいが、医学の専門書では難しすぎて読む気になれない。といって
家庭向けの看護全書のようなものでは味気なくて退屈である。そういう人々の
ために、読みやすくて楽しいものはできないものかと思って書いた」――
あとがきより。
 ちょっとHな小説を書くベストセラー作家だと渡辺を侮ってはならない。非常に
マジメに躰の個々の部位に分けて詳しく説明し該博な知識をもって懇切丁寧に、
まさしく読みやすく楽しい本。人体医学の入門書としても、身体に関した随筆と
しても楽しめること間違いない。
価格
\600
E−a036−015
いつでもやりたい イッセー尾形 廣済堂 
1993年 初・帯 B 1300円
★リアルな一人芝居で国際的にも知られるイッセー氏の初の本格的小説。
自伝的要素もたっぷりあり、60年代末の東京の“雰囲気”が巧みに描かれ
ている。話自体は大した内容はないのだけれど、本人の表紙イラストも含
め、才能のある人は何をやってもウマイと思わず柏手を打ってしまう出来。
僕(マスダ)自身はこの時代、洟垂れのガキだったので風月堂も当時の新
宿もまったく記憶にないのが心からクヤシイ。60年代の若者文化や東京の
風俗に関心のある人におススメします。19歳のワタル少年の自活から同棲
へ、浮遊する青春を軽やかに描く好編。著者自らの表紙イラストもいい味だ。
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\400
E−a036−016
こんな映画が、 吉野朔実 PARCO出版 2001年 
帯・重 B上 1300円
★副題に吉野朔美のシネマガイドとあるように、少女マンガ家、吉野朔美が観た映
画に関し本人のイラスト入りで感想を記した肩の凝らない映画エッセイ本。PECマ
ガジンや、アンアンなどに書いたものをまとめたもの。90年代半ばから2001年まで
の話題作、アート系注目作品がほぼもれなく紹介されている。基本的に甘口で、
評論・映画論を期待するともの足りませんが、まあ、あくまでも漫画家の余技として、
なかなか面白く読めます。映画のガイドブックとしての効用も帯では説いてあります
が、レンタルビデオショップで映画を借りて観る人には役に立つかも。本体にビニー
ルカバーで19センチ×12センチのコンパクトサイズ、通勤通学のハンドブックとして
移動の車内で読むのにも最適でオススメ。
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\600
E−a036−017
天外天風 ゲージツ無頼帖 篠原勝之 マガジンハウス
 1994年 帯・初 B 1300円
ある日、突然持ち込まれたモンゴルでゲージツする話。紆余曲折を経て、チューゴクと
ニッポンの人民のオーエンで実現の運びに。クマさんの孤軍奮闘が始まる『人生は
デーヤモンド』から十三年、ついに鉄のゲージツ家として到達した〈鉄のゲージツ論〉を
背景にクマさんは、旅を、人間を、ニッポンを、そして人生の機微を熱く語る――
カバー裏解説より。
★巨体に坊主頭のご存知、クマこと篠原勝之がモンゴルの大草原に鉄のオブジェを
築くまでの日記的物語。モンゴル世界のルポルタージュでもある。クマさん特有の軽
やかな語り口で圧倒的にオモシロイ。前田日明による「あとがき」収録。
※ある女性へ献呈したものなのか、女性の氏名とクマさんのサイン&イラストあり。
価格
\600
E−a036−018
クマさんのケージツ日誌 篠原勝之 毎日新聞社 1994年 
初・帯 B 1400円
〈鉄のゲージツ家〉クマこと篠原勝之の1993年、1994年の日記と、ゲージツ三昧の日常を
記したエッセイ的読み物を集めた一冊。保険会社のPR誌やスポーツ新聞に連載された
ものをまとめたものらしい。ゲージツ家は、その日常生活も含めてすべてがゲージツであ
ることがよくわかる好読み物。「ゲージツは職業ではなく、オレが生きてる大きな理由な
のである」と後書きにあるが、納得した。鉄という重く冷たい素材を用いるクマさんだが、
彼のスタンスは常にあくまで軽やかでそして熱い。眉間に皺寄せて語る「芸術」を軽やか
に「ゲージツ」に変えた男の興味深い内面が窺える。※献呈本らしく相手のO譲宛のクマ
