1988年 書肆季節社 定価1700円 装釘/政田岑生

水晶街路/青年霊歌/青年霊歌・拾遺/夕映感覚/朝貌通信/憂愁街路

魂に刺青を/紺碧感覚/人生を視ず/雲雀通信/炎天に献ず/初期歌篇

 

まだ何もしてゐないのに時代といふ牙が優しくわれ噛み殺す
どこの子か知らぬ少女を肩に乗せ雪のはじめのひとひらを待つ
誰も知らぬわれの空間得むとして空(から)のままコインロッカーを閉づ
剥がされしマフィア映画のポスターの画鋲の星座けふも動かぬ
夏木立ひかりちらしてかがやける青葉の中にわが青葉あり
「きみはきのふ寺山修司」公園の猫に話してみれば寂しき
フランスパンほほばりながら愛猫と憲法第九条論じあふ
顎つよき愛犬を街にときはなつ銀色の秋くはへてかへれ
しみじみとわれの孤独を照らしをり札幌麦酒(さつぽろビール)のこの一つ星
駆落ちをするならばあのガスタンク爆発ののち消ゆる辺りに

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