歌、卵、ル、虹、凩



致死量がなくて効き目がどこまでも拡がつてゐる飛花の真ん中


かくされてゐた葉桜がさくらからときはなたれる速度のなかへ


ならふよりなれろと響くバイエルの音にまぎれて新聞が来る


けふここに載る必然をたぎらせろネオン管職人の死の記事


歌、卵、ル、虹、凩、好きな字を拾ひ書きして世界が欠ける


ゆふぐれにもつとも近き岬にて音もなくそれはぼくを攫つた


水彩の斧のひびきがぼくからの贈り物だと告げて、そのまま


世界最後の人魚のために研ぎすます月のひかりに真実がある