さんのサインとイラスト有り。表紙・イラスト・装幀和田誠。
価格
\600
E−a036−019
セントラルアパート物語 浅井愼平 集英社 
1997年 初・帯 B上 1575円
★原宿のセントラルアパートは、確かにそこにあった。明治通りと表
参道が交わる角にあった。だがこの建物を知っている人ももう少ない
だろう。かつて、60年代から70年代にかけてこのアパートは時代の最
先端を走る人々の住居兼オフィスとして知られた。本書は、その671号
室にオフィスを構えていた写真家が、当時を振り返り、友人達を実名
のままに、登場人物たちとしてその出会いと別れをビビットに描いた
ドキュメンタリー小説。若き日の三上寛・寺山修司・伊丹十三・繰上和
美・植草甚一・裕次郎・久保田二郎・高平哲郎・上京してきた頃のタモ
リ、そして渥美清らが浅井の記憶の底から現像液に浮かび上がり本
という印画紙にみずみずしく焼き付けられた。小説の形態をとっている
がここに描かれたことはすべて“本当にあったこと”なのだろう。今では
失われた時代の証言であると同時に、いつの時代もかわらない青春
の断面(スケッチ)が彼の写真そのままに的確かつセンス良く描かれ
ている。二度と戻らない懐かしの東京、センチメンタルジャーニー。
価格
\600
E−a036−020 
真夜中の太陽 米原万里 中央公論新社 2001年 
初・帯 B上 1400円
 リストラ、続発する医療ミス、崩壊する安全神話…… 世紀末日本の行き詰
まった状況を、ウイットとユーモア溢れる語り口で浮き彫りにした時事エッセイ
―――帯惹句。
★ご存知、当代人気のエッセイストとなった感がある名同時通訳者でもある著者
による日本及び世界の諸事情について考察し批判した肩の凝らないエッセイ集。
広く海外に詳しい事情通がこの手のモノを書くとたいていは海外では○○なの
に、日本では▽▽で、日本はだから非常識だ、遅れている、といった口調に陥る
ことが多い。しかし米原が語ることは極めて常識的でかつ進歩的で常に明快で
ある。その理由として、幼少時より共産党の家庭で育まれチェコのソビエト学校で
学び、日本に戻って外語大〜東大大学院で学んだといういくつもの文化や体制を
経験したという強みがそこにあるからだろう。本書に収められた短いエッセイとい
うかコラムは主に二十世紀末から二十一世紀初頭にかけて夫人公論誌などに
寄せられたものだが、今読んでも肯けるところが多い。日本はヘンな国である。
だが世界もまたヘンである、という真理がそこにあるからなのだ。
価格
\700
E−a036−021
暮らしの気象学 倉嶋厚 草思社 1984年 初 B上 1300円
★著者は、NHKK天気予報のキャスターとして顔も声も知られているから、すぐに
あの人だと思い出す方も多いはずだ。本書は気象庁予報官であった理学博士で
もある著者の気象、つまりお天気に関する膨大な知識と蘊蓄を全身全霊を傾けて
まとめ上げた天気に関する論文集といってもよいほどびっしり詰まった内容の濃
い本である。よくある肩の凝らないお天気エッセイだと思って手にとってはならな
い。はっきりいって専門家及びマニア向けの肩の凝る難しい本だが決して難解で
はなくわかりやすく面白くもある。読むと頭が良くなること保証します。しかしこんな
マジメな人だから近年鬱病になって、自殺を図るなど苦労もされたと聞く。お天気
おじさんの再起を願って本書を高く評価する。本とはこの程度の密度と熱意を持
って出すべきという良書の見本。
価格
\1,000
E−a036−022
少々おむづかりのご様子 竹中直人 角川書店
 1993年 B上 1400円
★竹中直人というと、俳優であり、監督であり、お笑い芸人でもあり歌手であって
とりとめのない奇人変人、わけのわからないが面白い人、というイメージが強い。
だが、その実は誰よりも映画をこよなく愛する真面目で熱い純粋な熱血漢なので
ある。店主はそのことに昔から薄々気がついていたが本書を手にしてその考えを
確信した。本書はキネマ旬報などに書き連ねた映画に関する彼の熱い思いをまと
めたもの。店主が学生の頃から多摩美の映研に面白い男がいると、聞いていた
という記憶がある。それが竹中だった。本書のイラストもグラフィックデザイン科卒
の手腕を生かし巧みで実にうまいのに驚かされた。彼は子供の頃からよく泣いた
と言う。「どうして楽しい時間はすぐに終わってしまうのか」と。その楽しい映画とい
う時間を自由闊達な文とイラストで本というタイムカプセルに留めたものである。
価格
\900
E−a036−023
辛酸 戦中戦後・京の一庶民の日記 田村恒次郎 
編集・解題=岡光夫 ミネルヴァ書房 
叢書・同時代を生きるC 1980年 初 B 1400円
★自分の日記はともかくも他人の日記というものは面白い。それが名高い有名人
でなくても時代の証言として貴重な記録ともなりうる。しかしそれよりも他人の内面
を覗き見たいという野次馬根性、好奇心が他人の日記への興味へつながるのだ
と思う。本書、つまりこの日記の著者っていうか、日記をつけていた人は略歴をま
とめると、明治3年に滋賀県で生まれて日記(本書)の始まる昭和19年には75才。
日記の終わる翌年には82才で死んでいる。そんな爺さんの日記が何故本になっ
たかというと、彼は大正初年に京都でビリヤード店を始めて、一時は羽振りが良
かったが、戦争と共に客足が遠のき、戦中には店を細々と続け辛酸をなめた。
だがもちまえの反骨精神でたくましく生き、ダンスや観劇に興じたモダンボーイだ
った―――解説抜粋。確かに圧倒的に面白い。無名の市井の一庶民にしてはリ
ベラルで自由な批判精神を存分に発揮し自らの達者なイラスト?挿画も含めて
並の庶民ではないことがわかる。だがそんな個人の日記がどうして一冊の本とな
ったのか。それは京都の古書即売会で岡光夫氏が偶然入手されたからに他なら
ない。ともかくこの貴重な戦中戦後の庶民の記録が本になって後世に残されて良
かった。店主も日記をつけているが、死後、本になるほどの密度と熱意をこめて
いるだろうかと反省した。
価格
\1,300
E−a036−024
向田邦子 最後の炎 小林竜雄 読売新聞社
 1998年 初・帯 B 1400円
今、明かされる最後の真実 乳がんの手術から台湾での不慮の事故まで六年。
それは、深さと輝きといさぎよさを持った“早すぎた晩年”だった―――帯惹句。
★向田邦子に関しての本は今でも多い。それだけ彼女の世界を愛するファンが
今もいるということの証なのだろう。本書は邦子の書くドラマをリアルタイムで見て
自らも脚本家となった著者が邦子の妹や久世光彦を始め関係者達に取材し、
彼女の死までの数年間を丹念に追ったものである。死んだ者は還らない。だが、
残された者たちの記憶に今も残り色褪せないというのは幸福だと言えるのではな
いか。無念だろうが運命というものは確かにあると本書を読んで確信した。
※本体ビニールカバー付き。
価格
\700
E−a036−025
寂聴 観音経 愛とは 瀬戸内寂聴 中央公論社
 1990年 初 B 1100円
誰にでも読める、分かりやすい観音経。やさしいお経の話第二弾――宣伝文。
★前作「寂聴 般若心経」の好評を受けて寂聴師が「観音経」をわかりやすく口語
訳、そして解説したもの。著者曰く、「出家して以来、私は水が低きに流れるよう
に、観音様を心から信じるようになって、そして自分の身の上におこるあらゆるこ
とは、観音様のおはからいであって、私はそのおはからいに従って動かされてい
るのだ、と思うようになったのです」。
良書です。救われる思いがします。愛別離苦に悩める貴方に。
価格
\700
E−a036−026
天の釘 現代パチンコをつくった男 正村竹一 
鈴木笑子 晩聲社 2001年 B 2800円
★今日、爆発的人気を得て国民的ギャンブルとなったパチンコ。戦後すぐ、釘の
配置などそのパチンコ遊技機の原型を作り上げた男がいた。「現代パチンコの
生みの親」といわれる正村竹一である。その伝説の男の生涯を丹念に追った渾
身のルポ。パチンコに興味のある人、ないひと問わず面白く読めることを保証す
る。これもまたひとつの戦後裏面史なのである。
価格
\1,500
E−a036−027
カータンのなみだ 声優伝・大竹宏 山口真一 新風舎 1999年 
初・帯 B上 1800円 ※大竹本人の署名本
大竹宏さんはまさに「怪物くん」のドラキュラ伯爵そっくりの奇優怪優である!
その大竹伯の波瀾万丈の軌跡を執念(?)で追ったのがこの「カータン伝説」だ!
《藤子不二雄A》―――帯惹句。
★ピンポンパンといえばある世代にとって忘れがたい子供番組であろう。酒井ゆ
きえお姉さんと新兵ちゃん、そして着ぐるみのカッパのカータン。そのカータンの
声と実際に中に入っていたのが大竹宏である。その他、アニメ「怪物くん」のドラ
キュラや、ア太郎のニャロメなど彼の声を聴いていない人はいないはずだ。だが
実際の彼自身は…?!本書はそんな知られざる有名人大竹の生涯を丹念に追
った伝記であるが、それがそのまま戦後日本のラジオ〜テレビ放送の歴史とな
っている。子供番組やアニメファンにとって他の声優などの貴重な証言が満載さ
れた好著。
価格
\1,500
E−a036−028
わが青春の「盛り場」物語 福富太郎 河出書房新社 
1995年 初・帯 B 2200円 
焼け跡とヤミ市の東京を“キャバレー太郎”はどう生き抜いたか。たくましくも、ちょ
っと哀しい人間模様を万感をこめて振り返る、懐かしき戦後グラフティ―――帯惹
句。
★最近ではキャバレー王というよりも、浮世絵のコレクターや文化人としてのイメ
ージが強い福富太郎だが、本書などまさしくそのインテリの部分がいかんなく発揮
された名著。戦後すぐの都心の繁華街の様子を16歳の少年はどう見てどう金を
得て生き抜いたか。これはある時代の東京という街の細密な記録であると同時に
もう一つの「麻雀放浪記」である。※前作「昭和キャバレー秘史」の姉妹編。
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\1,300
E−a036−029
なんでもない話 青木玉 講談社 1997年 初 B上 1500円
★幸田露伴の娘が幸田文、そして文の娘が玉だから青木玉は文豪露伴の孫と
いうことになる。本書を読んでつくづく思うのは血は争えないという真理だ。文章の
そここに幸田文が、そして露伴翁が顔を出し覗き込んでいるような気がするのは
店主の思いこみだけではないはずだ。「なんでもない話」とはその時かぎりのこ
と、目の前の相手と他愛のない会話を楽しんで、しゃべり終えれば消えるものだ、
と著者は後書きで語っている。日々感じる些細なできごとや目の前の草木、小動
物でさえも著者の手にかかればこんな素晴らしい随筆に纏められる。露伴の晩
年を知る、お婆さんの語る「なんでもない話」に耳を傾ける時、読者は至福の時に
世俗の煩わしさをしばし忘れるだろう。。
価格
\900
E−a036−030
嘘つきアーニャの真っ赤な真実 米原万里 角川書店
平成13年 初・帯 B上 1400円
★ロシア語の通訳としてより最近ではエッセイストして有名な米原万里の自伝
的エッセイ。いやエッセイというより過去を辿るルポと呼ぶべきか。彼女は父
が日本共産党の古い幹部であった関係で父の赴任先のプラハで少女期を過
ごした。その地で出会った東欧各国の同級生たちを大人になった今、彼女は
再会すべく旅に出た…。激動の時代を生きた少女たちの人生を探し求めて。
圧倒的に面白いです。新しい才能です。願わくば乱作せずこのレベルを保っ
てほしいと思います。店主一押しのオススメ本。未だ知らない方はぜひ手に
とって下さい。
価格
\700
E−a036−031
想い出のカフェ ドゥマゴからの贈り物 中村真一郎他
 Bunkamura 1994年 帯 B 2000円
※中村真一郎、鈴木清順、吉本隆明、辻邦生、須賀敦子、久世光彦、蓮実重
彦、中沢新一ら50氏が「想い出の世界のカフェ」を語る楽しいエッセイ集――
帯惹句。★僕がパリでぶらぶらしていた頃、あちこちのカフェに入ったけれど、
副題にあるドゥマゴとかドームには敷居が高くて入れなかった。ただこれだけ
は確かなこと。カフェ、それもフランスのカフェのようなものは日本には絶対に
ないってことだ。最近、吉祥寺や代官山などに似たようなものはできた。でも全
然違う。カフェとは朝からやっていて食事もできて定食屋でもあり喫茶店でもあ
りバーでもサロンでもある。そう、つまり何でもありの自由ってことだ。カフェを
語ることはとりもなおさず自由を語ることに他ならない。山本容子のエッチング
による表紙・挿画もマッチしたプレゼントに最適なオシャレで知的な本です。
価格
\800
E−a036−032
二葉亭四迷の明治41年 関川夏央 文藝春秋 
平成8年 初・帯 B上 1800円
★関川夏央はマンガ原作者として「坊ちゃんの時代」など明治を舞台
に優れた作品を残しているが、本書はそれのいわば小説版。今回の
主人公は漱石や鴎外、啄木ではなく、漱石の畏友二葉亭だ。二葉亭
は今日、現代日本語の祖として知られているが、帯にもあるように、
憂国の人、完全主義で自己嫌悪、放蕩で親孝行、そして愛情に拘泥
する人であった。すべてにアンビバレントで、今で言うところのモラトリ
アム人間のはしりでもあった。その特異な人間像を樋口一葉、紅
葉、花袋、そして啄木ら絢爛たる明治人を配して鮮やかに描いてい
る。明治は遠くになりにけりなどと以前はよく耳にしたが本書を読む
とまさしく明治は現代と同時代であることを知るだろう。オススメ本
価格
\1,200
E−a036−033
ピカレスク 太宰治伝 猪瀬直樹 小学館 
2000年 初・帯 B 1600円
★太宰治の「遺書」の謎に迫る本格的評伝ミステリー、と帯にあるが
最近では作家としてよりも道路公団民営化委員としての方が目立つ
猪瀬による三島由紀夫〜川端康成と大宅壮一に続く文人3部作の
完結編。いつものように猪瀬のペンはその対象の内面まで毎度の
冷徹といってよいほど深く入り込んでいく。本作で切られるのは太宰
のみならず彼の師匠に心ならずもされてしまった井伏鱒二。この二
人の奇妙な関係と性格を猪瀬は非情なタッチで弾劾していく。面白い
が彼らのファンとしては非常に不愉快。評伝というものは少なくても
その対象となる作家に敬愛の念をもって接するべきだと店主は思
う。本書を読んでわかったことは猪瀬は太宰も井伏も嫌いで評価して
いないということだ。素材がミカドの土地ならば非情でも許されるが
果たして人間はそれでどうか。もっとも最近は道路に関しても非情で
はないようだが。
価格
\1,200
E−a036−034
夕やけを見ていた男 評伝梶原一騎 斎藤貴男
 新潮社 1995年 帯 B 1800円
★評伝の見本はかくあるべきという好著である。僕たちの世代の男
子は梶原一騎という怪物に大きく影響されて大人になった。もし、彼
の原作のマンガがこの世になかったら、僕たちの人生はどんな味わ
いのものになっていただろうか想像もできない。巨人の星、明日の
ジョー、柔道一直線、夕焼け番長、タイガーマスク、空手バカ一代、
そして愛と誠…。数々の伝説的超ヒット作を生みだし、かたわら暴力
事件などで度々新聞を賑わせ、やがて自滅的に消えていったマンガ
原作者梶原一騎。本書はそれらのマンガを読んで育った僕らの世代
の気鋭ジャーナリストが梶原夫人をはじめ彼とコンビを組んだマンガ
家ちばてつや、辻なおき、川崎のぼるらと編集者、そして猪木や黒崎
健時ら空手や格闘技関係者、そして実弟真樹日佐夫まで多くの関係
者に徹底的取材し初めてここに梶原一騎という怪物の全体像が姿を
現したのである。秘話満載圧倒的に面白い。店主はかねてより、梶
原一騎とは現代の佐藤紅緑だと思っていたのだが、本書を読んで
図らずもそれが証明された。事実、少年マガジンの編集者が梶原に
巨人の星を依頼したときに「マガジンの佐藤紅緑になって」との言が
出て、梶原はそれで゜発奮したという“証言”もある。寂しがり屋の裸
の王様とは力道山もそうだったが、光と影のコントラストが極端に強
いこの種のタイプの男はいなくなってしまうとひどく淋しく懐かしいのも
また事実だ。本書を手にしてますます敬愛の念を強くした。梶原一輝
はやっぱり素晴らしい。生前の彼に素晴らしい作品を残してくれて
ありがとうございましたと言いたかった。
価格
\1,300
E−a036−035
鴎外の坂 森まゆみ 新潮社 1997年
帯 B上 1800円
★谷中・根津・千駄木通称谷根千という地域ミニコミを出していた元
気なおばさん森まゆみさんもいつの間にか明治大正の戦前の文化
に詳しい研究家もしくは作家・文化人になってしまいテレビでもよく見
かけるのでご存知の方も多いはずだ。本書は彼女のテリトリーであり
縁もゆかりも深い団子坂上に居を構えていた森鴎外の…ああっいや
だっどうしてもおうがいのおうって字がこのパソコンでは鴎としか出な
いよう――市井に残る足跡を丹念に拾い集め鴎外の素顔と生涯を
追慕を込めて描いた著者渾身の力作評伝(帯惹句)なのでありま
す。店主は昔この辺りに住んでいたことがあり懐かしく読めました。
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\1,200
E−a036−036
中里介山 松本健一 朝日新聞社 昭和53年 
初・帯 B下 1200円 朝日評伝選18
近代日本の思想的辺境をえがいた長編小説『大菩薩峠』の作者中里介山は、
自由民権運動の隆盛期に三多摩壮士の影響を受けて育ち、終生民衆と共に
あった。旅を愛し、精神の漂泊者として生きた介山居士・59年の数奇な生涯の
軌跡を明らかにする―――帯惹句。
価格
\600
E−a036−037
コルシア書店の仲間たち 須賀敦子 文藝春秋 1992年
初 C※図書館のリサイクル本 1300円
★死後も静かなブームが続いている須賀敦子の代表作。誰が悪いわけでも
ないのに人生には哀しいことが次々と起こってしまう。60年代のイタリアを舞
台にした自伝的連作。心にしみ入ります。人生に倦んだとき手にとってみて
下さい。この作家を知ってほしくて載せました。未読の人はぜひとも。
価格
\300
E−a036−038
大人の女が美しい 長沢節
★昔ちょっとだけつきあった女の子がセツ・モードセミナーに通っ
ていた。デートのとき喫茶店で彼女からクロッキー帳を見せても
らった。いかにも節先生風の頭の異常に小さいスタイル画がそこ
にあった。そして彼女から先生についていろいろ聞かされた。
彼好みの学生、男の子がいると、いつも近づいて耳元で
「きみはあと5キロ痩せたらもっと素敵になるよ」と囁くとか、
オキニには、スキンシップで指導するとか。そして見せてもらった
テキストには、若き日のアンソニー・パーキンスのリアルなイラス
トがあり、その下に「彼を見てわかるように、西洋人は首と顔の
幅が同じである。かといって彼の首が太いというわけでない」など
とあってふーむこの先生はそうとうヘンだなあと思った。その後、
あるときNHKの朝の主婦向けワイド番組の中でのコーナー
「長寿の食卓」で実物の節先生の食生活から日常が紹介された。
シングルライフを楽しむ先生は当時80歳になろうとする年齢なの
に、長身痩躯、カラフルな派手な原色に身を包み、背筋も伸び
身のこなしも軽く全然年寄りらしくない。何を毎日自ら作って食べ
ていたのか記憶にないが、健康法として、エレベーターのない
モードセミナーの中の階段を下から上へ一日何往復も駆け上っ
たり降りたりすることか、と笑っていた。こんな人はきっと百まで
ピンピンしているだろうと呆れはてる程だった。
ところがそれから数年もしないうちに、新聞の夕刊だったか、彼
の死が載っていて驚いた。ちょっとうろ覚えで正確ではないかも
しれないが、何でも、学校の遠足だかスケッチ旅行だかへ行った
出先で、節先生は自転車に乗って移動の最中、転んで頭を打ち
そのまま急死してしまったらしい。こんなことってあるだろうか。目
を疑った。そんなヘンな人、長沢節だが、彼のセツモードセミナー
からは花井幸子、山本耀司、飯野和好、金子国義ほか、そうそう
たるファッション界、広告業界、雑誌で活躍するクリエーターたち
を輩出している。イラストレイター、ファッション画、デザイナーとし
て戦中・戦後から第一人者として活躍してきた彼が、本書で一
応、表向きは女性向けとして特異な美意識を披露している。
彼はこう告白している。「かつて私は一度も自分は男だって思った
ことがなかった」そして「男だろうが、女だろうがおかまいなしに、
ただ人間としてノンキに付きあえるような世の中にするのは、大
賛成だ。〈略〉人間一人ひとり違う個性があり、そこが人間の魅力
なのだ。穴のある人もない人もいる。反対にある部分が出っぱっ
ているのもいる。みんな個性のうちだから愛しあっているうちに
もし穴をみつけたら、出っぱっているところをそこに入れさせて
もらったらいいし、なかったらないで出っぱっている同士が抱き
あってもいい。〈略〉おたがいが少しでも気持ちよくなるように、
いろんな工夫をしあうのが愛であり、友情だ」と。本書は全編この
調子で綴られ、末尾はこう結ばれている。「そしてある日突然、
老人は美しい少年を抱いたまま死ぬ…。それが理想だと思う」。
果たして節先生は転んで意識が遠のくときに傍らにはお気に入り
の美少年の学生がいたのだろうか。
価格
\1,000
E−a036−039
三留まゆみの映画缶 三留まゆみ キネマ旬報社
1992年 初 B 2800円
★本サイトでもおなじみ、三留まゆみさんの映画に関するコラム&イラスト
集大成であります。キネ旬誌に連載された89年12月上旬号から91年11月
上旬号まで丸2年間、彼女が見た映画が詰まっております。豪華な大判の
良い本です。実は店主も当時この本の出版には一枚噛んでおりました。そ
の証拠は……巻末を見てのお楽しみ。今なら、彼女に頼んで「書き下ろし
サイン&イラスト」を本書にサインしてもらう予定ですので、お買い上げの
方はその旨申し込んで下さい。早いもの勝ちです。今ではまず手に入らな
い大変貴重な本です。初めて当店でも扱え大変ウレシイです。
価格
\3,980

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